コラム 記事一覧

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TEXT:渡辺陽一郎
10ベストカーのうち3車種はBEV専用車! 日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025は過去最大のEVイヤーに

多くの電動車が10ベストカーに選出された 毎年、年末になると日本カー・オブ・ザ・イヤーが決定する。クルマ関連の雑誌やウェブ媒体によって実行委員会が組織され、依頼を受けた選考委員の投票に基づき、日本カー・オブ・ザ・イヤーが決まる。 日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025の選考では、2023年11月1日から2024年10月31日までに国内で発表、あるいは発売された乗用車と、個人利用の可能な商用車が対象になる。まずは10ベストカーを投票で選び、そこから日本カー・オブ・ザ・イヤーを決定する。 日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025の10ベストカーを見ると、BEV(エンジンを搭載しないバッテリーとモーターによる電気自動車)が多かったことに気付く。10車種のうち、3車種をBEVが占めた。 しかも、それ以外の5車種については、バリエーションのなかに、BEV、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、マイルドハイブリッドが用意される。つまり合計8車種は、何らかのモーター駆動システムを搭載するわけだ。モーター駆動をまったく用意しないエンジンのみの車種は、悪路向けSUVのトヨタ・ランドクルーザー250とピックアップトラックの三菱トライトンのみであった。 この10ベストカーの構成は、いまの日本で求められるパワーユニットを素直に反映したものだ。2024年上半期(4〜9月)に国内で新車として売られた軽/小型/普通乗用車のうち、ハイブリッド(マイルドタイプを含む)は53%に達した。そうなると販売ランキングの中盤から上位に位置する売れ筋車種は、その大半が何らかの電動機能を採用する。そのために10ベストカーには電動車が多かった。

TAG: #BEV #COTY #日本カー・オブ・ザ・イヤー
TEXT:遠藤正賢
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない

「Honda 0シリーズ」の最新技術を覗いた 2024年1月のCES 2024で世界初公開され、2026年より世界各国での市販化が予定されている、ホンダの新たなBEV「Honda 0(ホンダ・ゼロ)」シリーズ。 同シリーズで掲げられている開発アプローチ「Thin, Light, and Wise」(薄い、軽い、賢い)を具現化する技術の数々が10月初旬、ホンダの四輪/BEV開発センター栃木および隣接する四輪生産本部で開催された技術説明会「Honda 0 Tech MTG 2024」で公開された。 そのなかで、新型CR-Vの内外装に「0」シリーズの技術を組み合わせた試作車に試乗することができたので、インプレッションをお届けしたい。 さて、「Thin, Light, and Wise」の具現化技術は、今回公開されただけでも極めて多岐にわたるため、かいつまんで説明すると、「thick and heavy」=「厚くて重い」というBEVの制約を根本から覆すものといえる。その要となるのは、やはりバッテリーだ。 そんなバッテリーを「薄く軽く」作るため、ホンダは型締め力6000tクラスの「メガキャスト」(大型鋳造機)と、「3D FSW」(三次元摩擦攪拌接合)を導入。これによりバッテリーケースの部品点数を従来の60点以上から5点へと大幅に減らすとともに、ウォータージャケットを薄型化して、バッテリーパック全体の高さを従来より約6%、実寸法にして約8mm下げることに成功した。 また、側面衝突時の荷重をより効率よく分散する構造とすることで、バッテリーの搭載効率を約6%アップ。加えて約500万台に及ぶ電動車の市場ビッグデータをもとにバッテリー劣化モデルを構築、診断・予測技術を確立することで、製造10年後のバッテリー劣化率10%以下を目指すとしている。 パワーユニットに関しては、モーター、ギヤボックス、インバーターを一体化させたeAxleを、メインユニットとなる180kWタイプと、サブユニットとなる50kWタイプの2種類設定。かつインバーターを他社比で40%小型化し、eAxleの上ではなく横への配置を可能とすることで、eAxle全体の高さを下げ、室内空間を30mm拡大することに成功した。 これはボディ骨格にも良い影響を与えている。eAxleの小型化により前後の衝突ストロークが拡大するうえ、とくにフロントではサイドメンバー上部中央に板状の部材を追加できるようになった。 これにより、スモールオーバーラップ衝突時の入力を回転方向に変え、横方向に逃がすことで、キャビンへの入力を低減。他社比で10%のオーバーハング短縮と合わせて軽量化も図っている。 さらに、引っ張り強度が2.0GPa(ギガパスカル)級と極めて高いホットスタンプ(熱間成形)材を、ホイールベース間のフロア骨格に用いることで、衝突時にキャビンやバッテリーの変形を抑えるとともに、断面高さを28mmにまで下げ、全高1400mm以下の低全高パッケージに対応しつつ、乗降性の改善も図っている。 そして、旋回時に外輪を押すようボディを敢えてしならせることで、外輪タイヤの接地荷重を高め、軽量化と軽快な走りを両立させることを目指すという、「操安剛性マネジメント」を導入。これによりストラットタワーバーのようなサスペンション取付部などへの補剛部材を不要し、従来のホンダ車に対し約10%の軽量化を実現するとしている。 シャシーにおいてはステア・バイ・ワイヤを採用し、サスペンションやブレーキなどほかのバイワイヤデバイスとも統合制御。さらに、3次元ジャイロセンサーを用いた姿勢推定&安定化制御、モーターならではの緻密なトルク制御を組み合わせることで、荒れた路面でも舵角や挙動が乱れにくく、またタイトなコーナーでも少ない舵角で旋回することを可能にしている。 なお、展示されていたベアシャシーのサスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式で、リヤがマルチリンク式。前後ともエアサスペンションとなっていたが、市販モデルではコイルスプリングと電子制御式油圧ダンパーとの組み合わせも計画されているようだ。

TAG: #Honda 0 series #コンセプトカー #先進技術
TEXT:高橋 優
EV普及の鍵を握るのは「充電速度」! ニッポンもついに規制緩和で「超急速充電」が可能になるも対応している国産EVがない!!

規制緩和でEVライフはどう変わる? 日本国内における急速充電器設置に関する規制が緩和され、ついに800V級の急速充電器を容易に設置することが可能となりました。これにより、今後150kWを超える超急速充電器の普及が進む可能性を解説します。 現在、日本国内では150kW級の急速充電器の設置がようやくスタートしているものの、海外を見渡すと350kW級であったり、中国では1MW(1000kW)級という超急速充電器の設置がスタートしています。それではなぜ、これまで日本国内で超急速充電器が設置されてこなかったのかといえば、高電圧対応ができなかったことが理由として挙げられます。 というのも、日本国内で450V以上の電圧に対応する急速充電器を設置する場合、保安要件が例示されていなかったことで、充電器を設置する事業者側が自主的に設置を行わなかったという背景が存在します。 ところが、今回ついに、経済産業省が電気自動車用の急速充電器の保安要件をアップデート。結論としては、1500V以下の急速充電器に対する保安要件が追加されたことで、事業者が不安なく450V以上の急速充電器を設置、運用することが可能となったわけです。 そして、今回の急速充電器設置の要件緩和によって、大きくふたつの意味で間違いなく日本国内の電気自動車シフトの転換点となると考えられます。第一に、当然ながら、いよいよ800V級の超急速充電器が日本国内でも設置、運用がスタートすることになるという点です。 じつは、いくつかの充電サービスプロバイダーがすでに設置している急速充電器は、最大1000Vに対応する冗長性を備えており、システムのアップデートを行うだけで、既設の充電器でも高電圧充電を行うことが可能です。 とくにテンフィールズファクトリーの急速充電器FLASHは、チャデモ規格では750V、テスラのNACS規格では1000Vでの充電が可能となっています。よって、もしチャデモ規格において800V程度の電圧で充電できるEVが登場した場合、理論上、750Vと最大電流値の400Aをかけあわせた300kW程度という充電出力でも充電が可能。NACS規格では、1000Vと最大電流値の600Aをかけあわせた、600kW級での充電が理論上可能となります。 さらに、イーモビリティパワー、通称eMPも、2025年に設置を予定する次世代急速充電器では、最大電圧1000V、最大電流値350A、最大出力350kWを発揮可能な急速充電器の設置、運用をスタートするとアナウンス済みです。 とくにeMPは今後、一般の乗用車だけではなく商用車のEVシフトも見据える必要があり、大容量バッテリーを搭載する商用EVでは1000V級の超急速充電はマストです。海外では最大1000kW(1MW)以上というメガワット充電の運用も間もなくスタートしていくことから、今後は商用EV向けに、350kWを超える超急速充電器も開発されることになるでしょう。 そして重要なポイントは、これまで450V以上の急速充電器の設置を自主規制してきたことによって、日本の充電器メーカーの国際競争力が低下してしまっていたという点でしょう。海外では800V級の急速充電器が設置できるのは当然であったため、充電器メーカーは高電圧充電器を開発して大量生産化。現在はABBやTritium、シーメンスや台湾のPhihongなど、多くの充電器メーカーが開発競争を続けています。 ところが日本では、独自の450V自主規制が存在したことによって、日本の急速充電メーカーは、800Vの急速充電器を開発したとしても主要マーケットである日本国内の充電プロバイダーには商品を売ることができず、800V級の高電圧急速充電器を開発するメリットがなかったわけです。こうなると、超急速充電器の開発競争においてガラパゴスとなってしまい、海外に売れる急速充電器を開発する競争力が失われてしまっていたわけです。

TAG: #急速充電器 #規制緩和
TEXT:御堀直嗣
とりあえず余裕のあるやつ買っとけば……は損! EVのバッテリーは「大は小を兼ねない」

駆動用バッテリーの重さは大人数名分 「大は小を兼ねる」ということわざがある。それは、電気自動車(EV)に車載される駆動用バッテリーについてもいえるだろうか。大容量のバッテリーを車載するEVのほうが、より長距離を充電せずに走れるからだ。 しかし、日常的あるいは頻繁に長距離をクルマで移動している人以外は、考え物だといえそうだ。 EVの駆動用バッテリーは、小さな容量でも数百キログラム(kg)の重さがある。乗車人数に換算すると、3~4人に相当するだろう。そもそも軽自動車のEVでさえ、複数人数で乗車して移動しているくらいのバッテリー重量になっている。まして、一充電で長距離を走り切れるEVになれば、7~8人がつねに乗って移動しているのと同じといえるのではないか。 エンジン車でも、燃費を改善するには、余計な荷物を積まずに使うほうがよいといわれる。余計な荷物さえ降ろしたほうがいいくらいなのだから、大容量バッテリーのEVは、それ以上の重さを常に抱えながらの走りになっているといえる。 バッテリー容量と一充電走行距離の相関関係を、改めて検証してみる。 日産サクラのリチウムイオンバッテリー容量は20kWh(キロ・ワット・アワー)だ。登録車のリーフは、標準車で40kWh、e+(イー・プラス)で60kWhのリチウムイオンバッテリーを車載している。ちなみに、アリアは最大(B9)で91kWhだ。 それらバッテリー容量によって、サクラは一充電走行距離が180km、リーフの標準車は322kmで、リーフe+になると458km、アリアは2輪駆動車で640km走れる。 サクラと比べれば、リーフの標準車は2倍のバッテリー容量、リーフe+は3倍、アリアは4.5倍のバッテリー容量だ。ではその増量分に対し、延長された走行距離は何倍になっているか。リーフの標準車は1.78倍、リーフe+は2.54倍、アリアは3.55倍で、バッテリー容量の倍増分に比べ、走行距離の伸びは少なくなっているのがわかる。 つまり、バッテリー容量が増えれば増えるほど絶対的走行距離はたしかに伸びるが、伸びしろという効率でみれば、バッテリーを倍増させたぶんそのまま遠くへ行けるわけではないのである。

TAG: #バッテリー #容量
TEXT:桃田健史
乗用車への採用はいまのところ期待薄! 充電待ちから解放される夢のバッテリー交換式EVの行方

最大の課題は電池パックや交換作業等の標準化 ENEOSホールディングス、アメリカのスタートアップ「Ample」、そしてタクシー大手のエムケイホールディングスは、京都でEV向けバッテリー全自動交換ステーションの実証実験で協力している。 バッテリーを交換するというアイディア自体は、以前から存在する。 時計の針を少し戻すと、日産リーフが世に出て間もない2000年代後半から2010年代前半にかけて、中東イスラエルとの関係が深いアメリカのスタートアップ「ベタープレイス」の存在が注目された。 同社は、日本政府からの事業支援を受けて、都内や横浜市内でEVタクシー向けの全自動交換ステーション実証を行ったことがある。筆者は当時、同社幹部らに事業計画について詳しく取材したが、同社はその後しばらくして事業を解散している。 中国では2000年代の北京オリンピック開催のタイミングで、市内中心部を走行するEVバスで交換式バッテリーを社会実装した。 2010年代に入ってからも、中国では乗用EV向けのバッテリー全自動交換ステーションの実用化を進めるさまざまな動きがあったが、ステーション導入におけるコスト、ステーション数の伸び悩み、そしてユーザーに対する安定したサービス体制維持に対する不備などがあり、一気に普及したとはいい切れなかった。 話を現在に戻すと、自動車産業界は2050年までにグローバルでカーボンニュートラルを目指すという大義のもと、少なくとも2030年代には本格的なEVシフトが始まるという予測を立てながら、2020年代を「EV普及に向けた移行期」と捉えているところだ。 そうなると、今一度、EV普及に向けた根本的な課題を注視する必要が出てきた。 EVが普及するための三大要素は、電池コスト、航続距離、そして充電時間といわれて久しい。バッテリー交換型EVになれば、充電時間は電池交換時間となるので短くできる。 また、電池パックの容量を大きくしたり、バッテリー交換ステーションの設置場所が増えれば航続距離についての不安も少なくなるだろう。 さらに、ユーザーが電池パックを所有するのではなく、充電サービスの一環として捉えるならば、EV本体のコスト削減にもつながる。 このように、バッテリー交換型EVは「いいことずくめ」に思える。だが、最大の課題は電池パックや交換作業等の標準化だ。少なくとも、乗用EVについてはこの分野での議論が活発に進んでいるとはいえない。 他方、トラックなど商用車におけるバッテリー交換式EVについては、国土交通省が1月、「国際基準の策定をオールジャパンで目指す」という方針を発表している。 こうした国の議論と京都でのEVタクシー実証が上手く連動することを期待したい。

TAG: #バッテリー #バッテリー交換型EV
TEXT:山本晋也
余った土地に「ヨシ! 急速充電器を設置するか」は現実的? 個人がEVの充電サービスで儲けられるか考えてみた

現状では儲かるビジネスとはなり得ない EV(電気自動車)の普及に急速充電インフラの整備は必須条件である、と思っている自動車ユーザーは多いだろう。現実的には、たまに利用する急速充電より、自宅や職場など長時間駐車している環境における普通充電(基礎充電)を確保することが利便性につながると理解できるのだが、それでも急速充電インフラが不要という意味ではない。 急速充電インフラが整備されればEVの運用にとってプラスしかないのも事実だ。 では、個人(自営や副業レベル)で急速充電インフラの整備に貢献することはできるのだろうか。具体的にいえば、自宅の敷地などに不特定多数が利用できる急速充電器を設置することは可能なのだろうか。 結論からいえば、個人が独立した急速充電器を使ってビジネス化することは非常に難しく、非現実的といえる。そこにはいくつもの理由が考えられる。 まずは、急速充電器を設置するためにクリアすべき規制や条件のハードルが高いことが挙げられる。いま日本で50kW級以上の急速充電器を設置するには高圧受電設備(キュービクル)の設置が必要で、建屋とキュービクルの間は3m以上の空間が必要となっている。高速道路のPAや、観光地の道の駅などで急速充電器がポツンと置かれているのには、こうした規制が影響している。 キュービクルの設備コストは最低でも200万円、高圧電力の引き込みにも同等のコストが必要とされている。加えて、急速充電器本体と設置工事のコストもかかる。そのため、初期費用の合計はおおむね600万円あたりが目安とされている。引き込みコストがかかるシチュエーションなどでは1000万円オーバーとなることもあり得るだろう。 仮に600万円の初期費用だとして、それで終わりではない。年間で100万円はくだらないであろう電気代は所有者の負担になるし、機器のメンテナンスコストもかかる。 また、規制的な話をすれば、電気を売ることができる売電業者は非常に限られている。そのため、個人レベルでの急速充電ビジネスは施設利用料として徴収するカタチになるという点も見逃せないポイントだ。

TAG: #インフラ #ビジネス #急速充電器
TEXT:高橋 優
メルセデス・ベンツは中国市場の「高級EV」で苦戦! EクラスやSクラスの顧客がファーウェイに奪われている

高級車セグメントの販売が減少 メルセデス・ベンツの最新の決算内容とEVシフトの進捗動向が判明し、販売台数、収益性、EVシフトという観点で減速が目立つ厳しい動向が判明しました。 まずメルセデス・ベンツは、2024年初めに、当初掲げていた2030年までの完全バッテリーEVシフトの目標を取り下げており、今後どのようなEV戦略を採用するのかに注目が集まっていました。そして、そのような背景のなかで、2024年第三四半期の決算内容が発表されました。まず、メルセデス・ベンツの乗用車セグメントとバンセグメントを合計した、グループ全体のグローバル販売台数は59万4673台を達成。ところが前年同期比で3.4%のマイナス成長と、やはり2024年の後半に突入しても販売ボリュームの減少トレンドが続いています。 さらに問題であるのが、グループ全体の売り上げが第三四半期単体で345億2800万ユーロと、前年同期比で7.2%のマイナス成長に留まっている点です。つまり、販売台数以上に売り上げが減少しており、販売単価の減少が推測可能です。 実際に、Q3でもっとも販売に苦労したのがSクラスやGクラス、AMG、そしてマイバッハが該当する高級車セグメントです。販売台数も6.2万台弱と、前年同期比で12%のマイナスです。さらに、2024年通しの9カ月間で見ると、前年同期比で19%のマイナス成長。2024年に突入してから、メルセデスの収益性を支える高級車の販売状況が芳しくない様子が見て取れます。 次に、メルセデス・ベンツの収益性を詳細に見ていきましょう。まず直近のQ3の粗利益率は17.99%と、2021年以降で最低の四半期となりました。2022年Q3は23.28%、2023年Q3は21.6%、そして今回の18%弱と断続的に粗利が低下しています。おそらく粗利を稼ぎやすい高級車の販売台数が減少していることが影響していると推測できます。 また、販売管理費や研究開発費を除いた営業利益という観点も、Q3は7.29%と、2022年Q3は13.78%、2023年Q3が13.02%であり、急速に収益性が悪化しています。 この営業利益に影響する研究開発費について、売り上げに占める研究開発比率がQ3は4.87%と、この数年間で最高水準を計上しています。他方で、9カ月間通しの研究開発費と比率は、前年と比べて横ばいであり、研究開発費が大幅に増加したことが営業利益を圧迫したとはいえません。 また、販管費はこの9カ月間でわずかに低下しており、これは人件費の削減が理由であると説明されています。つまり、何がいえるのかといえば、今回、なぜ収益性で大きく落ち込んでしまっているのかというと、研究開発費や販管費が大きく増加したことが要因ではなく、やはり販売台数の減少、とくに高級車という利幅の大きいモデルの販売が落ち込んでしまったことが原因なのです。

TAG: #決算 #販売
TEXT:御堀直嗣
まだ多くの日本人が知らないEVの「走る以外」のメリット! 東京都なら実質約3万円で設置できる「VtoH」とは

VtoHは災害のときなどに役立つ 電気自動車(EV)を買うとき、よい機会なのでVtoH(ブイ・トゥ・エイチ)も同時に導入したいという人もいるだろう。 たとえば、日産サクラ/三菱eKクロスEVのような軽自動車でも、車載のリチウムイオンバッテリーは20kWhの容量がある。一般的な家庭で日々使う電力は、およそ10kWhなので、2日分の電力を車載していることになる。 ちなみに、太陽光発電を自宅の屋根に設置し、そのためのバッテリーを併設する際の容量は、およそ10kWhなので、その2倍の電力をもつともいえる。 さらに、登録車の日産リーフなら、標準車種で40kWhのリチウムイオンバッテリーを車載するので、家庭で使う4日分の電力量に相当する。 大地震のような災害でなくても、大型台風の上陸や、線状降水帯をともなう豪雨などが身近になり、それらによる停電もまれなことではなくなりつつある。その際、EVを所有し、VtoHを設置していれば、ただ電灯をともせるだけでなく、スマートフォンの充電はもとより、冷蔵庫の冷凍食品を無駄にすることなく、またシャワーなどの湯沸かし器でも電気でスイッチが入る仕組みであったりするので、家で電気が使えることの有り難みは計り知れない。 では、VtoHの導入は、どれくらいの費用がかかるのか? 設置台数で高い実績を持つ日本のニチコンを例にすると、家庭用のパワー・ステーションは、128万円である。これまで、その機器は家庭用空調の室外機ほどの大きさがあったが、現在では大幅に小型化され、取り付け場所をあまり選ばなくなっている。また、自宅に設置した太陽光発電との連携もできるようになっている。

TAG: #VtoH #自宅充電 #費用
TEXT:山本晋也
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実

EVのタイヤにかかる負荷は大きい 中国では新車販売におけるEV(電気自動車)の比率は30%前後となっている。つまり、EVは珍しいものではなく、ユーザーも正しくEVの機能や性能を認識し、使い方についての経験値も高まっていると想像できる。一方、日本におけるEVのシェアは3%前後であり、EVとのカーライフを肌感で認知しているユーザーは圧倒的に少数派だ。 そうした状況だからなのか、日本ではEVに対してさまざまなウワサが流されていると感じる。はたして、それは真実なのだろうか。ここでは、以下に記す6個のウワサについて考察していこう。 1)EVは暑い・寒いと充電ができない? エンジン車とEVにおける最大の違いとなるのは、EVは走るために充電が必要という点だろう。日常的に利用する充電としては、自宅や職場で行う基礎充電(大半が普通充電)と道中で電気を足す経路充電(急速充電を想定)に大別されるだろうが、とくに後者の急速充電については多くの誤解があると感じる。 残念ながら急速充電器と車両の相性という問題もあるし、バッテリーの状態(充電量や温度)によって電気の入り方が異なるという特性もある。そうした特徴を単純に表現すべく、「暑くても、寒くても、期待どおりに充電できない」というウワサが広まっているようだ。 このウワサについては、大筋ではイエスといえる。たしかに、バッテリーがベストの充電性能を発揮するには外気温の影響は無視できない。適温の範囲はモデルによって異なるが、暑すぎても、寒すぎても充電が進みづらい傾向が出てくるのは事実だ。ほかにも連続走行の直後にはバッテリーが熱くなりがちで、高速道路のSAなどで急速充電器につないでも期待通りの充電性能が出ないこともある。 ただし、最近のEVでは水冷などによりバッテリー温度を適温にコントロールする機能が備わっていることが多く、そうした機能を持たない初期のEVで起きたような外気温の影響を受けづらくなっているのも、また事実だ。 2) タイヤの減りがエンジン車より早い EVはタイヤの消耗が早く、数か月で交換するハメになる……というウワサはアメリカのメディアによって広まったと記憶している。たしかに、テスラの上級グレードなどハイパフォーマンスをウリにしているEVで、その加速性能を味わっていれば、タイヤの減りは早い傾向にあるだろう。ただし、エンジン車であっても、ハイパフォーマンスカーで全開加速を楽しみすぎれば同様にタイヤの減りは早くなるわけで、EVに限定した話とするのは疑問もある。 一方、EVは多量のバッテリーを搭載するため、同じ車格であれば重量増になりがちで、そのウエイトがタイヤ消耗を早めているという指摘も目にするところだ。たとえば、日産の軽自動車EV「サクラ」の重量は1070〜1080kgで、タイヤサイズは155/65R14。同じく日産の軽自動車でボディ形状が似ている「デイズ」の重量は840〜880kg(FF)、タイヤサイズは155/65R14と165/55R15が設定されている。車重が25%程度重く、それでいて同等サイズのタイヤを履いているのだからタイヤに対する負担は大きく、消耗が早くなるという指摘は妥当といえる。 もっとも、軽自動車というカテゴリーにおいて全開加速を楽しむようなユーザーは少数派であろう。エンジン車に対してEVのほうがタイヤは消耗しやすい傾向にあるだろうが、数カ月でスリップサインが出てしまう、というウワサは現実味を欠いていると感じる。 3) 急速充電をしまくるとバッテリーは劣化する 現在、市販されているEVの多くはリチウムイオン電池を使っている。EV用に限らずリチウムイオン電池には充電回数によって劣化が進む特性がある。また、同じ充電であっても、急速充電のほうが普通充電よりバッテリーに負担をかけ、劣化を進めてしまうというのも否定できない事実だ。 そのため、経路充電を多用するとバッテリーは傷みがちとなる。古くからのEVオーナーからは、基礎充電をメインで運用すべきというアドバイスを聞くこともあるが、性能維持を考えれば、先人の知恵は素直に聞き入れるべきだろう。

TAG: #カーライフ #所有
TEXT:琴條孝詩
AM放送が聴けない「電気自動車」が数多く存在! FMラジオは搭載されているのになぜ?

AMラジオ非搭載のEVが多数 電気自動車(EV)の普及が進むなか、従来のガソリン車では当たり前に装備されていたAMラジオが、多くのEV、とくに輸入車では搭載されていないという事実をご存じだろうか。FMラジオは問題なく装備されているのに、なぜAMラジオだけが締め出されているのか。本記事では、その技術的な理由と背景について詳しく解説していく。 <EVの電気系統がAM放送の受信を妨げる> AMラジオが搭載されていないEVが多いおもな理由は、EVの電動モーターやインバーターから発生する電磁波との干渉にある。AMラジオは中波(MW)帯の電波を使用しており、周波数が比較的低い。この周波数帯は、EVの電気系統から発生する電磁波とオーバーラップしやすく、結果として深刻なノイズが発生してしまうのである。 一方、FMラジオは超短波(VHF)帯を使用しており、周波数が高いため、EVの電気系統からの干渉を受けにくい。このため、ほとんどのEVにおいてFMラジオは問題なく搭載されている。自動車メーカーにとって、クリアな音質でラジオを楽しめない状況は避けたいところであり、ノイズの多いAMラジオを装備しないという選択をしているわけだ。 <対策技術と今後の課題> EVにおけるAMラジオの受信問題に対して、自動車メーカーや部品メーカーはさまざまな対策を試みている。電磁シールドの強化や、ノイズキャンセリング技術の開発などが進められているが、完全な解決には至っていない。 対策のひとつとして、アンテナの位置や形状の最適化がある。従来のアンテナに代わり、電波障害の少ないアンテナが採用されてきている。が、これらもAM放送の受信に関しては十分な効果を発揮できていない。また、電気系統からの電磁波を遮断するシールド材の開発も進められているが、コストや重量の増加が課題となっている。 このような状況のなか、放送のデジタル化がひとつの解決策として注目されている。日本ではradiko(ラジコ)のようなインターネットラジオサービスが普及しており、多くのEVではスマートフォンとの連携を通じてこれらのサービスを利用できる環境が整っている。このサービスでAMラジオを聴くことができる。 <AMラジオの将来> しかし、AMラジオには災害時の情報源としての重要な役割もある。地震や台風などの緊急時に、停電や通信障害が発生した場合でも、AMラジオは電池さえあれば受信可能だ。そのため、完全なデジタル化への移行には慎重な意見も存在する。アメリカでは、2023年、あらゆる市販車からAMラジオの排除を禁止するべきという法案も提出されているほど。 一部の自動車メーカーは、この問題に対する独自の解決策を模索している。例えば、車載通信システムを利用してAMラジオの番組をストリーミング配信する方式を採用するケースもある。また、電磁波の干渉を最小限に抑える新しい電動システムの開発も進められている。 EVは日進月歩で進化しており、AMラジオの受信問題も将来的には解決される可能性が高い。実際、日本の高速道路ではAMでのハイウェイラジオで交通情報を流しているし、日本メーカーのEVのほとんどはAMラジオを聴くことができる。 しかし、現時点ではAMラジオ受信問題という制約を受け入れざるを得ないEVが数多く存在しているのも事実だ。ラジオ愛好家にとっては残念なニュースかもしれないが、EVの進化とともに、新たな解決策が見出されることを期待したい。

TAG: #AM #ラジオ
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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