ホイールによって航続距離が異なる
日産がついに新型リーフを正式発表してきました。EV性能や装備内容を大幅に進化させたモデルとしてどれほどの競争力を実現しているのか。EV専門メディアとして詳細情報をまとめます。
まず、今回発表された3代目となる新型リーフは、クロスオーバーSUVとして2代目のハッチバックから大きくデザインが変更されました。これらの内外装デザインについてはすでに各メディアで取り上げられているものの、ここではその他メディアではあまり取り上げられていない、新型リーフに採用されている最新テクノロジーや先進装備内容を紹介しながら、国内における値段予測を含めて分析します。
まず初めに、3代目新型リーフと2代目現行型リーフと比較しましょう。3代目では、ネット値で52.9kWhと75.1kWhの2種類のバッテリー容量を搭載。これは2代目の39kWh、59kWhと比較しても増量した格好です。そして、航続距離がもっとも実測値に近い米国EPA基準で最長488kmを達成しました。
ただし、気をつけるべきは、その装着ホイールによって航続距離がかなり変わってくるという点です。とくに北米市場ではスチールとアルミニウムという2種類の18インチホイールをラインアップ。より空力性能の高いスチールは488kmとなる一方、よりデザイン性の高いアルミの場合は463kmに短縮されます。さらに19インチの場合417kmにまで悪化するため、装着タイヤがオプション設定となった場合には注意が必要でしょう。
次に、充電性能について、B7グレードでは最大150kW級の急速充電性能に対応し、B5グレードでも最大105kWに対応。
個人的に期待しているのが充電時間の短さです。というのも、北米市場における公式アナウンス内容は、SOC10%→80%で35分なのですが、アリアの北米市場における充電スピードは、63kWhがSOC20%→80%で35分、87kWhがSOC20%→80%で40分と発表。そして、実測値におけるアリアの充電時間はSOC10%→80%で約33分であることから、新型リーフは30分以内で充電できる可能性が出てくるのです。
このリーフの充電性能は、初代も2代目も乗り継いでいる私をはじめとしたリーフユーザーの多くが苦労した性能です。夏場の熱ダレ問題、さらには冬場の充電制限問題に対応するために水冷式の温調システムを採用しており、まさに2代目とはまったく別物のEVであると捉えるべきでしょう。

※CMF-EVを共用するアリアと同じくバッテリーパック底面に冷却水を這わせるものの、3代目リーフではパック下部の車体アンダーカバーの形状を工夫して断熱性を向上。少ないエネルギーで電池の温調が可能となっており効率性改善に寄与
次に、動力性能について3代目では、モーター、インバーター、減速機を一体化した3 in 1のパワートレインを採用。よって、高出力化と小型化、静粛性を両立することが可能となり、とくにB7の最高出力は160kW、最大トルクも355Nmを発揮。0-100km/h加速も7.6秒を達成します。
ちなみにモーターの種類は二代目で採用されている永久磁石型同期モーター(PMSM)です。アリアの巻線界磁型同期モーター(EESM)と比較しても、小型化および市街地走行における効率性に強みをもっています。その一方で、EESMと比較しても、高速巡行における電費で不利となり、レアアースを採用することによる地政学上のリスクをはらみます。
また、新型モーターではコイルの種類を丸線ではなく平角線を採用。平角線は丸線と比較しても密に巻くことが可能となり、占積率がアップすることで小型化が可能。さらに、表面積が広くなるため、そのぶんだけ放熱性という観点でもプラスに働くことから、より大電流を流しやすい設計です。
さらに、インバーターも両面冷却構造を採用したことで、とくに効率の落ちる高速域での効率を向上させています。
車両サイズについて、全長が4360mm、全幅が1810mm、全高が1550mm、ホイールベースが2690mmというコンパクトSUVとなりました。2代目と比較しても全長が短くなっており、最小回転半径は19インチタイヤを装着したとしても5.3mと、17インチタイヤを装着した2代目の5.4mと比較しても小まわり性能が向上しています。ちなみにアリアも5.4mと小まわり性能が高く、この取りまわしのよさはCMF-EVプラットフォームの強みといえそうです。
また、車両サイズはコンパクトになりながらも、ホイールベースは2690mmを確保。全長に占めるホイールベースの割合は61.7%で、2代目の60.3%と比較しても向上。これもCMF-EVによる最適化の恩恵でしょう。
さらに、後席足元空間もフルフラット化を実現できているため、車内空間は先代比で開放感が増しているはずです。
ちなみに、このCMF-EVの大きな強みとして、フロント足もと空間のウォークスルー方式を実現しているという点が重要です。通常キャビン内に位置する空調ユニットをボンネット下のエンジンルームに押し込むことで実現可能となります。
ところが、問題となるのはクラッシャブルゾーンの確保です。空調ユニットを前に押し出すということは、そのぶんだけクラッシャブルゾーンが狭くなるためにボンネット部分を延長せざるを得ず、全長を短く抑えることはできなくなるのです。
ところがCMF-EVの強みというのは、衝突時に空調ユニットを積極的に圧壊可能な構造としたという点です。これにより空調ユニットをクラッシャブルゾーンと見立てることで、エンジンルームの長さを延長せずに空調ユニットを押し込んだとしても、クラッシャブルゾーンを確保できるようになったのです。これが全長を短縮させながらフロントのウォークスルー方式を両立できた理由なのです。
確かにEVならではのフロントトランクは採用できていませんが、そもそもCMF-EVは車内空間の最大化にファーカスする設計思想なのです。