電機・電子業界での知名度が高い「ホンハイ」
2024年末、「ホンハイ」という名前がメディアに登場する機会が一気に増えた。ホンダと日産の経営統合に関して、あくまでも「噂」としてホンハイの存在が注目されたからだ。
ホンハイとは、台湾の鴻海科技集団のこと。日本では電機・電子業界での知名度が高い一方で、自動車産業界、そしてユーザーにとっては「初めて聞いた会社名」という人が少なくないだろう。
じつはこの会社、総売上高が約32兆円、また時価総額で約24兆円にも及ぶ大企業なのだ。
事業内容は、電子機器受託製造(EMS)で、その世界シェアは46.1%(直近データ:2023年)を誇る。どんな電子機器かといえば、スマートフォン、タブレット、デスクトップコンピューター、サーバー、ゲーム機、モニター、テレビ、自動搬送ロボットなど幅広い。
契約先の企業は、アマゾン、アップル、マイクロソフト、グーグル、ソニー、任天堂など、世界トップメーカーがズラリと並ぶ。
そんなホンハイは、コロナ禍前の2010年代後半、売上が高止まったことを受けて、中期的な成長戦略として「3+3」を打ち出した。産業として、EV、デジタルヘルス、ロボティクスという3分野。また、テクノロジーとして、AI(人工知能)、半導体、新たな通信コミュニケーションという3つだ。
「3+3」のなかでも、EVは単価が高いため、ホンハイとしては重要項目として位置付けている。EVについては徐々に拡大をしている高付加価値型と、今後さらに需要が増えるであろう低価格EV及び商業EVという、大きくふたつの括りがあると市場を分析している。
現在の戦略としては、ホンハイがEV市場を分析して独自にベースモデルを企画する。これを自動車メーカー各社に購入してもらうというもの。製造も当然、ホンハイが行うため、自動車メーカーとしては手間が省ける。
どんなモデルがあるかといえば、「モデルC」は、北米向けのコンパクトSUV。バッテリー容量が58kWhと83kWhがあり、航続距離はそれぞれ500kmと700km。すでに顧客(=自動車メーカー)がついている。
また、コンパクトクラスのクロスオーバー「モデルB」はバッテリー容量が58kWhで航続距離が500km。後輪駆動と四輪駆動がある。イタリアのピニンファリーナによる斬新なデザインが特徴だ。
2026年第2四半期には、オセアニア市場に対応した三菱自動車向けとして契約が成立している。
ホンハイとしては今後、各種モデルで顧客(=自動車メーカー)を増やしたいところだが、果たして思惑通りにことが進むのだろうか? 今後の動向を注視したい。