コラム 記事一覧

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TEXT:石井啓介
ワンオフのパーツに錆発生! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その7】

いよいよ電気系の作業に着手!! 「電気熊猫計画」とは、EVライフをもっと楽しくおいしくする「EVごはん」と、旧車のコンバージョンEVを手がける「アビゲイルモータース」が共同で進める往年のイタリアの名車「フィアット・パンダ(初代)」をEV(電気自動車)にコンバートするプロジェクトです。 今回は、第7回目(第6回目はコチラをご覧ください)として、「Step4:レイアウトに沿って画面上で各種マウント類を設計し、製造する。また、バッテリーレイアウトに従って、バッテリーボックスを設計製造する」中編に入っていきます! 引き続きよろしくお願いいたします。 金属片との格闘はまだ続く! 前回より引き続き、パワーユニットのブラケットやバッテリーを収める各パーツたちの整理を進めていきます。大物は、某ショップさんで溶接をお願いしたので、小物の整理です。 なんと、無加工の鉄板なんで、梅雨の湿気でサビが出てきました! そりゃそうだ。 まずはカップブラシとサンドペーパーでサビ落とし&塗装下地を作ります。カップブラシの研磨跡が、なんかカッコよいので、クリアで塗装してあえて金属感を残してみます。 ヒーターで金属を温めておきながら、クリアでシューっと(その前に脱脂はしてあります)。この夏の猛暑は、塗装の乾きが早い! そんなこんな地味な作業をしていると、溶接の進捗状況が届きました。お~かっこいい。自力で溶接できるようになりたいと、ちょっと思いました。 気づくと今日も夕方ですわ。なかなか地味な仕事が続きますが、どうぞお付き合いくださいませ! 地味作業は続きます! 次回は「Step4:レイアウトに沿って画面上で各種マウント類を設計し製造する。また、バッテリーレイアウトに従って、バッテリーボックスを設計製造する」後編をお送りさせていただきます。引き続きよろしくお願いいたします。 ●充電スポットの美味しいごはん情報をシェアするコミュニティ「EVごはん」が、EVライフを始める人のためのワンストップWEBモール「EVモール」をスタートしました! https://ev-mall.jp/ ●旧い個性的なクルマを日常的に使いたい。そんな願いをカタチに! アビゲイルモータース https://www.abigail-motors.ltd/ ●当プロジェクトへのパーツやシステムのご協賛は随時お待ちしております。ご協賛いただいた際には、当メディアやSNS等でご紹介させていただきます。 info@141marketing.jp

TAG: #コンバート #パンダ
TEXT:御堀直嗣
「急速充電器少なくね? だからEV増えないんだよ」はちょっと違う! EVの基本は普通充電と心得るべし

急速充電が正解とは限らない 電気自動車(EV)への充電の基本は、200V(ボルト)による普通充電だ。自宅や勤め先などで時間をかけて行うこの充電を、基礎充電という。一方、移動途中に行う充電は、経路充電といって50kW~150kWの大電力で短時間に済ませる方法が広く知られている。 そうした公共の充電設備は、現状、3万7000口が整備されており、このうち急速充電器は11万口であることが、日産自動車の新型リーフの発表に際し紹介された。 これにより、社会基盤としての表現方法に差はあるものの、現在のガソリンスタンドの軒数2万7400口を超える充電器が設けられていることになる。ただし、ガソリンスタンドは、店の規模によって給油ポンプの数が複数である場合が多い。 それはそれとして、充電の社会基盤整備とガソリンスタンドの軒数を比べることがここの主題ではなく、経路充電でも、なぜ急速充電器の口数が少なく、普通充電の口数が多いのかという話である。EV利用者にとっては、より短時間で充電を終えられる高性能急速充電器の普及が求められるが、その設置には、高性能であるほど高額の費用を必要とする。 一例として、50kWの充電器が約400万円であるのに対し、2倍の100kWの充電器は1.9倍の750万円ほどする。つまり、性能とほぼ同じだけ充電器の価格が上がっていく傾向にある。同時にまた、それだけの電力を集中して使えるようにするために、設置する施設側では電気契約も必要になる。なので、投資額がかなり上がる。 その投資に対し、EVの台数が増え、利用回数が増えなければ、使用料金の回収が進まず、投資倒れとなって、先々急速充電器を利用できなくなったり、故障などした際に、次期型への更新ができなくなる可能性もある。 利用者は高性能充電器の普及を求めるが、設置側は、採算が見込めなければ高性能急速充電器の設置になかなか踏み切れないことになる。 卵が先か鶏が先かという論議に陥りかねないのが実情だ。

TAG: #充電 #急速充電 #普通充電
TEXT:石橋 寛
テスラキラーとまで言われたがどうなった? ソーラーパネルが注目の「エジソンフューチャー」のいま

太陽光パネルを打ち出したスタートアップEV EVピックアップトラック界隈は、テスラのサイバートラックあたりからヒートアップの一途をたどっているようです。フォードF150ライトニングやハマーEV、シルバラードEVといったメジャーはもちろん、数々のスタートアップ企業までもが参入するレッドオーシャンといっても過言ではないでしょう。とりわけ、ソーラー発電メーカーが出資するエジソンフューチャーはテスラキラーとまで呼ばれた有望株。どんなEVトラックで乗り込んでくるのでしょう。 2021年のカリフォルニアモーターショーは、ご想像のとおりEVのオンパレードで、数々の新型EVが出品され、西海岸の意識高い系ユーザーから大いに歓迎されました。なかでも注目を浴びたのが、エジソンフューチャーというスタートアップ企業が展示した「EF-1T」と呼ばれるピックアップトラックと「EF-1V」というミニバンでした。 聞きなれない社名ですが、2020年に設立されたEVメーカーで、出資元はSPI(ソーラー・パワー・イノベーション)という太陽光発電に携わる新興企業。それゆえ、EF-1両タイプは動力源の一部に太陽光発電を用いるというアイディアを積み込んでいたのです。 カリフォルニアショーの1年後に開かれたCES(コンシューマー・エレクトリック・ショー:電機電子にかかわるテクノロジー展示会で、全米マーケットに大きな影響力を発揮するとされています)では、さらに大きなブースを展開し、太陽光パネルを装備したコンセプトモデルを大々的にアピールしていました。 2022年といえば、テスラのSFめいたサイバートラックが大きな話題になっていたタイミングですから、「テスラキラー現る」と、メディアはもちろん、多くの観客が期待に胸を膨らませたはず。ですが、2025年になってもエジソンフューチャーからはなんの音沙汰もなし。スタートアップにありがちな資金難でストップかと探ってみても、親会社のSPIはそこそこ堅調な様子。無論、プロジェクト中止のアナウンスだって見当たりません。

TAG: #EVピックアップ #ピックアップトラック
TEXT:山本晋也
ただバッテリーとモーターに置き換えただけのモデルと思うなよ! N-ONE:eはN-ONEとはデザインまでまったく違う「一車入魂」の力作だった

似ているようでぜんぜん違うN-ONEとN-ONE e: ホンダ初の軽乗用EV(電気自動車)として9月から発売開始となったN-ONE e:が話題だ。エントリーグレードで269万9400円と、57万4000円のCEV補助金を考慮すると、十分に手の届く価格に抑えながら、一充電走行距離は295kmと軽乗用EVとしては期待以上のロングレンジを実現。次期愛車に身近で手ごろなEVを探しているユーザーにドンピシャの価格と性能となっていることも、注目度を高めている理由だろう。 そんなN-ONE e:は、名前からもわかるようにN-ONEという既存のエンジン車をベースとしたEVである。少しばかり、N-ONEについて振り返ってみよう。 どこか懐かしい、クラシカルなルックスをもつN-ONEの誕生は2012年。ホンダ軽乗用車の原点といえる「N360」のスピリットを引き継ぐ、新しいニッポンのノリモノとして開発された。当初は、全高1600mmを超えるハイトワゴンだったが、マイナーチェンジにより全高1550mm以下となるローダウン仕様を追加したことで、「ハイトワゴンの広さ」と「機械式駐車場に対応するサイズ」を両立するという独自の価値を手に入れた。 そして、2020年のフルモデルチェンジでは多くのファンが驚いた。プラットフォームやパワートレインは最新世代にアップデートしながら、ボディ外観は従来どおりとしたのだ。灯火類やグリルなどの意匠は新しくなっているので、ビッグマイナーチェンジと感じるほどだが、メカニズム的にはれっきとしたフルモデルチェンジであった。それほど、N360の伝統を受け継いだN-ONEのスタイリングは変えがたい価値があるとホンダと、そのファンは認識していた。 しかしながら、N-ONE e:はエンジン車のN-ONEと異なるイメージのルックスとなっている。一見すると、グリルやヘッドライトなどを変えただけと思えるかもしれないが、じつは違う。AピラーからCピラーまで前後ドアのアウターパネルは変わっていないが、N-ONEが10年以上も守ってきたボディシルエットは変わっているのだ。 具体的に見ていこう。 まず目立つのは、グリルとヘッドライトの変更だろう。軽商用EVであるN-VAN e:と共通のEVアーキテクチャーを採用している関係から、N-ONE e:も充電リッドをフロントグリルに配置している。 グリルを独自デザインにすることは必須であり、それに合わせて灯火類やバンパーなども新デザインとなった。それでも「愛着フェイス」を目指したというデザイナーの意思は、Nの伝統を受け継いでいるといえるだろう。

TAG: #国産車 #軽自動車
TEXT:御堀直嗣
EVにレアメタルを使わない電池が普及するとレアメタルのリサイクルの採算が合わなくなる……そんな説の真偽を考える

バッテリーリサイクルの未来はどうなる? 中国を牽引役としたリン酸鉄リチウムイオン電池や、そこから派生したリン酸マンガン鉄リチウム、あるいは、ナトリウムイオン電池などが注目を集めだした。すると、リン酸鉄のリチウムイオン電池が実際に電気自動車(EV)で実用化、拡販されていった。 このことにより、従来からの三元系と呼ばれる、コバルト/ニッケル/マンガンの3元素を正極に用いるリチウムイオン電池に代替する存在になるといわれ、それによって、「三元系で使われる希少金属のリサイクルの採算が合わなくなっていくのではないか?」との論議が浮かび上がってきた 果たしてそうなるだろうか? 一方で、全個体電池への期待も語られている。理由は、三元系リチウムイオン電池の電解質を固体化したものだからだ。全個体電池への期待は、優れた充電容量と、それによって小型化や軽量化されることを通じ、EVの機能や性能が一段高められるのではないか? という希望のもとで語られている。 しかし、すでに実用化の進んだリン酸鉄を電極にもつリチウムイオン電池は別として、リン酸マンガン鉄やナトリウムイオンの活用は、これから量産への道筋が始まろうとしているものであり、なおかつ、単に量産化の計画だけではEVへの適用や、効果は、単純に見通せないと思う。 理由は、当面の供給先として、定置型での活用も視野に入ってくるからだ。それに呼応して、三元系のリチウムイオンバッテリーを定置型として新しく活用することの無意味さも、意識されるようになっていくだろう。 実際、屋根に太陽光発電を設置した住宅に備えるリチウムイオンバッテリーは、電極がリン酸鉄の事例がある。リン酸鉄は、容量の点で三元系に負けるとされているが、定置型であれば寸法の制約はEVほど大きくないのではないか。ナトリウムイオン電池も、セルあたりの電圧はリン酸鉄と同等とされ、EVより先に定置型で普及がはじまることになるだろう。 もちろん、EVにリン酸鉄のリチウムイオンバッテリーを使うことを否定するわけではない。より低価格の車種で、あまり長距離移動をしない車種であれば、リン酸鉄のリチウムイオンバッテリーにより廉価で身近な車種が実現することは望ましい。 一方、より高性能であるとか、より遠くへ移動することに期待のかかる車種には、三元系や全個体電池など、より高性能な仕様が望まれるのではないか。 そのうえで、循環型経済の面において、リン酸鉄など希少金属に依存しないリチウムイオンバッテリーが増えれば、希少金属のリサイクルの採算が取れなくなるのではないかとの警鐘について、どう考えればいいのだろう。

TAG: #バッテリー #リサイクル #レアメタル
TEXT:大内明彦
レアメタルの資源不足を解決する手段! いま注目を集める「ナトリウムイオン電池」とは?

リチウム依存からの脱却が現実味を帯びてきた EV用の充放電可能な2次電池は、現在は世界的にリチウムイオン電池が主流を占めているが、ほかに充放電可能なバッテリーはないのだろうか? というのも、リチウムイオン電池の難点は、なんといってもその原材料にレアメタル(希少金属)を必要とすることにある。もちろん、リチウムもレアメタルだが、それよりも希少な存在となっているのがコバルトだ。 このコバルトの埋蔵量で、世界の約半分を占めているのがコンゴ共和国だ。さらに生産量から見るとその比率は70%近くとなり、需要に対してほぼ一極集中と呼べる状態が形作られている。当然ながら、こうした偏った供給体制は、将来的な資源の安定供給という視点から眺めると、きわめて不安定な状態である。じつは、中国がEV化の促進にあたって積極的な体制をとれるのは、その裏付けとして、膨大な資本の投下によるコンゴでのコバルト精錬権の半分以上を手にしているからだ。 こうした現状に留意すると、リチウムイオン電池以外の2次電池にはほかの選択肢はないのかと考えてしまう。そもそも、リチウムイオン電池が着目された理由は、リチウムイオンがもつエネルギー密度の高さにあったためで、この点でリチウムイオンには劣るものの、リチウムイオンとほぼ同時期に考えられた2次電池があった。 それがナトリウムイオン電池である。正極にナトリウム酸化物、負極に炭素系素材、電解液に有機溶媒を使い、ナトリウムイオンが正極と負極の間を行き交うことで充放電が行われる2次電池だ。この点は、リチウムイオンが正極と負極の間を行き交うことで充放電が行われるリチウムイオン電池とまったく同じである。 ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池とほぼ同じタイミングで研究開発は行われたが、性能的にリチウムイオンにおよばないという判断から、一時開発が見送られた電池である。しかし近年、リチウムイオン電池の資源不足が懸念されはじめるとふたたび着目され、研究開発が本格的に再開されることになった。

TAG: #テクノロジー #バッテリー #新技術
TEXT:高橋 優
フェラーリよりもランボよりもポルシェよりも速い! たった13分で1万台が売れた中華SUV「Zeekr 9X」がヤバすぎる

極限の競争環境下にある大型SUVセグメントの真打ち登場 中国ZeekrがフラグシップSUV「9X」の正式発売をスタートしました。ジーリーのもつすべてのテクノロジーを結集した最強の電動SUVとして、発売開始13分間で1万台を超える受注を獲得しています。 まず、Zeekr 9Xについて、全長5239mm、全幅2029mm、全高1819mmというフルサイズSUVセグメントに該当します。私自身実車を見てきましたが、サイズ以上に大きさを感じました。この理由は、EVらしからぬグリルが強調されたフロントフェイスにあると思います。 また、Zeekr初となるPHEVモデルであり、2リッターエンジンと最大3つのモーターを前後に搭載するトライモーターAWD仕様。さらに最大70kWhという特大級の電池容量を搭載することで、EV航続距離380km(CLTC基準)を実現しています。とくにPHEV専用2リッターエンジンの熱効率は46%を超えており、効率性と動力性能を両立。トライモーターAWDの最高出力は1030kW、0-100km/h加速は3.1秒を実現しており、フェラーリ・プロサングエやランボルギーニ・ウルス、ポルシェ・カイエンターボGTなどを凌ぐ動力性能がアピールされています。 最大70kWhという高電圧バッテリーには900Vシステムが採用され、SOC80%まで9分で充電可能という超急速充電に対応。さらに、48V可変スタビライザーを採用することで、エアサスペンションまわりの応答性を大幅に向上させ、乗り心地と走行安定性を両立しています。 また、最上級グレードHyperには、ジーリーグループ独自開発ADAS「G-Pilot」の最上位、H9を採用。LiDARを5つ搭載しながら、プロセッサーはNvidia Thor-Uをふたつ搭載することで、演算能力は1400TOPSを実現。高速道路上におけるアイズオフを実現するレベル3自動運転を実現可能としました。しかも、2列目キャプテンシートはゼログラビティシートとともに回転機能も採用されており、3列目と向かい合って座ることも可能です。 そして、注目の値段設定について、9XのエントリーグレードMaxが46.59万元(約970万円)と、ジーリーの高級ブランドのフラグシップモデルに相応しい値段設定を実現してきました。 その一方で、このフラグシップSUVには数多の競合EVが存在するという点を忘れてはなりません。とくにベンチマークとなるのは現在でも月間1万台級と大ヒットを続けるファーウェイのAITO M9の存在でしょう。 しかしながら、9Xは電池容量、EV航続距離で競合を大きくリードしており、さらに充電性能も900Vを採用していることから、AITO M9とは比較にならない高性能さを実現。さらに、9X Hyperの燃費性能は7.45L/100kmであり、AITO M9にはわずかに劣るものの、Li Auto L9やDenza N9をリード。 とくにM9やL9と同じデュアルモーター仕様のMaxグレードだと6.78L/100kmと、M9とL9の燃費を大幅にリードしています。

TAG: #SUV #中国車 #輸入車 #高級車
TEXT:御堀直嗣
そういえば日産が全固体電池は追浜で作るって発表したけど……追浜工場閉鎖で夢の電池はどうなる?

全固体電池の生産はどうなる? 日産自動車は、3年前の2022年4月に、全固体電池の試作生産を行う設備を神奈川県の追浜(横須賀市夏島)にある総合研究所内に設置すると発表し、公開した。ところが、今夏、日産は追浜にある生産工場を2年後の2027年に閉鎖するとした。日産は、全固体電池を搭載した電気自動車(EV)を28年に市場投入する計画であり、その行方はどうなるのか。 しかし、あまり心配する必要はなさそうだ。 ひとつは、追浜で閉鎖するのは生産工場であり、総合研究所とテストコースであるグランドライブは残される。なおかつ、新車の組み立てを行う生産工場は閉鎖するが、その土地を手放すかどうかは、さまざまな噂が出ているものの、今のところ未定だ。 次に、全固体電池の試作は総合研究所だが、量産へ向けた製造は、神奈川県内の神奈川区室町にある横浜工場で行われ、そのパイロット生産を行うラインは2024年に公開している。 試作は、できるかできないかの模索と判定であり、量産は、数多く適切な原価で安定して製造できるかという別の技術開発が必要で、総合研究所の手を離れ横浜工場へ移管されるのは、ある意味で当然の道筋だ。ここで具体的な生産技術が構築されていく。 したがって、2028年を目途とした全固体電池の市場投入へ向け、追浜の生産工場閉鎖は無関係ということになる。 横浜工場は、これまで親しみの薄い生産拠点であるかもしれない。しかしながらここは、は1933年(昭和8年)に設立しており、ここで、ダットサン14型と呼ばれる日本初の乗用車生産が行われた歴史ある場所だ。 その後、1965年に座間工場が完成したことにより、横浜工場はサスペンションなど集合体としての部品生産を専門に行うようになった。ほかに、アルミ鋳造などの技術を磨いていく。さらには、R35GT‐Rのエンジン生産や、可変圧縮比エンジンの生産も行うようになった。そして、リーフ、ノート、セレナなどのモーター生産も行っており、電動化の拠点ともいえる存在だ。 そこに、全固体電池の生産が組み込まれていくことになる。 補足として横浜工場には、日産の歴史やエンジン、電動化に関する展示施設があり、これらは見学が可能だ。横浜工場は、日産自動車の伝統と、中核となる技術が集積した工場と見ることができ、全固体電池の完成と、市場投入が待たれるところである。

TAG: #バッテリー #全固体電池 #日産
TEXT:中谷明彦
【試乗】速さはスーパースポーツ並! AWD技術も完成の域! アウディS6スポーツバックe-tronに望むのは「感性に訴えかける走り」のみ

「S」の称号を冠したアウディの新EV アウディが新たに投入したS6スポーツバックe-tronは、同社の電動化戦略の頂点に位置づけられるモデルである。「S」の称号は従来より、アウディが高性能と精密な走りを象徴するために与えてきたもの。その名をBEV(バッテリー電気自動車)が冠することは、単なるEV化ではなく、電動化時代における「スポーツ」の定義を再構築する意図の表れともいえる。 外観はアウディ伝統の美しいプロポーションに、極めて高い空力性能を融合させたものとなっている。空気抵抗係数(Cd値)は0.21という好数値を実現。これは市販車としてトップクラスの数値であり、電費性能の向上や風切音の低減に直結している。 フロントグリルは段差の少ない面構成で整流効果を高め、起伏の少ないサイドラインは滑らかにリヤへと流れる。ハッチバック形状のテールゲートは、ルーフから緩やかに傾斜し、後方の気流分離を最小限に抑えている。 ボディサイズは全長4930mm、全幅1925mm、全高1470mm。ワイド&ローのスタンスが生み出す低重心感は、視覚的にも高性能モデルとしての存在感を強調しているようだ。 S6スポーツバックe-tronの駆動系は、前後に独立したモーターを配するデュアルモーター4WDとして構成されている。前軸に140kW/275Nm、後軸に280kW/580Nmを発生させ、システム総出力は405kW(約550馬力/ロンチコントロール起動時)に達する。0-100km/h加速は3.9秒、最高速度は240km/hと公表され、ガソリンエンジン車のSシリーズに匹敵する動力性能が与えられている。 動力源となるバッテリーは、フロア下に搭載される100kWhの大容量ユニットで、航続距離はWLTCモードで726km。CHAdeMO方式による135kW急速充電に対応し、一般家庭での200V充電環境でも満充電にでき、十分な実用性を備える。 発進からの加速は極めて滑らかで、モーター駆動特有の即応性と静粛性が際立つ。トルクの立ち上がりにタイムラグがなく、どの速度域からでも力強い加速を示す。 一方で、走行フィールには明確な特徴がある。高出力モーターと重量級バッテリーを支えるため、サスペンションは全体的に硬質な設定となっている。路面の段差を明確に伝える傾向があり、スポーツモデルとしての車両姿勢安定性を優先したチューニングとしているのだ。

TAG: #スポーツバック #輸入車
TEXT:小鮒康一
中古EVの「バッテリーだけ」がヤフオクに出てる! 一体何に使う?

中古バッテリーは再資源化の可能性を秘めている 世界初の5人乗り量産電気自動車として、2010年12月に販売を開始した日産リーフ。現在は2017年に登場した2代目が販売中で、2025年度中にはクロスオーバーSUVタイプに一新された3代目モデルが登場するとアナウンスされている。 そんな電気自動車のパイオニアであるリーフも、初代が登場してからまもなく15年を経過し、クルマとしての役割を終えて解体される個体も珍しくなくなってきた。そういったこともあってか、ネットオークションなどでは、中古のリーフのバッテリーやモジュールが販売されているのだが、どんな使い道があるだろうか? そもそも電気自動車のバッテリーはレアメタルを含む原材料が多く含まれているため、現在は焼却することなくレアメタルを回収する方法なども開発されており、状態の悪いものなどはリサイクルされるようになっている。 また、状態のいいモジュールは、ほかのバッテリーの状態のいいモジュールと組み合わせて再製品化をし、中古の駆動用バッテリーとして再利用されるケースも珍しくない。 メーカーである日産も、状態のいいモジュールを用いた交換用再生バッテリーをリリースしたり、「ポータブルバッテリー from LEAF」として蓄電池として再利用したものを販売したりと、資源の有効活用を行っているのだ。 そのため、ネットオークションなどに出品されているリーフのバッテリーも、基本的には業者向けのものといえるのだが、なかには自作の蓄電池に改良して使用しているツワモノも存在している。 とはいえ中古のリーフのバッテリーを蓄電池として運用するには、電気の知識や作業経験が必要なのは当然で、作業によっては電気工事士の資格が必要となるものもあるので、万人にオススメできるものではない。 なかにはすでに蓄電池として使えるように改造したものを販売しているユーザーもいるが、こちらも個人の出品物となり、保証などはないと考えられるので、コスパとリスクを天秤にかけて考える必要があるだろう。 ただ、中古のリーフのバッテリーはジャンク品のようなものであれば複数のモジュールをまとめて数千円という安価で販売されているものも多く、知識と技術と経験、そして資格をもっている人であれば宝の山といえるのかもしれない。

TAG: #サステナビリティ #バッテリー #中古EV
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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