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TEXT:高橋 優
日産の第一四半期の営業利益は前年同月比でなんと99%減少……って大丈夫か? 円安解消も含めてアメリカ&中国市場で苦戦を強いられている!!

中国では17%もの減産が確認されている 日産が2024年度最初の決算発表を行い、営業利益が前年比99%マイナス、2024年度の販売台数見通しも下方修正するという衝撃的な決算内容が判明した。日産が今後に直面する厳しい見通しを解説します。 まず、今回取り上げたいのが2024年4月から6月における日産の決算内容です。グローバル全体の販売台数は78万6637台と、前年同期比でマイナス0.2%とほぼ横ばいです。マーケット別の内訳を確認すると、日本は8%のマイナス成長。日産の最大マーケットである北米も1.7%のマイナス成長。他方で、中国は3.3%の増加を実現しています。 ただし、懸念するべきは生産台数という観点です。グローバル全体では、前年同期比で7.5%もの生産台数減少であり、とくに中国は17%もの減産が確認されています。 中国国内の日産の生産能力は、これまで160万台程度を有していましたが、キャッシュカイを生産していた年産12万台級の生産工場を閉鎖するなどの対応に迫られていました。 ところが、直近の四半期の生産台数が16.9万台ということは、現在の日産の中国国内の生産台数は年産70万台ペース。2023年の80万台ペースと比較してもさらなる減少です。つまり、そのぶんだけさらに生産能力の余剰が深刻化してしまっているはずであり、工場の稼働率の低下は、自動車メーカーにとっての収益性の悪化に直結することから、おそらく、2024年度までに中国国内の車両生産能力のさらなる調整は避けられない情勢です。 次に注目するべきは、収益性をはじめとする財務実績という観点です。まず、売上高は2兆9984億円と、前年同期比で横ばいだったものの、営業利益は10億円と、前年同期比で99%マイナスという、まさに利益が消し飛んだ格好です。日産が3カ月間、世界全体で懸命に営業活動を行った結果、10億円しか稼ぐことができなかったとイメージしてみると、その日産の稼ぐ力が急速に衰えてしまっていることが見て取れるでしょう。 その一方で、2024年7月から2025年3月までという2024年度全体の見通しについて、最終的な営業利益は5000億円を予定しているという点も重要です。つまり、2024年度第二四半期以降は、むしろ急速に収益性を改善させる予定であるということを意味します。 しかし、懸念するべきは、想定為替レートです。2024年度を通しでのドル円の為替レートは155円を想定しているものの、現在急速に円高が進行中。よって、日産の想定している為替レートが円高方向へ修正される可能性が出てきており、主力マーケットが北米であることからも、2024年度通しでの収益性の見通しも下方修正の可能性が出てきているわけです。

TAG: #2024年度 #営業利益
TEXT:高橋 優
全世界のBEVシェア率は約14%……の一方で日本は2%以下! BEVが難しい日本市場の現状を探った

EVシフト減速の流れが一過性のものではなくなっている 日本国内における7月の電気自動車の販売動向が速報。EV販売台数、EVシェア率ともに前年比マイナス成長という、日本国内のEVシフト停滞模様について解説します。 今回取り上げていきたいのが、日本国内における最直近のEV普及動向です。まず、このグラフは、2018年以降のバッテリーEVとプラグインハイブリッド車の合計販売台数を月間ベースで示したものです。最直近の2024年7月の販売台数は8741台と、6月よりも多くの販売台数を実現したものの、前年同月は1.1万台以上であり、マイナス22%と大幅なEV減速の兆候が見てとれます。とくに2023年12月以降、8カ月連続で前年同月比でマイナス成長という、EVシフト減速の流れが一過性のものではなくなっている状況です。 次に、新車販売全体に占めるバッテリーEVとPHEVの販売台数の合計の比率を示したグラフを見てみると、直近の7月は2.58%と、前年同月の3.49%と比較しても明確にシェア率が低下している状況です。さらに、2022年7月も3.54%であったことから、じつは2年前のEVシェア率よりも悪化してしまっているわけです。 次に、バッテリーEVの販売動向を詳細に確認していきたいと思います。まず初めに普通車セグメントと軽自動車セグメントそれぞれのバッテリーEVの販売台数の変遷を見てみると、直近の7月は5058台と、前年同月比で19.7%ものマイナス成長。さらに2022年7月と比較しても16.3%ものマイナス成長です。 さらに、普通車セグメントを、日本メーカーと輸入車メーカーそれぞれにわけて示したものを見てみると、白で示されている輸入EVは、前年同月比で27.8%ものプラス成長を実現した一方、ピンクで示されている日本メーカーの、普通車セグメントのバッテリーEV販売台数は1021台と、前年同月比でマイナス24.8%という落ち込み具合を記録しています。このことからも、現在の日本国内のEVシフト後退のもっとも大きな要因は、日本メーカーの、とくに普通車セグメントの需要が大きく低下しているからであるといえます。 また、現在の日本のバッテリーEVの販売シェア率が、世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認してみると、6月の世界全体のシェア率は14%に到達。さらに、7月の中国市場は、歴史上最高水準の28%オーバー。四台に一台以上がバッテリーEV販売で占められています。いまだにバッテリーEVが60台に1台以下という日本とは、まるで違う世界線にいる様子が見て取れるでしょう。 それでは、この日本国内においてどのようなEVが人気であるのかを確認していきましょう。 まず初めに、2024年の主要自動車メーカー別のバッテリーEVの販売台数の変遷を見てみると、やはり日産の販売台数が圧倒的な存在感を見せています。また、その日産を除いた販売台数の変遷を見てみると、テスラが販売台数でリード。その次は軽EV2車種をラインアップする三菱。そして、中国BYDがトヨタ超えを実現してきている状況です。 とくにテスラについて、月間販売台数の変遷を見てみると、7月はおよそ317台を達成しました。 ちなみに、テスラ独自の急速充電ネットワークであるスーパーチャージャーは、7月末現時点で累計122箇所、604基を建設しました(実際に稼働中なのは120箇所)。

TAG: #EV #販売台数
TEXT:高橋 優
カタログスペック以上の電費性能! 充電能力もバッチリ! メルセデス・ベンツEQEを実走テストした!!

リアルワールドにおけるEV性能をチェック メルセデス・ベンツのビジネスサルーンであるEQE 350+で恒例の航続距離テストと充電性能テストを行いました。メルセデスの最新EVがどれほどの性能を実現することができたのか。リアルワールドにおける航続距離や充電スピードを詳細リポートします。 *航続距離テスト まず、航続距離テストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速100kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・充電残量100%までサービスエリア下り線で充電したあと、途中のインターで折り返して、同じサービスエリア上り線まで戻ってくる。充電残量は10%程度まで減らし切る ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQE 350+・19インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離よりも1.18%短く表示) 結果:蓮田SA下り→白石IC→蓮田SA上り ・走行距離:558.7km ・消費電力量:100%→9% ・平均電費:6.7km/kWh(149Wh/km) ・外気温:25〜30℃ よって、航続距離テストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、621kmを走破可能であることが確認できました。 *ハイスピードテスト 次に、ハイスピードテストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速120kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQE 350+・19インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離よりも1.18%短く表示) 結果:蓮田SA下り→佐野藤岡IC→蓮田SA上り ・走行距離:75.9km ・消費電力量:86%→71% ・平均電費:5.7km/kWh(175Wh/km) ・外気温:27.5〜28.5℃ よって、ハイスピードテストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、512kmを走破可能であることが確認できました。

TAG: #EQE #充電 #長距離
TEXT:高橋 優
恒例の1000kmチャレンジで明らかになった充電性能! 長距離走行が多いひとにはメルセデス・ベンツEQEはアリなEVだった

メルセデスのビジネスサルーン「EQE」の性能をチェック メルセデスのビジネスサルーンであるEQE 350+で恒例の1000kmチャレンジを行いました。メルセデスの最新EVがどれほどの性能を実現することができたのか。途中の電費や充電の様子を詳細リポートします。 まず、1000kmチャレンジの前提条件は以下のとおりです。 *走行ルート 海老名SA下り(神奈川県) ↓ 加古川北IC(兵庫県) ↓ 海老名SA上り(神奈川県) *走行条件 ・途中充電のための停車以外はノンストップで海老名SA上りを目指す ・車内の空調システムはつねにONにして快適な状態をキープ ・追い越しなど含めて、制限速度+10%までは許容 ・渋滞や充電エラー、充電渋滞など、車両の問題以外についてはトータルのタイムから除外 ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEQE 350+・19インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離よりも1.18%短く表示されているため、オドメーター上で988kmの段階でゴール) 1)海老名SA下り→湾岸長島PA(150kW級急速充電器) ・走行距離:299.6km ・消費電力量:100%→47% ・平均電費:6.3km/kWh(159Wh/km) ・外気温:32.5℃〜29℃ ・充電セッション:47%→78%(19分) まず注目していただきたいのが、EQEの充電残量の予測です。海老名SA出発時では、湾岸長島PA到着時にSOC63%と予測されていたものの、実際の湾岸長島PA到着時にはSOC47%。 というのも、 ・制限速度を最大でも10%ほどプラス走行を許容 ・120km/h制限の区間が大部分を占めているという点 この2点を含めると、充電残量予測との乖離が発生してしまうわけです。他方で、新東名を使用すれば、120km/h制限区間はもともと決まっていることから、もう少し残量予測の正確性は改良して欲しいところです。 とはいえ、制限車速120km/hをフルで走って、300km走行してもなお、SOCが50%弱残っているということは、まず関西へは無充電で走破可能となります。さすがはドイツ車、高速域での電費性能が優れている様子が見て取れます。 2)湾岸長島PA下り→加古川北IC(折り返し)→湾岸長島PA上り(150kW級急速充電器) ・走行距離:411km ・消費電力量:78%→5% ・平均電費:6.2km/kWh(161Wh/km) ・外気温:29℃〜27℃ ・充電セッション:5%→23%(14分) すでに折り返し地点を超えました。1000kmチャレンジの最長区間での平均電費は161Wh/kmと、2360kgの中大型セダンと考えると、想定よりもはるかに電費がいいと感じます。411kmを充電残量73%で走り切ってしまうEQE、やはりアウトバーン育ちは伊達じゃないです。 他方で、充電セッションで問題が発生しました。充電開始4分程度で充電が突如停止。その後、充電を再開させると、なぜか充電出力が85kW程度と、もともと出ていた115kW程度という出力から低下。よって次の150kW級急速充電器がある浜松SAに到着するギリギリで充電を打ち切り、浜松でフル充電を試みることにしました。 3)湾岸長島PA→浜松SA(150kW級急速充電器) ・走行距離:109km ・消費電力量:23%→3% ・平均電費:6.1km/kWh(164Wh/km) ・外気温:27.5℃〜28.5℃ ・充電セッション:3%→31%(16分) 最後の充電スポット予定は浜松SA上りです。150kW級急速充電器を使用して海老名SAまでの充電を入れ切るつもりでした。ところが、途中でEQCが隣で充電をスタート。このABB製の150kW級急速充電器は二台同時充電が可能なものの、二台同時充電の場合、最大電流値が200Aに制限されます。つまり、EQEの場合、最大でも70kW程度しか発揮できなくなります。よって、充電セッションを切り上げて、最後の150kW級急速充電器が存在する駿河湾沼津SAまで向かうことにしました。

TAG: #EQE #充電 #長距離
TEXT:高橋 優
中国のシャオミがEVハイパーカー市場に参戦! 0-100km/h加速2秒切りの怪物スペック!!

「SU7」のハイパフォーマンスグレードが登場 中国シャオミが、すでに発売中のSU7のハイパフォーマンスグレードとして、0-100km/h加速1.97秒、最高速度350km/h以上、最高出力1500馬力以上というハイパーカー級のスペックの「Urtla」を発表。そのシャオミに関する最新情報を一挙にアップデートします。 まず、シャオミについては2024年4月3日にも初のEVであるSU7の正式納車をスタートしました。 このグラフは、4月頭から納車をスタートしているSU7の月間販売台数の変遷を示したものです。4月から7058台、8656台、そして6月単体では14296台と、大幅に販売台数を伸ばすことに成功。このことからも、初期の生産地獄などには一切直面せず、予定どおり生産体制を拡張することができているということになりそうです。 また、SU7の販売台数が競合のEVセダンと比較してどれほどを実現できているのかを確認してみると、現在のプレミアムEVセダンセグメントは、これまでの王者であったテスラ・モデル3を筆頭に、Zeekr 001、そしてシャオミSU7の3車種が、月間1万台オーバーという人気車種として君臨。そして白で示されたSU7は、すでにZeekr 001と同等規模の販売ペースに到達。 さらに、このグラフは四半期ベースにおける販売台数の変遷を示したものです。直近の2024年Q2は、これまで王者に君臨してきたモデル3を上まわり、Zeekr 001が新たにトップに君臨。もちろん今回のSU7も、初四半期であるにもかかわらず、すでに3万台の販売台数に到達しており、このQ3以降、モデル3の販売台数を上まわるのではないかと期待されています。 実際にシャオミは、その生産能力の増強にコミットしており、当初の目標でもあったSU7の2024年納車台数10万台という目標値を12万台に引き上げながら、当初の納車台数10万台という目標を11月中に達成するという目標の前倒しを行っています。 そして、そのような背景において、SU7のハイパフォーマンスグレードとしてUltraグレードの正式発表を行なってきました。というのも、現在SU7は73.6kWhバッテリーを搭載する、素の標準RWDグレードとともに、94.3kWhのShenxingバッテリーを搭載するProグレード、そして101kWhのQilinバッテリーを搭載するAWDグレードのMaxグレードという3グレード展開であるものの、シャオミのスマートフォンのグレード展開から見ても、さらなるフラグシップグレードとして、Ultraグレードをあとで追加設定してくるのではないかといわれていたわけです。 そして今回、発表されたのが、そのUltraプロトタイプの存在。SU7をベースにしながら、サーキット走行に特化する形でさまざまな改良を行い、まずドイツのニュルでのサーキット走行において、10月中にもタイムトライアルを実施予定です。そして2025年中にも、このUltraプロトタイプをベースにして、量産車両の正式発売もスタート予定です。

TAG: #SU7 #シャオミ
TEXT:高橋 優
日本仕様はデチューンされている可能性も! ボルボEX30の航続距離&急速充電性能を実走テストで明らかにした!!

リアルワールドでEX30の性能をチェック ボルボのエントリーEVであるEX30 RWD Ultraで恒例の航続距離テストと充電性能テストを行いました。ボルボの最新EVがどれほどのEV性能を実現することができたのか。リアルワールドにおける航続距離や充電スピードを詳細リポートします。 航続距離テスト まず、航続距離テストの前提条件は以下の通りです。 ・GPSスピードの平均車速が時速100kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・充電残量100%までサービスエリア下り線で充電した後、途中のインターで折り返して、同じサービスエリア上り線まで戻ってくる。充電残量は10%程度まで減らし切る ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEX30・19インチ純正タイヤ装着の場合はズレがほとんどなかったので補正なし) 結果:蓮田SA下り→白河IC→蓮田SA上り ・走行距離:304.9km ・消費電力量:95%→12% ・平均電費:5.65km/kWh(177Wh/km) ・外気温:18〜23℃ よって、航続距離テストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、367kmを走破可能であることが確認できました。 ハイスピードテスト 次に、ハイスピードテストの前提条件は以下の通りです。 ・GPSスピードの平均車速が時速120kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEX30・19インチ純正タイヤ装着の場合はズレがほとんどなかったので補正なし) 結果:蓮田SA下り→佐野藤岡IC→蓮田SA上り ・走行距離:76.6km ・消費電力量:81%→53% ・平均電費:4.13km/kWh(242Wh/km) ・外気温:17〜18℃ よって、ハイスピードテストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、274kmを走破可能であることが確認できました。

TAG: #EX30 #充電
TEXT:高橋 優
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能

ボルボEX30のEV性能を試す ボルボのエントリーEVであるEX30 RWD Ultraで恒例の1000kmチャレンジを行いました。ボルボの最新EVがどれほどのEV性能を実現することができたのか。途中の電費や充電の様子を詳細リポートします。 まず、1000kmチャレンジの前提条件は以下のとおりです。 *走行ルート 海老名SA下り(神奈川県) ↓ 加古川北IC(兵庫県) ↓ 海老名SA上り(神奈川県) *走行条件 ・途中充電のための停車以外はノンストップで海老名SA上りを目指す ・車内の空調システムはつねにONにして快適な状態をキープ ・追い越しなど含めて制限速度+10%までは許容 ・渋滞や充電エラー、充電渋滞など、車両の問題以外についてはトータルのタイムから除外 ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のEX30・19インチタイヤ装着の場合はズレがほとんどなかったので補正なし) 1) 海老名SA下り→浜松SA(150kW級急速充電器) ・走行距離:191.6km ・消費電力量:87%→29% ・平均電費:5.26km/kWh(190Wh/km) ・外気温:20〜19℃ まず、検証の前提として、通常は海老名SA下りにて100%まで充電してから出発するのですが、EX30の場合、高電圧バッテリーの電圧が450Vをオーバーするため、チャデモ急速充電器で満充電状態まで充電することができません。よって87%での出発となっています。 まず注目していただきたいのが、EX30の充電残量の予測です。海老名SA出発時では、浜松SA到着時にSOC36%と予測されていたものの、実際の浜松SA到着時にはSOC29%。確かに予測よりも充電残量が7%少ない状態で到着したものの ・制限速度を最大でも10%ほどプラス走行を許容 ・120km/h制限の区間が大半の区間であるという点 この2点を含めると、かなり正確な充電残量予測であると言えるでしょう。 ところが問題は、浜松SAに設置されている150kW級急速充電器を使用したにもかかわらず、90kW級と同じ充電出力しか発揮できなかった点です。海外仕様では最大150kW級の充電出力に対応していることから、なぜ期待どおりの充電性能を発揮できなかったのか? 1000kmチャレンジの間に、できる限り多くの充電セッションを試みたいと思います。 2)浜松SA→草津PA(90kW級急速充電器) ・走行距離:194.1km ・消費電力量:68%→13% ・平均電費:5.65km/kWh(177Wh/km) ・外気温:19〜15℃ 2回目の充電スポットは草津PAです。これまでは2台同時充電が可能な90kW級急速充電器が1台設置されているだけでしたが、2024年度からはeMPの青いマルチが追加され、なんと8台同時充電が可能となりました。 今回使用したのは新型のeMP製ではなく、既設の新電元製。理由はブーストモードです。というのもeMP製の青いマルチの場合、充電時間が15分を経過すると、90kW級から50kW級へと充電出力を絞ってしまいます。ところが新電元製の場合、90kW級の充電出力を30分間持続することが可能なのです。 よって、同じ90kW級の急速充電器を使用しても、同じ充電時間で得られる電力量が異なるわけです。もちろん同じ充電料金を支払うのであれば、より多くの充電量を回復可能な新電元製を選びたいところでしょう。

TAG: #EX30 #充電 #長距離テスト
TEXT:高橋 優
アメリカでもEVは失速気味……トランプ氏が大統領になるとテスラですら安泰ではなくなる可能性アリ!

ヒョンデとキアがシェアを伸ばしている アメリカ国内の、2024年第二四半期のEV普及動向が判明しました。これによると、EV普及スピードは停滞中であり、テスラ全体の販売台数も縮小しています。そしてトランプ前大統領が銃撃されたことで、トランプ政権が復活し、EVシフトがさらに混乱する可能性について解説します。 まず、このアメリカ市場における、直近の2024年6月度のバッテリーEVの販売台数は、およそ9.6万台以上と、前年同月比でまったく販売台数を伸ばすことができていない状況です。 そして、新車販売全体に占めるバッテリーEVの販売シェア率も7.3%と、2023年末に記録した8.34%というEVシェア率から低下。前年同月の7.36%と比較して、まったくEVシェア率が成長していない様子を確認できます。 また、このアメリカ市場におけるEV普及率が、その他の主要マーケットと比較してどれほど達成しているのかを比較してみると、中国や欧州などがEVシフトを引っ張る形で、世界全体のバッテリーEVの普及率は、2024年5月の段階で13%を実現。その一方、アメリカ市場は7.31%と、グローバル平均と比較して半分程度の普及率であることが見て取れます。 それでは、最新の2024年上半期において、アメリカ国内でどのようなEVが人気であるのかを分析していきたいと思います。 まず初めに、自動車ブランド別の販売台数について、2024年Q2と2023年Q2の販売台数を比較したグラフを見てみると、圧倒的トップを実現したのがテスラです。2024年Q2だけで16万台以上を販売し、アメリカ国内で販売されたバッテリーEVの総数のうち49.7%のシェアを確保。お膝元のアメリカ国内で、テスラの盤石さが光る格好となりました。 他方で、現在テスラについて指摘されているのが、じつは前年同四半期比で6.3%ものマイナス成長であるという点です。第一四半期も、前年同四半期比13.3%ものマイナス成長であり、この2024年前半戦は、9.6%ものマイナス成長でフィニッシュ。したがって、盤石であるように見せていたアメリカ国内のテスラは、じつは販売台数を落としているという状況なわけです。 その一方で、大きくシェアを伸ばしたのがヒョンデとキアという韓国勢の存在です。2024年上半期において、ヒョンデは34%もの販売増加を記録しながら、キアは倍以上の成長すら実現しています。ヒョンデグループ全体で、アメリカのバッテリーEV販売全体の10.5%ものシェアを獲得しており、かなり健闘している様子が見て取れます。 なかでもキアは、大型SUVのEV9が大きく販売台数を伸ばしています。さらに、ようやくアメリカ国内での生産をスタートしたことで、連邦政府からの日本円で100万円級の税額控除を適用可能となり、よりコスト競争力が増していくことにも期待可能です。 次にこのグラフは、第二四半期で人気のバッテリーEVの車種別ランキングトップ30を示したものです。トップはモデルY、次にモデル3、さらに第5位にはサイバートラックと、やはりテスラが圧倒的な支配力を有する一方、問題はモデルY、3の両車種ともに、販売台数が低下しているという点です。 なかでもモデル3は前年同四半期比で26.2%ものマイナス成長です。やはりモデル3に対する需要が、ハイランドへのモデルチェンジを経たとしても低下しているという点、またエントリーグレードであるRWDグレードが、7500ドルの税額控除の適用対象外であるという2点が、販売台数減少に影響したと推測可能でしょう。 他方で、販売台数を伸ばしているのが、フォード・マスタングマックE、ヒョンデIONIQ 5、トヨタbZ4X、キャデラック・リリック、キアEV6、シボレー・ブレイザーEVなどという、モデルYの競合となるミッドサイズSUVのEVたちです。なかでも、発売してすでに3年以上が経過しているマスタング・マックE、2年半が経過しているIONIQ 5については、いまだに販売台数が伸びています。 とはいうものの、やはり四半期で2万台を超えるような販売台数を実現する人気EVは、テスラ以外でいまだに存在しないのも現実であり、アメリカのEVシフトが停滞を脱するためには、テスラ以外の、人気のEVが続々と誕生する必要があるでしょう。

TAG: #アメリカ #トランプ大統領 #販売台数
TEXT:高橋 優
電動化の失速どころかEV&PHEVがバカ売れ! テスラもドイツ御三家も押し出す中国メーカーの勢い

2024年6月の新エネルギー車の販売台数は85.6万台 中国市場における最直近の6月のEV販売動向の詳細が判明。中国の歴史上最高の電動化率を更新するという快挙を達成しました。 まず、中国市場におけるバッテリーEVとPHEVの合計を示した新エネルギー車の販売台数は85.6万台と、前年同月の66.5万台と比較しても29%もの販売増加を記録しました。そして、新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率は48.44%と、歴史上最高の電動化率を更新してきた格好です。2024年に突入して以降、新エネルギー車への需要が増大、そのペースがまったく衰えず、むしろ加速している様子すら見て取れます。 他方で、新エネルギー車のなかでもバッテリーEVとPHEVの販売割合という観点も注目です。 2021年6月時点での新エネルギー車全体に占めるバッテリーEVのシェア率は81.22%と、バッテリーEVが圧倒的なシェア率を示していたものの、直近の2024年6月単体では57.59%と、PHEVのシェア率が急速に増加している様子が見て取れます。よって、現在の中国国内で売れている新エネルギー車の販売割合は、バッテリーEVが6割、PHEVが4割というイメージとなります。 そして、バッテリーEVに絞った販売シェア率の変遷にも注目すると、6月単体のシェア率は27.9%を達成。四半期ベースでのシェア率も、Q2は27.81%と、過去四半期と比較しても圧倒的な伸びを実現しました。いずれにしても、確かにPHEVの販売シェア率が急増しているものの、同じくバッテリーEVも史上最高のシェア率を更新中であり、EVシフト減速とは無縁の世界線である様子が見て取れるでしょう。 次に、中国国内でどのような電気自動車が人気であったのかについて、車種別販売動向を確認しましょう。 初めに、6月に限った、内燃機関車も含めたすべての販売ランキングトップ30を確認しましょう。ピンクが新エネルギー車、緑が内燃機関車を示しています。トップに君臨したのがテスラ・モデルYです。その後にBYDの大衆セダンQin Plus、BYDシーガル、BYD Song Plus、そして日産シルフィと続いていきますが、トップ10のうち、なんと内燃機関車はシルフィを筆頭として、たったの3車種しかランクインすることができていません。トップ20に広げてみてもたったの6車種です。 つまり、すでに人気車種の圧倒的マジョリティが新エネルギー車で占められてしまっているということを意味します。 次にこのグラフは、新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30を示したものです。緑がバッテリーEV、水色がPHEVを示しています。BYDが14車種を席巻しながら、トップ20に限ると9車種、トップ10に限ると7車種と、BYDの王者の貫禄が見て取れます。 他方で、今回注目するべきは、第12位にランクインしたAito M7、および第14位にランクインしたAito M9の存在です。このAitoはファーウェイが支配権を有する自動車ブランドであり、着実にファーウェイが中国EV市場でプレゼンスを高めている様子が見て取れます。 そして、第11位、および第30位にそれぞれランクインしたBYDのQin L、Seal 06も見逃せません。5月末から正式発売がスタートしている第五世代のPHEVシステムを搭載した両車種は、瞬く間に販売台数を伸ばして、すでに中国の人気車種の一角を構成しています。

TAG: #中国 #販売台数
TEXT:高橋 優
日本での走行テストを確認! 中国BYDの新たな刺客「Sea Lion 07」の驚異の性能

中国では2024年5月に発売 中国BYDの最新EV、Sea Lion 07が、日本国内でテスト走行する様子が目撃されました。2025年に投入されるのは、BYDの最新電動SUVである可能性が濃厚となったという最新動向について、日本国内で競合車種となり得る、テスラ・モデルYや日産アリアと比較して、どれほどの性能を実現しているのかを解説します。 今回取り上げていきたいのが、BYDが中国本国で正式発売をスタートさせた新型EV、Sea Lion 07です。2024年5月10日に中国本国で発売がスタートし、5月下旬から納車がスタートした、BYDの超最新モデルとなります。 その最新モデルが、すでに日本でもテスト走行を行っているということは、Sea Lion 07がかなり早いタイミングで、日本国内に導入されることを示唆しているわけです。BYDジャパンは、2025年以降も、毎年1車種ずつEVを投入すると表明していることから、おそらく、2025年シーズンに投入される新型EVというのは、このSea Lion 07の可能性が濃厚となったわけです。 それでは、2025年の早いタイミングで発売されるであろう、このBYDの最新EV、Sea Lion 07について、その注目すべきEV性能を一挙に確認しましょう。 はじめに、このSea Lion 07は、全長4830mm、全幅1925 mm、全高1620 mm、ホイールベースが2930 mmというサイズ感です。 そして、BYDの最新テクノロジーとして、これまでドルフィンやシールに採用されているe-platform3.0から、さらに改良を加えたe-platform3.0 Evoを初採用しました。これまでは8-1方式の一体型パワートレインを採用していたものの、Sea Lion 07では12-1方式のパワートレインを採用。さらに統合を進めてきた格好です。 しかも、搭載モーターの最高回転数は毎分2.3万回という、量産モーター史上、最高回転数を実現。また、より高効率な炭化ケイ素を採用するインバーターも搭載。そして、インテリジェント自己加熱モジュールと名付けられた、冬場における充電速度を早める機能を採用。よって低温状態におけるバッテリー温度の昇温スピードが230%アップし、充電速度が40%向上します。 また、充電性能の向上という点で、充電残量80%以降の充電速度を大幅に向上させ、充電残量80%から満充電状態まで18分間で充電を完了できます。低温状態時の充電スピード向上とともに、EVにおける充電性能を、さまざまな観点で向上させています。 それでは、この最新EVプラットフォームを採用したSea Lion 07が、日本で発売中のミッドサイズSUVであるテスラ・モデルY、日産アリア、ヒョンデIONIQ5、トヨタbZ4Xと比較して、どれほどの性能を実現できているのかについて、EV性能と標準装備内容の両面から考察していきたいと思います。

TAG: #Sea Lion 07 #テスト走行
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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