コラム 記事一覧

コラム コラム
TEXT:大内明彦
EVのバッテリーに高電圧化の流れ! そんなクルマの中身の話……と思ったらユーザーにもメリットのある話だった

EVはなぜ高電圧なのか 日常的に使う言葉のなかに「電力」という単語がある。では、その意味は? 答えは読んで字のごとし、電気の力だ。電気の力とは、電気が行う仕事量のことで、この電力を電気的な表記に置き換えると「W(ワット)」となる。 この電力(W)は、電流「A(アンペア)」と電圧「V(ボルト)」の数値によって決まってくる。つまり、W(電力)=A(電流)×V(電圧)ということになる。電気によって得られる仕事量は、電圧、電流が高くなるほど大きくなるということだ。 さて、それでは視点をEVに移してみよう。 EVは、搭載するバッテリーからモーターに電気を供給することで走ることができる。そして、その動力性能(モーターの仕事量=電力)は、電圧と電流によって決まってくる。電圧が高くなるほど、電流が大きくなるほど、その仕事量は増える(性能が上がる)ことになる。逆のいい方をすれば、EVの動力性能を引き上げようとするなら、より高い電圧、より大きな電流の電気をモーターに伝えればよいわけで、このバッテリー電圧、電流がEVの基本性能を決める土台となっている。 次に、現在使われるEVのバッテリーだが、そのほとんどがリチウムイオンタイプが採用されている。では、動力用リチウムイオン電池はどういった構造になっているのか。基本的には、細かなセル(個体)の集合体として作られている。ひとつの例だが、3.7ボルトの電圧をもつセルを96個直列に接続。これで355.2ボルトの電圧が得られ、電流量を確保するため2個並列に接続。セル数の合計は192個となり、この仕様でEVの動力用バッテリーが形成されている。 実際には、現状EV用として使われているバッテリーは400ボルト仕様(バスやトラックは600ボルト仕様)が中心なのだが、これを一気に倍の800ボルト仕様に引き上げようという動きが見られている。3.1〜4.2ボルトのセルを198個組み合わせると613.8〜831.6ボルトとなる。こうした構成によるバッテリーだ。

TAG: #バッテリー #電圧 #高電圧
TEXT:桃田健史
EVシフトが停滞気味のいまなぜ充電インフラに力を入れる? トヨタ・メルセデス・GM・ヒョンデと世界の名だたる8メーカーが協力する「IONNA」とは

日米欧韓8メーカーによる「IONNA」は成功するのか IONNAは、北米で事業を展開する大手自動車メーカー各社が出資したEVの充電ネットワークを運用する企業だ。アメリカのゼネラルモーターズ(GM)、欧米ブランドをもつステランティス、ドイツのメルセデス・ベンツとBMW、韓国のヒョンデとキア、そしてホンダが2023年7月に共同で設立した。 ここにトヨタが7月に加わったことで、本稿執筆時点で8社となっている。 事業の目標としては、2030年までに北米内で3万の充電ポート(または口数)を設けること。充電システムとしては、テスラの充電システムを米SAE(自動車技術会)が規格化したNACS(ノース・アメリカン・チャージング・スタンダード)と、CCS(コンバインド・チャージング・システム)のそれぞれに対応する。 では、なぜこのタイミングでIONNAがスタートすることになったのか。 それは、北米でも中長期的にはEVシフトが進むという考え方を自動車メーカー各社がもっていることに起因する。周知のとおり、直近ではアメリカでのEVシフトが停滞気味で、代わってハイブリッド車の需要が高まっているところだ。そのため、GMやフォードなどは従来描いていたEV事業戦略の見直しをせざるを得なかった。 また、バイデン政権ではEVを含めたカーボンニュートラルへの早期移行を掲げた大統領令が発せられたが、第二次トランプ政権になってから急激なEVシフトに対して連邦政府は慎重な姿勢を見せている。 だが、次の政権では再びEVシフト強化が要求される可能性もあるなど、アメリカ連邦政府の政策として、EVシフトの先行きは不透明だといわざるを得ない。 それでも、グローバル市場での動きを見ると、2010年代後半から2020年代前半にかけてのESG投資バブルが弾けたことで「EVシフトは踊り場」といわれている。ESG投資とは、財務状況だけではなく、環境、企業の社会性、ガバナンスを重んじた投資のこと。また、中国では国内市場でのEVの価格競争が激しさを増しているとはいえ、中央政府の基本方針としてはEVシフト強化の流れが根強い。 このような世界動向と北米での将来を見据えて、自動車メーカー各社が充電インフラ拡充を共同で進めるべきとの判断に至ったといえるだろう。 そもそも、EV向け充電規格については、日本が主導したチャデモ規格に対して欧米メーカーが強く反発した結果、欧米それぞれで規格が違うCCSが生まれた。その一方で、テスラが独自充電方式を採用し、EV市場でのテスラのシェアが高まるなかでテスラ方式の需要が高まり、その反対にCCSの需要が伸び悩むという図式ができたという経緯がある。その上で、テスラ方式であるNACSとCCSの共栄共存が必要になったことが、IONNA発足を後押ししたといえよう。 果たしてIONNAは成功するのか? その動向を継続的にウォッチしていきたい。

TAG: #充電ネットワーク #充電規格
TEXT:桃田健史
テスラを抜き世界最大のEVメーカーになったBYD! それでも株価が低迷するワケ

いまや世界最大のEVメーカーとなったBYD 中国BYDの株価が5月後半から一気に下落し、その後も低迷が続いている。 BYDといえば、米テスラを抜いて世界最大のEVメーカーとなったことが話題となった。日本市場では、各種モデルを導入して国内販売網を拡充しており、近年中には軽規格EVを仕立てることが決定している。そのため、スズキ、ダイハツ、ホンダ、三菱(及び生産委託している日産)は、軽EV市場拡大へのプラス効果として捉えているところだ。 さらに、中国政府による外貨獲得に対する積極的な施策によって、中国国外に向けた新車輸出や、東南アジアや欧州での新車現地生産についてもBYDの存在がクローズアップされてきた。 一方で、中国国内自動車販売における競争環境は激化の一途を辿っている。そうしたなかで衝撃的だったのが、BYDによる22モデルを対象とした大幅値引きだ。なかには3割を超える値引き率に達しており、こうした状況にライバル企業も大幅値下げを決断せざるを得ない状況に陥った。 中国における新車価格の大幅値引きは、数年前から自動車産業界での大きな問題とされてきたが、5月のBYDによる大幅値引きは、ある種の末期症状とも思える印象があり、これに対して株式市場が反応したものと考えられる。 5月23日のBYD株価は、135.00CNYだったが1週間後の5月30日には.117.43CNYへと約13%下落した。それから何度か買い戻しが入ったものの、8月上旬には104CNY台まで下がっている。本稿執筆時点の9月中旬では107〜109CNYのレベルで推移しているところだ。 では、今後のBYD株価はどのように推移するのだろうか。技術面でいえば、BYDのポテンシャルはまだ高いものと考えられる。具体的にいえば、BYDはEVにおけるコストでもっとも大きな影響があるバッテリーを自前で開発・生産しているため、EV全体でのコスト競争力が高い。また、直近では、1000V・1000A・1000kW超という大出力型急速充電システムを市場導入するなど、グローバルEV市場に対する影響力が強いことは確かだ。 ただし、営業面で見れば少なくとも中国国内では5月の大幅値下げを実施せざるを得なくなったように、需要と供給のバランスが大きく崩れており、生産体制を含めた事業方針の転換が必要な時期なのかもしれない。 そうとはいえ、課題はBYD個社の業績や収益性だけではないように思う。なぜならば、中国の自動車産業全体の抜本的な構造変革が必須だからだ。当然のことだが、今後のBYDの株価変化については、EVのみならず中国自動車市場全体の動きを注視する必要がある。

TAG: #値下げ #輸入車
TEXT:高橋 優
販売開始7分で1万台が売れた! Xpengの最新EV「新型P7」がスゴすぎて笑う

勢いに乗るXpengの最新モデル Xpengが最新EVである新型P7の正式発売をスタートし、EV性能と知能化を作り込むことによって、発売開始7分間で1万台の確定注文を獲得しました。中国新興ブランドとしてますます勢いに乗るXpengの最新動向を含めて解説します。 Xpengは、最新の8月では中国国内で3.5万台弱と、史上最高の販売台数を更新しました。最新のミッドサイズSUVであるG7には、「Turing 」というXpeng独自内製のAIチップを搭載することで、車両全体におけるAI演算能力が最大で2250TOPSを実現。これは、テスラAI.4、Nvidia Drive Thor-Uと比較しても3倍という桁違いの能力です。 そして、XpengがG7からたった2カ月以内にローンチしてきたのが新型P7です。 Xpeng2車種目となるミッドセダンのP7は2020年に発売され、その当時の中国製EVを象徴とする先進的なデザイン言語を採用することで非常に人気の高いモデルでした。ところがP7の競合車種として、シャオミSU7を筆頭とする数多のEVセダンが市場に投入されてしまったことでP7の販売台数は激減。はたしてXpengがP7をどのようにリブートしてくるのかに大きな注目が集まっていたのです。 新型P7は、まさに衝撃的なデザイン言語を採用しました。見た目はテスラサイバートラックのクーペセダンバージョンのようなフォルムです。全長5017mm、全幅1970mm、全高1427mm、ホイールベース3008mmと先代モデルよりひとまわり大きくしながらも、全高は1427mmとテスラモデル3パフォーマンスよりも引き下げることに成功。 BEVはバッテリーパックを底面に搭載しているため、どうしてもバッテリーのぶんだけ全高を低く抑えることができず、とくにセダンを開発する上で車両デザインに制約が出るものの、新型P7のバッテリーパックの厚さは109mmと、800Vシステムを採用するバッテリーパックとしては世界最薄級を実現。EVテクノロジーを突き詰めることで、セダンとしての魅力的なプロポーションと、Xpengを体現する未来的なデザイン言語を両立することに成功しているのです。 また、重心高は440mmと、なんとレクサスLFAよりも低い数値を実現。さらに、極限状態における走行性能として、Xpengは24時間でどれだけの距離を走行できるのかを競う24時間チャレンジを敢行。途中には豪雨が襲うなど厳しいコンディションだったものの、結果は3961kmと、これまでのポルシェタイカンターボ、メルセデス・ベンツCLA EV、シャオミYU7 Maxを上まわる距離を走破しました。サーマルマネージメントでも優れた性能を実現していることを証明した格好です。 また、10段階電動調整が可能な電動リヤウイング、サイドサポート付きのスポーツシートなど、スポーツセダンに仕上げてきています。90km/hでのエルクテストに成功したほか、ブレンボ製4ピストンキャリパーを全グレード標準搭載することで、100km/hからの制動距離では33.16mと、ポルシェ・タイカンやパナメーラを凌駕しています。 もちろん、Xpengの得意とするインテリジェンスの面でも優秀です。ハイエンドADASはTuring AIチップをふたつ搭載することで、演算能力は1500TOPSと業界最強。これによってVLA(Vision Language Action)を用いたさらにシームレスで安全な自動運転性能を実現。スマートコクピットも、同じくTuring AIチップとVLM(Vision Language Model)を活用することで、超複雑な音声認識だったり、高度なAIアシスタンス機能に対応しています。

TAG: #セダン #ニューモデル #中国車
TEXT:渡辺陽一郎
EVってこれからの時代の乗りものなのにHonda eはたった1代で消滅! Honda eを作った意味ってドコにある?

Honda eってなんのために販売された? 2025年上半期(1〜6月)に国内で売られた乗用車のうち、エンジンを搭載しない電気自動車の販売比率はわずか1.4%だった。日本で電気自動車を売りにくい理由はいくつか挙げられるが、もっとも有力な事情は車種が少ないことだ。小型/普通車の市場占有率が50%に達するトヨタでも、トヨタブランドの電気自動車はbZ4Xのみになる。このように選択肢が乏しいと、電気自動車がほしくても、ニーズに合った車種を見つけられない。売れなくて当然だ。 そしてホンダは、2020年に電気自動車のHonda eを発売したのに2024年に終了した。電気自動車はこれから普及させるべき分野だから、改良やフルモデルチェンジを積極的に行うべきだが、車種を廃止してしまった。 この理由をホンダに尋ねると以下のように返答された。 「Honda eは、ホンダにとって実質的に最初の電気自動車だから、先進技術を満載した。インパネには5つの液晶スクリーンが並び、通常はミラーで得られる後方の情報も、サイド/センターカメラシステムに表示される。その代わり価格も高かった(発売時点の価格は451〜495万円)。今後はN-ONE e:などにより、ホンダの電気自動車も普及段階に入るため、Honda eは役割を終えて販売も終了した」 Honda eはたしかに装備を充実させていた。前述の内容に加えて、車内Wi-Fiやスカイルーフなども全グレードに標準装着した。 その一方で駆動用リチウムイオン電池の総電力量は35.5kWhに留まり、1回の充電で走れる距離も、WLTCモードで259〜283kmであった。価格が高い割に、1回の充電で走行できる距離は短い。つまりHonda eは「ホンダにはこのような先進的で楽しい電気自動車も開発できます!」とアピールするためのクルマだったといえる。 そのために一定の期間を経過すると「役割を終えて販売も終了した」わけだが、ここにホンダの欠点がある。Honda eを気に入って買ったユーザーはどうなるのか。改良版を購入して今後も乗り続けたいと思っても、それはできない。Honda eをせっかく開発したのだから、装備をシンプルに抑えて価格を下げたグレードを加えるべきだったが、それもせずに終了させた。 ホンダにはこのパターンが多い。ハイブリッド車のインサイトも、ホンダでは「初代は軽量な2人乗りのクーペでハイブリッドの低燃費を訴求して、2代目はGの価格を189万円に抑えて普及を図った。3代目はハイブリッドの上質な走りを味わえる上級車種とした」という。各世代でインサイトの役割が異なるわけだが、フルモデルチェンジのたびにクルマ作りと価格が変わると、ユーザーは乗り替えられない。 いい換えれば、ホンダが顧客の視線に立たないから、Honda eは廃止され、インサイトは世代によってクルマ作りを大きく変えた。CR-V、オデッセイ、シビックのように、国内における車種の廃止と販売の復活を繰り返す朝令暮改も同じ理由だ。

TAG: #名車 #国産車 #絶版車
TEXT:御堀直嗣
こういうのがいいんだよ! ヤマハが送る「グリスロ」が交通過疎地域を救う!!

グリスロは日本の道路にベストマッチ! グリーンスローモビリティ(通称グリスロ)は、ヤマハ発動機が開発した公道を走れる電動カートだ。 最高時速は20kmまでで、自動運転だと時速12kmとなる。 3車種あるが、車体は基本的に同じつくりで、乗車定員数によって全長に違いがある。乗車定員は、4人、5人、7人の3種類だ。 車体の全幅は1354mで、軽自動車の1480mより狭い。全長は、乗車定員の数によって、3150~3955mになる。もっとも短い4人乗りは、軽自動規格内におさまる。5~7人乗りは小型自動車の扱いだ。充電は、200Vの普通充電で行う。 車載のリチウムイオンバッテリーは、約8.2kWhだ。軽EVの日産サクラや三菱eKクロスEVの4割ほどになる。軽EVの20kWhでも日常の移動に十分な能力を備えるので、最高時速20kmで地域内の移動などに使うぶんには適切なバッテリー容量といえるだろう。 軽自動車枠となる4人乗りは、入り組んだ路地などのある地域に適している。5人乗り以上になると、世帯数の多い地域での送迎や、観光の足、広い駐車場内での移動などに使える。 いずれの車種も、車体全高が1.8m以上あり、かつ低床のつくりなので、老若男女を問わず乗り降りもしやすいだろう。追加の注文装備として、雨から乗員を守るカバーや、荷物を載せるカゴなどがある。 自動運転は、2種類の方式がある。いずれも、決まった道筋を走ることになるが、誘導の仕方に違いがある。 電磁誘導式は、通路下に埋設したマグネット式の誘導線から磁力を検知し、道筋をたどる。また、後続車に対しては追突防止機能を備え、後続車はその信号を検知すると停止する仕掛けだ。約80m離れた場所からのリモート操作もできる。 もうひとつは、ステレオカメラを屋根の前端に装備し、前方の様子を認識する。そのうえで、RFID(無線を使った識別)を路上に設置し、そこからの情報を読み取りながら道筋をたどる。ゴルフ場のカートなどでの利用を前提に、すれ違いもできる機能になっている。 地域によっては人口減少により、公共交通機関の存続が厳しさを増している。同時にまた、高齢者に対する運転免許証補返納などの施策によって、日々の移動が難しくなる事例が増えている。 そうしたなか、時速20kmまでという低速でも、歩かずに安全に移動できる手段の検討はこの先益々必要になっていくだろう。ヤマハは、2024年から全国の100地域以上で実証実験や本格導入を支援しているとのことだ。

TAG: #グリーンスローモビリティー #モビリティ #電動カート
TEXT:高橋 優
EVがますます加速する中国市場! ただし「人気車」はかなりの変化アリ

順調にNEV車が伸びている中国市場 中国市場における最新の2025年8月のEV販売動向の詳細が判明しました。EV先進国中国のEVシフトの現状を、人気車種の売れ行きや注目の新型EVの展望を含めて解説します。 まず、中国市場における8月のBEVとPHEVの合計を示した新エネルギー車の販売台数は110.1万台と、前年同月比+7.5%の販売増加を記録しました。また、新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率は55.14%と史上最高のシェア率を更新しました。すでに過半数が新エネルギー車に置きかわっている状況です。 次に、その新エネルギー車のなかでもBEVとPHEV、EREVそれぞれの販売割合を確認しましょう。2022年8月時点での新エネルギー車全体に占めるBEVのシェア率は75%と、BEVが圧倒的なシェア率を示していたものの、直近の2025年8月単体では62.36%とBEVシェア率が減少している状況です。とはいえ、2024年8月の57.23%と比較すると、むしろNEV全体に占めるBEVの割合は増加傾向にあります。 8月単体のPHEVとEREVの販売台数は41.4万台だったものの、これは前年比でマイナス成長です。このPHEV販売の減速というトレンドは、ごく短期的な中国市場の動向を見極める上で重要な視点でしょう。 さらに、BEVに絞った販売シェア率は34.39%と、史上最高のシェア率を更新しました。いずれにしても中国市場はEVシフト減速と無縁の世界線である様子が見て取れます。 それでは人気車種動向を確認しましょう。 はじめに、8月単体の内燃機関車も含めたすべての販売ランキングトップ30では、新エネルギー車が15車種ランクイン。トップ10に絞ると7車種が新エネルギー車です。 新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30で注目するべきは、海外メーカー勢がテスラ・モデルYとモデル3しかランクインできていないという点です。新エネルギー車といえば中国製であると広く認知されてしまっているのです。 また、BYDが13車種を席巻しており、圧倒的な存在感を感じさせます。さらに、ファーウェイのAITO M8が9位にランクインしており、日本円で800万円級にも及ぶファーウェイの高級EVが非常に人気となっている様子も見てとれます。 そして、BEVに絞った販売ランキングトップ30での注目は、発売開始から半年程度しか経っていない最新BEVが続々とランクインしている点でしょう。 第30位:Xpeng G7 第29位:Leapmotor B10 第22位:BYD Fang Cheng Bao Tai 3 第20位:BYD Seal 06 EV 第17位:BYD Sealion 05 EV 第16位:Leapmotor B01 第9位:シャオミYU7 第8位:BYD Sealion 06 EV このように、旧モデルを最新モデルが追い抜いて新陳代謝を促しているという点こそ、中国市場の競争の激しさを物語っていると思います。 第25位:トヨタbZ3X 第18位:日産N7 という日本メーカーの健闘にも注目です。とくにN7は1万148台と絶好調です。

TAG: #セールス #中国市場 #販売台数
TEXT:桃田健史
携帯メーカーも家電メーカーも参入してるし「EVは作るのが簡単」は本当か? 部品点数がエンジン車より少ないEVのホントのところ

自動車を高品質で大量生産するには高い技術力が必要 EVは、ガソリン車やハイブリッド車に比べて作るのが簡単だ。一般的に、そんな表現を聞くことがある。理由は、構成する部品数が少ないからだ。 実際にどれくらい少ないのか。経済産業省から委託を受けて調査会社が行った「令和4年度 電動化シフトを踏まえた地域自動車部品サプライヤーの技術力・開発力向上に向けた動向調査」報告書によれば、部品点数はエンジン車では約3万点であるのに対して、EVでは2万点で収まるとしている。 この数字だけを見れば、部品点数が3分の2になるのだから、その分は生産効率が上がるからEVを作る手間は少なくなるだろうが、誰でもEVが作れるようになるとの解釈は正しくないように思う。 部品点数が少なくなるとはいえ、2万点にも及ぶ部品を自社で製造、または外部に製造を委託して、それらを上手く最終組み付けするという製造工程を管理することは、企業としてとても難しいからだ。 また、単純に組み付けるというのではなく、設計と実験の領域で質の高いEVに仕上げる業務は、エンジン車やハイブリッド車を作る場合と大きな違いはないはずだ。 その上で、大手自動車メーカー各社のEV開発担当者から直接話を聞くと、EV開発における特徴として、結果的にエンジン車やハイブリッド車などの内燃機関と比べて開発や実験の工程が管理しやすいという声をよく聞く。 内燃機関における気筒内の燃料については近年、さまざまな技術開発が進んでいるとはいえ、燃料に関する解析はとても難しいという指摘が多いからだ。それと比べてEVでは、電子的な制御によってクルマの挙動をさまざまに変化させることができるため、それはそれで難しいのだが、正直なところ内燃機関での苦労と比べると楽な部分があると表現する開発者もいる。 とくに、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車では、内燃機関、モーター、変速装置を適切に制御することは、大手自動車メーカーが長年に渡って技術を磨いてきた成果によって実現していることであり、EV事業の新規参入者はそう簡単に真似ができない。 そのため、いわゆるEVコンバーションの場合、エンジン車からEVユニットに転換することで技術的にクリアしなければならない領域が一気に減ることは確かだ。 いずれにしても、自動車を高い品質で大量生産し、そしてしっかりとしたカスタマーサービスを含む販売体制を確立することは難しく、そのために企業としての初期投資と維持管理コストは大きいのが現実だ。

TAG: #自動車メーカー
TEXT:桃田健史
中国で新車ディーラーが閉店ラッシュ! 過剰供給だけが理由じゃないEVを巡る情勢

一攫千金どころか撤退が続出している中国自動車ディーラー 中国で新車販売を行うディーラーの淘汰が始まっている。最近、自動車販売に関する業界団体のデータを基にした各種記事が、日本のメディアでも紹介されることが多い。こうした中国での経済環境の変化は、起こるべくして起こっている印象がある。 時計の針を戻せば、中国は2000年代以降に経済発展のスピードが高まり、2010年代に入ってからは自動車産業に対する国や地方政府の影響力が強まった。なかでも、電動車を示す新エネルギー車(NEV)の研究開発と生産に対して、中国の中央政府と地方政府が補助金などを活用した積極的な支援策を続けてきた。その結果として、一部では過剰生産が起こり販売されないまま屋外に放置される大量のEVの姿が日本でも報道されることが増えた。 EVの販売体制については、メーカー毎に販売事業者との契約内容が違うのは当然だが、販売事業者の立場になれば、「政府が主導する施策に一刻も早く乗ろう」という気もちになるのは当然だったといえるだろう。自動車販売は客単価が高く、事業者としては一攫千金が狙いやすいからだ。 EVメーカー数が一気に増え、また同じメーカーが複数のEVブランド展開することで、それに見合ったディーラーが登場するのは当然だが、EV市場全体で見れば需要と供給のバランスが崩れるのも当然の流れだ。 ただし、昨今の中国EV市場を見ていると、単純に供給過多でディーラーが淘汰されているとはいえないと思う。 ポイントは大きく3点ある。 1番目は、EVメーカー同士、または大手や中堅メーカーとEVとの間での価格競争だ。これは、市場競争という観点では当たり前の動きだといえる。過去10年で急増したEV専業メーカー間では、技術的に明確な個性が打ち出せない場合に価格競争に走ってしまった。また、ガソリン車やハイブリッド車を主体として一部EVを販売している大手や中堅メーカーからお客を奪うためには、ガソリン車並のEV価格を無理に設定することでディーラーとしての収益性が下がってしまった。 2番目は、ファーウェイやシャオミを筆頭とするEV新興勢力の登場だ。製造から販売までの一元的に管理するなかでディーラーのあり方について新しい発想を盛り込んでいる。そのため、既存のEVメーカー・ブランドとの入れ替えが市場で起こっている可能性がある。 そして3番目は、2番目のEV新興勢力によるバリューチェーン変革だ。ここでいうバリューチェーンとは、新車販売後のメーカー側の新しい収益構造を指す。つまり、昨年から今年にかけての中国でのEVを含む自動車ディーラーの閉鎖ラッシュは、中国における自動車産業構造の大変化の兆候だと分析できるのではないだろうか。 こうした自動車市場の新陳代謝は、日本の自動車産業界にとっても大いに参考になりそうだ。

TAG: #中国車 #破綻 #輸入車
TEXT:小鮒康一
ロードスターにRAV4! リーフやi-MiEVの前から日本のメーカーはEVに取り組んでいた

メーカーによる試作コンバートEVを振り返る いまでは街なかで見かけても特別感もなくなり、すっかり日常に溶け込んだ感のあるEV。しかし、過去にはさまざまなクルマをベースにEV化を実現したカスタマイズカーやコンセプトカーが数多く存在していた。 なかには実際にナンバーを取得したり、市販されたりしたモデルもあったのだが、今回はそんな黎明期に生まれたEVモデルを振り返ってみたい。 トヨタRAV4 2025年度内に新型の6代目モデルの登場がアナウンスされている、トヨタのクロスオーバーSUVであるRAV4。新型はハイブリッドとPHEVの2種類のパワートレインが用意される電動車となることが明らかとなっているが、じつは初代モデルにはいち早くEVが存在していた。 1996年8月に発売を開始したRAV4のEVモデルは、3ドアモデルをベースに高効率永久磁石式同期モーターと世界初のニッケル水素バッテリーを搭載。 高性能回生ブレーキや、ヒートポンプ式エアコン、電動油圧パワーステアリング、フロントシートヒーターなど、現代のEV車が多く採用している要素を多く採用していた。 満充電時の航続距離は215km、駆動方式は前輪駆動で価格は495万円と決して安いものではなかったが、官公庁や法人ユースで選ばれることもある1台だった。 日産プレーリージョイ 前輪駆動レイアウトの乗用車をベースとしたミニバンタイプの元祖として、三菱シャリオとともに知られているプレーリー。その2代目の後期モデルとして登場したプレーリージョイをベースにEV化をしたモデルが1997年にリース販売されている。 この車両にはソニー製のリチウムイオンバッテリーが搭載されており、市販車初のリチウムイオンバッテリーを搭載したEVとなっていた。 満充電時の航続距離は200kmで、2000年から国立極地研究所北極観測センターの支援車として使用された個体は、極寒の気象条件でも6年間無故障で稼働し、高い信頼性を誇ったことでも話題を集めたのだった。

TAG: #旧車 #試作車
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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