フォルクスワーゲン(VW)の企業方針「Success By Design」を担うアンドレアス・ミント氏は、人を惹きつけることが必要と語る。その一例が、ID.GTIコンセプトのCピラーにあるという。
「ID.GTIコンセプトで狙ったのは、いいなと直感的に思ってもらえること」
2023年にフォルクスワーゲン(VW)グループは、「IAAモビリティ」を前に、「デザインによる成功 〜Success By Design」という企業方針を打ち出した。
「デザインはブランドの説明のよい手段であり、ひとは自動的にデザインとブランドを結びつけます。そして、新車の購入にあたって、デザインは大きな影響力をもちます」
VWグループのオリバー・ブルーメCEOは、グループの各ブランドにおいて、これからいっそうデザインに力を入れていくとする。
ただし、とんがっていればいい、ってもんではない。デザインが企業のありかたと、うまく結びついている必要がある。VWグループにおいて、デザイン部とCEOはよりダイレクトな関係を構築していくんだそうだ。
EVが本格的に発売されるようになった数年前は、上記のような考えはあまり見られなかった。ICE(エンジン車)との差別化が大事で、違って見えることに、各ブランドは注力した感があった。
いま、時代はあたらしくなった。そう思わせるクルマが、いくつか登場している。VWでいうと、23年3月にハンブルグでコンセプトが発表された全長4メートルのハッチバックEV「ID.2 all」、そしてそれをベースに開発するという「ID.GTIコンセプト」が好例だ。
「ID.GTIコンセプトで狙ったのは、いいなと直感的に思ってもらえることです。あたらしい技術(電気)から距離をとっているひとが、近づいてきてくれるクルマ。いいかんじのデザインだね、と思ってもらえるクルマづくりです」
そう語るのは、VWブランドのヘッド・オブ・デザインを務めるアンドレアス・ミント氏だ。
そういえば、ハンブルグでの発表会のとき、ミント氏は「(23年1月にVWのヘッド・オブ・デザインに)就任してまずやったのが、ID.2 allのデザインでした」と語ってくれたのを思い出した。
ほぼ同時にID.GTIのデザインも手がけている。この作業をミント氏は「クリスマスと誕生日がいっしょに来たみたいな楽しさでした」と語っている。デザイナー冥利につきる仕事、ということかな。