#EVシフト
TEXT:桃田健史
EVの先行きはわからないが気がつけば選び放題! いまの日本は輸入車だけで7ブランド136車種ものEVが買える!!

輸入電動車は現在7ブランド・136モデル 最近、日本でもEVラインアップが一気に増えた。そう感じている人が少なくないだろう。とくに、輸入車でのモデル拡充が目立つ。 たとえば、11月中旬にはJR東京駅周辺に輸入車ブランドのEVや燃料電池車など数多く展示されたり、また筆者もドライバーとして参加したユーザー向けの公道試乗会が実施された。これは、輸入車関連企業がつくる業界団体、日本自動車輸入組合(JAIA)が実施した「JAIAカーボンニュートラル促進イベント in 東京」だ。 その際、JAIAが提示したデータが興味深い。同イベントが開催された約4年前の2020年10月に電動車は、JAIA登録ブランドのうち10ブランドで20モデル。それが、2024年6月末時点で7ブランド・136モデルと急激に拡大している。 そうしたモデルは、コンパクトカーから大型SUV、さらに超高価格のスポーツカー、さらに二輪車など多種多様だ。 また、JAIAの上野金太郎会長によれば、「2024年上半期でJAIAの電動車販売台数が初めて1万台の大台を超えた」という。シェアで見ると16.7%。ただし、ブランド別で、しかもEVに限定した販売比率についてはJAIAとして公開していない。 また、グローバルにおけるEVシェアはどうなっているのだろうか。 これについても、メーカーやブランドによって、それぞれで電動車の定義が若干違うこともあり、EVに限定したシェアを抽出することは現時点で難しい。 そこで、市場全体での状況についてデータを紹介しておく。 欧州オーストリアの自動車関連大手のAVLが、日本国内で9月に実施したシンポジウムで公開したデータがある。 それによれば、7月時点でグローバルでのEV(及び燃料電池車、レンジエクスタンダー)の販売比率は14.4%だ。エリア別で見ると、やはりもっとも販売比率が大きいのは中国だ。中国で言うNEV(新エネルギー車)の販売比率は23.6%に及ぶ。 2010年代に世界一の自動車生産・販売国となった中国では、政府主導のNEV政策を推進してきた効果が大きい。 次いで、欧州が11.1%。ただし、欧州連合の執務機関である欧州委員会がこれまで推進してきた欧州グリーンディール政策における電動化関連法案が宙に浮いている状態であり、こうした販売比率が今後、さらに減少する可能性も否定できない。 メルセデス・ベンツやボルボなど、自社のEVシフト戦略を見直す動きもあるなか、メーカー各社の今後のEV販売比率の変化を予想することは難しい。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:桃田健史
「ガソリン旧車価格が爆騰」「クルマを所有しなくなる」 数十年後の自動車社会はどうなるのか現実的に想像してみた

EVの普及と社会の変革は同時に行われるべき いまから十数年後の2040年代、さらにその先の2050年代。仮に、日本で新車購入できる自動車がEVのみになったら、どうなるのだろうか? あくまでも私見としての仮定を、いくつか紹介してみる。 たとえば、ガソリンスタンドの数が極端に少なくなっていて、ハイブリッド車の所有はかなり大変になっているのかもしれない。 EVではなくても、少なくともPHEVではないと、日常生活のなかで自動車を使うことが不便に感じるのかもしれない。 充電施設についても、自宅での基礎充電機器が量産効果によって価格が下がり、出力10kW程度が標準化になっているのかもしれない。そうなれば、電池容量が100kWh級でも、自宅でひと晩で出来るようになる。 または、交換式バッテリーシステムが一気に進化して、バッテリーパックの標準化も進み、充電するという感覚がなくなっているかもしれない。 国や地域によっては、期限を決めてガソリン車やディーゼル車を公道で使用することが禁止、または制限される時代になるかもしれない。その先には、内燃機関を搭載するハイブリッド車ですら、使用制限がかかるかもしれない。 こうした動きを、別の方向から見れば、ガソリン車の付加価値が一気に上がることも十分考えられる。実際、2020年代中盤の現時点でも、昭和の時代を感じるネオクラシックカーの中古車価格が一部車種では高騰する社会現象が起こっている。 それが、ガソリン車の使用禁止や使用制限が法的にかかれば、在りし日を思い起こすような一部のガソリン車はプレミアム価格になって、専用の売買市場のなかで取引されるようになるかもしれない。 また、サーキットなどのクローズドエリアで開催される、ガソリン車の試乗会や同乗体験会などもかなり高い料金設定でも、事業が十分成り立つようなビジネスモデルになるかもしれない。 以上のような予測は、EVをガソリン車の単なる代替として見た場合の話だ。だが、本来のEVシフトは、社会のなかで多く使われている電気というインフラを「クルマにも適用する」ことだと思う。つまり、EVの普及と社会の変革は同時進行で行われるべきことなのだ。 たとえば、大量生産・大量消費という「所有」から、シェアリングを基本とする「共有」への大きなシフトが考えられる。ただし、「所有から共有」といっても、カーシェア、ライドシェア、さらにサブスクといった小さな括りではない。もっと大きな時代の変化を、ユーザー自身が感じる社会がやってくるのかもしれない。 EVしか買えなくなる時代とは、そんな社会変化を伴うことになるのではないだろうか。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:高橋 優
中国市場は「中国国産」BEV強し! テスラが奮闘するも日本もドイツも苦戦

新車に占めるNEVの販売比率は52.33% 中国市場における最直近11月のEV販売動向の詳細が判明しました。新車販売の2台に1台以上がすでに新エネルギー車に置き換わるなか、日本メーカーの苦しい販売動向と見通しを中心に考察します。 まず、中国市場におけるBEVとPHEVの合計を示した新エネルギー車の販売台数は126.8万台と、前年同月比で50.8%もの増加を記録しました。新車販売全体に占める新エネルギー車の販売比率も52.33%と、歴史上最高水準の電動化率を達成しています。 ただし、販売シェア率は3カ月連続でわずかに低下を続けている状況です。この理由は、現在中国市場における経済対策の一環として、いまある車両を下取りに出して新車を購入すると、排気量2リッター以下のガソリン車の場合は1.5万元(日本円で約32万円)、新エネルギー車の場合は2万元(約42万円)が補助されるという政策を実施中だからです。 よって、NEVとともにガソリン車の需要も同じく増加しているのです。ちなみにこの補助金制度は2024年末まで実施され、自動車だけではなく、冷蔵庫や洗濯機、テレビ、エアコン、コンピュータなどの家電などにも買い替え支援策を展開しています。 他方で注目するべきは、新エネルギー車のなかでもBEVとPHEVの販売割合という観点です。2021年11月時点での新エネルギー車全体に占めるBEVのシェア率は79.63%と圧倒的なシェア率を示していたものの、直近の2024年11月単体では59.78%と、PHEVのシェア率が急速に増加しています。 ちなみに9月からPHEVとEREVをわけて統計情報が発表されており、11月単体のシェア率は、BEV:PHEV:EREV=60%:32%:8%という販売割合です。 そして、もっとも注目するべきはBEVに絞った販売シェア率の変遷です。11月単体のシェア率は31.28%と史上最高を達成しました。PHEVの販売増加以上にBEV販売も伸びていることを示しているのです。 世界の主要マーケットにおけるBEVの販売シェア率の変遷を比較すると、水色で示されている中国市場が欧米などを大きくリードしている状況です。果たしてBEVシェア率が最大化する年末までにどれほどシェア率が伸びるのかに注目が集まります。 それでは11月にどのようなEVが人気であったのか、そして2025年以降、どのEVに注目するべきなのかを分析します。 まず初めに、11月の内燃機関車も含めたすべての販売車種ランキングトップ30を確認しましょう。ピンクが新エネルギー車、そして緑が内燃機関車を示しています。 トップに君臨したのがBYDシーガルです。その次にテスラ・モデルY、BYD Song Plus、BYD Qin Plus、Hong Guang Mini EVと続きますが、トップ10のうち内燃機関車は第7位の日産シルフィと第8位のフォルクスワーゲンLavidaしかランクインすることができていません。トップ20に広げてみてもたったの6車種です。つまり、人気車種のマジョリティが、BEVかPHEVという新エネルギー車で占められてしまっているのです。 次に、このグラフは新エネルギー車に絞った販売ランキングトップ30を示したものです。黄色がBEV、水色がPHEVを示します。BYDが13車種を席巻しながら、トップ10に限ると7車種とBYDの強さが見て取れます。 そして、注目するべきは、このトップ30のうち海外メーカー勢はテスラ・モデルYとモデル3の2車種しかランクインできずに、残りはすべて中国勢が席巻しているという点です。

TAG: #EVシフト #中国 #販売
TEXT:高橋 優
2024年の日本国内のEV販売は完全に失速! 2025年に明るい材料はあるのか?

EVシェア率は2年前と同等に 日本国内の最直近11月のEV販売動向が判明しました。販売台数、EVシェア率ともに前年比マイナス成長というEVシフト停滞模様を解説します(商用軽EVである日産クリッパーEVとホンダN-VAN e:の販売台数は執筆時点では判明していないため、販売台数とシェア率は微増の見込み)。 まず、このグラフは2018年以降のBEVとPHEVの合計販売台数を月間ベースで示したものです。2024年11月の販売台数は1万504台と前年同月比でマイナス7.6%。とくに2023年12月以降12カ月連続で前年同月比マイナス成長という、EVシフト減速の流れが一過性のものではなくなっている様子が見て取れます。 次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの販売台数の合計の比率を示したグラフを見てみると、直近の11月は2.9%と、前年同月に記録した2.99%と比較してもシェア率が停滞しています。 そのうえ2年前である2022年11月のEVシェア率が2.74%であったことから、じつは2年前のEVシェア率と同等水準と、EVシフトが後退状況にある様子が見て取れます。 次に、普通車セグメントの日本メーカーと輸入車メーカー、さらに軽自動車セグメントにわけて示したグラフを見てみると、白で示されている輸入EVは前年同月並みの販売台数に留まったものの、ピンクで示されている日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数は889台と、前年同月比-22.7%という落ち込み具合です。 つまり、現在の日本国内のEVシフト後退のもっとも大きな要因は、日産リーフやアリア、トヨタbZ4Xのような国産の普通車セグメントの需要低下が要因であると結論づけることができます。 また、BEVの累計販売台数を年別に比較すると、2024年11カ月間において6万台弱ものBEVを発売したものの、2023年の11カ月間では8.4万台強を発売していたことから、2024年シーズンはEVシフト後退の一年となることがほぼ確定的となりました。 さらに、日本のBEV販売シェア率が世界の主要国と比較してどれほどの立ち位置であるのかを確認してみましょう。日本はデータが確定した直近の10月において1.56%という販売シェア率だったものの、最新データが判明している10月の世界全体のシェア率は16%に到達。さらに、10月の中国市場は30%に到達しています。 つまり、中国国内で売れている新車のうち10台に3台がBEVという状況です。いまだにBEVが64台に1台という日本とは別次元である様子が見て取れます。

TAG: #EVシフト #販売
TEXT:高橋 優
日本勢のEVの売れ行きをチェック! トヨタ・ホンダに比べて日産は先行きに不安アリ

トヨタ・ホンダ・日産の状況を比較! トヨタ、ホンダ、日産の2024年10月最新のEV販売動向が判明しました。それぞれどれほどEVシフトを進めることができているのか。気になる販売車種の内訳なども含めて、EVシフトが遅れているといわれている日本勢の最新EVシフト動向を分析します。 まず、トヨタのEVシフト動向を確認しましょう。トヨタは世界戦略車としてbZシリーズ第一弾のbZ4Xを2022年5月に発売しながら、さらに2023年の3月から中国市場限定のbZ3の発売をスタートしており、ここからBEV販売台数が伸びています。一方で、直近の2024年10月度のBEV販売台数は1万505台と、前年同月比で12.2%の増加であるものの、販売の伸びは鈍化しているように見えます。 この成長の鈍化傾向は、トヨタの予想外の動きであるといえそうです。というのも、トヨタはその年度の初めにBEVやPHEVの販売台数予測を発表していますが、たとえば2023年度のBEV販売台数目標を年度初めは20.2万台と予測していました。しかし、年度途中に12.3万台に販売目標が下方修正されています。そして実際の販売台数実績は11.66万台と、大幅下方修正の目標値にすら届いていなかったのです。 しかも、2024年度のBEV販売台数目標を年度当初は17.1万台と発表していたものの、最新の決算発表内で16万台へと下方修正を行っています。いずれにしても一連の流れを見るに、当初にトヨタが想定していたようなBEV販売台数を達成しているとは到底いえないというのが現状なのです。 また、トヨタは2025年シーズンにEVのラインアップを大幅に拡充する方針です。とくに中国市場ではbZ3XとbZ3Cを2025年初頭に発売します。 これら2車種には中国の自動運転スタートアップとしてトヨタも出資を行うMomentaの最新テクノロジーを搭載し、End to Endにおける自動運転システムを実現。しかも、BYDのバッテリーとモーターを搭載するbZ3Cは、2025年中に欧州市場においても出荷される見通しです。 次に、EVのパイオニアである日産のEVシフト動向を分析しましょう。2024年10月単体のBEVシェア率は2.9%と、この数年間で最低水準のシェア率に留まっています。2022年10月は5%、2023年10月は3.74%だったことから、日産のEVシフトは後退局面を迎えてしまっているわけです。 EVシフト後退に大きな要因であると考えられるのがアリアの販売不調という観点です。10月のアリアのグローバル販売台数は3152台と前年同月比19.5%ものマイナス成長。アリアの販売台数は生産体制の増強に制約があることが理由であると一部報道でいわれていたこともあり、2024年以降は販売台数がさらに増加すると思われていたわけです。 ところがアリアの販売台数は2023年9月以降ほとんど伸びておらず、つまり生産体制に問題があるのではなく、単にグローバル全体で需要が低いことが要因であると推測できるのです。とくにアリアは、欧・米・中国市場で値下げが行われています。なかでも日本円で120万円級の大幅値下げが行われている中国市場では、10月単体でたったの19台しか売れていません。

TAG: #EVシフト #新車販売 #日本車
TEXT:高橋 優
「EVシフトの踊り場」議論を一蹴! EVシフトに向けて本気のホンダが投入する「10兆円」で何が起こる?

EVシフトにブレないホンダ ホンダが2024年シーズンにおけるビジネスアップデートと題して、今後の電動化戦略などの新たな方針を打ち出し、2030年までにEVや自動運転などに対して10兆円という、当初の倍もの巨額の投資を行うことによって、EVシフトを加速させる方針を表明。そしてEVシフトの踊り場という議論を一蹴し、あくまでも長期的にはEVシフトは確定的な未来であるという主張を改めて強調。そのホンダの最新戦略についてを解説します。 ホンダに関して重要なポイントというのが、すでに完全EVシフトを宣言しているという点です。具体的には、2030年までにグローバルで発売する40%をバッテリーEV、もしくは水素燃料電池車に置き換えながら、2035年にはその比率を80%に倍増、そして2040年までには100%にする、つまり完全なゼロエミッション車両しか発売しなくなるという完全EVシフトを宣言していたわけです。 まず注目するべきは、現在欧米を中心する一部の地域において、そのEVシフトのスピードが停滞しているという報道がなされている状況において、一部の自動車メーカーはそのEV戦略を後退させて、投資規模であったり、さらには完全EVシフト目標を取り下げたり、そのうえ新たなEV専用プラットフォームの導入を撤回し、新型EVの開発を一時凍結するなどという、EVシフトスピードを遅らせ始める動向も確認されています。 ところが、今回のホンダについては、確かにEVの踊り場などと報道されているものの、このような一時的な、地域別でのEVシフトのスピードに変動があるという流れは織り込み済みであり、いわゆる一般乗用車セグメントのEVシフトの流れは決定的と主張しています。 2020年台後半に訪れるEV普及期を見据えたEVに対する投資、およびEVブランドの構築を、足もとの状況変化にとらわれずに推進していくという姿勢を改めて強調。よって、2040年までの完全EVシフトという目標に一切変更を加えてこなかったわけです。 次に注目するべきは、そのEVのラインアップです。すでに発表されているとおり、ホンダについてはグローバルEV専用シリーズとしてゼロシリーズを新たに立ち上げて、2026年シーズンにおいて、すでに発表されているサルーンの北米市場での発売を皮切りに、ミッドサイズSUV、およびエントリーSUVの2車種のバッテリーEVを発売。 そのうえ、2027年シーズンでは3列シートを搭載する大型SUV、2028年にはコンパクトSUV、2029年にはスモールSUV、そして2030年にはコンパクトセダンを、北米だけではなく、日本を含むアジア、欧州、中東、南米などグローバル全体に展開します。 とくに先陣を切るサルーンに関しては、レジェンドに続くホンダの新たなフラグシップとして、さまざまなEV性能を飛躍的に改善する模様です。具体的には、まず前後に搭載するモーターを新開発し、小型化することによってショートオーバーハング化を実現しながら、さらに業界最高水準の超薄型バッテリーを搭載することによって、全高を引き下げます。 また、そのモーターを中心とするパワーユニットの軽量化、小型化を推し進め、自社EVと比較しても100kgほどの軽量化を実現。しかも、その小型化によって、配置を車体中心に近づけることが可能となり、車両全体の低重心化、慣性モーメントの最小化を実現します。よって車内空間と運動性能の最大化、および電費性能の両立が可能となったと説明しています。 サルーンをはじめとするゼロシリーズで発売するEVについては、その航続距離を最大でもEPAサイクルベースで300マイル、483km程度に設定するとも説明。この航続距離は2024年に発売されるEVとしても平凡なスペックです。トヨタであったり中国メーカー勢については、CLTCサイクルベースで航続距離1000km、EPA換算で800km程度のEVを発売する方針を表明しているために、スペック不足感が否めないとする主張も存在します。 その一方で、ホンダについてはこのEPA航続距離300マイル程度というスペックは、非常にバランスの取れたスペックであると主張。2020年代後半については、北米における自動車メーカー7社が合弁して立ち上げている充電アライアンスを通じて、2030年までに北米で3万口もの急速充電器を整備し、今後それ以外の地域でも充電インフラ整備を進める方針も表明しています。 そのうえで、ゼロシリーズにラインアップされるEVについては急速充電性能を飛躍的に高める方針を表明。充電残量15%から80%まで充電するのにかかる時間を15分程度にすると主張。よって、その充電ネットワークも合わせて、バッテリー容量を増やすことなく、車両の軽量化やバッテリーの薄型化を可能にするほうを優先すると説明しています。 いずれにしても、ホンダについては航続距離競争には参戦せずに、あくまでも充電性能と充電インフラの普及にコミットすることによって、ホンダの車両設計思想である、マン・マキシマム、メカ・ミニマムをEV時代においても堅持しようとしてきているわけです。 次に、販売台数の低下が止まらない中国市場においては、eNシリーズとは別に、新たに立ち上げたイエシリーズの存在によって、2024年中にも3車種をラインアップし、さらに2025年にも2車種を投入。その上2027年までに追加で3車種を投入することで、2027年までに10車種もの新型EVをラインアップしながら、2035年までには、中国国内で発売するすべての車両をバッテリーEVのみにするという目標を設定しています。 このホンダの中国市場における戦略についてはいくつか懸念するべき点が存在します。第一に、ホンダは2024年中にも新たなEVブランドであるLingxiブランドを立ち上げてLingxi LというBEVセダンを発売する予定です。こうなると、中国市場において3つのEV専門シリーズが共存することになり、一体それぞれのシリーズにおいて、どのような差別化を図ってくるのか。EVシリーズの乱立という点について、どのようなビジョンを有しているのかは懸念事項です。 さらに、ホンダについては北米市場を中心に好調なe:HEVについても研究投資を続け、新たなプラットフォームを2020年後半に投入することによって、燃費性能の改善とコスト低減を図ると発表しています。中国市場に関しては、2020年後半までPHEVの販売シェアも一定程度残ると予測されており、とくにこの2年間ほどはPHEV市場が急速に拡大する見込みです。 果たして、ホンダは中国市場におけるPHEVの開発はどうするのか。ハイブリッド車がまったく通用しない中国においてはバッテリーEV一本足打法を採用するのか。 中国市場において、ホンダの投入する新型バッテリーEVの販売動向が芳しくない状況が続く場合、ホンダは中国市場において販売規模が急速に低下することを意味します。

TAG: #EVシフト #HONDA #ビジネスアップデート
TEXT:高橋 優
電気自動車は儲からない……は過去の話! EVシフトを急速に推し進める「ボルボ」にみる「収益性の改善」

順調に進んでいるボルボのEVシフト 今回取り上げていきたいのが、北欧の自動車メーカーであるボルボの存在です。このボルボについて重要な前提知識がふたつ存在します。 まずひとつ目が、EVシフトの目標として、2030年までにグローバルで発売するすべての車両をバッテリーEVに置き換えるという、完全バッテリーEVシフトを宣言しているという点です。そして、完全EVシフトの過程において、2025年までにバッテリーEVの販売比率を50%にまで引き上げるという目標値も設定。つまり、来シーズン、ボルボはグローバル販売の2台に1台はバッテリーEVを販売しているということになるわけで、既存メーカーとしては極めてアグレッシブなEVシフト目標を掲げている状況です。 そして、現在ボルボについてはPHEVを7車種ラインアップしながら、バッテリーEVを5車種もラインアップしています。 ちなみに、日本市場においても長らく発売されているXC40 RechargeおよびC40 Rechargeに関しては、2024年2月中にも命名規則の変更を受けて、それぞれ、EX40およびEC40と名称が変更されています。 いずれにしても、現在はそのEX40、EC40、さらには、新型EVであるEX30、および中国市場で納車がスタートしている大型ミニバンEVのEM90、そして2024年前半に生産がスタートするフラグシップSUVのEX90の5車種をラインアップ中です。また、来シーズンにおいて、追加で新型バッテリーEVが投入されるとアナウンスされているものの、具体的にどのセグメントに投入されるのかは不明な状況です。 そして、もう一方のボルボに対する前提知識というのが、中国ジーリーが親会社として存在しているという点です。このジーリーについては、中国EV市場における主要プレイヤーであり、なかでもプレミアムEV専門ブランドであるZeekrに関しては、2024年シーズンにおける年間販売台数目標を23万台に設定するなど、急速にプレゼンスを拡大中です。 さらには、ロータスやスマートなども同じジーリーグループの傘下に属しており、そして重要なポイントというのが、このジーリーグループ全体でEV専用プラットフォームであるSEAを横断して採用することで、グループ全体のスケールメリットを図ってきているという点です。 実際に、ボルボの新型コンパクトSUVであるEX30についてはSEAを採用しており、同じくコンパクトSUVとして、スマートからもスマート#1、そしてZeekrからもZeekr Xが発売されていることから、兄弟車としてラインアップすることでコスト削減へ繋げようとしてきているわけです。 そして、そのような背景において、今回新たに明らかになってきたことというのが、ボルボが2024年第一四半期における最新のEVシフト動向、および収益性を発表してきたという点です。 まず、そのEVシフトの進捗動向に関しては、バッテリーEV販売台数が3.8万台オーバーと歴史上最高の四半期を更新しながら、前年同四半期比でも27%もの増加を記録しています。新車販売全体に占めるバッテリーEVシェア率が20.89%と、ついにボルボ史上初めて、四半期ベースでのバッテリーEVシェア率で20%の大台を突破するという快挙を達成しました。 また、この販売台数増加に大きく貢献したのがEX30の存在です。第一四半期だけで1.45万台もの販売台数を実現。まだ2023年末から納車をスタートしたばかりであるということ、しかも3月単体で行くと8681台もの販売台数を記録したことを踏まえると、このバッテリーEV比率2割越えという数値が、年末にかけて30%へ大きく近づいていくことは、まず間違いないでしょう。

TAG: #EVシフト #VOLVO
TEXT:高橋 優
巨大マーケットの中国市場で地場メーカーに勝てない! メルセデス・ベンツが2030年の完全EVシフトを辞めた理由

メルセデス・ベンツは2030年完全EVシフトは無理と判断 メルセデス・ベンツがEVシフト減速のために、2030年までに完全EVシフトを行うという当初の目標からトーンダウンして、2030年以降も内燃機関車の販売を続けるという驚きの発表を行いました。メルセデス・ベンツのEVシフト減速の主張に関して解説します。 今回取り上げていきたいのが、ドイツ御三家の一角を構成するメルセデス・ベンツの存在です。 このグラフは、2019年シーズン以降の、メルセデス・ベンツを含めたドイツ御三家、およびテスラやレクサスといった、プレミアムメーカーの世界全体の自動車販売台数を比較したものです。 水色で示されたメルセデス・ベンツについては、2019年以降、断続的に販売台数を落としており、2023年シーズンではBMWに差を明けられてしまいながら、アウディ、さらには急速に販売台数を伸ばしているテスラとも、ほとんど同等の規模感にまで差を縮められてしまっている状況です。 とくにこの2023年シーズンに関しては、半導体不足による生産の制約が解消された1年であったことから、競合が軒並み販売台数を伸ばしているなかにおいて、メルセデス・ベンツだけ、唯一と言ってもいいほど販売台数が伸び悩んでいるということは注目に値するでしょう。 このメルセデス・ベンツについてもっとも重要なポイントというのが、2030年までにメルセデス・ベンツがグローバルで発売するすべてのモデルにおいて、市場が許す限りバッテリーEVのみに移行するという完全EVシフトの方針を打ち出していたという点です。 そして、そのEVシフトに向けてEV専用シリーズであるEQシリーズを立ち上げ、EQA、EQB、EQC、EQE、EQE SUV、EQS、EQS SUV、マイバッハEQS SUV、EQV、EQTなど、多くのセグメントにおいてEVをラインアップし、2030年までの完全EVシフトを進めようとしていたという背景が存在します。 ところが、そのメルセデス・ベンツについて新たに明らかになったのが、掲げていた2030年までの完全EVシフトの目標を事実上撤回するというまさかの発表です。具体的には、2020年後半までにバッテリーEVとともにPHEVも含めた、メルセデス・ベンツ独自の表現方法であるxEVの販売シェア率を最大50%にまで引き上げると説明。つまり、バッテリーEV100%という表現を撤回しながら、そのうえPHEVも含めた販売シェア率を目標にするという、目標をさらに緩和してきた格好です。 いずれにしても2030年以降、メルセデス・ベンツはPHEV、さらには既存の内燃機関を搭載した車両についても販売を継続するという方針転換を行なってきた格好となります。 この方針転換の理由に関して、メルセデス・ベンツは、当初の想定以上にEVのコストを下げることができておらず、さまざまなパワートレインを提供するべきであると主張しており、実際にメルセデス・ベンツの2023年シーズンの決算内容を見ても、とくに乗用車部門の営業利益率は12.6%と、2022年シーズンに記録していた14.6%から低下してしまっています。 メルセデス・ベンツに関しては、どのセグメントにおいても販売台数は横ばいであったものの、唯一バッテリーEVセグメントにおいては前年比で61.3%もの販売台数の増加を記録しており、このことからもバッテリーEVをより多く販売したことがわかりますが、その分の開発コストなどを含めると、全体の販売台数を増やせなかったことも相まって、利益を圧迫してしまったと捉えることも可能です。 したがって、2030年までに持続的な利益を確保しながら、バッテリーEV100%に転換することは無理と判断した格好といえるでしょう。 他方で、今回のメルセデス・ベンツの発表に関しては、その販売データからさらにメルセデス・ベンツの苦しい内情が見え隠れしているという点に極めて注目です。 まず、このグラフは四半期別のパワートレイン別の販売台数、およびそのなかでもバッテリーEVの販売シェア率を示したものです。 このとおり、緑色で示されているバッテリーEVの販売台数が着実に増加していることが見て取れます。一方で、とくに欧州市場における税制優遇措置の変更などによって、水色で示されたPHEVの販売台数が、すでに横ばい状態になっている様子も確認可能です。 ところが、黄色で示されているバッテリーEVの販売シェア率という観点では、直近の2023年第四四半期においても13%弱というシェア率に留まっており、2023年通しでのシェア率も概ね12%程度でした。 メルセデス・ベンツは公式に表明していなかったものの、現地メディアによれば、メルセデス・ベンツ内部の目標値は2023年シーズン通しでバッテリーEVのシェア率20%を掲げていたといいます。問題は、その目標値には遠く及んでいなかったという点です。メルセデス・ベンツが掲げた目標に対して、実際のバッテリーEVの販売台数が大きく乖離してしまっている現状が、2030年までのバッテリーEV100%という目標を大きく引き下げざるを得なかった要因なのです。 次に、このメルセデスの販売戦略を理解するうえでもっとも注目するべきは、そのマーケットごとの販売シェア率という観点です。 このグラフは、2019年以降の四半期別における地域別の販売台数、およびそのなかでも、中国市場の販売シェア率を示したものです。 このグラフのとおり、ドイツに本拠地を構えるメルセデス・ベンツの最大マーケットというのは、単独マーケットではダントツで中国市場であり、販売総数の3分の1以上、4割近い販売シェア率です。これは欧州全体の販売規模と同等のレベルでもあります。 つまり、メルセデス・ベンツの電動化戦略をはじめとする将来の販売戦略については、最大マーケットである中国市場の販売動向に大きく左右されるということなのです。

TAG: #EVシフト #輸入車 #電動化
TEXT:高橋 優
日本のEV販売動向に衝撃! 果たして2023年に日本では何台のEVが販売されたのか?

日本のEVシフトは本当に遅れているのか? 2023年は、日本国内における電気自動車の販売シェア率が大きく低下した1年であったことが判明しました。そして、2024年シーズンに関しても、このEV減少トレンドが続く可能性とともに、期待の新型EVに関する最新動向を取り上げます。 まず初めに、12月におけるバッテリーEV、およびPHEVの販売台数の合計は1万台オーバーを実現した一方で、2022年シーズンと比較すると、むしろ販売台数が低下していることが見て取れます。 この前年同月比割れというのは、2023年中でも初めてのことであり、2021年の2月以来、3年弱ぶりのことでもあります。いずれにしても、EVシフトが減速しているように見えるわけです。 次に、EV販売台数とともに、新車販売全体に占めるEVの販売シェア率についてですが、直近の12月については3.38%と、前年同月である2022年末に記録した歴史上最高の4.12%を下まわる結果になっています。 また、そのなかでもBEVに絞って見てみると、BEVの販売シェア率に関しては、直近の12月において2.19%と、やはり前年同月に記録した歴史上最高の3%オーバーと比較すると、かなり低下していることが見て取れます。 また、日本メーカー勢のBEVと、輸入メーカー勢のBEVの販売台数の内訳を見てみると、輸入EVについては歴史上最高水準の販売台数を実現しているものの、日本メーカー勢の、軽EVを除いた台数は、2023年で最低を記録してしまいました。 ちなみに、2023年の年間販売台数という観点では、2022年を上まわる販売台数であったものの、その伸び率という観点で、前年比2.5倍程度を実現していた2022年シーズンと比較すると、2023年シーズンはたったの1.3倍程度の成長と、販売ペースが鈍化してしまっていることも確認可能です。 そして、現状のEVの普及率が、世界の主要先進国と比較してどれほどであるのかを確認してみると、日本の2.19%というBEVのシェア率については、世界のなかでも最低水準です。 アメリカはすでに7%越えを実現し、欧州についても11月の段階で17%に到達。さらに新興国のタイ市場については20%の大台を突破、そして、世界最大のEV市場を有する中国市場については25%オーバー。 2020年のスタート時点ではどの国も横一線であったにも関わらず、3年が経過した段階で、これほどまでの差がついていることが見て取れるわけです。

TAG: #EVシフト #販売台数 #電動化

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EVヘッドライン
ヒョンデの魅力を日本に伝える新たな拠点! 「ヒョンデ みなとみらい 本社ショールーム」がグランドオープン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
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ニュース
交換式バッテリーの実用化は商用・フリートから! 米Ample社と三菱ふそうが提携し都内で実証実験開始
ホワイトで統一されたアクセサリーがカワイイ!  フィアット600eの特別仕様車「600e La Prima White Package」が登場
ルノーが手がけた伝説の名車が現代に蘇る! 小型EVホットモデル「ルノー5 ターボ 3E」とは
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コラム
「軽量化は最大のチューニング」なんて言うけど電気自動車には当てはまらない? 重さが有利に働くこともある!
1500馬力オーバーのEVスーパースポーツが開始2時間で1万台の予約ってどうなってんだ? これが中国の魔法か「シャオミSU7 Ultra」があまりに速すぎて安すぎる!!
トヨタやテスラの「ギガキャスト」にホンダの「メガキャスト」ってなに? いま知っておくべき電気自動車の製造方法
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インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
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試乗
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
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イベント
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
売り物ではなく概念を展示するモデリスタ! 正体不明なトヨタbZ4Xはブランドの「新化」という概念を示すスタディモデルだった【大阪オートメッセ2025】
子どもに大人気の電動バギーに大迫力のエアロキットや色が変わるフィルムまで登場! 大阪オートメッセのEV関連出展物はどれもユニークすぎた
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