#バッテリー
TEXT:桃田健史
いまやEV先進国! 安全面も気になる「中国」「韓国」のバッテリー性能ってどう?

中国は官民連携でEVの研究を進めてきた グローバルでEVの普及が進むなか、搭載されるバッテリーも世界各国で生産されるようになっている。そうしたなかで、中国製や韓国製のバッテリーの生産量も増加してきた。日本製バッテリーと比較して、性能はどうかという視点をもつ人がいるかもしれない。 また、EV市場規模で見れば、中国が世界最大の生産・販売大国であるので、自ずと中国製バッテリーの性能も、いまや世界の水準以上、または世界的に見て高水準であるはずと思う人もいるだろう。 韓国についても、ヒョンデ「IONIQ 5」の世界累計販売台数が34万台を突破しているなど、韓国ブランド車のEVシフトが着実に進んでおり、バッテリー性能も当然に高いと考える人が少なくないはずだ。 時計の針を少し戻してみると、中国でのEVシフトが鮮明になったのは、2000年代後半から2010年代前半にかけてだ。 当時、3大国家イベントだった2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、そして同年の広州アジア競技大会を、中国政府は中国のEV開発実態を内外に示す貴重な機会と位置付けた。それにあわせて、バッテリー、モーター、制御システム等、EV関連部品については、高度な次世代技術開発を国として統括する「863計画」が中核となり、官民連携でEV関連の研究開発を加速させた。 バッテリーについては、サイズの指標を示すなどして、メーカー間の性能差を可能な限り少なくする試みを行っていた。 そうした流れのなかで、BYDやCATLが事業基盤を徐々に築いていった。また、海外資本メーカーが中国国内でEVを製造する際、中国地場のバッテリーを導入することが必須であったことも、中国バッテリーメーカーの知見を増やすために大いに役立ったといえるだろう。

TAG: #バッテリー #中国 #韓国
TEXT:高橋 優
イマドキのEVバッテリーは思ったほど劣化しない! 7000台の調査でわかった20万km・30万km走行車のバッテリー残存率

EVバッテリーの劣化状況を調査 EVのバッテリー劣化に関して、第三者機関によるEV7000台以上を対象とした大規模な調査が実施されました。EVを購入するうえで重要な指標となるバッテリーの劣化問題に関する基礎知識を含めて解説します。 今回のEVのバッテリー劣化に関する最新の調査結果として、ドイツの自動車関連のコンサルティング会社のP3グループが、街なかを走っているEVのバッテリー劣化状況を調査しました。EVにおける高電圧バッテリーは生産コストの2〜3割を占めることからリセールバリューにも直結します。一方で、ネット上などでは、EVのバッテリーが想像以上に早く劣化してしまうなどの言説が飛び交っており、EVの普及という観点でバッテリー劣化に関する調査は極めて重要であると前置きされています。 今回の調査はP3グループの所有する50台のBEVとともに、バッテリー劣化に関する独自調査を実施する第三者機関と提携して、調査に協力する合計7000台以上ものBEVに、独自のOBDコネクターを装着。SOC100%から10%までを実際に運転し、その際に消費した電力量をリアルタイムでサーバーに記録。そこから外気温や走行シチュエーションによる影響を考慮したうえでバッテリー使用容量を判定。その車種ごとの新車時におけるバッテリー容量と走行距離から、それぞれのバッテリー劣化率を計算するという方法です。 まず、バッテリー劣化の調査を理解する上で押さえておくべき前提知識が、グロス容量とネット容量という2種類のバッテリー容量が存在するという点です。まずグロス容量は紛れもなくそのバッテリーパックのバッテリー容量を指します。他方で、過充電や過放電によるバッテリーへのダメージを避けるためなどを理由に、自動車メーカーはユーザーが実際に使用可能なバッテリー容量を意図的に制限。そのバッファーを除いた容量がネット容量となります。たとえば日産アリアでは91kWhのグロス容量を搭載しているものの、実際に使用可能なネット容量は87kWhに制限されています。 ちなみにその公称ネット容量と、車載ディスプレイ上に表示される100%から0%の使用可能電力量が一部車種で異なるという点も注意するべき点です。たとえばアリアの場合、ディスプレイ上で充電残量が0%と表示されたとしても、使用可能なネット容量はまだ4.5kWh程度(航続距離換算で20km以上に相当)残っています。 また、一部メーカーではバッファー容量を一定の走行距離などが経過すると一部開放したり、OTAアップデートによってバッファー容量を一部開放するなどの措置を行っています。いずれにしても、一般ユーザーがバッテリーの劣化状況を正確に判断することは難しいという点は押さえておくべきでしょう。 そして、この7000台以上の30kWh以上のバッテリーを搭載するBEVを調査した結果を示したグラフを見てみると、 ・約10万km走行した車両のバッテリー残存率は90%をわずかに超えている ・約20万km走行した車両のバッテリー残存率は88%程度 ・約30万km走行した車両のバッテリー残存率は87%程度で推移 欧州市場では概ね20万km以上走行させた車両は廃車となり、アメリカ市場でも約30万kmが廃車までのボーダーラインであることから、廃車までのバッテリー劣化率は約10%前半程度という調査結果が判明したわけです。 じつはテスラもモデル3とモデルYのロングレンジグレードにおけるバッテリー劣化率のデータを公開しています。20万km走行時点で80%後半程度、30万km走行時点でも85%程度を維持しています。 また、押さえておくべきバッテリー劣化の特徴のひとつに、新品状態からの劣化スピードが比較的早いという点が挙げられます。新品時ではバッテリーの負極側に形成されるSEI被膜が安定しておらず、そのSEI被膜の形成段階でリチウムが析出、その分だけエネルギー貯蔵量が減ってしまいます。これは経年劣化でも同様に発生していくものの、初期の形成時と比較すると影響は少なく、よってバッテリーの劣化度合いも初期劣化が終わると落ち着きます。バッテリー劣化のグラフでも初期の劣化スピードから徐々に劣化スピードが緩やかになっている様子が見て取れます。

TAG: #バッテリー #劣化
TEXT:渡辺陽一郎
バッテリーを交換してまで乗り続けるケースはレア! EVはバッテリーの寿命=クルマの寿命と捉える人がほとんどだった

ディーラーでバッテリーを交換した例は少ない 電気自動車の購入時に気になることは、駆動用リチウムイオン電池の劣化だ。充電と放電を繰り返すと、充電できる量が減ってくる。充電量が減ると、1回の充電で走行できる距離が短くなる。先代(初代)日産リーフのユーザーからは、「リーフを使っていると次第に走行可能な距離が短くなり、最後は満充電でも100km少々しか走らなくなった」という話を聞いた。 直近で電気自動車の開発者に尋ねると、「いまはリチウムイオン電池の温度管理も入念に行われ、10年ほど前に比べると電池の劣化が大幅に抑えられている」とコメントされた。 また、電気自動車ではリチウムイオン電池に関する保証も行っている。たとえば現行リーフでは「新車登録から8年間、あるいは16万km走行の早いほうにおいて、リチウムイオン電池の容量計が8セグメント以下になると、修理や部品交換によって9セグメント以上になることを保証する」としている。 ここではリチウムイオン電池を新品に交換するとは表現されていない。保証修理も含めて、リチウムイオン電池を交換するユーザーはどの程度いるのか、販売店に尋ねた。「規定の範囲内(新車登録から8年間、あるいは16万km走行の早いほうなど)であれば、リチウムイオン電池や部品の交換、修理などを保証している。しかし実際には、リチウムイオン電池を交換した例は少ない」 少なくとも8年間は劣化が少なく、それを超えて保証対象からはずれると、車両の価値が下がってしまう。そのために電池容量計が8セグメント以下になっても、有償で交換するユーザーはほとんどいないわけだ。電気自動車の寿命と判断される。 そして、電気自動車に搭載されて劣化したリチウムイオン電池は、クルマではなく汎用の蓄電池などに使われる。電気自動車のリチウムイオン電池は容量が大きく、その割に中古になれば価格が下がる。開発者は「車載用としては劣化が進んで航続可能距離が短くなっても、蓄電池に転用すれば十分な性能を発揮できる。汎用の蓄電池に比べると割安だ」という。 つまり、劣化したリチウムイオン電池には、蓄電池など車載用とは別の使い方があるわけだ。このような事情も含めて、電気自動車の電池を載せ換えて使うユーザーは少ないようだ。

TAG: #バッテリー #交換
TEXT:御堀直嗣
スマホならまだイケるのにEVのバッテリーは容量が70%を切ったら交換ってなぜ? 容量以外に求められるEV独特の性能とは

EVのバッテリーにはゆとりが不可欠 世界的に、ほとんどの自動車メーカーは電気自動車(EV)の車載リチウムイオンバッテリーについて、保証期間以前に容量が70%を切った場合、交換などの補償をするとしている。バッテリー容量がまだ7割近く残っているというのに、なぜ交換対象になるのか? 理由は、電気の利用の仕方による。これまで、一般的な電気製品はある一定の電流の使い方だったが、EVはそれと異なる使用条件になる。 電灯はもとより、冷蔵庫や電子レンジ、あるいはスマートフォンなども、基本は一定の電気の流れで稼働する製品だ。もちろん、スマートフォンの場合、動画を観る際などにより多くの電気を必要とする例もあるが、それでもEVほど急な増減はないので、一定電流で機能する定格出力が表示されている。 一方、EVに限らずクルマは、発進・停止を含め頻繁に加減速する使われ方なので、電気の利用も電流が増えたり減ったりし、なおかつ急加速では大量の電気を一気に必要とするので、バッテリー側のゆとりが不可欠だ。 EVのバッテリー容量が70%以下になったとすると、一充電走行距離が減るだけでなく、アクセルペダルを踏んでも運転者の操作(意図)どおりに加速できなくなる。それでは、交通の流れに乗りにくくなるばかりか、緊急回避のような場面で遅れを生じる懸念も出る。そこで、容量が70%を切るような状態になったら、クルマとしての使用には耐えないことになる。 対して、ある一定の電気を使うのが前提の電気製品では、じわじわと電気を使い続けるので、バッテリー容量がゼロになるまで使えるというわけだ。ことに、ニッケル水素バッテリーや、かつてのニッケル・カドミウム・バッテリーは、容量がゼロになってから充電したほうがよいとされている。いわゆるメモリー効果といわれる特性による。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー
TEXT:渡辺陽一郎
バカデカい電池を積んだEVで大して走らないんじゃむしろ環境に悪い! いま考えるべきEVの姿とは

製造段階で排出されるCO2の量はEVのほうが多い EV(電気自動車)は、地球温暖化を促進する二酸化炭素の排出抑制に効果的とされる。 その理由は、燃料を燃焼させるエンジンと異なり、走行する段階で二酸化炭素を排出しないからだ。風力や太陽光などの再生可能エネルギーによって発電された電気でEVを走らせれば、二酸化炭素の発生を効果的に防げる。 しかしEVを走らせる電気を火力発電によって生み出すと、その時点で二酸化炭素を排出する。さらにいえば、車両の製造/流通/廃棄など、走行以外の行程でも二酸化炭素が発生する。 EVでは駆動用リチウムイオン電池の製造段階で二酸化炭素が多く発生することも指摘されている。 この影響もあり、車両の製造段階で排出される二酸化炭素は、ガソリン/ディーゼルエンジン車よりもEVが上まわるとされる。その後の走行段階では、EVはエンジン車よりも二酸化炭素の排出量が少ないから、走行距離が増えるに従ってEVのメリットも際立ってくるわけだ。 ちなみに車両の製造段階を含めて、EVの二酸化炭素排出量がガソリン/ディーゼルエンジン車を下まわるのは、北米では購入後1年から1年半といわれる。ただし、比較する車両の燃費性能や電力消費量、1年あたりの走行距離によっても異なるから一概にはいえない。 マツダでは、MX-30 EVモデルが搭載する駆動用リチウムイオン電池の総電力量を35.5kWhに抑えた。その理由として「製造段階における二酸化炭素の排出抑制」を挙げている。 仮に95kWhの大型リチウムイオン電池を搭載した場合、製造時に発生する二酸化炭素が走行段階で取り戻せないほど多くなるという。そこでMX-30 EVモデルは、ライフサイクル全体で二酸化炭素を減らせるように総電力量を35.5kWhとした。 その上でマツダは「リチウムイオン電池の製造段階における二酸化炭素の排出量は、今後の技術進歩によって下がってくる。それに伴って総電力量を拡大して、1回の充電で走行可能な距離も拡大できる」としている。 以上のように60kWhを超える大容量のリチウムイオン電池を搭載したEVを購入して、1年間の走行距離が5000kmを下まわるような使い方では、二酸化炭素の排出抑制に結び付かない可能性もある。火力発電による電気で充電すれば、この傾向はさらに強まる。 結局のところ、EVの二酸化炭素排出量をライフサイクル全体で減らすには、ボディをコンパクトに軽く作ることが大切だ。そうなれば駆動用リチウムイオン電池も小さくなり、製造時の二酸化炭素排出量も減らせる。走行時の電力消費量も抑えられるから、ライフサイクル全体で二酸化炭素の発生を抑えられるわけだ。

TAG: #バッテリー #二酸化炭素 #排出量
TEXT:TET 編集部
「航続距離保証付き中古EVリース」でレアメタルの海外流出を防げ! 国内3社による中古EVを利用した画期的新サービスが始まる

レアメタルの塊なEVの約8割は海外流出している危機的状況 スマートフォンには貴重で高価なレアメタルが多く使用されていることから、故障品、機種変更等による代替の場合、本体の回収が積極的に進められていることは周知の事実だろう。そして、状態に応じて中古品として市場に出まわる場合や、レアメタルを抽出してバッテリーや電気機器の生産に活かされているケースも少なくない。 しかし、ことEVに関してはどうだろうか? 乗らなくなったら買い取り業者かディーラーへ下取りに出すのが一般的だと思うし、そうしたクルマを売買する行為そのものは、例え電気自動車であったとしてもそれまでの内燃機関(ICE)を搭載したクルマとさして変わるところはないはずだ。 だが、日本国内では、ICE車が新車登録から2オーナー、3オーナーと所有者を変えながら10年超は国内で利用されているのに対し、EVに関しては新車登録から5~7年程度の比較的高年式な個体であっても、国内需要の乏しさもあり、約74%が海外に輸出されているそうだ。これでは貴重な資源が国内循環せず、各産業の資源調達コストの抑制や産業発展にはつながらないばかりか、多量のレアメタル、レアアースをみすみす他国に献上しているようなものだ。 その状況を打破しようと動き出したのが、循環型流通事業のコンサルティングや中古医療機器、ブランド品、クルマなどのオンラインオークションを行っている「オークネット」と、リース大手の「東京キャピタル」、そして「三菱HCキャピタル」の3社だ。 EV導入でカーボンニュートラル化を加速させるために必要のこととは? 国内の新車販売におけるEV販売シェアは年々上昇しているものの、それでも2023年時点で1.6%に達したに過ぎない。個人所有はもちろんのこと、事業用車両としてEVの導入を検討している企業にとって、車種構成の少なさや利用料金の高さから、新車EVのリースは勢いを欠いているのだという。 ならば、中古EVで企業のカーボンニュートラル化を進めよう!……と思っても、リチウムイオンバッテリーの性能劣化による航続距離の低下に懸念を抱き、導入を見送るケースが少なくないという声もある。 これらの理由により、比較的状態のよい中古EVであっても、需要がなく市場流通しない。オークネットが直近10カ月のオートオークションの結果を調べたところ、先述の通りバッテリーの劣化がそれほど進んでいない、新車登録から5~7年程度の中古EVのうち、約74%が海外に輸出されてしまっているというのが現状だ。 そこで、まだ十分利用できる中古EV、ならびにそこに搭載されている貴重資源の海外流出を防ぐべく、オークネットがリース大手の東京センチュリー、三菱HCキャピタルと「航続距離保証付き中古EVリースサービス」の構築に向け基本合意書を締結したと、2024年12月16日に発表した。 航続距離保証付き中古EVリースサービスの概要は次の通りだ。 1.オークネットが保証する航続距離(リース開始時のEVバッテリー劣化度合を加味した、満充電時の航続距離)を付した中古EVを、提携リース各社が関係会社を通じて提供する 2.万一、リース契約期間中に保証する航続距離を走ることができなくなった場合は、リース契約を解除する、もしくは、再度航続距離を満たす車両に交換することを可能とする 3.リース期間中の故障についても、オークネットと提携リース各社との規定に従った保証を受けることを可能とする また、リース後の車両(新車登録後8~10年程度経過)は、オークネットが買取り、使用済みEVバッテリーを活用したリパーパス製品流通プラットフォーム「Energy Loop Terminal(エナジー・ループ・ターミナル)」を通じて、リパーパス(製品における使用を終えたものを、目的を転じて別の製品に組込んで再度活用すること)による資源循環を進めていくという。 使用済みEVバッテリーをリパーパス製品として価値をつなぐ エナジー・ループ・ターミナルとは、EVに搭載されていた使用済みEVバッテリーを、診断結果や買い手企業のニーズに応じてリパーパス製品として流通させることを目的とした、B to B向けの流通プラットフォームだ。 2024年8月にリリースされたエナジー・ループ・ターミナルは、オークネットがプラットフォームの開発・運営・顧客開拓等を行い、パートナー企業のMIRAI-LABOがバッテリーの劣化診断業務と、バッテリーマネージメントシステム(BMS)付きバッテリーおよびリパーパス製品の商品化および製品保証、評価業務などを行う。 こうすることで、航続距離保証付き中古EVリースサービスでの利用を終えたEVバッテリーは、リパーパス製品設計事業者や製造事業者、リサイクル事業者などにその価値をつなぎ、国内のサーキュラーエコノミー実現に貢献していく構えだ。 また、オークネットは、中古EVの導入先が日々運行するのに必要な航続距離をデータ取得により算出し、バッテリーの劣化度合を加味して算定した満充電時の航続可能距離を保証する。そして東京センチュリーは、新車EVに比べ安価なリース料金で顧客に提供する考えだ。 東京センチュリーが発表したリリースのなかでも、自社グループ全体で約70万台ある車両管理台数のうち、EVの管理台数を2030年までには10万台へ引き上げる旨が語られており、EVシフトに積極的な姿勢だ。だからこそ一充電走行距離が保証されている中古EVを、安価に提供することにも積極的な動きを見せることが予想される。 カーボンニュートラルに向け産業界全体が電動化シフトを進めるなか、EVへの転換に二の足を踏んでいた企業にとって、自社の車両利用実績を分析のうえ、必要十分な航続可能距離をもった中古EVを保証付きでリースできれば、安心かつコストの低減にもつながるだろう。EVの利活用促進と、貴重な資源の国内循環活性化の両面から、期待の持てる取り組みになりそうだ。早期の実現を期待したい。

TAG: #バッテリー #レアアース #中古車
TEXT:御堀直嗣
とりあえず余裕のあるやつ買っとけば……は損! EVのバッテリーは「大は小を兼ねない」

駆動用バッテリーの重さは大人数名分 「大は小を兼ねる」ということわざがある。それは、電気自動車(EV)に車載される駆動用バッテリーについてもいえるだろうか。大容量のバッテリーを車載するEVのほうが、より長距離を充電せずに走れるからだ。 しかし、日常的あるいは頻繁に長距離をクルマで移動している人以外は、考え物だといえそうだ。 EVの駆動用バッテリーは、小さな容量でも数百キログラム(kg)の重さがある。乗車人数に換算すると、3~4人に相当するだろう。そもそも軽自動車のEVでさえ、複数人数で乗車して移動しているくらいのバッテリー重量になっている。まして、一充電で長距離を走り切れるEVになれば、7~8人がつねに乗って移動しているのと同じといえるのではないか。 エンジン車でも、燃費を改善するには、余計な荷物を積まずに使うほうがよいといわれる。余計な荷物さえ降ろしたほうがいいくらいなのだから、大容量バッテリーのEVは、それ以上の重さを常に抱えながらの走りになっているといえる。 バッテリー容量と一充電走行距離の相関関係を、改めて検証してみる。 日産サクラのリチウムイオンバッテリー容量は20kWh(キロ・ワット・アワー)だ。登録車のリーフは、標準車で40kWh、e+(イー・プラス)で60kWhのリチウムイオンバッテリーを車載している。ちなみに、アリアは最大(B9)で91kWhだ。 それらバッテリー容量によって、サクラは一充電走行距離が180km、リーフの標準車は322kmで、リーフe+になると458km、アリアは2輪駆動車で640km走れる。 サクラと比べれば、リーフの標準車は2倍のバッテリー容量、リーフe+は3倍、アリアは4.5倍のバッテリー容量だ。ではその増量分に対し、延長された走行距離は何倍になっているか。リーフの標準車は1.78倍、リーフe+は2.54倍、アリアは3.55倍で、バッテリー容量の倍増分に比べ、走行距離の伸びは少なくなっているのがわかる。 つまり、バッテリー容量が増えれば増えるほど絶対的走行距離はたしかに伸びるが、伸びしろという効率でみれば、バッテリーを倍増させたぶんそのまま遠くへ行けるわけではないのである。

TAG: #バッテリー #容量
TEXT:桃田健史
乗用車への採用はいまのところ期待薄! 充電待ちから解放される夢のバッテリー交換式EVの行方

最大の課題は電池パックや交換作業等の標準化 ENEOSホールディングス、アメリカのスタートアップ「Ample」、そしてタクシー大手のエムケイホールディングスは、京都でEV向けバッテリー全自動交換ステーションの実証実験で協力している。 バッテリーを交換するというアイディア自体は、以前から存在する。 時計の針を少し戻すと、日産リーフが世に出て間もない2000年代後半から2010年代前半にかけて、中東イスラエルとの関係が深いアメリカのスタートアップ「ベタープレイス」の存在が注目された。 同社は、日本政府からの事業支援を受けて、都内や横浜市内でEVタクシー向けの全自動交換ステーション実証を行ったことがある。筆者は当時、同社幹部らに事業計画について詳しく取材したが、同社はその後しばらくして事業を解散している。 中国では2000年代の北京オリンピック開催のタイミングで、市内中心部を走行するEVバスで交換式バッテリーを社会実装した。 2010年代に入ってからも、中国では乗用EV向けのバッテリー全自動交換ステーションの実用化を進めるさまざまな動きがあったが、ステーション導入におけるコスト、ステーション数の伸び悩み、そしてユーザーに対する安定したサービス体制維持に対する不備などがあり、一気に普及したとはいい切れなかった。 話を現在に戻すと、自動車産業界は2050年までにグローバルでカーボンニュートラルを目指すという大義のもと、少なくとも2030年代には本格的なEVシフトが始まるという予測を立てながら、2020年代を「EV普及に向けた移行期」と捉えているところだ。 そうなると、今一度、EV普及に向けた根本的な課題を注視する必要が出てきた。 EVが普及するための三大要素は、電池コスト、航続距離、そして充電時間といわれて久しい。バッテリー交換型EVになれば、充電時間は電池交換時間となるので短くできる。 また、電池パックの容量を大きくしたり、バッテリー交換ステーションの設置場所が増えれば航続距離についての不安も少なくなるだろう。 さらに、ユーザーが電池パックを所有するのではなく、充電サービスの一環として捉えるならば、EV本体のコスト削減にもつながる。 このように、バッテリー交換型EVは「いいことずくめ」に思える。だが、最大の課題は電池パックや交換作業等の標準化だ。少なくとも、乗用EVについてはこの分野での議論が活発に進んでいるとはいえない。 他方、トラックなど商用車におけるバッテリー交換式EVについては、国土交通省が1月、「国際基準の策定をオールジャパンで目指す」という方針を発表している。 こうした国の議論と京都でのEVタクシー実証が上手く連動することを期待したい。

TAG: #バッテリー #バッテリー交換型EV
TEXT:桃田健史
自分のEVが積んでる「電池のメーカー」がわからない! 最近自動車メーカーが「バッテリーのサプライヤー」を公表しないワケ

2010年代半ばから状況が一変 「このEV(電気自動車)、どこのメーカーの電池を積んでいるんですか?」。 ユーザーが新車販売店でそう聞いても、販売担当者は「メーカーが公開していないので、こちらではわかりかねます」と回答する場合が少なくないだろう。 これは販売店担当者の言い訳ではない。報道陣向けの新車試乗会や発表会の場で、EVの開発担当者に対して報道陣が聞いても「サプライヤー(製造メーカー)については公表しないことになっています」といわれるのが当たり前になっている。 それでも、海外メディアのなかには、各メーカーが搭載する電池メーカーについて、関係者の話として掲載する場合がある。ただし、技術面や事業面に対する経営判断によって、電池のサプライヤーが変化する場合もあるため、ネット上の情報の正確性を問うのは難しい。 時計の針を少し戻してみると、EVが大量生産されて世に出始めた2000年代後半から2010年代前半頃までは、EVを手掛ける自動車メーカーは搭載する電池について、いまと比べるとより多くの情報を開示していた印象がある。 たとえば、「リーフ」を世に送り出した日産は、NECトーキン(当時)との合弁事業を立ち上げ、日産社内で電池技術を手の内化(てのうちか)を強化した。 海外では、メルセデス・ベンツ(当時ダイムラー)は、電池の材料、電池セル製造、電池パック製造それぞれでドイツ国内企業とパートナーシップを組んで、自社グループ内で電気技術の熟成を加速させることを試みた。 また、円筒形の電池を数千本も使って電池パック化するテスラは、パナソニックと連携しながら円筒形電池の技術革新を進めた。 そうした状況が、2010年代半ばから後半にかけて大きく変化した。背景には、欧州、アメリカ、中国の間で政治的な思惑による環境関連事業などに対する投資が活発化したことが挙げられる。 この影響によって、自動車メーカー各社は製造する国や地域によって、同じ車種であっても採用する電池メーカーが違うケースが出てきたり、または長年取引のある電池メーカーとの契約を終了することもある。 さらに、直近では全固体電池について、自動車メーカー各社が自社で基礎研究や量産開発を進め、場合によっては化学関連メーカーとパートナーシップを組むこともある。 事例としては、トヨタと出光との連携が挙げられる。 このように、EVが本格普及に向けた準備期間から、中・長期的に見れば普及に向けて大きく市場拡大しようとしているいま、自動車メーカーと電池メーカーとのかかわりは大きな変化の時期を迎えているといえよう。

TAG: #バッテリー #メーカー
TEXT:御堀直嗣
EVのバッテリーも中を開けると「円筒型」「角型」「ラミネート型」とさまざま! それぞれどんな特徴があるのか?

円筒型は乾電池と同じ形状 電気自動車(EV)に駆動用として搭載されるバッテリーは、最小単位であるセルに、形状の違いがいくつかある。代表的なものでいえば、円筒型/角型/ラミネート型などだ。 円筒型は、乾電池などと同じ、筒形をしていて、筒の頭頂部の出っ張りが正極(+極)、反対側の端が負極(-極)になる。ケース内の電極は、巻物のように巻かれている。 米国のテスラがEV発売に乗り出した際に用いられたのがこの円筒型で、それは、パーソナルコンピュータ(PC)などで使われていた汎用のリチウムイオンバッテリーの活用だった。 円筒型は、たとえば初代のトヨタ・プリウスのハイブリッド車(HV)向けニッケル水素でも採用されたことがあり、同じ円筒型のニッケル水素バッテリーは、ホンダの初代インサイトでも使われた。 使い捨ての乾電池だけでなく、充放電を繰り返せる単3蓄電池などでもニッケル・カドミウム(通称ニッカド)やニッケル水素で家庭電化製品に使われてきた形式なので、生産技術が確立され、原価を抑えることに成功している。 現在でも、テスラのほか、SUBARUやマツダがパナソニックの円筒型バッテリーの契約を結ぶなど、新しいニュースもある。また、高密度な新しい設計の円筒型の開発も行われている。 ただ、正負極が筒の上下両端にあるため、配線などに工夫が必要だ。また、数多くのセルをバッテリーケースへ詰め込もうとすると、筒状の丸い外観なので、隣同士のセルとの間に隙間が生じ、積載密度で劣る可能性がある。 ほかに、電極が巻物のように巻かれているため、中心部と外周側で温度差が生じる可能性があり、リチウムイオンバッテリーで重要な温度管理に難しさがありそうだ。そこで、余裕ある容量の確保と、充放電制御の成熟度が試される。

TAG: #バッテリー #リチウムイオンバッテリー

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