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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
商用EVにも地殻変動か、三菱ふそうと日野が経営統合

それぞれの親会社のトヨタ自動車とダイムラー・トラックが合弁会社を設立 三菱ふそう車にトヨタのFCが載る可能性も 【THE 視点】日野自動車と三菱ふそうトラック・バス(三菱ふそう)は30日、経営統合することで基本合意したと発表した。三菱ふそうの親会社であるダイムラー・トラックと、日野の親会社であるトヨタ自動車の4社で基本合意書を同日付で締結した。 トヨタとダイムラー・トラックが合弁会社を設立し、日野と三菱ふそうの両ブランドを残しながら、商用車の開発・調達・生産分野で協業し、水素をはじめとする「CASE(※1)」技術開発を加速させる。 これで、トヨタの燃料電池(FC)を活用した日野のバス「ソラ」や、大型FCEVトラックの技術をダイムラー側が、一方で三菱ふそうの小型EVトラック「eキャンター」の技術や、ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツ等がもつ大型バッテリー式EVトラック・バスの技術をトヨタ側が手に入れることになる。 今や単独で「CASE」技術を開発するには限界が見えたのだとみられる。双方が持つ技術を、双方が使えるようになれば、新たなシナジーも生まれよう。 筆者が予想するには、大型トラックの電動化はFCEV、中・小型トラックはバッテリー式EVという方向に明確に進むと思われる。大型車はやはり、充電時間と走行距離を考えると、バッテリー式は難しいところがある。 日本では、刺身にする鮮魚のような鮮度最優先の生鮮食品の輸送もある。充電に時間がかかるバッテリー式の大型EVトラックの場合、大きなタイムロスが発生してしまう。 なお同日行われた会見では、トヨタを中心とする「CJPT(※2)」への、三菱ふそう側の参加については発表やコメントがなかった。 日野は、バスに関してはいすゞと製造部門を統合した「ジェイ・バス」も抱えている。どのような影響が出るのかも気になるところだ。たとえばダイムラー・トラックは、傘下のメルセデス・ベンツ名義で大型EVバスをドイツで製造・販売して公共交通機関に納入するなどの実績を持つ。あわよくば、そのEVバスの導入もあり得る。 ともあれ、三菱ふそうとの事業統合は、国内の商用車業界に大きく影響しそうである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ※1:CASE……「コネクテッド」「自動化」「シェアリング」「電動化」の英語の頭文字をとった造語 ※2:CJPT……「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ」の略語、トヨタが中心となりいすゞも参画する次世代商用車の開発団体 ★★メルセデス・ベンツ、新型EV「EQS SUV」を日本で発売……7人乗りに対応、メーカー初のEV専用プラットフォームを採用[詳細はこちら<click>] ★関東鉄道、茨城県初の路線型の大型EVバスを導入……「BYD K8」(定員81人)を採用、6月1日より守谷営業所管内で運行開始 ★東京都、お台場や有明地区などの臨海部でEVバイクシェアリングを5月29日より開始……ドコモ・バイクシェアと共同事業、前二輪のトライクタイプの小型EVを導入 ★メルセデス・ベンツ、EVのトラクター・ヘッド「eアクトロス」シリーズの長距離テストを実施……ドイツのヴェルト工場からトルコのアクサライまで3,000km、秋に量産開始 ★東北大学、「カルシウム蓄電池」の500回以上の充放電に成功……レアメタル不使用の次世代型バッテリー、トヨタ北米先端研究所も研究に協力 デイリーEVヘッドライン[2023.05.31]

TAG: #THE視点 #商用EV #国内ビジネス
TEXT:福田 雅敏
観光型EVバス普及で浮き彫りになる問題……専用の充電インフラがない[THE視点]

「2023 バステクフォーラム」が5月12日、大阪・舞洲スポーツアイランド「空の広場」<大阪市此花区>にて開催された。前編[詳細はこちら]では、会場にて試乗ができた路線型のEVバスを紹介した。 しかし会場には、路線型以外にも観光型のEVバスが展示されていた。現在、日本はインバウンド需要などが再び高まり、観光バスの出番も増えていると聞く。今後導入が検討されるであろう観光型のEVバスは一体どのような特徴があるのか、むしろ、無視できない問題が浮き彫りとなってきた。 EVモーターズ・ジャパンが提案する観光型のEVバス EVモーターズ・ジャパンが会場に持ち込んだもうひとつのEVバスが、観光型の「F8 シリーズ6 コーチ」だ。 全長8.85m×全幅2.49mの観光バスで、定員は35人。最大容量210kWhのバッテリーで、280km(社内基準値)の航続距離を持つ。モーターは最高出力240kW(326ps)。ステンレスのシャシーにFRPのボディや「アクティブ・インバーター」を搭載しているところなど、根底の設計は路線バスタイプと同じだ。 この観光タイプも現在は中国生産だ。内外ともに品質のレベルは高いが、内装面ではUSBソケットが付く程度。簡素ではあるが、国内の観光バスのクオリティに合わせるには、価格やバッテリー容量の問題を解決しなければならないのだろう。 ちなみにバッテリーは、床下はもちろんトランク・ルームにも設けられていた。価格は5,500万円(標準車)で、観光型としてはリーズナブルに思える。 EVモーターズ・ジャパンは現在、北九州にEVバス工場を建設中であり、完成次第国内生産に切り替える予定だという。国産化するということは、内外の完成度に相当のクオリティが求められることになる。 しかし逆に捉えれば、国産の観光型EVバスのリーディングカンパニーになれるチャンスとも言えよう。是非とも日本の商用EV企業としての底力を見せて頂きたい。 ちなみに参加者には、帰る際にアンケート代わりにシール3枚が渡され、それを良かったブースに貼って帰るのがこのイベントの特徴。今回印象的だったのは、私が帰る時点で、EVモーターズ・ジャパンに一番多くのシールが貼られていたことだった。

TAG: #EVバス #EVモーターズ・ジャパン #THE視点
TEXT:福田 雅敏
路線型EVバスは乗客に優しい乗り心地……「2023 バステクフォーラム」よりレポート[THE視点]

4台のEVバスを試乗・展示 「2023 バステクフォーラム」が5月12日、大阪・舞洲スポーツアイランド「空の広場」<大阪市此花区>にて開催された。14回目となる今回は、二十数社の参加により最新のEVバスの試乗・展示が行われた。今回はその中から、実際に試乗した路線型EVバスの3台をレポートする。 ちなみに今回、バス全体の展示台数は17台あり、そのうち4台がEVバスであった。EVバス関連の周辺機器としては、急速充電器1台の展示もあった。 展示&試乗車は以下の4台となる。 ・EVモーターズ・ジャパン  「F8シリーズ2-シティ・バス」:全長10.5m路線バス(試乗車)  「F8 シリーズ6-コーチ」: 全長8.8m観光バス(展示車) ・オノエンジニアリング  「オノエン・スターEV」: 全長9m(試乗車) ・アルファバスジャパン  「アルファバス E-シティ L10」: 全長10.5m(試乗車) 試乗は乗客としてバスに乗り、会場内の決められたコースを周回した。各バスそれぞれの特徴を体感できたのでお伝えしたい。

TAG: #EVバス #THE視点 #国内ビジネス
TEXT:小川 勤
バイクのEV化に対する海外と日本の温度差、欧州のショーで年々敷地面積を拡大するEVバイク[EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その4]

自動車と同様にバイクも多様な電動車は欧米や中国のメーカーから続々と発表されているようだ。EICMA(ミラノモーターサイクルショー)でそれらを目の当たりにしたモーターサイクルジャーナリストの小川 勤さんにユニークなバイク達の印象を語ってもらった。 オリジナリティは高いが不安になるスペックが乱立するEVバイクも…… こ、これはどうなのだろう……。このダヴィンチという中国メーカーのバイクのスペックを見て驚愕した。興味のある方はメーカーのサイトに飛んでいただきたいが、最高時速は200km/h、最高出力は100kW(135ps)とあるが、少なくとも僕はこのディメンションや細部の作り込みでこの速度を出す気にはならなかった。 説明によると1000個以上のチップや200個以上の高性能センサーを採用しており、スマートフォンが鍵にも、メーターにもなるらしい。足まわりは本格的で倒立フォークにブレンボ製のキャリパーを装備。電子制御はヒル・スタート・アシスト・コントロール(坂道発進をサポート)やリバースアシスト(バック機能)、コンバインド・ブレーキ(ABS機能)、トラクション・コントロールも搭載している。 しかし、スポーツバイクに必要なホールド性の高いポジションは考慮されておらず、趣味のバイクに必要な美しさや機能美もない。価格は2万7500ドル(1ドル=135円の場合、約370万円)とかなり高めで、すでにアメリカでは発売されているらしい。少なくとも僕にこのEVバイクを受け入れる感性はなかった。 https://global.davincimotor.com/ 一方で気になったのはスウェーデンのCAKE(ケイク)だ。EICMA 2022で『Sustainable Exhibitor Award(持続可能な出展者賞)を受賞し、日本ではゴールドウインが代理店となって販売を進めていくメーカーだ。 2016年よりスタートしたケイクは、「エキサイティングなモビリティ体験」と「環境への責任」の両立を目指し、ゼロエミッション社会への移行を加速させることを使命として活動している。ケイクが考える持続可能性とは、人と自然の共生をよりスマートで、環境に優しく、健康的かつ平和的に実現することにある。そのためにケイク社は年齢や性別、サイズ、スタイルを問わず、誰しもが敬意をもって自然と都市を冒険できる製品を生み出している。 ケイクで森の中を鳥のさえずりを聞きながら駆け抜ける喜びは想像に難しくないが、価格は高めでオフロードイメージのバイクである「カルク」は247万5000円から。その喜びを堪能するのはかなりハードルが高そうだ。 https://goldwin.ridecake.jp/

TAG: #エネルジカ #ケイク #ドゥカティ #トライアンフ #ベロシフェロ #モトパリラ
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ヤマト運輸など、FCEV大型トラックの実証実験を開始……デイリーEVヘッドライン[2023.05.19]

ヤマト運輸/アサヒグループ/ネクスト・ロジスティクス・ジャパン/西濃運輸の計4社が参画する大規模実証 短時間充填が可能な水素は物流に有効と判断 【THE 視点】ヤマト運輸/アサヒグループジャパン/西濃運輸/ネクスト・ロジスティクス・ジャパンの4社は5月17日、FCEV(燃料電池車)大型トラックの走行実証を開始すると発表した。FCEV大型トラックの走行は日本初だという。 本実証には、トヨタ自動車と日野自動車が共同開発した車両(「日野プロフィア」がベース)を使用する。各社の実際の輸送業務及びルートに使用し、水素燃料活用の可能性と実用性の検証を行う。 実証に用いるFCEV大型トラックの航続距離は約600km。トヨタの技術をベースに大型車用に最適化した燃料電池(FC)を2基搭載。高圧水素タンクも新開発のものを6本、さらに来年予定されている高速水素充填規格にも対応可能な水素充填口を装備している。 発表内容によれば、国内商用車全体の温室効果ガス排出量は、全体の約7割を大型トラックが占めているとのこと。特に幹線輸送に使われる大型トラックは、十分な航続距離と積載量、短時間での燃料供給が求められるため、エネルギー密度の高い水素を燃料とするFCが有効であると判断したようだ。 当初、この実証試験は2022年春に開始と発表されていたが、1年遅れての出発となった。時を合わせたかのように、いすゞとホンダもFCEV大型トラックの共同実証を先日発表している[詳細はこちら]。これで日本国内でのFCEV大型トラックの開発が一気に走り出した形だ。 今回の発表で目に止まったのは、「高速水素充填規格」に対応することだ。車両が大型になれば水素充填量も多くなり、充填に時間が掛かるようになる。どれほど高速化するかは不明だが、もしかしたら国内レースの「スーパー耐久シリーズ」に出場している水素エンジンの「GRカローラ」を通して開発された急速充填技術が応用されているのかもしれない。 FCEVに乗る筆者は水素充填の際に、先行するFCEVバスの充填完了を20分待ったことがある。それが緩和されるということで、FC界隈の技術開発の進化を実感した。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ヒョンデ、東京都江東区に納車拠点「Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲」をオープン……「A PIT オートバックス東雲」内に開設、試乗や購入相談も可能[詳細はこちら<click>] ★★ボードリー、自動運転レベル4(運転者を必要としない自動運転)対応のEV「ミカ」を国内導入……茨城県境町が2023年度中に導入、障害物回避機能も搭載 ★★東京R&D、FCEVスポーツコンセプトを「人とくるまのテクノロジー展」にて公開……「VEMAC RD200」の次期型を想定 ★ジヤトコ、トランスミッション付きのモーター一体型駆動装置(イー・アクスル)を「人とくるまのテクノロジー展」にて世界初公開……並行軸タイプのイー・アクスルも ★テラモーターズ、栃木県那須塩原市にEV充電器を大規模導入……市役所や黒磯公民館など公共施設を中心に計100基 ★ステランティス、空飛ぶクルマに出資……全電動垂直離着陸(eVTOL)機開発のアーチャー・アビエーションに最大1億5,000万ドル ★ボルボ、「EX30」の安全機能を一部公開……ドア開放時に警告音、後続の自転車とのドアの接触を防止 ★BMW、EV船「THE ICON」を「第76回カンヌ映画祭」にて発表……走行中は船体が浮き上がる水中翼船方式、最高速度は55km/h ★NITTOKU、モーター一体型駆動装置(イー・アクスル)用ヘアピンモーターの生産ラインを受注……中国のモーターメーカーより20億円分 ★ヒョンデ、「Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲」で試乗会を開催……5月20日(土)・21日(日)の2日間、「アイオニック 5 ラウンジAWD」と「同リミテッド・エディション」を用意 ★テスラ、軽井沢で試乗会を開催……5月27日(土)・28日(日)に「軽井沢・プロンスショッピングプラザ」<長野県軽井沢町>にて、「モデルY」「モデル3」を用意 ★アイシン、「イー・アクスル」や「回生協調ブレーキ」などを「人とくるまのテクノロジー展」に展示 ★ヤマハ、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」を再現したレンタルサービスを実施……TV番組と同カラーリングの「E-ビーノ」とヘルメットを貸し出し、代官山エリアと伊豆大島で展開 ※ 「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」……パシフィコ横浜(横浜市西区)にて5月24日(水)〜26日(金)に開催

TAG: #THE視点 #商用EV #燃料電池車(FCEV)
TEXT:烏山 大輔
国内初、機械式駐車場でEV用自動ワイヤレス充電の運用実証を開始

株式会社技研製作所は、株式会社ダイヘンと共同で、技研製作所 高知本社の超小型EV専用機械式駐車場「EVエコパーク」での自動ワイヤレス充電の運用実証を開始した。機械式駐車場での運用実証は国内初で、10月末まで実施後、実用化に向けて課題を洗い出し、改善につなげる。 EVエコパークでの運用実証 この運用実証では、ダイヘンが開発したワイヤレス充電システム(非接触充電)の受電装置を超小型EVに搭載し、給電装置が「EVエコパーク」に設置される。このシステムでは、従来の手動でケーブル接続を行う接触充電仕様とは異なり、車両が入庫するだけで自動的に充電が開始されるため、利便性が大幅に向上する。この実証では、技研製作所の従業員が通勤などでこのシステムを利用し、システムの連動や従来の接触充電方式との比較試験などを行う。 運用実証で得られた技術は、普通自動車や軽自動車タイプのEVにも適用できるものであり、将来的にはこれらの車両に対応した「EVエコパーク」の展開に繋げることができる。この実証を社会実装に結び付けることでEVの普及を促進し、カーボンニュートラルな社会や機能的なまちづくりに貢献していくことが期待される。 運用実証で使用される機器・車両 超小型EV専用機械式駐車場「EVエコパーク」(技研製作所製) 直径9.5m、高さ15mの円筒形で、占有面積は約80㎡と非常にコンパクトな設計だ。しかし、その小さなスペースに40台の車両を収容することができる(1層に8台、5層建て)。一般的な平置き駐車場の約5分の1の面積しか占有しないため、都市部の駐車場不足問題を解決する一助となることが期待されている。 さらにこの駐車システムの魅力は、迅速な入出庫時間にある。平均入庫時間は18.9秒(最短15.5秒)、出庫時間は平均19.7秒(最短17.2秒)だ。待ち時間を短くでき、滞留も発生しづらいため、従来の機械式駐車場では必要だった広い待合スペースの確保が不要となる。 また、「EVエコパーク」では、車両の入庫時には自動的に車両を所定の位置に搬送する。これによりワイヤレス充電システムの、車両の受電装置と充電設備の給電装置の距離が離れてしまうと充電効率が低下する課題を解決する。「EVエコパーク」では、充電に最適な位置に車両を収容することで、最大効率での充電を可能にする。 EV用ワイヤレス充電システム「D-Broad EV」(ダイヘン製) 車両が所定の位置に停められると自動的に検知され、急速充電が開始される(現在は普通充電レベルでの実証が行われているが、今後ダイヘンにより急速充電レベルのシステム開発が進められる予定)。 このシステムでは、業界最高水準の高効率給電が可能となる磁界共鳴方式が採用されている。磁界共鳴方式は、充電設備と車両の間で磁場を共鳴させることで、高効率かつ安定した給電を実現する。システム効率は90%以上で、エネルギーのロスを最小限に抑えながら効率的に充電できる。 超小型BEV「C+Pod」(トヨタ製) 全長約2.49m、全幅1.29 m、全高1.55 mとコンパクトなデザインで、最高速度は60km/hの2人乗り。9.06kWhのリチウムイオン・バッテリーを搭載し、一度の充電で最大約150kmの走行が可能だ。100Vもしくは200Vの普通充電に対応しており、100Vだと約16時間、200Vでは約5時間で充電できる。 ガソリンスタンドに給油に行かなくていいBEVだが、唯一の手間が充電作業だ。特に雨の日に濡れながらの作業は相当なストレスだと考えられる。 自宅や会社で充電作業から解放されるこのシステムが実用化すれば、ユーザーのストレスが減り大きなメリットとなるだろう。 所定の位置に駐車したら自動で充電されるということは、カーシェアにBEVが導入された際にも、使い終わった利用者に充電作業を強いることもなく、次の利用者も充電されていなくて困るという事態を減らすことにもつながるだろう。10月の実証終了後の展開に期待したい。

TAG: #EV充電器 #自動ワイヤレス充電
TEXT:小川 勤
燃費と加速性能を両立するカワサキのハイブリッドバイク[EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その3]

EICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表されたカワサキのハイブリッドバイクと水素エンジンバイクについて、カワサキ側の考えを聞いて、実車を見て、モーターサイクルジャーナリストの小川さんが思ったこととは? 距離を走ることと加速。これが趣味領域のバイクに大切なこと 『125cc以上=距離を走る趣味の領域』はハイブリッド。これがカワサキの出したカーボンニュートラル化のひとつの答えである。フルEVや水素ももちろん開発しているが、まずは燃費を良くすることにカワサキは注力する。 それがエンジンと電気のハイブリッドバイクであるHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)モーターサイクルだ。数ある二輪メーカーの中でもハイブリッドに着目しているメーカーは少ないが、カワサキはその可能性を模索している。 「EVの開発を進めていると、125cc相当はEVの方が効率が良いことがわかってきました。しかしそれ以上になるとバッテリーも大きくなるし、コストもかかる。もちろん重たくもなります。でも、遠くには行きたい。街から出たいじゃないですか。ニンジャZX-10Rなどを開発しながら、頭の中でハイブリッドやりたいなとずっと燻っていました。 ガソリンエンジンのままではいつまでもカーボンニュートラルにならないけれど、ハイブリッドなら燃費をよくできます。四輪のハイブリッドは、燃費を良くすることにふっていますが、バイクだと燃費を狙うとファンの部分をつくるのが難しい。 だからカワサキのハイブリッドは、加速を楽しめるハイブリッドです」とカワサキの先進技術&カーボンニュートラルの総括部長である松田義基さん。 すでにテスト走行シーンも公開しているが、その加速性能はテストライダーも驚くほどなのだという。 「ゼロ・スタートからバンッといきます。加速感はまさしくエンジンとモーターを足した感じです。面白いのは間違いないんです」と語る松田さんの表情は自信に満ちている。 電動化の前に燃費を良くすることを考える いま、欧州のガソリン価格は国によって変わるけれど1L1.5ユーロ以上で、日本よりも高い。クルマやバイクでの移動はコスト的に楽ではないのだ。さらに今後ガソリンはもっと高くなるだろう。 世界的にカーボンニュートラル化の話が進めば、ガソリンにはより多くの税金がかけられるようになり、反対にe-fuel(※)は税金を少なく、補助金などを出しながら価格を下げていく流れになる可能性が高いからだ。もちろん国にもよるが先進国ではこの流れになっていくのが妥当だ。 ※二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料として製造する石油代替燃料 そんな時、やはり好燃費のバイクの方が良い。カワサキのハイブリッドは、もちろんe-fuelになった社会でも、恩恵を受けられる。 「燃費と加速を両立するのがカワサキのハイブリッドです。e-fuelになっても燃費が良い方がいいじゃないですか。技術的には大変です。難しいところもたくさんあります」と松田さん。 排気量などの詳細は発表されていないが、車体を見るとエンジンは並列2気筒だ。油圧のクラッチシステムでエンジンとEVを切り替えられるパラレルハイブリッドで、EVのみの走行も可能となっている。車体を見るとシステムが大きくなるハイブリッドの懸念をすでに克服しているのがわかる。 細かいディテールを見るほどに、テストライダーも驚いたというその加速を早く体感してみたくなる。

TAG: #Ninja #Z #ハイブリッドバイク
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
CJPT、東京都で500台規模の商用EV(電気自動車)・FCEV(燃料電池車)を実装へ……デイリーEVヘッドライン[2023.05.17]

BEV・FCEVを大規模投入し課題を洗い出し 流通大手15社が参画しノウハウを蓄積 【THE 視点】トヨタやいすゞなどが参画する次世代エネルギー商用車の開発団体「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)」は5月15日、東京都内において商用EV普及に向けた大規模な社会実装を実施すると発表した。この施策に投入される商用のEVおよびFCEVは500台以上を予定している。 カーボンニュートラル社会の実現に向け、東京都や荷主・物流事業者とともに、CO2排出量が多い商用分野において、EVの普及に向けた社会実装を開始する。運行管理と一体となったエネルギーマネジメントによって社会コストの低減を目指すという。 商用EVの導入にあたっては、車両購入に加え充電および水素充填などによる荷物・クルマの停滞(ダウンタイム)や、充電タイミングの偏りによる事業所電力ピークの増加など、社会全般の負担が増大するという課題がある。 今回の「東京プロジェクト」では、国内最大規模の社会実装として、都内に順次500台以上の電動車を導入。事業者の充電・水素充填タイミングと配送計画を最適化することで、稼働の穴を作らない効率的な運行を目指し、多数のパートナーと共に課題解決を目指す。また、持続可能な商用EVの実装モデルをつくり、全国への展開も進めていくという。 今回発表された国内最大規模の電動商用車による社会実装は、導入車両が500台以上と筆者の想像以上の規模だ。具体的には、FCEV大型トラックが約50台、FCEV小型トラックが約190台、EV小型トラックが約210台、EV商用軽バンが約70台と発表されている。この実証には運送業者をはじめ、コンビニ・通販・飲料メーカーなど15社あまりの大手企業が参画している。 商用EVの運用にあたっては、インフラに依存するところが大きく、今回はそれを見据えての実証なので相当な運用ノウハウが得られることになるだろう。実証の規模は非常に大きいので、この取り組みにより日本でもようやく商用EVの普及につながる予感がする。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ヒョンデ、「アイオニック5」のアップデートモデルを発売……100台限定の「アイオニック5・ラウンジAWDリミテッド・エディション」も登場[詳細はこちら<click>] ★★コマツ、FCEVの中型油圧ショベルを開発……トヨタの燃料電池システムを搭載、5月よりコンセプトマシンにて実証実験を開始 ★★パワー・エックス、最大120台のEVを同時充電可能なシステム「ハイパーチャージャー・フォー・フリート」を発表……商用EV向けに展開、運行計画に基づく充電計画なども自動生成 ★★カワサキ、小型電動モビリティ「noslisu(ノスリス)」シリーズを発売……前二輪の三輪車、電動アシスト自転車タイプから原付一種扱いのフル電動タイプも用意 ★★アークエルテクノロジーズとニチコン、V2H(EVの電力を家庭でも使用可能にする機器)システムで協業……ハードウェアの「EVパワー・ステーション®」とソフトウェアの「AAKEL eFleet」を連携、EVの充放電を遠隔で操作可能 ★★グリーンチャージ、従量課金型EV用急速充電器を発売……非会員制でkWh単位に課金、最高出力50kWh[詳細はこちら<click>] ★ヒョンデ、車両点検プログラム「ヒョンデ・アシュアランス・プログラム」を日本で開始……新車登録から3年間の車検と点検等をサポート[詳細はこちら<click>] ★ボルボ、EVトラック向けのARアプリをリリース……トラブル時の緊急対応をアプリがガイド、ルノー・トラックやマック・トラックなどグループ内にも展開 ★新生ランチア、ヨーロッパで最初の小売業者を任命……2024年上半期までにイタリア国外で70都市70業者を指名予定 ★三ッ輪ビジネスソリューションズ、ポータブル電源から電動ランドカーに充電可能なケーブルを開発……ヤマハの電動カートとエコフローの大型ポータブルバッテリーを使用し実証実験 ★ヤマハ、電動モビリティ向けレンジエクステンダーを開発……最高出力88kW(120ps)の直列3気筒エンジン、次世代燃料にも対応 ★オンセミ、フィンランドのKempowerと提携……オンセミのパワー半導体を供給 ★ドイツ連邦政府、ノースボルトのバッテリー工場建設を支援……ドイツ・ハイデにギガファクトリーを建設、年間生産量は60GWh ★南海電設、「第71回電設工業展 JECA FAIR 2023 」<インテックス大阪(大阪市住之江区)/5月24日(水)〜26日(金)>に出展……日東工業ブース内においてEV充電サービス「チャージコネクト」など展示 ★ブレイズ、「FIELDSTYLE JAPAN 2023」<AICHI SKY EXPO 愛知県国際展示場(愛知県常滑市)/5月20日(土)・21日(日)>に出展……「ブレイズ・スマートEV」「ネクストクルーザーEV」など展示 ★伊予鉄グループ、EVバスの運転体験会を開催……「伊予鉄グループ職場見学ツアー」<伊予鉄バス 松山斎院営業所(愛媛県松山市)/5月30日(火)・6月11日(日)>にて、普通自動車第一種免許保持が条件 ★旭化成、EV関連品を「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」<パシフィコ横浜(横浜市西区)/5月24日(水)〜26日(金)>に出展……新素材を用いた多機能バッテリーカバー部品等を展示

TAG: #CJPT #THE視点 #商用EV
TEXT:小川 勤
まずは欧米市場に投入される予感。カワサキ製EVバイク[EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その2]

前回に引き続き、「EICMA」の小川さんのレポートをお届けする。カワサキ製EVバイクの特徴と使用用途、予測される導入市場についてなどを報告する。 まずは市街地を走る125ccクラスのEVバイクを発売へ! EICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表されたEVニンジャとEV Zは、まさにバイクだった。マフラーがない違和感はあるが、そのスタイリングはカワサキらしさに溢れている。EVニンジャとEV Zのライセンス区分は、EU圏A1。排気量が125cc以下、および最高出力11KW(15ps)以下のバイクと同じ条件となっている。 ただ、125cc相当といってもきちんと作り込んでくるのがカワサキだ。モーターの出力軸にカウンターギヤを組み合わせチェーンでリアタイヤを駆動。さらにモーターは車体の下側に搭載するため低重心化にも貢献。バッテリー容量は最大3.0kWh。車体からの取り外しが可能なカートリッジ式のリムーバブルバッテリーバック(約12kg)をタンクの下側に2個搭載する。マスの集中と低重心化、きちんとスポーツバイクを作ってきたカワサキらしさが車体構成からも見てとれる。 正直、EVバイクに関しては中国やアメリカのベンチャー企業が手がけている場合も多く、そもそも彼らはバイクメーカーではないからバイクとしての作り込みはかなり甘く、そういった意味でもカワサキが動いた意味はとても大きいのだ。 また、こういった既存のスポーツバイクの作りを踏襲したことで、足まわりや外装パーツはガソリンエンジンモデルと共有できるメリットもあり、これはコストダウンにも直結する。125cc相当のバイクの場合、とても大切なファクターである。 細部を見ていて面白いなと思ったのはスイッチで、これはEVバイクならではのディテールとなっていた。まだ詳細は不明だが、右側には「eboost」左側には「WALK MODE」のボタンが設置されている。 「この2台に関してはまずは市街地から出ないことが前提になりますね。充電を考慮すると遠くには行けない。でも市街地でスクーターではなく、バイクに乗りたい人もたくさんいると思うんです。そんなユーザーにEVニンジャとEV Zを楽しんでいただきたいと思います」と話すのはカワサキの先進技術&カーボンニュートラルの総括部長である松田義基さんだ。

TAG: #Ninja #Z #電動バイク
TEXT:小川 勤
カワサキが市販間近のEVバイクを発表![EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その1]

昨年より一気に勢いを増したEV化、電動化の流れはクルマだけではなく、もちろんバイクの世界にも広がりはじめている。そこでTHE EV TIMESではモーターサイクルジャーナリストの小川 勤さんにバイクの電動化に関して伝えてもらうことにした。まずはバイクの祭典「EICMA」で、国内4強の一角であるカワサキが見せたバイクの未来についてをお届けする。 限りなく市販に近いカタチの「EVニンジャ」と「EV Z」が2022年のEICMAに登場! バイクにおいてはクルマほど未来のEV化の目処は立っていない。何年後までに何をしないといけないと定める規制はどこの国にもなく、ほとんどのメーカーは迷走している。それはバイクが生活必需品としての移動の道具ではなく、趣味の要素が強いというところが大きいのだろう。多くのライダーの目的はツーリングにあり、「長距離を移動すること」にバイク趣味の本質があるからだ。 そうなると現在のバイクの基本構造では、根本的に十分な容量のバッテリーを搭載するキャパシティがないのである。また水素で考えた場合も同様で、現在のバイクのガソリンタンク容量では長距離を走ることができない。 だから僕自身は、バイクにおいてのカーボンニュートラル化の未来は、まずはEフューエル、その後ハイブリッドや水素となる可能性が高いと思っているが、2022年のEICMAで発表されたカワサキの「EVニンジャ」と「EV Z」は手軽な125cc相当のEVバイクとして会場を沸かせていた。 カワサキは同時にハイブリッドバイクも発表。こちらは別の機会に取り上げるが、今回紹介するEVニンジャとEV Z、そしてハイブリッドの3台には、これからのニーズに応える持続可能な開発、カワサキの技術、趣味のバイクにおいて必要なファンの領域を大切するという意味を込めて、Go with Green Powerのマークが採用されている。

TAG: #Ninja #Z #電動バイク
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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