38.98万元からという驚異的なコスト競争力を実現
それでは、フラグシップSUVであるN9が競合関係として、現在高級車セグメント最強のファーウェイAITO M9や大型電動SUVのベンチマークであるLi Auto L9と比較してどれほどの競争力を実現しているのかを比較していきましょう。
まずEV性能について、N7は47kWh、M9とL9は52kWhと、50kWh級というPHEVやレンジエクステンダーEVとしては大容量バッテリーを搭載。ただし、N9はLFPバッテリーを採用しながら22インチ大型タイヤ装着、2リッターターボエンジンとトライモーター仕様というハイスペックであることによって、車両重量が3トン超え。EV航続距離はWLTCモードで145kmと見劣りします。その一方で、動力性能ではM9とL9を圧倒しており、さらに後輪操舵機能を採用することで取りまわしも優れています。とくに大型EVになるとホイールベースが長くなることから、このリヤステアリングは必須機能だと感じます。
そしてもっとも注目するべきは、その値段設定です。N9は38.98万元(約803万円)からのスタートに対してM9は約968万円、L9も約844万円からのスタートである点を踏まえると、N9が驚異的なコスト競争力を実現している様子が見て取れます。
また、標準装備内容の比較について、N9には、以下のような装備が用意されています。
・22インチの大型タイヤ
・17.3インチのセンタースクリーン、13.2インチの助手席向けのディスプレイ、2列目用の17.3インチディスプレイ、さらにドライバー向けの50インチARヘッドアップディスプレイ
・インフォテインメントまわりを駆動するのが、BYD独自設計のプロセスノード4ナノ「BYD9000プロセッサー」
・USB Cポートは合計5つを設置して最大60Wの急速充電に対応
・ワイヤレス充電も1列目と2列目にそれぞれ合計4つを装備、すべて50Wの空冷式急速充電に対応
・レッグレストとエアサスペンションに連動したサイドサポートに対応、シートヒーター、シートクーラー、シートマッサージを完備
・2列目シートもシートマッサージまでを完備
・3列目シートも電動調整とシートヒーターを装備
・Disus-A(CDC付きデュアルチャンバーエアサスペンション)
・アンビエントライトは256色
・フレグランス機能
・マイナス6℃から50℃にまで対応可能な11リットルもの冷温庫
・すべての窓ガラスにおける二重ガラス化
・ソフトクローズドアは標準、自動ドアは1.6万元のオプション設定
・ハイエンドADASはシティNOAに対応
・リヤタイヤを滑らせることによって、狭い縦列駐車機能も実装(気になるタイヤのすり減りについて、1年使用した後でもすり減り具合は0.05mmしか変わらないと説明)
・V2L機能は最大6kW
・Devialetの26スピーカーシステムはドルビーアトモスに対応
・9つのエアバッグ
・2000MPaもの超高張力鋼を採用するなど、高張力鋼の配合割合も90%超え
・車両保証は6年15万km、バッテリー保証はファーストオーナーに限って無制限保証
このように、装備内容を比較していくと、これ以上考えられないほどの装備内容の充実さであり、M9やL9と比較しても互角以上のコスト競争力を実現している様子が見て取れます。
そして、このN9の投入によって被害を被るのがドイツ勢の存在でしょう。このグラフはテスラやドイツBBA、中国プレミアムEVブランドの小売台数の変遷を四半期ベースで示したものです。とくにファーウェイ率いるHIMAはメルセデス・ベンツに接近中です。そしてBYDのプレミアムブランドであるDenzaとFang Cheng Bao連合の合計も、Q4単体ではレクサスやNIOを上まわっており急速に販売増加中です。
それに対してドイツBBAは揃って前年同期比で販売台数を落としています。これまで高級車セグメントを支配してきたドイツBBAに対して、中国プレミアムブランドが大きなプレッシャーを与えているのです。
N9の投入によってDenzaがどれだけの規模を拡大できるのか。安価なEVが中心だったBYDの高級路線の動向についても注目です。