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アメリカの関税で苦しみ中国市場で困難極まるマツダはどうなる? EVの欧州展開で活路は見いだせるか


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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マツダは新モデル投入で中国市場での大逆転を狙う

中国市場における生き残りを賭けた最後の戦いとして、マツダがミッドサイズSUVであるEZ-60を9月までにローンチしながら、EZ-6の海外展開の最新動向を含めて解説します。

まず、中国市場におけるマツダについて、このグラフは2025年6月までの車種別、および全体の販売台数の変遷を示したものです。2025年上半期の販売台数は2万7646台と、前年同月比ー24.8%という大幅な販売落ち込みを記録しています。とくに6月単体の販売台数の変遷を見ると、2020年6月の1.25万台から毎年販売台数が減少。2025年6月は5000台を割り込み、販売規模は半減以下という状況です。とくに、Changanマツダの車両生産工場の稼働率は低迷しているはずであることから、収益性を含めて、マツダが中国市場でノックアウト寸前である様子が見て取れるのです。

中国市場におけるマツダの販売台数のグラフ

車種別の内訳を見ると、とくに売れ筋モデルだったマツダ3の低迷が著しいです。これはコンパクトセグメントに、BYDドルフィンやシーガル、ジーリーXingyuanなどという超強力なEVが矢継ぎ早に投入されてしまったことが要因でしょう。その一方で、CX-5は月間2000〜3000台級ともち堪えているようにも見えます。

マツダEZ-6のリヤスタイリング

そしてマツダは、新型EVを矢継ぎ早に投入する方針を表明。まず、2024年11月から納車がスタートしているのがEZ-6というミッドサイズセダンです。合弁先のChanganのEV専門ブランドDeepalから発売されている、SL03というミッドサイズセダンEVのOEM供給車として設計開発されています。EZ-6で注目するべきはBEVとともに需要が増えているEREVを両方ラインアップしてきたという点です。

他方で、このグラフはマツダのEV販売台数の変遷を示したものです。コンプライアンスカーだったCX-30 EVと比較すると一定の販売台数を達成しているものの、直近の6月単体の販売台数はたったの678台と、発売開始1年未満にもかかわらず落ち目を迎えています。

中国市場におけるマツダのEV販売台数のグラフ

そして、このマツダに関する新たな動向として、EZ-6を欧州市場をはじめとする海外マーケットに輸出するという点が挙げられます。すでに6月から欧州の主要マーケットでは受注受付がスタートしています。欧州市場ではマツダ6eと名付けられ、全長4921mm、全幅1890mm、全高1485mm、ホイールベースが2895mmというミッドサイズセダンです。

マツダ6eのフロントスタイリング

6eは、後輪側にモーターを搭載するRWDグレードのみをラインアップしながら、68.8kWhと80kWhという2種類のバッテリー容量をラインアップ。TAKUMIグレードとともに、ナッパレザーシートや開閉式サンルーフなどを搭載した上級グレードのTAKUMI+をそれぞれラインアップしています。航続距離は欧州WLTCモードにおいて最長552kmを確保。たとえば日本国内でも発売されている日産アリアB9が536kmであることから、アリアB9よりも長く走行できるとイメージしてみると、実用的な航続距離を確保しているといえます。

そして、今回注目するべきは急速充電性能です。航続距離552kmを確保する80kWhバッテリー搭載グレードの場合、最大90kWにしか対応せず、SOC10-80%で47分という充電時間を要します。その一方で、68.8kWhバッテリーでは、最大165kWという充電出力に対応、SOC80%まで24分で充電可能と、充電性能がまったく異なるのです。68.8kWhバッテリーはSL03にも採用されているLFPバッテリーであり急速充電性能が最適化されているものの、80kWhのほうは三元系バッテリーで充電スピードに対して非常に保守的です。とくに80kWhバッテリーは中国市場で採用されておらず、最適化という詰めが甘いように感じます。

マツダ6eのインテリア

また、ヒートポンプシステムやソニー製の14スピーカーシステム、64色のアンビエントライト、14.6インチのセンターディスプレイ、空力性能の最適化のための電動リヤウイングなどは標準搭載されています。

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