コマツも試作機を開発した中型クラスの電動パワーショベル
官民一体でFCEV建設機械の開発とインフラの構築を早急に
【THE 視点】コベルコ建機は、燃料電池式(FC)の電動ショベルの試作機(以下、FCEVパワーショベル)の稼働評価を開始した。
FCEVパワーショベルの実用化に向けた取り組みを2021年に開始し、2023年3月に試作機が完成した。中型の油圧ショベルにトヨタのFCユニットと水素タンクを搭載。パワーショベルに求められる基本動作に支障がないことを確認したという。
評価結果をまとめると以下となる。
・エンジン搭載機と遜色がない動作速度
・圧倒的な低騒音
・エンジンによる振動がないため、車体への振動伝達が低減し搭乗時の快適性が向上
・水素と空気中の酸素が結合した純水のみの排出なので、CO2がゼロ
・高温排気がないため、車体やその周辺への熱害がない
今後も、エンジン搭載機と同等の作業性能を実現するために試作機の検証と改善を進め、商品化を目指すという。ちなみにコベルコは、世界初の「ハイブリッドショベル」や「有線式電動ショベル」といった環境負荷低減に貢献する建設機械の開発と提供に努めている。2025年に、まずはEV建機のニーズが高い欧州に向けに「バッテリー式EVのミニショベル」と「小型重機ショベル」。さらに日本国内向けに「クローラークレーン」の有線電動仕様の導入を計画し、EV建機の普及を着々と進めている。
特注ではなく、トヨタの量産品のFCシステムを使用しているとすれば、信頼性が高い上にコストの低減が期待できる。同じ建機メーカーの小松製作所(コマツ)も、今年5月にトヨタのFCを使用したFCEVパワーショベルの開発と実証実験の開始を発表している[詳細はこちら<click>]。コベルコと同じ中型の油圧ショベルがベースなので、FCシステムも大きくは違わないだろう。逆に各メーカーは、どういった点でそれぞれの特徴を出していくのか、興味津々である。
一方、使われる環境が自動車のFCEVとは違うので、環境に合わせた信頼性や耐久性などの検証は今後も継続していく必要がある。
また、水素充填のインフラを建機に対応させるといった国が絡む法整備の問題もある。現状では自動車用の水素ステーションは法の縛りで建機では使えないと筆者は認識している。
政府は、FCEVの普及を目標に水素供給インフラの整備・強化も目標に掲げているが、建機に対するそれらの構築も具体的に検討を始めてほしい。騒音・排熱といった環境問題の対策に非常に有用なEV建機は、バッテリー式であれFC式であれ普及を加速させるべきだ。官民一体となって取り組んでほしい。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.10.12]