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フォルクスワーゲンID.2allは「大衆のためのBEV」に。300万円台のプライスタグを実現か【前編】


TEXT:小川フミオ
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フォルクスワーゲン ID.2all コンセプトのフロントビュー

フォルクスワーゲンが発表した最新のコンセプトカー、ID.2all(アイディーツーオール)は、ポロのBEV版とも評される電動コンパクトハッチバック。450kmという充分な走行距離を確保する一方で、邦貨にすると300万円台半ばという挑戦的な価格設定を標榜する“大衆BEV”は、果たしてどのようなクルマなのか。自動車ジャーナリスト・小川フミオが同社経営陣に直撃した。前後編に分けてお届けする。

全長4mの電動FFコンパクトハッチ

フォルクスワーゲン ID.2all コンセプトとT・シェーファーCEO、セールス/マーケティング/アフターセールス担当のI・ラベー取締役、デザインのA・ミント、技術開発担当K・グリューニッツ取締役 右から、T.シェーファーCEO、セールス/マーケティング/アフターセールス担当のI.ラベー取締役、デザインのA.ミント、技術開発担当K.グリューニッツ取締役

 

フォルクスワーゲン本社が、ID.2all(アイディーツーオール)なる、コンパクトBEVのコンセプトカーを発表した。

2023年3月15日に独ハンブルクで開催された発表会でお披露目されたのは、全長4050mmと比較的コンパクトなID.2all。

スタイリングは、従来のポロやゴルフに連なるイメージで、エンジンを載せたハッチバックといっても不思議でない。

注目すべきふたつめのポイントは、バッテリーを床に敷き詰めたMEBというBEV用プラットフォームを使いつつ、これをフロントモーターの前輪駆動へと転換したこと。

従来のID.シリーズのMEBプラットフォームは、リアモーターの後輪駆動。文字通り180度の転換だ。

モーターの出力は166kW(225ps)で、満充電での走行距離は450kmとされている。

これらはすべて、フォルクスワーゲンのこれからの製品戦略と関連している。

VW乗用車部門のトーマス・シェーファー最高経営責任者(CEO)は、発表会において下記のように語った。

「フォルクスワーゲンは、2025年にヨーロッパ市場向けのID.2allの量産モデルを発表する予定です。その目標は、2万5000ユーロ以下(邦貨約353万円※2023年3月28日時点の為替レートで換算)のベース価格を実現することです」

ID.シリーズのボトムラインを形成しているID.3(2022年モデル)が約4万4000ユーロだから、大きな差がある。欧州メディアでたちどころに話題になったのも簡単に理解できる。

eモビリティを“民主化”する

フォルクスワーゲン ID.2all コンセプトのプラットフォーム ロワーボディにはモジュラーバッテリーが敷き詰められ、そのうえにアッパーボディが載るが、車高は1530mmに抑えられている

 

フォルクスワーゲン ID.2all コンセプトのコクピット クリーンな造型と、直感的な操作系を特徴としたダッシュボード

 

「私たちは、フォルクスワーゲンを真の“Love Brand”(愛されるブランド)にするという明確な目標を持って、会社を迅速かつ根本的に変革しています」

愛されるとは、べつの言い方をすると、多くのひとが乗るかつてのフォルクスワーゲンのような求心力を取り戻すこと。

ID.2allの発表会場には「FOR THE PEOPLE」なるスローガンがいたるところに掲げられていた。

シェーファーCEOが壇上に上がるときには、初代ビートルや、タイプ2などとも呼ばれるマイクロバス、初代ゴルフ、カルマンギアタイプ1カブリオレ、といった歴代モデルがステージに登場。

フォルクスワーゲンが社名のとおり「ピープルズカー」として、いかにユーザーの生活を豊かにしてきたか。さらに最新のゴルフRにいたるまで、実車が出てきて、それを実感させてくれた。

ID.2allという車名にこめられた意味も、「all」イコール「すべてのひと」なのだ。シェーファーCEOは言う。

「ID.2allは、私たちのブランドが目指すべき姿を示しています。つまり、私たちはお客様に近い存在となり、最高のテクノロジーと素晴らしいデザインを備えたブランドになります。私たちは、eモビリティを民主化するために、変革を迅速に実行しています」

民主化とはあまり耳慣れない言葉だけれど、要するに、親しみやすい、あるいは、買いやすい、という意味なのだ。

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