都市部では多くの人が集合住宅に住んでいる
東京都は、新築のマンションなど集合住宅に充電設備の設置を義務付けることを、今年度(令和7年4月)からはじめた。これは、全国的にも画期的な制度だ。
すでに東京都は、新車の電気自動車(EV)購入においても自治体として独自の補助金制度を進めており、東京に住む人は、より安くEVを手に入れることができる。東京が巨大都市で財政が豊かだとはいえ、逆にほかの道府県の支援が貧弱すぎるといえなくもない。
東京都のこうした政策の背景にあるのは、2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする『ゼロエミッション東京』という戦略を、2019年に小池百合子東京都知事の肝いりで打ち出したからだ。2050年というとまだ先の話に聞こえるが、小池知事はそこまでに至る手前の最初の10年が重要と考え、2030年には、対2000年比で温室効果ガスの排出を50%に減らすとしている。それはいまからたった5年後に達成すべき目標だ。
ちなみに、国は2035年までに乗用車の新車販売を100%電動化するとしている。電動化の意味は、エンジンのみのクルマは販売できず、ハイブリッド化などをしなければならないという意味だ。
一方で、2010年に日産リーフが発売されてから、EVの販売現場では戸建て住宅で自宅に車庫のある人しか基礎充電という普通充電設備の設置ができずにいる。EVの新車販売のおおよそ9割が、戸建て住まいの人といわれ続けてきた。
しかし、大都市部では人口の約7割が集合住宅住まいであり、それは所得の多少を問わずだ。EV価格はなお割高といわれるが、それを購入できる所得があっても、集合住宅住まいでは諦めてきた経緯がある。ここを改善しなければ、EVの本格的な普及は見えてこない。
東京都は、2030年までに乗用車の新車販売で非ガソリン化を100%と目標をたて、そのうち排出ガスを出さないZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)を50%としている。しかし現状のままでは、集合住宅に住む人たちへの普及はおぼつかない。そこで新築マンションへの充電設備の義務付けという大ナタが振られたのである。
具体的な数字は、30年までに集合住宅における充電口数を6万口設置し、さらに2035年には2倍の12万口(こちらはパブリックコメント中)とする。
延べ床面積が2000平方メートル以上の大規模建築物で、5台以上の専用区画を持つ駐車場は20%以上の区画、すなわち5台なら1台分は充電設備を設け、あわせて50%以上の区画に配管など将来への敷設準備をしておく。
10台以上の共用駐車場の場合は、1区画分の充電設備と、20%分の配管等の準備をしておかなければならない。