2022年12月
TEXT:生方 聡
[VW ID.4試乗記]ID.シリーズの世界戦略車「ID.4」:その 4

乗り心地に貢献するタイヤ 運転中に気になったのが、ブレーキペダルを踏んで減速するときの感覚。Dモードではアクセルペダルから足を離しても減速せず、ブレーキペダルを踏んではじめて減速を開始するのだが、軽めのブレーキではフロントタイヤが路面に食いつく感じがない。これが少し頼りなく思えるのである。ID.4には前:ベンチレーテッドディスク、後:ドラム(!)ブレーキが搭載されるが、軽くブレーキペダルを踏む状況では前後のブレーキは使わず、リアアクスルのモーターによる回生ブレーキだけで減速を行っている。それがやや頼りないブレーキフィールを生んでいるのだ。このあたりは慣れの問題で、ブレーキペダルを踏んでもクルマが前につんのめる動きをみせないまま穏やかに減速する感覚は、慣れれば悪くない。ところで、ID.4 プロ・ローンチエディションには、前235/50R20、後255/45R20の「モビリティタイヤ」が装着されている。モビリティタイヤとはいわゆる“シールタイヤ”のこと。トレッド内側のインナーライナー上に粘着性の高いシール層を配することにより、釘やネジがタイヤのトレッド部に刺さり内部に達したとしても、シーラント剤が釘などを包むように粘着して空気の漏れを防ぐ。また、釘などが抜け落ちてもパンク穴をふさいでくれるため、パンクで走れなく事態が減り、スペアタイヤも不要である。ランフラットタイヤと異なり、乗り心地が悪化しないのもうれしい点だ。 試乗会場で確認するかぎり、ID.4 プロ・ローンチエディションにはブリヂストン、ピレリ、ハンコックのタイヤが純正装着されており、私たちが試乗したクルマにはブリヂストンの「トランザ エコ」という低燃費タイヤが装着されていた。前:マクファーソン・ストラット、後:マルチリンクのサスペンションは、電子制御のダンピングコントロールを持たず、20インチのタイヤ&ホイールとの組み合わせでは粗い乗り心地を覚悟していたが、良い意味で予想を裏切られることに。 “RR”BEVならではの走り 走り出すと、タイヤと路面とのコンタクトはスムーズで、乗り心地も思いのほかマイルド。重たいタイヤとホイールを履くわりにはバタつくこともないし、目地段差を超えたときのショックもうまく遮断されている。走行時の動きは落ち着いており、高速走行時のフラットさもまずまず。車両の低い位置に重量物のバッテリーを搭載するおかげで、低重心化が図られ、SUV特有の前後左右の揺れもよく抑えられている。走行中のロードノイズやパターンノイズ、さらに風切り音なども気にならないレベルだ。 高速走行時の直進安定性も良好。一方、コーナーでは、後輪駆動らしい素直で軽快なハンドリングが味わえる。初代ゴルフ以来、基本的にはFFレイアウトを採用してきたフォルクスワーゲンだけに、ID.4の爽快な走りはとても魅力的かつ新鮮なものだった。短時間の試乗だったため、電費や急速充電能力などは確認できなかったものの、スタイリッシュなエクステリアや魅力的なインテリア、スムーズで余裕ある加速性能、快適で楽しい走りなど、その高い仕上がりには目を見張るばかりのID.4。BEVにかけるフォルクスワーゲンの本気が感じられる一台である。 VW ID.4 Pro Launch Edition スペック 全長:4,585mm 全幅:1,850mm 全高:1,640mm ホイールベース:2,770mm 車両重量:2,140kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:153Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:561km(WLTCモード) 最高出力:150kW(204ps)/4,621-8,000rpm 最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-4,621rpm バッテリー総電力量:77.0kWh トランスミッション:1段固定式 フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式(スタビライザー付) リアサスペンション:マルチリンク式(スタビライザー付) フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ドラム タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20 車両本体価格:6,365,000円

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TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.22]

  ・ テラモーターズ、コインパーキングに充電設備を無償提供……EV充電のインフラ整備を加速 【THE 視点】テラモーターズは、コインパーキング向けに充電器を無料で提供する事業者向けのプランを開始した。 EV充電インフラのための補助金は、5年前後の保有義務期間があるものが中心。遊休地活用策であるコインパーキングでは、2、3年で土地の用途が変わることが多く、補助金の活用が困難で充電器の導入が進まなかった。 今回のプランは、そんなコインパーキングにおいても、EV充電インフラの導入がしやすい環境の構築を目指す。 既設への導入工事は1箇所あたり100万円前後の費用が掛かるというが、新設時にまとめて工事を行うことで、工費の圧縮、設計の簡便化が可能になるという。なおテラモーターズは、高性能かつ安価なEV充電インフラ「テラ・チャージ」を独自開発しており、今回のプランにも活用する。 テラモーターズはこれまでも、ホームセンターやパチンコ店、ホテルなどに充電器を無料で提供をしており事業を急拡大してきた。そのアイディアに毎回驚かされるが、今回はコインパーキング事業者を抱き込むことで、パーキング事業者とEVユーザー双方にメリットをもたらすことになる。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ・ソニー・ホンダモビリティ、「CES2023」で新発表……ティザーサイトに新型モデルのシルエットを公開 ・日立エナジー、フランス・クレルモン-フェラン市のEV路線バス向けの超高速充電システム「Grid-eMotion Flash(グリッド-eモーション・フラッシュ)」を受注……停留所で極短時間充電、車両はスイスの「HESS(ヘス)」製 ・EVモーターズジャパン、「グリーンスローモビリティ」をラインナップに追加……20km/h未満で移動する4〜6人乗りの小型EV ・メルセデス・ベンツ、「メルセデスAMG EQS」にビスポーク「マヌファクトゥール」を適用……独本国で導入、専用のオプションを豊富に用意 ・テクトムとアークエルテクノロジーズ、EVスマート充電サービスで業務提携……複数台のEVの充電を最適化するシステム「EVフリートマネジメント」を開発 ・日産、電動パワートレインの設計・開発業務をグループ企業のジヤトコに拡大……電動パワートレインの需要拡大に対応 ・日産、「東京オートサロン2023」の出展概要を公表……「ニッサン e-シェアモビ」向けの「サクラ」「アリア」などを展示 ・HW エレクトロ、「東京オートサロン2023」に出展……商用EVの「エレモ」「エレモ-K」を展示

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TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 3]

変化をいとわぬIT企業ゆえの身軽さ 巨大ITグループ独特の「スピード感」 ここまでBYDオートジャパンの具体的なビジネスを紹介してきた。いっぽうでBYDという企業グループは、これまで国内外の自動車会社でキャリアを積み重ねてきた東福寺氏の視点から見ると、企業としてどのような個性があるのだろうか。 「BYDに来て、他社と一番大きく違うなと驚いたのがスピード感ですね。方針決定から実現に至る期間の短さでした。そして本当により良い結果になるのであれば、状況の変化に応じて一旦決めたことでも変えていく、朝令暮改も恐れないフレキシビリティは従来の企業とは違うと思います。それが急成長、急拡大をもたらした主たる要因ではないでしょうか」 「私も長く自動車業界に関わってきましたが、自動車はご承知の通り、年式やマイナーチェンジ、フルモデルチェンジと1年や2年、4年ごとといったタイミングで変更を実施すると信じていたのですが、BYDは必要であれば年の途中でもバージョンアップするなど、市場が求めているのであれば計画変更も辞さずに新しい製品を投入していくなどの自由さが特徴です」 「さらに端的な特徴は、お客様の動向を常にウォッチしていることです。この色の方がもっと売れると思ったらその色に変えてしまうとか、切り替えがものすごく早いのです。その自由さはよくよく考えてみるとBYDは電子部品、バッテリーから始まったメーカーで、コンピューターや電子部品の売上利益も、いまだに自動車と並んでかなり大きいのです、ですからIT企業でもある、いわゆるテック系と呼ばれる企業としての身軽さや素早さ、変革に対する恐れのなさが働くのではないでしょうか。つまり、トラディショナルな自動車会社に比べると、『ITエレクトロニクス企業の自動車部門』と考えたほうが変化に対する躊躇のなさを説明できる気がします」 目が行き届いたディーラー拡大戦略 BYDオートジャパンでは、2025年までの3年間で100ディーラーの展開という目標を急務として掲げている。すなわち、各県あたり2ディーラーのレベルとなり、かなりの急拡大を実現しなければならない。ネットワーク全国拡大にあたってはどんな戦略を描いているのだろうか。 「2023年から販売を開始する際には、各販売会社さんがある程度余裕を持っていないと販売を開始できません。どの企業がディーラーとして我々のパートナーになってもらえそうかは様々な情報を集めました。私が入社してから、前職時代の様々なお付き合いや、業界でその道のプロの人だと認められる人たちばかりをリクルートしてチームを組んでいます。彼らが知っている販売店の情報を参考にしながら、販売してほしい会社をピックアップして飛び込み訪問で社長さんに直接アポイントを取りました。そのうえで『BYDがEV事業を考えているが興味ありませんか』と個別にアタックして、現在では16社ほどが来年以降に事業のパートナーになっていただけそうな状況です」 BYDは日本においてはBEV専業としているが、BEVは寒い環境に弱いというイメージが一般的にあるが、販売の地域性についてはどのように捉えているのだろうか。 「BYDの電気自動車の観点で見ると、中国には日本よりもはるかに寒く気候の厳しい地域があります。そんな場所で長年使われている事実を考えると、特に日本だから環境が厳しいことはないと考えています。一方でたとえば北海道や東北の販売会社からすると、雪国ではどうだろうか、マイナス20度になる気候の中でバッテリーが保つのだろうかなどと心配されている部分も現実にはあります。性能的にはBYDの最先端の温度管理ができるバッテリーマネジメントシステムが搭載され、熱帯地域でも寒冷地域でもバッテリーを最適な温度域で稼働できるように常にコントロールが可能です。いかなる温度環境下でも安心して使えるBEVとして商品化されているので、ほとんどの地域で問題なく使えます。この点はまずは販売会社さんに納得して販売していただく形を取っています」

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TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.21]

  ・ オペル、「モッカe」を改良し「モッカ・エレクトリック」に改名 【THE 視点】オペルはコンパクトSUV「モッカ」のEVモデル「モッカ・エレクトリック」を欧州で発表した。従来の「モッカe」から改称され、仕様も一部変更された。 搭載されるモーターは、最高出力115kW(156ps)、最大トルク260Nmを発生。新開発のバッテリーは、蓄電容量を54kWhに大容量化した。これにより一充電あたりの航続距離は、従来の338kmから406kmに延びている。 オペルは一度日本市場から撤退したが、ステランティス・グループ傘下となり日本への再上陸が発表されている。既に日本版の公式WEBも公開済みだ。 日本向けのラインナップには「モッカ」の1.2Lガソリンエンジン仕様が用意されており、EVモデルの導入も待たれる。 このセグメントには、先日発表されたBYDの「アット3」もいる。もし「モッカ・エレクトリック」が日本に導入されれば激戦は必至である。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ・フォード、EVピックアップトラック「F-150 LIGHTNING(ライトニング)」が米国「モータートレンド・トラック・オブ・ザ・イヤー」を受賞……全審査員の満場一致で ・米高級EVブランドの「ルッシード」、オランダに進出……アムステルダムに第1号販売店を開設、ユーロNCAPも最高の五つ星を獲得 ・アウディ、将来の生産計画を発表……2029年にはすべての生産拠点で最低1車種のEVモデルを生産、2033年までにエンジンモデルの生産を段階的に廃止 ・ポールスター、「3」のドライバー監視システムを「CES2023」でデモンストレーション……眠気などを検知し緊急停止も ・ヒョンデ、SUVモデル「コナ」の新型を本国で発表……エンジンモデル、HEV、EVと多様なパワートレインをラインナップ ・伊藤忠、ZFジャパンと合弁会社を設立……車載用リチウムイオン・バッテリーのリサイクルや小型商用EV向けソリューションの開発など目指す ・ブリヂストン、タイのノンケー工場に太陽光パネルを設置……グループ最大規模で総発電能力9.95MWp

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TEXT:生方 聡
[VW ID.4試乗記]ID.シリーズの世界戦略車「ID.4」:その 3

簡単な発進までの手順 ID.4 ライトとID.4 プロの一番の違いが、搭載されるバッテリー量だ。ID.4 ライトが8個のバッテリーモジュールで52kWhの容量を確保するのに対して、ID.4 プロでは12個のモジュールで77kWhと、より容量が多い仕様となっている。バッテリー重量はそれぞれ344kgと493kgで、その影響で車両重量も1,950kgと2,140kgと、190kgの開きがある。搭載される電気モーターは、ID.4 ライト、ID.4 プロともに定格出力70kWの交流同期型だが、最高出力は前者が125kW(170ps)であるのに対し、後者は150kW(204ps)と、よりパワフル。一方、最大トルクはともに310Nmを発揮する。気になる航続距離は、ID.4 ライトの388kmに対して、ID.4 プロでは561kmを達成する。 いまどきのBEVだけに、クルマを発進させるまでの手順は簡単。ブレーキペダルを踏み、ドライブモードセレクターでDモード(またはRモード)を選ぶだけ。ステアリングコラム横にあるスタートボタンを、わざわざ押す必要はない。あとはブレーキペダルから足を離せば、ID.4はゆっくりと動き始める(ただし、“オートホールド”が有効になっている場合は、発進時にアクセルペダルを踏んでやる必要がある)。 ここから軽くアクセルペダルを踏むと、スムーズで必要十分な加速を見せるが、動き出しは期待よりもやや控えめ。しかしそれも束の間、少しスピードが乗ってくると、そこからはBEVならではの力強く、伸びやかな加速が待っていた。どうやら意図的に出足を穏やかにしているようで、エンジン車から乗り換えても違和感なく運転できるようにするための配慮らしい。 余裕のある加速性能 一般道はもちろん、高速道路でも、まわりの流れにあわせて走るぶんには、アクセルペダルを深々と踏み込まなくても、余裕ある加速が味わえる。高速道路の合流や追い越しの場面でアクセルペダルを奥まで踏んでみると、シートに背中が沈み込むような迫力こそないものの、2Lガソリンターボエンジン並みの強い加速を発揮。急加速中でもID.4のキャビンは静かに保たれたまま、見る見るスピードを上げていく感覚は、一度味わうと病みつきになる心地よさだ。しかもこのID.4 プロは後輪駆動を採用するため、加速時のトルクを荷重が増す後輪でしっかり受け止めてくれる。大トルクのFF車ではホイールスピンやトルクステアが出るところだが、後輪駆動のID.4 プロでは思い切ってアクセルペダルを踏み切れるのが頼もしいところである。 BEVでは走行中にアクセルペダルから足を離したり、右足の力を緩めると、モーターの発電によりエネルギーを回収しながら減速する回生ブレーキが効くが、ID.4の場合は、Dモードでは回生ブレーキが効かないコースティング(惰力走行)を行う一方、ドライブモードセレクターでBモードを選ぶと強めの減速が可能になる。右足を一気に離しても急ブレーキにはならないが、ふだんの走行なら回生ブレーキだけでほぼカバーできるレベルだ。しかも、回生ブレーキの反応がやや穏やかなぶん、アクセルペダルの操作に神経を尖らせる必要がないのがいい。Bモードを選んでも、車両を完全停止させることはできないが、最終的にブレーキペダルを操作して停止するのが煩わしいとは感じなかった。むしろこのスタイルのほうが、エンジン車からすんなり乗り換えられるに違いない。 VW ID.4 Pro Launch Edition スペック 全長:4,585mm 全幅:1,850mm 全高:1,640mm ホイールベース:2,770mm 車両重量:2,140kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:153Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:561km(WLTCモード) 最高出力:150kW(204ps)/4,621-8,000rpm 最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-4,621rpm バッテリー総電力量:77.0kWh トランスミッション:1段固定式 フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式(スタビライザー付) リアサスペンション:マルチリンク式(スタビライザー付) フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ドラム タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20 車両本体価格:6,365,000円

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TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 2]

電動化の流れを見定めたBEV販売戦略 BYDがBEV一本で勝負する理由 東福寺氏がこれまでのキャリアで販売店勤務あるいは販売ネットワークを構築するにあたって培ってきたノウハウは、BYDオートジャパンにおいてスタッフの教育面などで活かされているはずだ。 「やはり売る側が『面倒くさいな』とか『難しいな』とか、『ここまで苦労するのであれば、他のものを』と考えてしまうようだと先に進めなくなってしまいます。まずは売る側がしっかりと製品を理解してお勧めできるような、そんなセールストークを最初からトレーニングしていくことが必要だと思います」 脱線気味かもしれないが、実力のあるセールススタッフほど自分の勧めたい製品を売る傾向があるように思われる。この点でセールススタッフが納得したうえで、顧客も納得して買ってもらうことがベストのはずだ。 「ガソリンやディーゼル、プラグインハイブリッドなど多様な選択肢があってBEVもあるといった場合に、BEV特有の準備や手続きがよく分かっていなかったり、お客様から質問された際に的確に答えられないと、自ずとそちらにお客様の目が向かないように、ディーゼルやガソリンを勧めることになってしまいます。ですが、BYDの日本でのラインナップはBEV100%ですので、BEVありきですべてきちんと仕事ができないと営業スタッフとして成績は上がりません。まして最初はアット 3の1車種しかありませんから、商品に精通してもらうことがセールススタッフとしての第一歩になると思います」 BYDはグローバルの販売状況を考えると、プラグインハイブリッドもかなりの比率を占めていると想像されるが、日本でプラグインハイブリッドを販売する考えはないのだろうか。 「実は初期の頃はプラグインハイブリッドとBEVと両方を手がけることを検討したのですが、日本市場の場合は一般的にマーケットの中心にハイブリッドがあって、次いでプラグインハイブリッドやBEVがあるという棲み分けになります。つまりプラグレスのハイブリッドが圧倒的にお客様から支持されているので、プラグインハイブリッドとBEVの両方をラインナップしていたとしても、大きなメリットがないことがひとつ。あとはBEVに絞れば、ディーラーの整備工場で用意していただくものが少なく済む利点もあります。ガソリンエンジン車に対応する設備やいろいろな油脂類を用意しながら、BEV用の専用設備も持つとなると負担が大きいのです。ここは最初からBEVでスタートした方が、ディーラーの設備の面からも投資がそれほど嵩まずに参入しやすいのではないかと考えてBEV一本でいこうと決断しました」 タイミングを見計らった日本市場参入 それではなぜ今このタイミンングで日本での販売をスタートし、BEV一本で行くことが相応しいと判断したのだろうか。 「日本政府が2050年にカーボンニュートラルを実現するという公約を表明し、それに向けて2035年までに新車販売は100%電動化する決定を菅内閣が下したことが一番大きな引き金になっています。2035年までの間に、様々な形で今までの内燃機関のクルマが徐々に電動車に置き換わっていく流れの中で、BEVもシェアが拡がると想定されます。そこで今の段階から関わることで日本でのBEV販売のチャンスも増やしていくことができると思います。他のメーカーでもBEVのラインナップが揃いつつあるので、いろいろな形でお客様にとっての選択肢のひとつとして、日本車もあるし、欧州車もある。アジアからもヒョンデも参入していますが、BYDもありますということです。姿形も中身も少しずつ違いますが、それぞれに特徴がありますので、その中から選んでいただける状況を構築していきます。BYDとしては長い目で見た時にカーボンニュートラルという大きな目標に少しても貢献できるのではないかと捉え、来年からの日本での販売が最終的に決定されたと理解しています」 日本でのグループ企業との協力関係 BYDはグループ企業として、BYDジャパンがバスや商用車を手がけ、日本でも販売が急拡大している状況にある。この中で、BYDオートジャパンの乗用車が参入するに当たって各社の協力関係はどのようなものなのだろうか。 「実は今朝も劉会長と部門長を集めてのミーティングがありました。BYDジャパンとともに、BYDグループ内に群馬県館林市にタテバヤシモールディング(筆者注:自動車用外板製作を主に手掛ける)があります。さらにBYDフォークリフトジャパン、そして我々BYDオートジャパンがあるため、4法人体制になっています」 「それぞれが自らの分野で目標を設定して頑張っていく関係ではあるものの、一方ではオリジンが共通で、同じバッテリー技術に基づく商品を数多く展開しており、今後はより協力やコミュニケーションを密にしていきます。たとえばすでにEVバスを納めている事業者の方で業務用の乗用車が必要であれば、すぐにその乗用車部門に繋いでもらう。乗用車を扱っているディーラーさんが地場の法人でバスが必要なら、バス部門に繋ぎます。いろいろな形で常に情報を共有して、BYDというファミリーの中でよりビジネスを大きくしていく方向で常にアンテナを張っていく、そういう関係ですね」  

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TEXT:御堀 直嗣
[新連載]知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣

第1回 EVが生み出す自動車の変化 EVは「代替自動車」ではない! 電気自動車(EV)は、エンジン車やハイブリッド車(HV)などの代替ではない。ここからすべてははじまる。 しかし一般的には、脱二酸化炭素のための代替案との認識が広まっている。それが、あらゆる歪みを生じさせている。 たしかにEVは、エンジンがモーターに代わり、燃料タンクがバッテリーに代わり、使う燃料がガソリンや軽油に代わって電気になるという表面上から、エンジン車やHVの代替と考えられがちだ。 だが注目すべきは、使う燃料(エネルギー)が異なることにより、走行性能や運転の仕方、あるいは燃料補給(EVでは充電)の考え方まで違ってくることであり、そこをよく理解する必要がある。 電気に支えられた生活の中で 電気はいまや、暮らしのあらゆる面で不可欠なものとなっている。スマートフォンはもちろん、電子レンジや冷蔵庫、テレビ、空調に加え、調理でもIH(インダクションヒーティング=電磁誘導加熱)のヒーターで料理をすることができる。トイレのウォシュレットも、もはや欠かせないものではないか。もし、ここで停電が起きたら、スマートフォンの充電ができなくなり、情報から孤立してしまう。冷凍食品は台無しになり、電子レンジでのわずか数分の調理も不可能だ。冷暖房にも不自由し、暑さ寒さに耐えなければならない。通常の暮らしが成り立たなくなるのだ。 クルマでの移動については、エンジン車のほうが停電に関係ないと思うかもしれない。だが、信号が消え、交通が混乱し、ガソリンスタンドへの燃料搬送が滞れば、結果的に不自由する。いっぽうでEVであれば、車載のバッテリーから電力を自宅へ供給することで、一時的な停電に対処できる。かえってEVに乗ることが、暮らしの安全保障につながるのである。 そうしたことからも、EVに乗ることは、暮らしを守る電力について真剣に考える機会を与え、電気の質にもこだわる意識が芽生えるようにもなる。 20世紀初頭、まだ明かりはランプに頼り、調理は竈で行っていた。薪を燃やし、石炭ストーブで暖まり、火を使うことが暮らしを支えていた。その延長として、石油を燃やして使うエンジン車が栄えた。エンジン車誕生の前にEVがすでにあったと伝えられるが、EVよりエンジン車が広まった背景にあるのは、灯油を使うランプが電灯に代わり、石油の使い道がなくなったことに困った石油事業者が、エンジン車の燃料としてガソリンを売る事業を展開したからだ。20世紀が石油の時代といわれるゆえんがそこにある。 しかし21世紀は電気の時代であり、クルマがEVであることは必然なのだ。 時代の転換点に立つ自動車 そのうえでEVとエンジン車の違いは何かといえば、EVは振動も騒音もなく、排出ガスも出ず、動力特性はフラットトルクで、変速機を必要とせず、車体寸法の大小を問わず上質な乗り味を手に入れられるところにある。 逆にいえば、エンジンは不都合の塊といえる。振動と騒音があり、煩くて不快だ。有害物質や二酸化炭素を含む排出ガスを出し、環境を汚染する。出力特性が山なりなので変速機が必要で、加速に段差がある。高級であるためには車体が大きくなることで偉さを示すしかない。カール・ベンツがガソリンエンジン自動車を発明した当時、それまでの馬や馬車での移動に比べエンジン騒音が大きかったため、人々に眉をひそめられ、対応策として消音装置(マフラー)が付けられた。それでもエンジン車が普及することで、大気汚染や気候変動が起こり、健康被害に悩まされたり異常気象の被害に遭う人が生まれる。低回転での出力が足りず、変速機というギア比で力を補わなければならない。大馬力でのゆとりや、ゆったりした乗り心地の高級さを求めるなら、車体を大きくしなければならない。 そうしたエンジンの不都合を克服しようと改善してきたのが、1886年にガソリンエンジン車が生まれて以来の歴史である。 しかし、EVであれば、モーター駆動により振動もなく静かである。逆に、静かすぎるということで、低速では通過音をあえて出すほどだ。排出ガスが出ないので、大気汚染も気候変動も起こさない。モーターは、低速から大きな回転力(トルク)を出す原動機なので、高速まで滑らかに加速して心地よい。駆動用バッテリーを車載することで車両重量は増えるが、その効果として微振動が抑えられ、上質な乗り心地になる。静粛性と合わせて、軽自動車の日産サクラや三菱eKクロスEVでさえ、登録車のハイブリッド車より快適だ。つまり、小さな高級車という価値が生まれるのである。 充電や整備、あるいは自動運転へ向けた適合性などについては、いずれまた話すときがあるだろう。いずれにしても、世界人口が80億人に達したいま、ガソリンエンジン車が発明された19世紀末に比べ世界人口は5倍も増えた。そして排出ガスを出すエンジン車が世界に13億台もあれば、地球環境が大きな負荷を受けるのは当然だ。 だからエンジン車からEVにするというだけでなく、そもそも電気の世紀を快適に暮らすうえではEVこそがふさわしい。そうした時代の転換点に、我々はいるのである。

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TEXT:生方 聡
[VW ID.4試乗記]ID.シリーズの世界戦略車「ID.4」:その 2

好印象だが、気になる点もあるインテリア エクステリア以上に好印象なのが、ID.4のインテリアだ。ステッチがアクセントのブラウンのレザレット(人工皮革)がダッシュパネルやシートに施され、シンプルなデザインながら、とても上質に仕立て上げられている。さらに、今回試乗する上級グレードのID.4 プロ・ローンチエディションでは、ルーフに広がるパノラマガラスルーフのおかげで、明るく開放的な雰囲気が楽しめる。 ただ、シンプルなデザインと引き換えに、操作しにくいという難点も。たとえばエアコンの操作は、温度の上下は中央のタッチパネル下にあるタッチスイッチが使えるが、それ以外は設定画面を呼び出し、タッチパネルを操作する必要がある。運転席側にあるパワーウインドーのスイッチも、後席の窓を操作するには「REAR」の部分に触れてから開閉スイッチを上げ下げしなければならず、いままでよりひと手間増えるうえに、スイッチに視線を落とす必要があるのが煩わしい。 センターディスプレイは、ID.4 ライト・ローンチエディションには10インチ、ID.4 プロ・ローンチエディションには12インチのタッチパネルが搭載される。日本に導入される他のフォルクスワーゲン車と異なり、ID.4ではナビゲーションシステムの設定がなく、コネクテッド機能も備わらない。ナビゲーションシステムについては、最新のフォルクスワーゲンのそれが、お世辞にも使いやすいとはいえないことから、スマートフォン連携機能を利用すれば済むことだ。しかし、コネクテッド機能が搭載されないのは、離れたところから充電の操作をしたり、乗車前にエアコンのスイッチを入れておくといった便利な機能が搭載されないことを意味するだけに、できるだけ早い改善を望みたい。 センターディスプレイに比べてかなり小振りなのが、ドライバーインフォメーションディスプレイと呼ばれるメーターパネル。5.3インチのディスプレイには、速度表示のほか、ドライビングデータ、アシスタンスシステム、ルート案内の矢印などを選択して表示することが可能だ。ステアリングコラムに直付けされており、ステアリングと一緒にチルト/テレスコピック調整ができるので、思いのほか見やすい。なお、ルート案内表示はCarPlayでApple標準のマップアプリを使用するときにかぎられる。 充実装備と広々室内 ドライバーインフォメーションディスプレイの右側には、ドライブモードセレクターが設けられている。ステアリングホイールから少し手を伸ばすだけで届き、視界に入る場所にあることから、前進/後退、パーキングの切り替えが簡単にできるのは実に便利だ。ステアリングホイールのスイッチはタッチ式で、左側でアダプティブクルーズコントロール、右側でオーディオの操作ができる。ID.4 プロ・ローンチエディションには、総出力450Wの12チャンネルアンプと、6スピーカー+サブウーファーが備わるフォルクスワーゲンサウンドシステムが搭載されるが、ゴルフ8に設定される“Harman Kardon”プレミアムサウンドシステムに迫る気持ちのいい音が楽しめるのがうれしい。 マイクロフリースとレザレットを組み合わせたフロントシートには、電動の調整機能に加えて、マッサージ機能(ただし運転席のみ)が備わる。シートヒーターやステアリングヒーターなど、少ない電力で効率的に身体を温められる機能もBEVには不可欠だ。一方、リアシートは、ロングホイールベースの恩恵で楽に足が組める余裕があり、また、センタートンネルがないおかげで横の移動が楽に行える。 ラゲッジスペースは、後席を使用する状態でも約90cmの奥行きが確保され、2分割式の後席を倒せば180cmほどに拡大。これなら流行の車中泊も快適だろう。荷室のフロア下には深さ約15cmの収納スペースがあり、充電ケーブルなどを収めるには十分な広さが確保されている。 VW ID.4 Pro Launch Edition スペック 全長:4,585mm 全幅:1,850mm 全高:1,640mm ホイールベース:2,770mm 車両重量:2,140kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:153Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:561km(WLTCモード) 最高出力:150kW(204ps)/4,621-8,000rpm 最大トルク:310Nm(31.6kgm)/0-4,621rpm バッテリー総電力量:77.0kWh トランスミッション:1段固定式 フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式(スタビライザー付) リアサスペンション:マルチリンク式(スタビライザー付) フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク リアブレーキ:ドラム タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20 車両本体価格:6,365,000円

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TEXT:TET編集部
デイリーEVヘッドライン[2022.12.20]

  ・メルセデス・ベンツ、SUVの「EQE SUV」の受注開始を発表……高性能グレード「メルセデスAMG」の「EQE 43 4MATIC SUV」から受注開始  【THE 視点】メルセデス・ベンツのミドルクラス新型電動SUV「EQE SUV」。その中の高性能グレードであるメルセデスAMG「EQE 43 4MATIC SUV」の受注が開始された。2023年春にはさらなるモデルがオーダーできるという。 ベース車両のEQE SUVの「EQE 500 4MATIC」のEVパワートレインを強化。搭載されるモーターは、最高出力が350kW(476ps)、最大トルクが858Nmに引き上げられている。 性能は、0―100km/h加速4.3秒、最高速210km/hを発揮する。 ベースのメルセデス「EQE SUV」から、モーター出力もバッテリー性能などにも手が加えられたAMG仕様は、今後のEVの高性能化の見本となるはずである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ・トヨタ、「ミライ」を改良……「ディスプレイオーディオ(コネクティッドナビ対応)プラス」を装備 ・ボルボ、EVトラックのラインナップを拡充……「FH」「FM」「FMX」を2023年3月から生産開始、ダンプ、クレーン、ゴミ収集車など多くの用途に対応 ・アウディ、「Q8 e-tron」の生産を開始……ベルギー・ブリュッセル工場にて ・北米トヨタ、米国テキサス州でのEVから電力を供給する「V2G(ヴィークル・トゥ・グリッド)」の実証実験を発表……地元の電力会社「Oncor(オンコー)」と協力 ・トーヨータイヤ、「アウディS1 quattro(クワトロ)」をオマージュしたEV「S1 e-tron quattro Hoonitron(S1 e-トロン・クワトロ・フーニトロン)」を「東京オートサロン2023」に展示……ドライバー、ケン・ブロック選手のトークショーも ・井原慶子氏がCEOを務める「Future(フューチャー)」、大阪万博での「次世代都市交通実証実験」に参画……電動パーソナルモビリティFuture「GOGO!シェア」の試乗会等を開催 ・ユビ電、「御殿場プレミアム・アウトレット」に6kWの普通充電器を8基導入……スマホ申し込みの充電サービス「WeCharge」に対応 ・NIO(ニオ)、生産30万台目がラインオフ……2023年上半期に5つの新型車を投入予定 ・パワーエックス、バッテリー工場「PowerBase」建設予定地の岡山県玉野市で地元説明会……2023年末より試験稼働開始、24年春から本格生産 ・フォーミュラE、バレンシア・テスト終了……マセラティのマキシミリアン・ギュンター選手が好成績

TAG: #EQE 43 4MATIC SUV #THE視点 #デイリーEVヘッドライン #メルセデスAMG #福田雅敏
TEXT:岩尾 信哉
BYDオートジャパン社長が考える日本進出戦略とは?[社長インタビュー:その 1]

東福寺厚樹 1958(昭和33)年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、1981年に三菱自動車に入社。2011年にフォルクスワーゲングループジャパン(VGJ)、2016年よりVWジャパンセールス代表取締役社長を経て、2022年にBYDオートジャパン株式会社の代表取締役社長に就任、現在に至る。   セールスのエキスパートが考えるEV販売戦略 去る2022年7月に日本市場への参入を発表した中国の巨大企業であるBYD。いまや2022年上半期において、中国の新エネルギー車(NEV:BEV+PHEV+FCV)の合計販売台数をテスラモーターズを抜くことになった。今回はBYDオートジャパンの東福寺厚樹代表取締役社長に、日本市場での販売体制をどのように構築していくのか、氏の経歴が活かされたBYDオートジャパンのEV販売戦略について、TET編集長・田中誠司がインタビューする機会を得た。 三菱自動車、フォルクスワーゲンでの経験を活かす 「最初に三菱自動車に入社して、ひと通り自動車メーカーの中での仕事に携わってきました。2年ほど販売店でセールスに従事した後、本社に異動して海外事業で北米市場に13年間関わり、国内販売本部で北海道や首都圏販売部を担当しました。その後に販売金融子会社に出向して、オーストラリアの三菱自動車に2年ほど派遣され、日本に戻って中東アフリカ部を担当するなど、三菱自動車の中では様々な部署に関わってきました」 東福寺氏に転機が訪れたのは、今から10年ほど前。2011年に縁があってVWの日本法人であるVWグループジャパン(VGJ)に転職した。 「5年間ほどネットワークマネジメント部長として、主に販売体制整備の仕事に携わりました。仕事の内容としては、販売会社さんと契約を結んだり、あとは新しいお店を出店する際の販売スタッフ、セールス、サービス、管理部門、店長さんといった方の資格要件などのトレーニングですね。アカデミーという組織があって、そこからスタッフトレーニング担当の方を主として指導し、様々な方法で販売できる組織を作っていくための仕事に5年ほど携わりました。北海道から沖縄までいろいろ販売会社の幹部の方と知り合う機会を得たことが良い経験になりました」 「その後はVGJ子会社であるVWジャパンセールスに出向したのが2016年、そこで4年ほど社長を務め、首都圏を中心に現場の指導にあたっていました。そして縁あって2022年の7月からBYDオートジャパンに入社して、今日に至っています」 前職でのEV導入に向けた苦い経験 氏がはじめてEVに関わったのは以前に勤めていた企業でのことだ。「かなり早い時期から電気自動車をやりたいと言いながらも、なかなか日本市場に導入することがなかなかできませんでした」と東福寺氏は当時を振り返る。 「他国で発売していた電気自動車を日本でも限定で販売しようとしましたが、実現できなかったという経験があります。その時は販売会社さんでも充電器を用意してくださいとか、急速充電器は価格が高く、数が入らないので普通充電器でいきましょうとなって、ひと通り整備していたのですが、最終的に日本での電気自動車販売は実現しませんでした」 つまり、電気自動車を市場導入していく段階での貴重な経験をBYD入社以前に、氏は得ていたことになる。 「家庭で基礎充電する際の充電器周りのいろいろな設備を設置しなければならないなど、EVを試験導入する手前の段階でかなり準備はしましたので、そのあたりの経験が結構役に立っていますね」 過去のEVセールスの立ち上げで得た教訓 その際に感じた、電気自動車を現場のディーラーで売らなければいけない場合に何が必要なのか、実感や印象に残ったことはあったのだろうか。なにより、この点で氏がEV販売・購入についての壁の高さを感じていたことは強みといえる。 「やはり一般のお客様に買っていただくには、充電器をご家庭で準備いただくのが一番必要なことになりますので、どうしても車庫をお持ちのお客様で200Vを引けるかどうかがまずはハードルになることが難しさのひとつでした。あとは申請やサポートも政府や自治体から得られるケースも多いものの手続きがかなり煩雑だったので、これらをお客様にお願いするのは極めてハードルが高いなと。お客様からするとそこまで大変だったら『別にいいよ』という話になってしまうので、販売店側でお膳立てして整えて買っていただくとなると手間暇がかかる。すると今度は販売店側も面倒に感じてしまい、なかなか販売促進に繋がらないのが実態だと痛感しました」 「BYDオートジャパンが日本で販売する車種はすべてBEVですから、充電器を設置していただくことは、クルマをお勧めするのとセットでお客様に最初から話していく要素になります。ご案内の仕方、必要な書類、手続きに要する時間などもセールススタッフの方にはしっかりとした説明ができるよう学習して、販売が始まった時にはお話できるような知識を持っていただくようなトレーニングプログラムを今準備しているところです」 <つづく>

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