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簡単な発進までの手順
ID.4 ライトとID.4 プロの一番の違いが、搭載されるバッテリー量だ。ID.4 ライトが8個のバッテリーモジュールで52kWhの容量を確保するのに対して、ID.4 プロでは12個のモジュールで77kWhと、より容量が多い仕様となっている。バッテリー重量はそれぞれ344kgと493kgで、その影響で車両重量も1,950kgと2,140kgと、190kgの開きがある。搭載される電気モーターは、ID.4 ライト、ID.4 プロともに定格出力70kWの交流同期型だが、最高出力は前者が125kW(170ps)であるのに対し、後者は150kW(204ps)と、よりパワフル。一方、最大トルクはともに310Nmを発揮する。気になる航続距離は、ID.4 ライトの388kmに対して、ID.4 プロでは561kmを達成する。
いまどきのBEVだけに、クルマを発進させるまでの手順は簡単。ブレーキペダルを踏み、ドライブモードセレクターでDモード(またはRモード)を選ぶだけ。ステアリングコラム横にあるスタートボタンを、わざわざ押す必要はない。あとはブレーキペダルから足を離せば、ID.4はゆっくりと動き始める(ただし、“オートホールド”が有効になっている場合は、発進時にアクセルペダルを踏んでやる必要がある)。
ここから軽くアクセルペダルを踏むと、スムーズで必要十分な加速を見せるが、動き出しは期待よりもやや控えめ。しかしそれも束の間、少しスピードが乗ってくると、そこからはBEVならではの力強く、伸びやかな加速が待っていた。どうやら意図的に出足を穏やかにしているようで、エンジン車から乗り換えても違和感なく運転できるようにするための配慮らしい。
余裕のある加速性能
一般道はもちろん、高速道路でも、まわりの流れにあわせて走るぶんには、アクセルペダルを深々と踏み込まなくても、余裕ある加速が味わえる。高速道路の合流や追い越しの場面でアクセルペダルを奥まで踏んでみると、シートに背中が沈み込むような迫力こそないものの、2Lガソリンターボエンジン並みの強い加速を発揮。急加速中でもID.4のキャビンは静かに保たれたまま、見る見るスピードを上げていく感覚は、一度味わうと病みつきになる心地よさだ。しかもこのID.4 プロは後輪駆動を採用するため、加速時のトルクを荷重が増す後輪でしっかり受け止めてくれる。大トルクのFF車ではホイールスピンやトルクステアが出るところだが、後輪駆動のID.4 プロでは思い切ってアクセルペダルを踏み切れるのが頼もしいところである。
BEVでは走行中にアクセルペダルから足を離したり、右足の力を緩めると、モーターの発電によりエネルギーを回収しながら減速する回生ブレーキが効くが、ID.4の場合は、Dモードでは回生ブレーキが効かないコースティング(惰力走行)を行う一方、ドライブモードセレクターでBモードを選ぶと強めの減速が可能になる。右足を一気に離しても急ブレーキにはならないが、ふだんの走行なら回生ブレーキだけでほぼカバーできるレベルだ。しかも、回生ブレーキの反応がやや穏やかなぶん、アクセルペダルの操作に神経を尖らせる必要がないのがいい。Bモードを選んでも、車両を完全停止させることはできないが、最終的にブレーキペダルを操作して停止するのが煩わしいとは感じなかった。むしろこのスタイルのほうが、エンジン車からすんなり乗り換えられるに違いない。