#輸入車
TEXT:御堀直嗣
1000馬力オーバーもザラなEVだけどそれって本当に必要な価値? 馬力じゃなくて本当に見るべき性能とは

1000馬力超えがゴロゴロしているEVスポーツカーの世界 ポルシェのタイカンは、ターボGTバイザッハパッケージの場合、その最高出力は760kWに達する。エンジンでいう馬力に換算すると、約1034馬力となる。タイカンの基準車種では、最高出力が300kWで、馬力換算では408馬力であり、これでも十分高性能だ。基準車種のタイカンの0-100km/h加速は4.8秒で、最高速度は230km/hに達する。ターボGTバイザッハパッケージに至っては、0-100km/hがわずか2.2秒で、最高速度は305km/hだ。そのぶん、車両価格も1453~3144万円の幅がある。 電気自動車(EV)であっても、ここまで速いというスポーツカーメーカーならではの姿(実力)がそこに示されている。 ちなみに、エンジン車の911で最高の性能はターボSで、711馬力、0-100km/h加速は2.5秒で、最高速度は322km/hとなる。 高級車はどうか。メルセデス・ベンツEQSは、後輪駆動のモーターの最高出力が265kWで、馬力に換算すると360馬力になる。タイカンの基準車種に近い性能を備えているといえるかもしれない。そのうえで、WLTCによる一充電走行距離は759kmだ。ほかに、AMGの4輪駆動も選べるが、いずれもその最高速度は200km/h以上を確保している。ドイツでアウトバーンを走ることを思えば、200km/h以上出せればまずまずであろう。 ただし、エンジン車かEVかを問わず、速度と空気抵抗の関係は速度の2乗で効いてくるので、100km/hから200km/hへ速度を2倍高めると、空気抵抗は4倍に膨れ上がる。ドイツでは、アウトバーンがあるおかげで、速度で時間を稼ぎ出す発想があるが、EVになるとそれは充電時間との競争にもなり、ドイツを中心に欧州で超急速充電器を求める背景となっている。 一方で、メルセデス・ベンツといえどもEVになると最高速度を200km/hプラス程度に抑える方向にあるようで、エンジン車の時代のように単に最高速度を高めることが正義ではないという考え方が出はじめている。つまり、馬力競争ではなく効率の追求とほどよい移動時間の提供、それによる時間の活かし方・使い方の発想だ。 背景にあるのは気候変動抑制であり、EVでもエンジン車と同様に200km/h以上で走り続けられなければ価値がないという考え方への疑問や懸念だ。それを続ければ、EVであっても電力消費という意味での効率の追求が必ずしも正義でない領域に踏み込み、いくら再生可能エネルギーを使うとしても足りなくなり、結局、原子力発電に依存しなければ、200km/hでの移動を実現しきれなくなるという警告だ。ちなみにドイツは、脱原発である。 とはいえ、長距離移動をクルマに依存する間はなかなか答えを出しにくい時代が続く可能性がある。なぜなら、空気抵抗だけでなく、高速走行しながらカーブを曲がるという総合性能を高めるためにはタイヤのグリップを高める必要があり、それにはゴムの性質だけでなく、より偏平な寸法のタイヤが求められ、それがまた空気抵抗に悪影響を及ぼすという、際限のない悪循環に入り込みかねない。もちろん、グリップのよいタイヤのゴム(コンパウンド)は、抵抗が大きいため、電力消費を悪化させる。

TAG: #スポーツカー #輸入車 #高性能車 #高級車
TEXT:高橋 優
フェラーリよりもランボよりもポルシェよりも速い! たった13分で1万台が売れた中華SUV「Zeekr 9X」がヤバすぎる

極限の競争環境下にある大型SUVセグメントの真打ち登場 中国ZeekrがフラグシップSUV「9X」の正式発売をスタートしました。ジーリーのもつすべてのテクノロジーを結集した最強の電動SUVとして、発売開始13分間で1万台を超える受注を獲得しています。 まず、Zeekr 9Xについて、全長5239mm、全幅2029mm、全高1819mmというフルサイズSUVセグメントに該当します。私自身実車を見てきましたが、サイズ以上に大きさを感じました。この理由は、EVらしからぬグリルが強調されたフロントフェイスにあると思います。 また、Zeekr初となるPHEVモデルであり、2リッターエンジンと最大3つのモーターを前後に搭載するトライモーターAWD仕様。さらに最大70kWhという特大級の電池容量を搭載することで、EV航続距離380km(CLTC基準)を実現しています。とくにPHEV専用2リッターエンジンの熱効率は46%を超えており、効率性と動力性能を両立。トライモーターAWDの最高出力は1030kW、0-100km/h加速は3.1秒を実現しており、フェラーリ・プロサングエやランボルギーニ・ウルス、ポルシェ・カイエンターボGTなどを凌ぐ動力性能がアピールされています。 最大70kWhという高電圧バッテリーには900Vシステムが採用され、SOC80%まで9分で充電可能という超急速充電に対応。さらに、48V可変スタビライザーを採用することで、エアサスペンションまわりの応答性を大幅に向上させ、乗り心地と走行安定性を両立しています。 また、最上級グレードHyperには、ジーリーグループ独自開発ADAS「G-Pilot」の最上位、H9を採用。LiDARを5つ搭載しながら、プロセッサーはNvidia Thor-Uをふたつ搭載することで、演算能力は1400TOPSを実現。高速道路上におけるアイズオフを実現するレベル3自動運転を実現可能としました。しかも、2列目キャプテンシートはゼログラビティシートとともに回転機能も採用されており、3列目と向かい合って座ることも可能です。 そして、注目の値段設定について、9XのエントリーグレードMaxが46.59万元(約970万円)と、ジーリーの高級ブランドのフラグシップモデルに相応しい値段設定を実現してきました。 その一方で、このフラグシップSUVには数多の競合EVが存在するという点を忘れてはなりません。とくにベンチマークとなるのは現在でも月間1万台級と大ヒットを続けるファーウェイのAITO M9の存在でしょう。 しかしながら、9Xは電池容量、EV航続距離で競合を大きくリードしており、さらに充電性能も900Vを採用していることから、AITO M9とは比較にならない高性能さを実現。さらに、9X Hyperの燃費性能は7.45L/100kmであり、AITO M9にはわずかに劣るものの、Li Auto L9やDenza N9をリード。 とくにM9やL9と同じデュアルモーター仕様のMaxグレードだと6.78L/100kmと、M9とL9の燃費を大幅にリードしています。

TAG: #SUV #中国車 #輸入車 #高級車
TEXT:中谷明彦
【試乗】速さはスーパースポーツ並! AWD技術も完成の域! アウディS6スポーツバックe-tronに望むのは「感性に訴えかける走り」のみ

「S」の称号を冠したアウディの新EV アウディが新たに投入したS6スポーツバックe-tronは、同社の電動化戦略の頂点に位置づけられるモデルである。「S」の称号は従来より、アウディが高性能と精密な走りを象徴するために与えてきたもの。その名をBEV(バッテリー電気自動車)が冠することは、単なるEV化ではなく、電動化時代における「スポーツ」の定義を再構築する意図の表れともいえる。 外観はアウディ伝統の美しいプロポーションに、極めて高い空力性能を融合させたものとなっている。空気抵抗係数(Cd値)は0.21という好数値を実現。これは市販車としてトップクラスの数値であり、電費性能の向上や風切音の低減に直結している。 フロントグリルは段差の少ない面構成で整流効果を高め、起伏の少ないサイドラインは滑らかにリヤへと流れる。ハッチバック形状のテールゲートは、ルーフから緩やかに傾斜し、後方の気流分離を最小限に抑えている。 ボディサイズは全長4930mm、全幅1925mm、全高1470mm。ワイド&ローのスタンスが生み出す低重心感は、視覚的にも高性能モデルとしての存在感を強調しているようだ。 S6スポーツバックe-tronの駆動系は、前後に独立したモーターを配するデュアルモーター4WDとして構成されている。前軸に140kW/275Nm、後軸に280kW/580Nmを発生させ、システム総出力は405kW(約550馬力/ロンチコントロール起動時)に達する。0-100km/h加速は3.9秒、最高速度は240km/hと公表され、ガソリンエンジン車のSシリーズに匹敵する動力性能が与えられている。 動力源となるバッテリーは、フロア下に搭載される100kWhの大容量ユニットで、航続距離はWLTCモードで726km。CHAdeMO方式による135kW急速充電に対応し、一般家庭での200V充電環境でも満充電にでき、十分な実用性を備える。 発進からの加速は極めて滑らかで、モーター駆動特有の即応性と静粛性が際立つ。トルクの立ち上がりにタイムラグがなく、どの速度域からでも力強い加速を示す。 一方で、走行フィールには明確な特徴がある。高出力モーターと重量級バッテリーを支えるため、サスペンションは全体的に硬質な設定となっている。路面の段差を明確に伝える傾向があり、スポーツモデルとしての車両姿勢安定性を優先したチューニングとしているのだ。

TAG: #スポーツバック #輸入車
TEXT:桃田健史
世界に衝撃を与えたアイオニック5Nをさらに超える6Nが公開! その恐るべき実力とは?

アイオニック5Nと並ぶ650馬力のアイオニック6N 韓国ヒョンデは7月の英国グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで「アイオニック6N」を世界初公開した。「N」は、Nブランドの発祥地であり、ヒョンデのグローバルR&Dセンターがある「ナムヤン」と、Nの走行評価を行う技術研究所があるドイツのニュルブルクリンク、それぞれの頭文字をとったものだ。 アイオニック6Nの特徴は、日本を含めてグローバル各地ですでに市場導入されているアイオニック5Nをベースに走りをさらに磨き上げたことにある。別の見方をすると、角張ったデザインのアイオニック5と流線型を強調したアイオニック6というふたつのモデルの商品性がN仕様となることで浮き彫りになったといえよう。 アイオニック6Nは、アイオニック5Nと比べて全長で220mm長い4940mmあり、クルマ全体の重心は低い。AWDのパワーユニットのシステム出力は650馬力、最大トルクは770Nm。モーターの最大回転数は2万1000rpmで、バッテリー容量は84kWh。停止状態から時速100kmまでの加速は3.2秒で、最高速度は257kmである。 では、アイオニック6Nはどんな走りをするのだろうか。ヒョンデが公開している動画などから推測すると、低重心によってコーナーでのクルマの動きのキレがアイオニック5Nよりも増している印象がある。 筆者は4月上旬に韓国でヒョンデ本社関連の取材をしており、そのなかでヒョンデとハンコックタイヤが共同運用しているテストコースでアイオニック5Nを全開走行させている。日本でも千葉県の袖ヶ浦レースウェイで開催されたヒョンデモビリティジャパンが主催したメディア向け試乗会でアイオニック5Nをドライブしているのだが、韓国ではより広いコースでかなりのハイベースで走行することができた。 そうした体験をベースにアイオニック6Nの動きを考察すると、低重心であることから減速時のノーズダイブ量が少なく、またコーナーの入口でのステアリング操作に対するクルマ全体の応答性が上がっているのではないかと考えたのだ。 かといって、サスペンションセッティングが単純に硬いということはないだろう。ロングボディであることでクルマにかかる力を上手くいなしながら、走りの安定感とキレが両立されていることを想像する。いずれにしても、Nの名称に恥じない、強烈な加速感とドリフト制御システムを味わえることは間違いないだろう。 なお、現時点で日本市場への導入は未定だ。

TAG: #ヒュンダイ #輸入車 #韓国車
TEXT:桃田健史
テスラを抜き世界最大のEVメーカーになったBYD! それでも株価が低迷するワケ

いまや世界最大のEVメーカーとなったBYD 中国BYDの株価が5月後半から一気に下落し、その後も低迷が続いている。 BYDといえば、米テスラを抜いて世界最大のEVメーカーとなったことが話題となった。日本市場では、各種モデルを導入して国内販売網を拡充しており、近年中には軽規格EVを仕立てることが決定している。そのため、スズキ、ダイハツ、ホンダ、三菱(及び生産委託している日産)は、軽EV市場拡大へのプラス効果として捉えているところだ。 さらに、中国政府による外貨獲得に対する積極的な施策によって、中国国外に向けた新車輸出や、東南アジアや欧州での新車現地生産についてもBYDの存在がクローズアップされてきた。 一方で、中国国内自動車販売における競争環境は激化の一途を辿っている。そうしたなかで衝撃的だったのが、BYDによる22モデルを対象とした大幅値引きだ。なかには3割を超える値引き率に達しており、こうした状況にライバル企業も大幅値下げを決断せざるを得ない状況に陥った。 中国における新車価格の大幅値引きは、数年前から自動車産業界での大きな問題とされてきたが、5月のBYDによる大幅値引きは、ある種の末期症状とも思える印象があり、これに対して株式市場が反応したものと考えられる。 5月23日のBYD株価は、135.00CNYだったが1週間後の5月30日には.117.43CNYへと約13%下落した。それから何度か買い戻しが入ったものの、8月上旬には104CNY台まで下がっている。本稿執筆時点の9月中旬では107〜109CNYのレベルで推移しているところだ。 では、今後のBYD株価はどのように推移するのだろうか。技術面でいえば、BYDのポテンシャルはまだ高いものと考えられる。具体的にいえば、BYDはEVにおけるコストでもっとも大きな影響があるバッテリーを自前で開発・生産しているため、EV全体でのコスト競争力が高い。また、直近では、1000V・1000A・1000kW超という大出力型急速充電システムを市場導入するなど、グローバルEV市場に対する影響力が強いことは確かだ。 ただし、営業面で見れば少なくとも中国国内では5月の大幅値下げを実施せざるを得なくなったように、需要と供給のバランスが大きく崩れており、生産体制を含めた事業方針の転換が必要な時期なのかもしれない。 そうとはいえ、課題はBYD個社の業績や収益性だけではないように思う。なぜならば、中国の自動車産業全体の抜本的な構造変革が必須だからだ。当然のことだが、今後のBYDの株価変化については、EVのみならず中国自動車市場全体の動きを注視する必要がある。

TAG: #値下げ #輸入車
TEXT:桃田健史
中国で新車ディーラーが閉店ラッシュ! 過剰供給だけが理由じゃないEVを巡る情勢

一攫千金どころか撤退が続出している中国自動車ディーラー 中国で新車販売を行うディーラーの淘汰が始まっている。最近、自動車販売に関する業界団体のデータを基にした各種記事が、日本のメディアでも紹介されることが多い。こうした中国での経済環境の変化は、起こるべくして起こっている印象がある。 時計の針を戻せば、中国は2000年代以降に経済発展のスピードが高まり、2010年代に入ってからは自動車産業に対する国や地方政府の影響力が強まった。なかでも、電動車を示す新エネルギー車(NEV)の研究開発と生産に対して、中国の中央政府と地方政府が補助金などを活用した積極的な支援策を続けてきた。その結果として、一部では過剰生産が起こり販売されないまま屋外に放置される大量のEVの姿が日本でも報道されることが増えた。 EVの販売体制については、メーカー毎に販売事業者との契約内容が違うのは当然だが、販売事業者の立場になれば、「政府が主導する施策に一刻も早く乗ろう」という気もちになるのは当然だったといえるだろう。自動車販売は客単価が高く、事業者としては一攫千金が狙いやすいからだ。 EVメーカー数が一気に増え、また同じメーカーが複数のEVブランド展開することで、それに見合ったディーラーが登場するのは当然だが、EV市場全体で見れば需要と供給のバランスが崩れるのも当然の流れだ。 ただし、昨今の中国EV市場を見ていると、単純に供給過多でディーラーが淘汰されているとはいえないと思う。 ポイントは大きく3点ある。 1番目は、EVメーカー同士、または大手や中堅メーカーとEVとの間での価格競争だ。これは、市場競争という観点では当たり前の動きだといえる。過去10年で急増したEV専業メーカー間では、技術的に明確な個性が打ち出せない場合に価格競争に走ってしまった。また、ガソリン車やハイブリッド車を主体として一部EVを販売している大手や中堅メーカーからお客を奪うためには、ガソリン車並のEV価格を無理に設定することでディーラーとしての収益性が下がってしまった。 2番目は、ファーウェイやシャオミを筆頭とするEV新興勢力の登場だ。製造から販売までの一元的に管理するなかでディーラーのあり方について新しい発想を盛り込んでいる。そのため、既存のEVメーカー・ブランドとの入れ替えが市場で起こっている可能性がある。 そして3番目は、2番目のEV新興勢力によるバリューチェーン変革だ。ここでいうバリューチェーンとは、新車販売後のメーカー側の新しい収益構造を指す。つまり、昨年から今年にかけての中国でのEVを含む自動車ディーラーの閉鎖ラッシュは、中国における自動車産業構造の大変化の兆候だと分析できるのではないだろうか。 こうした自動車市場の新陳代謝は、日本の自動車産業界にとっても大いに参考になりそうだ。

TAG: #中国車 #破綻 #輸入車
TEXT:石橋 寛
天下のポルシェに携帯屋のクルマが勝っただと? ニュルでタイカン・ターボGTをぶっちぎったシャオミSU7の衝撃

シャオミとポルシェがニュルでガチンコバトル 大の大人が正面切ってムキになれるのがレースというもの。ラップタイムを競い合うのに、建前やしがらみは一切不要。これをリアルに体現しているのが、近年のシャオミSU7対ポルシェ・タイカン・ターボGTのガチンコ対決ではないでしょうか。 つい先ごろ、シャオミSU7はスペシャルバージョン「トラックパッケージ」と禁じ手かのような「ニュルブルクリンク・リミテッドエディション」の2タイプをラインアップ。両車のバトルはいよいよ佳境へと突入したようです。 ご存じの方も多いと思いますが、そもそもシャオミは中国の携帯電話メーカー。そこが突如EVビジネスに参入したのが2021年のことで、SU7は彼らにとって最初のモデルでした。高級4ドアセダンの市場に投入され、FRモデル(299馬力)・全輪駆動(673馬力)あたりが一般的なモデルですが、「世界一のEVメーカーになる!」というCEOが掲げたモットーのとおり、シャオミはとんでもないEVを発売したのです。 SU7 ウルトラと呼ばれるトップエンドモデルは、578馬力を発揮するモーターを2基、392馬力のモーターを1基搭載し、合計出力1548馬力というハイパワー。ポルシェがニュルブルクリンクのラップレコード向けにチューンしたタイカン・ターボGT「バイザッハ・パッケージ」が1108馬力とされているので、いかにシャオミがムキになっているかがよくわかる数字かと(笑)。 もちろん、プロモーションの一環としてSU7 ウルトラはニュルブルクリンクにチャレンジ。プロトタイプとしながら、6分22秒091と驚異的な数字を叩き出しています。 ちなみに、市販車の最速モデルとしてはメルセデスAMGが6分35秒183、シャオミSU7プロトタイプが挑戦したオープンクラスは、ポルシェ919ハイブリッドが5分19秒546という記録になります。

TAG: #中国 #輸入車
TEXT:石橋 寛
話題のフォルクスワーゲンID.Buzzは50年の準備期間の末に登場ってマジ? EVバスは一日にして成らず!!

たくさんの雛形を経てID.Buzzは市販化された ついに日本に導入されたID.Buzzですが、これまで何台ものコンセプトカーが発表されてきたことご承知のとおりです。ブリー・コンセプトやBudd-eなどなど、そりゃもうたくさんあったのですが、フォルクスワーゲンはおよそ50年前からID.Buzz、すなわちワーゲンバスの電動化を目論んでいたことはさほど知られていません。それだけ長期間にわたって研究していれば、トライ&エラーも増えるというもの。ID.Buzzに辿りつくまでの紆余曲折をざっくりご紹介しましょう。 T2(1972) 1970年、VWは電気駆動システムを備えたクルマを設計する「フューチャー リサーチ」開発部門を設立しました。先見の明というよりも、ドイツは第二次大戦中から電気駆動の開発に取り組んでおり、自国産エネルギーの乏しさを補うことが主目的だったかと。 そこで生まれたのが、ワーゲンバスをベースに880kgものバッテリーを荷台に積んだT2でした。発売当時の1972年はバッテリーの性能も低く、これだけ積んでも航続距離は85kmとわずかなもの。しかも、充電ステーションなどは存在しないため、VWは充電済みバッテリーと積み替えるシステムを考案。およそ5分で交換できたといいますが、やはり荷室を占拠する大型バッテリーは実用的とはいえず、数台を市販したのみでT2プロジェクトは終了しています。 この苦い経験がのちのMEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブキット)と呼ばれるEV専用プラットフォームの開発につながったことはいうまでもないでしょう。 マイクロバス・コンセプト(2001) 連綿と続いていた電動Bulli(ブリ:T1バスの愛称、ドイツ語でブルドッグや剛健さの意味)プロジェクトは2000年代初頭、突如としてマイクロバス・コンセプトを発表。ちょうど北米にミニバンブームが訪れていた時期で、VWとしては往年のブリを意識したスタイリングで人気を勝ち取ろうと考えたのでしょう。 ただし、中身はEVでなくV6エンジンを搭載することが予定されていました。時代を考えればプリウスが発売されて間もなく、市場はEVどころかハイブリッドさえスタートしたばかり。もしかすると、1970年代の失敗がEVとして発表することを躊躇わせたのかもしれません。 とはいえ、カリフォルニアのスタジオでデザインされたボディは、数あるコンセプトモデルのなかでも生産型Buzzにほど近いもの。デトロイトショーでの評判も上々で、2002年には量産も計画されたものの、ミニバン市場のヒートアップに輸入車のVWは分が悪いと判断。2004年にあっけなく生産計画の中止が発表されました。 ブリー・コンセプト(2011) ID.Buzzの生産より10年前、早くもEVコンセプトカーとして登場していたのがブリー・コンセプト。スタイルの流れとしてはマイクロバス・コンセプトを受け継ぐものながら、VWの汎用プラットフォーム「MQB」を採用するなど、文脈はまったく違うといっていいでしょう。また、EVとしてお披露目したのも現実性を担保するもので、この翌年にはVWからEVへの大規模投資がほのめかされています。 MQBを使用したためか、マイクロバス・コンセプトよりもコンパクトになりつつ、スペースユーティリティも最適化されています。これには、バッテリーの搭載位置などが奏功しており、T2時代からの研究成果が現れているはず。当時としては破格といっていい40kWhのリチウムイオン電池を積み、航続距離は300kmをベンチマークとしていました。

TAG: #コンセプトカー #ミニバン #輸入車
TEXT:石井啓介
バッテリーを積むためにはワンオフパーツが山のように必要! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その6】

いよいよ電気系の作業に着手!! 「電気熊猫計画」とは、EVライフをもっと楽しくおいしくする「EVごはん」と、旧車のコンバージョンEVを手がける「アビゲイルモータース」が共同で進める往年のイタリアの名車「フィアット・パンダ(初代)」をEV(電気自動車)にコンバートするプロジェクトです。 今回は、第6回目(第5回目はコチラをご覧ください)として、「Step4:レイアウトに沿って画面上で各種マウント類を設計し、製造する。またバッテリーレイアウトに従って、バッテリーボックスを設計製造する」前編に入っていきます! 引き続きよろしくお願いいたします。 山のように届いた金属片との格闘! 前回チラッと出てきましたが、第3弾でボディスキャンして設計した、パワーユニットのブラケットやバッテリーを収める各パーツたちが、精密板金屋さんから大量に到着。 設計図を見ながらが、各パーツを仮組みしてみます。これが、ジグソーパズル的に難解。設計図面とにらめっこしながら、パーツを探しては仮組みするのですが、厚さ2mmと5mmの鉄板を加工したもので重いし、鋭利な角もあって危ないし、しかも、猛暑の工場での作業はツラい……。 このホームベースのような箱は、リヤ下のバッテリーボックスになるもの。設計がギリギリな精密板金のパーツなので、各パーツの重なりまで考えないとうまくハマりません。ひー! プラモデルと違って番号が振ってないので、マジックで番号を振って組み立て方を整理していきます。 これは、リヤシート付近に設置するバッテリーボックス。バッテリーは重いので、車体に分散して配置する設計となっております。 これは3Dプリンターで製作した、ドライブやリバース、ニュートラルなどのセレクタースイッチになるもの。「Panda」ロゴがカワイイ(これが取り付けられるのはいつの日か……)。 気づくと今日も夕方です。仮組みしたバッテリーボックスを、埼玉県の某所にあるショップさんにお願いしてキレイに溶接してもらいます。なかなか地味な仕事が続きますが、どうぞお付き合いくださいませ! 地味な作業は続きます! 次回は「Step4:レイアウトに沿って画面上で各種マウント類を設計し、製造する。またバッテリーレイアウトに従って、バッテリーボックスを設計製造する」後編(もしかしたら中編)をお送りさせていただきます! 引き続きよろしくお願いいたします。 ●充電スポットの美味しいごはん情報をシェアするコミュニティ「EVごはん」が、EVライフを始める人のためのワンストップWEBモール「EVモール」をスタートしました! https://ev-mall.jp/ ●旧い個性的なクルマを日常的に使いたい。そんな願いをカタチに! アビゲイルモータース https://www.abigail-motors.ltd/ ●当プロジェクトへのパーツやシステムのご協賛は随時お待ちしております。ご協賛いただいた際には、当メディアやSNS等でご紹介させていただきます。 info@141marketing.jp

TAG: #コンバート #パンダ #輸入車
TEXT:桃田健史
自動車専売メーカーだけでもかなりの数なのになぜ過当競争に挑む? スマホでお馴染み「ファーウェイ」「シャオミ」がEVに参戦する理由

EVの登場でクルマを提供できるのは自動車メーカーだけではなくなった 中国のEV市場の業界図式がいま、目まぐるしく変化している。そのなかでも、家電やスマートフォンのメーカーでもあるHauwai(ファーウェイ)とXiaomi(シャオミ)の存在感が目立つ。 時計の針を少し戻せば、中国ブランドの乗用EVが立ち上がったのは2010年代に入ってからだ。当時、中国各地で中国ブランドEVを試乗したが、クルマの根本的な走行性能のレベルはけっして高くなかった。いわゆるコンバージョンEVという感じであり、EV専用車がAセグメント、またはそれより小さい日本でいう超小型モビリティのような存在が主流だった。電池メーカーもさまざまなブランドが参入し、中国当局は一時、電池の規格化を一気に進めようとしたことを思い出す。 その後、中国政府によるNEV(新エネルギー車)製造に対する支援施策などにより、従来型の外資メーカーと中国地場メーカーの合弁事業のみならず、中国地場ベンチャーが数多く登場することになる。だが、厳しい価格競争や、一部メーカーでの強引な経営体制などの影響で経営破綻したり、ブランドが消滅したりするケースが目立つようになった。 そうしたなか、満を持して登場したのが家電やスマートフォンの製造販売を本業とするHauweiやXiaomiである。背景にあるのは、やはりSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)という自動車産業における新しい概念だ。 SDVには定義はない。その上で、自動車産業界にとっては2010年代にCASEと呼ばれた次世代技術のなかで、SDVをきっかけに欧米や中国の電機・IT系事業者が自動車産業におけるゲームチェンジを一気に仕掛けてきた形だ。時期としては、コロナ禍であったこともあり、日本の自動車産業界にとってHauweiやXiaomiの自動車産業界における躍進は、寝耳に水といった印象をもっている人が少なくないだろう。 たとえば、Hauweiは自社EVブランド「問界(AITO)」がある。足がかりとして、中国地場では中堅自動車メーカーのセレスと連携して中国での売れ筋である高級SUV EV市場に打って出た。さらに、2023年にはHauweiが中心となる連合体「HIMA」を発足させる一方で、2024年にはセレスがHauweiからAITOの商標権を買収した。 見方を変えると、Hauweiとしては市場における激しい価格競争のなかで完成車事業の収益性を検討し、車載OSなどSDV関連プラットフォームの提供企業として、サレスやHIMAに加入している中国地場大手の上海汽車などと新たな事業展開を目指すものと推測される。 Hauweiの強みとは、EVという商品そのものだけではなく、市場環境や社会情勢によって大胆な経営判断を実行できる経営体制にあるといえるだろう。

TAG: #スマホ #中国車 #家電 #輸入車

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