いまや世界最大のEVメーカーとなったBYD
中国BYDの株価が5月後半から一気に下落し、その後も低迷が続いている。
BYDといえば、米テスラを抜いて世界最大のEVメーカーとなったことが話題となった。日本市場では、各種モデルを導入して国内販売網を拡充しており、近年中には軽規格EVを仕立てることが決定している。そのため、スズキ、ダイハツ、ホンダ、三菱(及び生産委託している日産)は、軽EV市場拡大へのプラス効果として捉えているところだ。
さらに、中国政府による外貨獲得に対する積極的な施策によって、中国国外に向けた新車輸出や、東南アジアや欧州での新車現地生産についてもBYDの存在がクローズアップされてきた。
一方で、中国国内自動車販売における競争環境は激化の一途を辿っている。そうしたなかで衝撃的だったのが、BYDによる22モデルを対象とした大幅値引きだ。なかには3割を超える値引き率に達しており、こうした状況にライバル企業も大幅値下げを決断せざるを得ない状況に陥った。
中国における新車価格の大幅値引きは、数年前から自動車産業界での大きな問題とされてきたが、5月のBYDによる大幅値引きは、ある種の末期症状とも思える印象があり、これに対して株式市場が反応したものと考えられる。
5月23日のBYD株価は、135.00CNYだったが1週間後の5月30日には.117.43CNYへと約13%下落した。それから何度か買い戻しが入ったものの、8月上旬には104CNY台まで下がっている。本稿執筆時点の9月中旬では107〜109CNYのレベルで推移しているところだ。
では、今後のBYD株価はどのように推移するのだろうか。技術面でいえば、BYDのポテンシャルはまだ高いものと考えられる。具体的にいえば、BYDはEVにおけるコストでもっとも大きな影響があるバッテリーを自前で開発・生産しているため、EV全体でのコスト競争力が高い。また、直近では、1000V・1000A・1000kW超という大出力型急速充電システムを市場導入するなど、グローバルEV市場に対する影響力が強いことは確かだ。
ただし、営業面で見れば少なくとも中国国内では5月の大幅値下げを実施せざるを得なくなったように、需要と供給のバランスが大きく崩れており、生産体制を含めた事業方針の転換が必要な時期なのかもしれない。
そうとはいえ、課題はBYD個社の業績や収益性だけではないように思う。なぜならば、中国の自動車産業全体の抜本的な構造変革が必須だからだ。当然のことだが、今後のBYDの株価変化については、EVのみならず中国自動車市場全体の動きを注視する必要がある。