トヨタ 記事一覧

TEXT:曽宮 岳大
“クルマ屋が作る新世代EV”を投入。新体制方針説明会で垣間見たトヨタの本気

トヨタ自動車は4月7日、「新体制方針説明会」と銘打った発表会を開き、佐藤恒治新社長はじめ新たな経営陣による事業方針の発表を行った。会見では、地域ごとに最適な複数の方法でカーボンニュートラルを目指す“マルチパスウェイ”を継承し、電気自動車については2026年には「クルマ屋が作るEV」を標榜する、まったく新しいEVを投入することなどを明らかにした。 複数の手段でカーボンニュートラルを追求 豊田章男前社長(現会長)に代わり、佐藤恒治新社長をリーダーとするトヨタ新体制が4月1日にスタートを切った。佐藤社長が掲げるテーマは、“継承と進化”。豊田前社長が打ち出した「もっといいクルマを作ろうよ」をクルマ作りの原点として新体制でも継承し、社員、仕入れ先、販売店と一緒に“チーム経営”でクルマを作っていくと強調した。 継承と並行して、“進化”にも取り組んでいく。その主たる取り組みとして「クルマの未来を変えていく」ことを掲げる。避けては通れないのが2050年カーボンニュートラルだ。その実現に向け、従来から掲げているマルチパスウェイ(ひとつの手段ではなく、地域ごとに合った複数の方法で目標達成を目指す)を軸に、“今できる電動化”を積み上げて行く方針を述べた。そのマルチパスウェイのなかでも重要となるBEV(バッテリーEV)については、数年でラインアップを拡充する方針を示した。 商品を軸にした具体的な取り組みについては、中嶋祐樹副社長により発表が行われた。中嶋副社長は、佐藤新社長同様、現場上がりの役員である。チーフエンジニア時代には「iQ」や「ハイラックス」を生み出している。 中嶋副社長は、バッテリーEVについては2026年までに10モデルを新たに追加し、販売台数を年間150万台に引き上げる目標を示した。そして2026年には、「クルマ屋が作る今までとはまったく異なる次世代バッテリーEVを投入する」と高らかに宣言した。 >>>次ページ EVの航続距離を2倍に

TAG: #トヨタ #発表会 #経営
TEXT:生方 聡
感動よりも扱いやすさを [トヨタbZ4X試乗記:その3]

FWDと4WDの2タイプが用意されるbZ4Xのうち、150kWのモーターで前輪を駆動するbZ4X Z FWDの走りをチェックする。 シングルモーターでも加速に余裕あり bZ4Xの場合、ブレーキを踏みながらセンターコンソールにあるパワースイッチを押すことでEVシステムが始動する。さらに、トヨタとしては初採用のダイヤル式シフトでDまたはRを選ぶと、発進の準備が整う。ダイヤル式シフトは押しながら右または左に回すが、押すという動作が少し煩わしく、いちいち押す必要があるのか疑問である。 Dレンジを選んでブレーキペダルから足を離すと、bZ4Xはゆっくり動き始める。アクセルペダルはフロアに支点があるオルガン式。微妙なアクセルのオン/オフには好都合であり、吊り下げ式ペダルを採用する「フォルクスワーゲンID.4」のオーナーにとっては羨ましいかぎりだ。 アクセルペダルを軽く踏む状態では、bZ4Xの加速はやや抑え気味。それでも十分な素早さがあり、動きも実にスムーズである。力強い加速に感動するEVもあるが、bZ4Xはあえて扱いやすさを狙っているようだ。一方、アクセルペダルのストロークの途中からは、伸びのある加速を楽しむことができ、これがなかなかスポーティだ。 一方、センターコンソールのスイッチで「ECO」モードを選ぶと、アクセルレスポンスは穏やかになるが、それでもストレスのない加速性能が得られる。 加減速の状況はトップマウントメーターのパワーメーターで確認することができる。その横には、バッテリー残量(SOC)が表示されるが、グラフだけで、残り何%という数字がない。あわせて走行可能距離も表示されてはいるが、直前の走行状況で数字が変わる走行可能距離だけではなく、SOCの%表示もぜひともほしいところ。これに対してトヨタは「近々ソフトウェアアップデートで改善する予定」と話しており、早期の対応に期待したい。

TAG: #bZ4X
TEXT:生方 聡
「bZ4X」からトヨタの新デザインが始まった! [トヨタbZ4X試乗記:その2]

トヨタが満を持して市場に投入した本格的EVの「bZ4X」は、従来のモデルとは一線を画するデザインを採用する。その斬新さはトヨタの新デザインの始まりだった。 “ハンマーヘッド”と“トップマウントメーター” bZ4Xを初めて見たとき、いままでのトヨタ車とは明らかに違うシャープで迫力あるデザインに驚いた記憶がある。なかでも印象的だったのが精悍なフロントマスク。薄いヘッドライトとフロントフードのくっきりとしたラインは“シュモクザメ”を意味する「ハンマーヘッド」と呼ばれているが、正直なところ初めのうちは違和感があった。ところが、新型「クラウン」や新型「プリウス」がこのハンマーヘッドのモチーフを採り入れ、街中で頻繁に目にするようになったいまは、トヨタの新しいフロントマスクに親しみを覚えるようになったから不思議である。 bZ4Xのコックピットも、最初はしっくりとしなかった。bZ4Xではステアリングホイールの上から見る「トップマウントメーター」を採用するため、いつもよりステアリングホイールを低い位置に、シートを高い位置に設定する必要がある。このポジションに慣れるまで少し時間がかかったが、馴染んでしまえば遠くに配置されたメーターはヘッドアップディスプレイのように視線移動が少ないうえ、ヘッドアップディスプレイよりも鮮明に映るから、とても見やすいのだ。 反面、ステアリングホイールが低い位置にあるぶん、ステアリングスイッチを操作するときに視線移動がやや大きめなのが玉にキズだ。 このトップマウントメーターは新型プリウスにも採用されており、bZ4X発の新デザインが今後他のモデルに展開されていくことが予想される。 ダッシュボード中央には12.3インチの大型ディスプレイが配置され、その下にあるエアコンの操作パネルは見やすく操作もしやすい。温度調節を物理スイッチで行えるのもうれしい点だ。 高い位置にあるセンターコンソールやドアにはグロスブラックのパネルがあしらわれて高級感が漂う一方、ファブリックのパネルとの組み合わせはややちぐはぐな感じがした。これをレザー(またはレザー風のソフトパッド)にするだけでも、かなり印象が変わると思うのだが……。

TAG: #bZ4X #ソルテラ #デザイン
TEXT:吉坂 直樹
FCEVのスムーズかつ強烈な加速と静かさを体感! 燃料電池車の未来が見えた!? ――バンコク国際モーターショーに合わせて開催された体験試乗会に参加

3月に開催された第44回バンコク国際モーターショー。それに合わせて現地のTAS(TOYOTA ALIVE SPACE)にて、FCEV化したトラックのプレス向け体験試乗会が開催された。タイ最大の財閥であるCPグループと日本の自動車メーカーの事業共同体であるCJPTが協業で取り組んでいる、トラックのFCEV化をアジアのプレスに発信するためのイベントだ。THE EV TIMESはその試乗会に合同で参加してきたので、そのレポートをお届けしたい。 アジアの生活向上を目的にトラックやバスなど、日本×タイでの開発を検討中 CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)とは、いすゞ自動車とトヨタ自動車、スズキ、ダイハツ工業が共同出資する商用事業会社で、商用車における技術の普及を通じ、カーボンニュートラルの促進を目標とする。現在はアジアの生活向上を目的に、トラックやバス、タクシーなどの車両を中心として、タイの豊富な資源を利用しながら、商用車のFCEV(燃料電池車)化を進めることを検討している。 すでにトヨタはタイ最大財閥であるCP(チャロン・ポカパン財閥)グループとの協業にも着手している。タイ国内の養鶏・家畜業から集めた家畜糞尿から生まれるバイオガスを活用し、水素を精製。この水素を活用したトラックのFCEV化にも成功しているのだ。 体験試乗会はTASショールームに隣接するテストコースで実施された。「SORAバス」にはショールームからの移動手段として乗車。「FCEV Heavy Duty Truck」は助手席のみの試乗だったが、それ以外の車両はすべて運転可能。0-60km/h加速を体験できた。 しかし実際、FCEVの商用におけるメリットにはどんなものがあるのか。物流トラックとして見た場合、EVでは充電時間が長くなるが、燃料電池車ならガソリンスタンド同等の燃料供給時間で水素の充填が可能。トルクがあるため加速にも優れるからドライバーの負担も軽減され、排ガスも皆無で環境にも優しい。10kgの水素ならチャージは約5分で済み、1kgにつき約80kmの航続が可能だというから、長距離を走る商用車としての資格も十分だ。ただし現在は水素燃料の価格がガソリン同様に高騰しており、1kgあたり1400円前後。価格の安定は今後の課題だろう。 ちなみに当日、試乗可能だったISUZU&TOYOTAの「FCEV Light Duty Truck」は、すでに日本の福島でも導入されている。水素タンクの容量は10kgで、250~260kmほどの航続が可能だ。ただし航続距離は運行ルートによっても差が生じる。重要なのはどれだけの重量を一度に運べるのかで、そのあたりの力強さに関してはクリアされているようだ。 さまざまな用途のFCEVを実体験! 商用車のFCEV化はかなり現実的な局面が近い! 用意された試乗車はさまざま。大型トラックはもちろん、バンコク国際モーターショーで人気のタクシーや、「ダイハツ・ハイゼットスモールバン」までズラリ。いずれも走行性は快適そのもので、「グランエースFCEV」の展示やオシャレなカフェ仕様も登場した。 さて実際に試乗してみた感想だが、まず驚いたのはスムーズ、かつ強烈な加速。60km/hまではそれこそアッと言う間に到達する感覚で、ガソリントラックのイメージを根本から覆すほどに速い。これなら大型トラックでも高速道路などへの合流がスムーズなので、運行がとてもイージーになるはずだ。何より常に室内が静かで振動がないことが、ドライバーの負担軽減につながる。 タクシーも快適そのもので、日本で馴染みのジャパンタクシーのもっさり感を劇的に裏切るほどに俊敏で走りがいい。バンは取りまわしがバツグンだから狭い道でもガンガン進める。細い道が多い日本の道路事情にも合いそうだ。 タイの家畜から出た糞尿から生まれるバイオガスを日本で水素化し、ビッグデータを最適化して物流の効率化を図るとともに、カーボンニュートラルも促進していくというCJPTの試み。まだ課題は残されているとしても、環境への貢献度は確実に高いといえる。運用はかなり現実的な段階まで進んできていると今回の試乗会では実感させられた。まずは日本経済を下支えする流通の改革と、カーボンニュートラルとの両立。FCEVはそのための選択肢として、候補に挙げておくべきだろう。  <イベント概要> Carbon Neutral Mobility Event CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies) 2023.03.23 Thailand TOYOTA ALIVE SPACE *当日用意された車両 試乗用= 1)HINO FCEV Heavy Duty Truck 2)ISUZU&TOYOTA FCEV Light Duty Truck 3)TOYOTA LPG-HEV Taxi […]

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TEXT:岩尾 信哉
トヨタが水素製造用水電解装置を開発、デンソー福島工場で稼働開始

トヨタは燃料電池車(FCEV)「ミライ」のFCスタックなどを流用して、水を電気分解して水素を製造する水電解装置を新たに開発。今後の普及促進に向けた技術実装の場として、2023年3月にデンソー福島が運営する工場(以下、デンソー福島工場)において稼働を開始する。トヨタは今回開発した水電解装置に搭載しているスタックなどを、3月15日(水)~17日(金)に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「FC EXPO(水素・燃料電池展)」に出展する。 FCEV用スタックを流用した水素生産設備 2021年6月以降、トヨタは福島県と共同で「福島発」の水素・技術を活用し、新たな未来のまちづくりに向けた活動を進めてきた。 今回発表された水電解装置が製造するクリーンな水素を利用して、工場ガス炉で自家消費する「水素地産地消」モデルの構築を目指すとしている。 なお、今回のデンソー福島工場における水素利活用は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として実施する。

TAG: #トヨタ #燃料電池
TEXT:福田雅敏
電気自動車(EV)は「ドリ車」になるか、現役EVエンジニアが考察[THE視点]

エコが売りの電気自動車でも、タイヤを鳴らして限界まで攻めて走ってみたい、というのはクルマ好きの隠すことのできない願望だろう。しかし果たしてそれは現実的なのか、エンジニアによる考察をお届けする。 電気自動車(EV)の後輪駆動化が世界でトレンド 昨今、電気自動車(EV)は後輪駆動(RWD)が増えている。新型車はもちろんだが改良型においてもだ。例えば新型車では「フォルクスワーゲン ID.4」がそうだし、「ボルボ XC40リチャージ」は欧州で従来の前輪駆動(FWD)からRWDに変更された。何より「東京オートサロン2023」では「トヨタ AE86型カローラ・レビン」のEVが展示された。 RWDは車好きにとってはひとつのステータスだろう。さらに言えば「EVでドリフトは可能なのか」と考えるマニアもいるのではないだろうか。そこで今回は「EVのドリフト」について現役EVエンジニアの視点から考えてみた。 駆動装置(イー・アクスル)などの小型化が後輪駆動化に寄与 これまで販売されてきたEVは、FWDもしくは四輪駆動(AWD)が多かった。理由のひとつは従来のエンジン車のプラットフォームを使用していたこと。多くのエンジン車はFFが主流なので、EVもそのままFWDとなったと考えられる。 もうひとつの理由は制御系統。従来のインバーターや駆動用モーターはサイズが大きかった。それらをボンネットの下にまとめた方が効率的なのだ。そしてFWDの方が回生ブレーキの効率が高いことも理由にあると思う。 しかし技術はあっという間に進歩し、今後の主流となるであろう機電一体の駆動装置「e-AXLE(イー・アクスル)」に小型高出力のものが出てきた。そのおかげでユニットを前輪・後輪のどちらにも載せやすくなり、RWD化が進むようになった。RWDのメリットは後輪のトラクションの良さだ。ちなみに筆者も長くBMW(エンジン車)に乗っており、RWDはお気に入りである。 またRWD化では意外なメリットがある。それが積載性。小型の「e-AXLE」を使えばボンネットの下にスペースができることから、テスラのようにフロントにトランク(通称フランク)を持たせるEVが増えてきている。なんと先日発表されたEVピックアップトラック「ラム1500REV」にもフランクが備えられた。フランクは荷物を載せるのに大変便利である。この利便性の向上も少なからず影響しているのではないだろうか。 ともあれ、クルマ好きにとってRWDとくれば「ドリフト走行」を考える人は多いのではないだろうか。「東京オートサロン2023」で公開された「AE86」は、筆者にEVのドリフトマシンの登場を想像させてくれた。この「AE86」は、エンジンをモーターに変えただけの仕様。つまりFRレイアウトのEVであり、そのままドリフト走行が可能だ。

TAG: #THE視点 #チューニング #福田雅敏
TEXT:曽宮 岳大
トヨタ、「次世代のBEV」をレクサスブランドで展開。2026年を目処にEVに最適化したクルマづくりを展開

トヨタ自動車は4月1日からの新体制を明らかにすると共に、新体制下で進めるクルマづくりの方向性について発表を行った。会見では、4月1日付で新たに社長に就任する佐藤恒治執行役員が自らの想いを口にした。そのスピーチの中からEV目線で重要なポイントをご紹介したい。 “豊田章男経営”を継承 「もっといいクルマづくり」という掛け声を発し、自らマスターテストドライバーを務めながら、トヨタ車の基本性能の向上や“味”のあるクルマづくりを推進してきた豊田章男社長。彼が旗を振った13年間でトヨタ車には味の濃いモデルが増え、GR系モデルの展開など、趣味性の深いモデルも数多く登場した。クルマ好き社長の真骨頂を見せてくれた格好だ。 そして4月1日付で社長に就任する佐藤恒治次期社長は、1992年入社。技術畑の出身で、シャシー設計、レクサスGS開発担当主査、レクサスLC開発責任者などを経て2020年に執行役員に。豊田社長からの指名により新社長に就任することになった。会見では、「4月からは“豊田章男経営”を新体制で実践していく」と意欲を述べた。 “豊田章男経営”とは、もっといいクルマづくりや、議論よりも現場でまず行動する、といった豊田社長が育んだクルマづくりの思想だ。 「電動化」「知能化」「多様化」を3本柱に 3本柱を立てて説明する欧米式のプレゼンテーションスタイルも豊田社長譲り。佐藤次期社長率いる新体制でのクルマづくりのテーマは、「電動化」「知能化」「多様化」の3本。 「電動化」については、「マルチパスウェイをブラさず、全方位で取り組んでいく」と述べた。これは2021年12月のEV戦略の説明会で豊田社長が語った、電動化を推進しつつ、社会の変化に柔軟に対応できるよう多様なパワートレインの可能性を模索していくというスタンスと同様の内容だ。マルチパスウェイとは、複数のアプローチをとっていくという意味。例えば自然エネルギーが豊富な地域ではEVを、南米ではバイオエタノールをエネルギーとするという具合に各地の市場で適材適所のパワートレインを提供する方針だ。 ただ今回のプレゼンではEVについて、もう一歩踏み込んだ内容が語られた。それは2026年を目標に電池やプラットフォーム、クルマづくりなどを、EV向けに最適化した「次世代のEV」をレクサスから送り出すということ。 バッテリーについては、トヨタでは全固体電池や次世代リチウムイオン・バッテリーなど複数の商品開発を進めていることを明らかにしているが、今回はこの点については触れられていない。

TAG: #トヨタ #レクサス
TEXT:TET 編集部
EVを含む次世代自動車の試乗会を横浜市が開催……デイリーEVヘッドライン[2023.02.08]

メーカーの垣根を超えた次世代自動車の試乗会を横浜市が企画 【THE 視点】横浜市は、EVをはじめとした次世代自動車の試乗イベント「Zero Carbon Yokohama 次世代自動車試乗会 in みなとみらい」を開催する。  同市は「横浜市地球温暖化対策実行計画」に基づき、温室効果ガス排出削減を進めるため次世代自動車の普及を促進している。その一環として各自動車メーカー・販売店と連携協定を締結。その第2弾のイベントとして開催する。  試乗車は「トヨタbZ4X」「トヨタ・ミライ」「日産サクラ」「ホンダe:」「マツダMX-30 EV MODEL」「CX-60 PHEV」「三菱eKクロスEV」「アウトランダーPHEV」「ヒョンデ・アイオニック5」の9車種。  これだけの車両が一度に展示・試乗できるのはなかなかないだけに、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。「EVなどの次世代自動車が欲しいがどれにしようか悩んでいる」という購入検討者には大変良い機会であるはず。昨日の「THE視点」でも触れたが、やはり実車を見て乗って、スタッフから話を聞きたいと思う人も多いのではないだろうか。  例えば試乗会で販売店のスタッフと話ができれば、その流れでディーラーにも行きやすいはず。こういった試乗会はぜひ全国規模で開催してほしいものである。  ちなみに横浜市は次世代自動車の普及促進に力を入れていて、燃料電池車購入やEV用充電設備導入の補助金などを用意している。  このようなイベントは、開催する横浜市をはじめ展示車を提供する地元ディーラー、ユーザーそれぞれにメリットがあると感じる。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★BMW、メキシコに8億ユーロを投資……現地で高電圧バッテリーアセンブリーを生産 ・BMW、ライプツィヒ工場でバッテリーセルのコーティングラインを稼働……高電圧バッテリーの生産を強化[詳細はこちら<click>] ・マツダ、自動車用モーター可変界磁技術の開発で「NEDO省エネルギー技術開発賞」を受賞……モーターの実用域の効率改善と回生量を増加、今後EVにも技術を適用 ・ルノー・グループと日産、欧州で両社販売店における充電インフラの共同整備を検討……使用済みバッテリーと生産廃棄物のリサイクルについても共通パートナーを選定 ・東レ、韓国でPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂「トレリナ™」の生産能力を年産5,000トンに増設……EVの電装部品に使用する素材 ・アウディ、IT系人材400人を新規雇用……eモビリティのソフトウェア開発を強化

TAG: #bZ4X #eKクロスEV #MX-30 #THE視点 #アイオニック5 #サクラ #デイリーEVヘッドライン #トヨタ #ヒョンデ #ホンダ #ホンダe: #マツダ #ミライ #三菱 #日産 #福田雅敏
TEXT:福田 雅敏
クルマ好きのカーボンニュートラルを体現したトヨタ……EV開発エンジニアのオートサロン探訪[その1]

世界最大級のカスタムカーのイベント「東京オートサロン2023」が1月13日から15日まで幕張メッセで開催された。今回の「オートサロン」には、多数のEVも出展されると聞いた。そこでEV開発エンジニアであり本媒体のエグゼクティブアドバイザーである福田雅敏が現地に赴いた。その現場をレポートしたい。今回は「その1」をお送りする。 クルマ好きを見捨てず未来に繋ぐ理想の「AE86」 TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ・ガズー・レーシング、以下TGR)のブースでは、モリゾーこと豊田章男社長が登壇し、2台のコンバージョンゼロエミッション車(ZEV)を紹介した。 そこで展示されたのは、GAZOO RACINGが開発した「AE86」型の「カローラ・レビン」と「スプリンター・トレノ」の2台。 「レビン」のほうは、ギアボックスやクラッチなどはそのまま使用し、エンジン部分をモーターに置き換えた3ペダル式MTのEV。おそらく量産車のモーターとインバーターを搭載したものだ。 バッテリーパックにはプリウスPHVのエンブレムが貼られており、こちらも既存車のものを使用しているのだろう。そのパックにはレクサスのエンブレムも見つけた。担当者に聞いたところ、この「AE86」の開発にはレクサスのエンジニアが携わっているという。 もう一方の「スプリンター・トレノ」は、「AE86」のノーマルエンジンである「4A-G」型のエンジンブロックを活用し燃料を水素化したものだ。既存技術が流用できるのが水素エンジンのメリットだ。 発表が行われたステージで章男社長は「クルマ好きを誰ひとり置いていきたくない。クルマ好きだからこそできるカーボンニュートラルを進めたい」と語った。今回発表された2台はまさにカスタムカーであり、オートサロンにふさわしいコンバージョンの提案である。2050年のカーボンニュートラルはこれからの新車をすべてZEVにしても達成できない。既存車両の排ガスも減らす必要がある。逆にいえばZEVコンバートは既存車両を脱炭素社会でも生かすことができるというものだ。 既存の車体やエンジンを利用し、「愛車」をそのまま温存するという今回の提案は、名車を保存しながらゼロエミッションの未来へと繋げることができる。クルマ好きにとって理想に近いのではないだろうか。

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TEXT:TET編集部
トヨタ、EVの「AE86」をオートサロンで公開……デイリーEVヘッドライン[2023.01.16]

トヨタ、EV化した「AE86」をサプライズ公開【東京オートサロン2023】 【THE 視点】世界最大級のカスタムカー・アフターパーツの展示会「TOKYO AUTO SALON 2023(東京オートサロン2023)」が、1月13日〜15日に幕張メッセ(千葉市)で開催された。  今回で41回目となる本イベントには、国内主要自動車メーカーのほか、外国車インポーター、タイヤメーカー、アフターパーツメーカー、カスタムショップなど341社(2022年12月17日現在)が出展した。  今回は筆者も現場に足を運んだ。注目したのはEVの展示が多かったこと。特にメーカーからの展示が目立っていた。「トヨタ」「日産」「三菱」「BYD」「HWエレクトロ」、その他部品メーカーなどからも展示があった。併載された「オートサロンテック2023」には、次世代自動車やEVカートなどの展示もみられた。  今回の展示で一番注目が集まったのは、トヨタ「AE86型 カローラレビン」のEV。トヨタ自動車の豊田社長によるサプライズ発表などもあり大いに盛り上がった。  車両の詳細とその他の注目車種は別にレポートしたい。 【東京オートサロンのレポートはこちらをタッチ!】 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★トヨタ、「RZ スポーツコンセプト」を公開……佐々木雅弘選手がプロデュースしたカスタマイズカー【東京オートサロン2023】[詳細はこちら<click>] ★欧州カー・オブ・ザ・イヤー2023、EVのジープ「アベンジャー」がイヤーカー受賞……2位にVW「ID.4」日産「アリア」は3位 ・ホンダ、韓国LGと合弁会社設立……2025年中にホンダ北米工場への全量供給を目指す ・アウディ、2022年のEV納入が大幅増加……2021年比約44%増 ・プジョー、「e-208」と「e-2008」がヨーロッパのBセグメントでベストセラー ・ オペル、「アストラ GSe」と「グランドランド GSe」がドイツで受注開始 ・ジープ、「アベンジャー」がヨーロッパで受注開始……ブランド初の電動SUV ・オペル、「ブリュッセルモーターショー2023」に「アストラ GSe」「グランドランド GSe」「モッカ エレクトリック」を出展 ・メルセデス・ベンツ日本、「AMG GT 63 S Eパフォーマンス F1エディション」の予約を開始……限定35台のPHEVハイパフォーマンスカー ・トヨタ、インド法人が現地の商用車メーカー「アショク・レイランド」に燃料電池をモジュールを供給 ・トヨタとレクサス、北米で環境に最適な充電タイミングを案内するアプリを提供……現地の「ワットタイム社」と提携、温暖化ガス排出削減を目指す ・フォーミュラE開幕戦メキシコ、ジェイク・デニス(チーム:アバランチ・アンドレッティ)が優勝

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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