中国BYDがさまざまな戦略を日本市場で打つ理由
中国BYDの日本市場での動きが活発化している。日本専用の車両規格である軽自動車を、BYDが日本向けに設計して発売する。コンセプトモデルが、ジャパンモビリティショー2025(一般公開10月31日〜11月9日)に登場した。
また、驚いたのは朝日新聞が10月21日にオンラインで配信した「イオン、中国EVのセールへ BYD車を実質で200万円前後から」という記事だ。このニュースに対してはYahooニュースでもトップ記事で掲載され5000を超えるコメントが寄せられるなど、世間の注目が高いことが分かる。
だが、その2日後にBYDジャパンは報道にある「BYDの販売拠点をイオンモール内に約30拠点設置する」という事実はない、と記事の内容を全面的に否定している。BYDは、2023年1月から日本国内で乗用車販売を本格的に開始し、2025年までに全国で100拠点を設けるという目標を公表している。その方針には変更はない。
ここから先は、筆者の私見を述べる。BYDが日本市場へ参入し、さらに日本特有の軽EVまで仕立てるという戦略の背景には、大きくふたつのポイントがあると思う。
ひとつ目は、日本EV市場での主導権を得ること。日本でのEV普及率は、乗用車では2%程度ととても低い。2010年代初頭に三菱「i-MiEV」と日産「リーフ」が登場して以来、国や自治体で多様な補助金制度を活用するなどして、日系メーカー各社はEV普及を推し進めてきたが、欧米や中国と比べて日本でのEVシフトの速度は遅い。
日系メーカー各社は、中長期戦略としてEV普及は進むと見ているものの、現時点ではEV市場の「地盤固め」が先決という姿勢だ。
そんな日本で、すでに中国EV市場で主導権を得ているBYDは、独自の技術力と量産効果によるコストメリットを有効に活用して、日本EV市場でも主導権を狙っているように感じる。BYD軽EVは極めて重要な役割を担っている。
ふたつ目のポイントは、ひとつ目のポイントで示した日本での事業実績をタイなどアジア圏での事業におけるマーケティングツールとして活用することが考えられる。アジア圏は日本ブランド車の市場占有率が高く、そのため「日本でBYDのEVが売れる」ことがアジア圏でのBYDブランドに対する信頼度を上げる効果があるはずだ。
BYDが今後、どのような日本市場向け戦略を描いてくるのか。その動向を注意深くウォッチしていきたい。




















































