EVヘッドライン 記事一覧

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シトロエン・アミ・フォー・オール(photo=ステランティス)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
シトロエン、小型EV「アミ」にバリアフリー対応車「AMI FOR ALL」を追加[2023.06.09]

取り回しが良くて手の内感覚の優しいEV “本当のバリアフリー車”のお手本のひとつ 【THE 視点】シトロエンは6月5日、「2023 パリ・オートノミック見本市」にて、小型EV「アミ」のバリアフリー対応モデル「アミ・フォー・オール」(以下、アミFA)を発表した。身体にハンディキャップがあるユーザー向けのモデルで、車いすを車内に収納できるのが特徴だ。 「アミFA」は、ハンディキャップを抱えたユーザーも容易に運転ができるよう、運転操作が簡単に行えることに加えて、ドライバー自ら車いすの収納が行えるよう工夫されている。開発は、バリアフリー車改造の専門企業「PIMAS」と共同で行ったようだ。 バリアフリー対応となった場所と機能は、「ドアの開口角の増加」「車いすからシートへ移動するためのサポート品(ボードと吊り革)」「アクセルとブレーキペダルを手で操作する補助装置とステアリング・ノブ」「車いすの車載アシスト装置」と多数におよぶ。 「アミFA」のベース車の「アミ」は、ヨーロッパの多くの国にて、16歳以上(フランスでは14歳以上)なら免許なしで乗ることができる「クワドリシクル」に分類されるEV。 車両区分は「L6e」となり、定格出力が4kW(5.4ps)・最高速度が45km/hに制限されているが、内燃エンジン車の侵入が禁止されている都市内でも走行可能というメリットがある。価格も日本円換算で100万円以内という非常に人気の高いモデルだ。 「東京オートサロン」にて展示され話題をさらったKGモータースの1人乗りのEV「ミニマム・モビリティ」をイメージするとわかりやすいだろう。 日本では軽自動車になってしまうヨーロッパの「L6e」は、日本の軽自動車や超小型モビリティに比べて、遥かに移動の自由度が高く手軽に所有できるカテゴリーである。 「アミFA」は、ハンディキャップを抱えるユーザーの移動をサポートすることを目的としているが、バリアフリー車両のお手本のひとつと言えるモデルであり、本当のバリアフリー対応車とは何かを考えさせてくれる。 日本でも、高齢者を含めた交通弱者の足となるのが本当のバリアフリー対応車ではないだろうか。是非とも国内にも「L6e」カテゴリーを設けてもらいたいものである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★フォルクスワーゲン、「ID.Buzz」のアウトドア仕様「ID.Buzzアクセサリー・コンセプト」を公開……簡易キッチンなどを備えたキャンプ・車中泊対応のカスタム ★★出光興産、小型EV「イデタ」のモニタリングを7月1日から開始……タジマモータコーポレーションと共同開発、全国の系列店などと共同実施 ★パワーエックス、蓄電池型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー」をニチガスより受注……最大容量358kWhのリチウムイオン・バッテリー、営業所7ヵ所に10月より納入開始 ★米トラックメーカーのケンワース、燃料電池車のトラクター・ヘッド「T680 FCEV」を受注……カナダの企業Loblawと5台を契約、トヨタ製のFCを搭載 ★ブレイズ、「三重アウトドアフェスティバル 2023」に出展……三重県・四日市市市民公園にて6月10日(土)・11日(日)、「ブレイズ・スマートEV」などを展示・販売 デイリーEVヘッドライン[2023.06.09]

TAG: #THE視点 #アミ #ニューモデル
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
新「水素基本戦略」を閣議決定、15兆円の投資はFCEV普及に活かせるか[2023.06.08]

水素価格は値上がりが続き現実と乖離する点も FCEVの普及には価格低下と総合水素ステーションの設置が必要 【THE 視点】内閣官房は6月6日、「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(第4回)」にて、「水素基本戦略」を改定した。官民合わせて、15年間で15兆円を、水素関連事業に投資する。 合わせて経済産業省傘下の資源エネルギー庁は同日、「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)」を公開した。その中において、水素価格の低下を目指すことを明言した。 白書には、「水素社会の実現に向けた取組の加速」の項目があり、「水素社会の実現を通じて、カーボンニュートラルを達成するためには、水素の供給コスト削減と、多様な分野における需要創出を一体的に進める必要がある」と書かれている。 具体的には、「一般的な水素ステーションにおいて、100円/Nm3(ノルマルリューベ:空気量を表す単位)で販売されている水素の供給コストを、2030年に30円/Nm3(CIF価格)、2050年には20円/Nm3(同)以下に低減し……(以下略)」とのこと。 水素ステーションで現在販売されている水素の価格は、1kg当たりの単価だ。1kgで11.14Nm3となることから、100/Nm3と報告される水素の価格は、1,114円/kgとなる。 しかし、昨年までは1,100円/kg(税込)程度であった水素の価格は、今年の初めから4月にかけておよそ1.5倍の1,650円/kgとなったところが多い。こうなると、2030年に現在の価格の3割程度(およそ1/3)とされる報告書の価格とつじつまが合わない。2030年の時点で、白書内にて2050年の目標としている1/5程度にしなければならないということになる。 また水素ステーションの数も、現在およそ170ヵ所とされているが、政府は2030年までに1,000ヵ所を目指すという。 しかし、今後増えるであろう商用FCEV(燃料電池車)の導入拡大を見据えた施策を加速させるためには、もう少し実際の現場を捉えなければいけない。 トヨタやホンダは、トラック・メーカーと協業して大型商用FCEVの開発・導入を加速させる方針を示している。しかし現在、大型車に対応した水素ステーションはまだまだ少ない。乗用車・大型車ともに利用できる大型の水素ステーションなどのインフラ整備を進めなければ、普及の加速は難しいだろう。 筆者は日頃の足としてFCEVに乗っている。現在値上がりしてしまった水素の価格では、ランニングコストで比較するとハイブリッド車には到底及ばす一昔前のガソリン車並みとなってしまっている。 今後の普及を考えると、2030年以前に水素価格を現状の価格の1/3以下にしなければ、エンジン式のクルマと比較してランニングコストが合わない。更に言えば、先に記述したとおり1/5程度まで下げないことには、FCEVが日常の足として日本に浸透するのは困難だ。 なお、水素エネルギーとFCEVに関して、当媒体の以下の記事でも述べているので、ぜひご一読いただきたい。 FCEVは実用的だが一般普及はまだ早いか……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(前編) [THE視点] 水素燃料電池(FC)を世界に誇る先端技術に……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(後編)[THE視点] (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ボルボ、EVの新型コンパクトSUV「EX30」を欧州で発表……最高出力315kW(428ps)のAWDで、最大航続距離は480km[詳細はこちら<click>] ★★Jvolt、デジタル・サイネージ搭載のEV用充電器を発売……EV用充電器を広告映像などのPR掲示板に活用可能 ★★ホンダ、インドで中型SUV「エレベート」を発表……3年以内に「エレベート」ベースのEVを発売 ★アウディ、鹿児島県屋久島町にEV用充電器(最高出力8kW)を設置……屋久島の脱炭素化についての包括的提携の一環にて ★北海道、道内のFCEV導入事例を公表……2023年3月に、十勝総合振興局や胆振総合振興局に「トヨタ・ミライ」を計3台など ★テスラ、在庫車・認定中古車の購入キャンペーンを実施中……登録代行手数料(10万円)無料など ★フィアット、「アバルト500e」のデザイン・モチーフを紹介……「サソリ」のエンブレムをモチーフとした空力デザインなどをボディの随所に ★国土交通省、「ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会」(第5回)を開催……中央合同庁舎3号館<東京都千代田区>10階共用会議室にて、6月12日(月)13時〜15時 デイリーEVヘッドライン[2023.06.08]

TAG: #THE視点 #水素インフラ #燃料電池車(FCEV)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ダイムラー・トラック、EVバスのインフラ整備に特化した新規子会社を設立[2023.06.07]

「EVバスはインフラもセットで真価を発揮する」 現場に最適化したインフラ設計まで一手に担う新組織 【THE 視点】ダイムラートラックは6月5日、EVバスのインフラ整備専門の子会社「Daimler Buses Solutions GmbH」(以下DBS)を設立したと発表した。 EVバスの潜在能力を最大限に引き出すためには、緻密に設計されたシステムに組み込む必要があると、ダイムラーはとらえており、今回の専門子会社を設立した模様。 グループ内の専門知識を持つ人材を集め、スタートアップ企業と同等の意思決定の素早さを持ち、短期間での成長を見込める組織を目指しているようだ。 一口にEVバスとは言っても、使用する現場の環境と状況は様々。EVバスに求められる装備・仕様も、交通機関により異なる。DBSは、そのような事情に完全に対応・最適化できるよう、企業ごとにカスタムされたEVバスをはじめ、EVバス専用の電源・充電器・充電管理まで、EVバスの導入から管理全てをサポートするという。 将来的には、水素燃料電池(FCEV)バスやレンジ・エクステンダーを備えたバスの導入・運用にも対応する予定だという。 ダイムラートラックには、「エボバス」というバス専門の子会社があり、ダイムラーがメルセデス・ベンツ・ブランドで販売しているEVバス「eシターロ」は、エボバス内の専門チームが開発したものである。DBSがエボバスとどのように関わるかは明言されていないが、インフラ整備を専門組織化するということは、それだけ急務という状況なのだろう。 そして忘れてはならないのが、ダイムラートラック傘下に日本のブランドである三菱ふそうもいるということ。ダイムラー/ふそう組は、先日トヨタ/日野組との統合も発表されたばかり。今回のダイムラーの発表は、日本市場と無関係ではないと捉えている。 考えてみれば、EVバスを導入すると簡単に言っても、日本の南北の地域や都市部・山間部には、それに合わせたEVバス車両の最適化や運用形態が求められる。街を走るバスは、企業ごとのカスタム仕様車なのだ。 それにEVのバッテリーの効率は気温などにも影響を受けるため、エンジン式のように買ったあとに現場に丸投げでは、正しい運用はできない。日本の悪しき伝統とも言える上位下達では、上が満足するだけで、現場ではEVバスを持て余してしまう危険性もある。 DBSのようなスピーディかつ統合的にEVバスの導入をサポートする組織は、チグハグなEVバス運営などを解決するのに必要と言える組織だ。DBSのノウハウが、将来的には日本でのEVバスの運用に使われることを願う。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★シトロエン、小型EV「アミ」のバリアフリー・モデル「アミ・フォー・オール」を発表……車椅子使用者向けの設計、専用の収納スペースも確保 ★★メルセデス・ベンツ、「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+ SUV」の受注を本国で開始……129,662.40ユーロ(約1,900万円)から、エア・サスペンションを標準装備 ★★ニデック(旧日本電産)とルネサスエレクトリックが提携……イー・アクスルの半導体開発で協業、年内に初号機を開発予定 ★ステランティス傘下・カーシェア・サービスのフリー2ムーブ、「フィアット500e」の取り扱いを開始……ドイツ・ハンブルクにて、サブスクリプション専用モデルを導入 ★伊藤忠商事、カネカグループと共同で電力事業を開始……太陽光発電と商用EVのバッテリーをリユースした発蓄電所事業に参画、合弁会社「豊岡地域エネルギーサービス(同)」を設立 ★テラモーターズ、「マザー牧場」<千葉県富津市>にEV用充電器を設置……普通充電器を2基 ★ボグゾール、「コルサ・エレクトリック」と「モッカ・エレクトリック」の販売が好調……「コルサ」が1,752 台、「モッカ」が3,976台で、それぞれのセグメントで今年のベストセラーと発表 ★ボグゾール、ワンボックス型の商用EV「ヴィヴァーロ・エレクトリック」の販売が好調……英国内にて2023年1月〜5月に2,493台を販売、商用EVで3台に1台のペース ★経済産業省、「エネルギー白書2023」を閣議決定……2022年のレギュラーガソリンの最高平均価格(補助なし)は215.8円(2022年6月27日の数値) デイリーEVヘッドライン[2023.06.07]

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
フォルクスワーゲン、ロングホールベースの「ID.Buzz」を欧州と北米に導入[2023.06.06]

伝統と先進を融合させたネオ・クラシックEV ミニバン大国日本において先陣となる可能性あり 【THE 視点】フォルクスワーゲンは6月2日、EVのミニバン「ID.Buzz」に、ロング・ホイールベース(LWB)のモデルを追加したと発表した。欧州と北米に導入される。 今回のLWBモデルは、ベーシックからホイールベースが250mm延長され、全長は4,962mmに。3列目のシートが追加され、最大7名の乗車が可能で、積載容量も最大2,469Lとなった。 搭載されるバッテリーの容量も85kWhに拡大され、航続距離が延長。ヒートポンプを備えているため、冬場の電力効率も改善するという。 モーターの最高出力は210kW(286ps)で、0-100km/h加速は7.9秒。さらに最高250kW(340ps)のAWDグレード「GTX」の用意もあるという(2024年に発表予定)。このサイズのクルマとしては、かなりのハイパワー車である。 運転支援系もアップデートが行われ、ヘッドアップディスプレイ、次世代インフォテインメント・システム、スマートフォンによるリモートパーキングなどが装備されている。また、スマートガラスを採用したパノラマサンルーフも用意された。 日本で「ID.Buzz」は、フォルクスワーゲンのイベントにて展示・公開が行われ、2024年末の日本導入が発表された。しかし、その後の進展はアナウンスされていない。 日本においてのミニバンは、まだまだ内燃エンジン式の牙城かつドル箱市場である。純粋なEVミニバンの登場は、どの国内メーカーからも噂すら聞こえてこない。 「ID.Buzz」が予定通り2024年末に日本導入されれば、日本でのEVミニバンの先陣となるだろう。ある意味固着化してしまった日本のミニバン市場に、強いインパクトを与えてほしい。 なお、TETに寄稿しているモータージャーナリストの小川フミオ氏が海外にて「ID.Buzz」の試乗を終えている。そのインプレッションを公開予定なので、ご期待いただきたい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★横浜ゴム、「トヨタbZ3」の純正タイヤに「ブルーアース-GT AE51」が採用……転がり抵抗などを低減したエコタイヤ[詳細はこちら<click>] ★★鈴与グループとレクシブ、EV事業で提携……EVのカーシェアリング事業を計画、レクシブが事業立ち上げを支援 ★ボルボ、2023年5月のEVの販売台数は1万826台……前年同月(3,652台)より大幅増加[詳細はこちら<click>] ★スマートソーラー、北海道釧路町役場駐車場にオンサイトPPA型のソーラーカーポートを設置……177kWの太陽光発電からEVを直接充電 ★テラモーターズ、アレップス(タウンのかんり)が運営する賃貸物件にEV用充電設備「テラチャージ」を導入 ★日産、山形県朝日町に「リーフ」の公用車を納車……EVの活用についても連携 ★国土交通省、車体前方の死角対策に国連基準を導入……6月5日より施行、子供などの存在を確認できるようミラーやモニターの装備を義務化 デイリーEVヘッドライン[2023.06.06]

TAG: #ID.Buzz #THE視点 #ニューモデル
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ホンダ、「ジャイロ e:」などビジネス向けEVスクーターの一般販売を開始[2023.06.05]

ホンダのEVスクーターのバリエーションが増加 駆動ユニット上に積載する「ジャイロ・アップ」が事実上の復活 【THE 視点】本田技研工業(ホンダ)およびホンダモーターサイクルジャパンは6月1日、ビジネス向けEVスクーターの一般販売を同日から開始したと発表した。 これまで法人向けの販売となっていた「ベンリィ e:」「ベンリィ e: プロ」「ジャイロ e:」「ジャイロ・キャノピー e:」が一般でも購入可能になる。全国のHonda二輪EV取扱店にての取り扱いとなる。 ホンダは先日、着脱交換式バッテリー「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」(MPP)を採用したEVスクーター「EM1 e:」を8月に発売すると発表した。今回の発表も合わせて、ホンダの市販EVバイクのラインナップが一気に増えることとなる。 「ベンリィ e:」および「ベンリィ e: プロ」は、積載性を最上級に高めた配達業務向けスクーターだ。特に「プロ」は、スタンダードよりも大きな荷台と前カゴ、そしてナックルガードを装備し、新聞配達向けの最適化モデルと言えるものだ。価格は64万9,000円(税込・バッテリー込み/以下同)からの設定で、ガソリン車の50ccにあたる原付一種扱いの「Ⅰ」と、125ccの原付二種の「Ⅱ」を用意している。 「ジャイロ e:」(83万9,000円)および「ジャイロ・キャノピー e:」(100万1,000円)は、後輪がふたつ並んだ三輪のスクーターである。ちなみに両車とも原付一種扱い。 「ジャイロ e:」は、駆動ユニットの上部がそのまま荷台になっているのが特徴。対して「ジャイロ・キャノピー e:」は、大型のルーフを備えているのが特徴となる。 「ジャイロ e:」は、駆動ユニットの天板にそのまま荷物を乗せられるので、積載性と安定性が高い。対して「ジャイロ・キャノピー e:」は、荷台は運転席側のユニットに備え付けのため左右にスイングするが、雨などからライダーを守ってくれる快適仕様車だ。 ちなみに現行型のエンジン式の「ジャイロX」は、天板積載仕様ではなく、運転席型と一緒に左右にスイングする仕様となっている。しかしかつては、エンジンの駆動ユニットの天板をそのまま荷台にした「ジャイロ・アップ」というモデルがあった。「ジャイロ e:」の仕様がまさにそれで、「ジャイロ・アップ」の復刻と言えよう。 「EM1 e:」と、今回のビジネスモデルの大きな差は、「MPP」の搭載数の違いと言える。「EM1 e:」が「MPP」1個の搭載に対して、ビジネスモデルは、2個を搭載(直列接続)。強力な電圧(96V)に対応したEVシステムを採用したプロ仕様である。 「EM1 e:」の価格は29万9,000円とリーズナブル。ビジネスモデルの価格は、その倍以上となるが、信頼性の高さや長い航続距離(EM1 e:が53kmに対して、ベンリィ e:Ⅰが87km)が魅力的。バリエーションも豊富で選ぶ楽しみもある。軽トラックのように、経済的かつ便利な日常のアシとなってくれるのは間違いないし、何よりガソリン代とメインテナンス・コストが浮くのは大変にありがたい。 個人でもこれらのビジネスモデルを購入できるようになったのは、朗報だと感じた。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★フォルクスワーゲン、ロングホールベースの「ID.Buzz」を発表……ヨーロッパと北米に導入、「ワーゲンバス」としての北米導入は20年ぶり ★★メルセデス・ベンツ、アメリカにて「メルセデス・マイバッハEQS SUV」に限定車を設定……ダークカラーをまとったデザイン・パッケージ「ナイト・シリーズ」[詳細はこちら<click>] ★神奈川県、「令和5年度神奈川県燃料電池自動車導入費補助金」の申請先を変更……6月1日より「神奈川県環境農政局脱炭素戦略本部室」へ、12月28日(木)まで受付 ★GM、韓国のバッテリー企業ポスコと提携……カソード活性材料(CAM)などをEV36万台分/年、アメリカで生産 ※カソード:外部へ電流が流れ出す電極 ★マック・トラックス、EVトラックの「MDエレクトリック」が米カリフォルニア州でHVIPに認定……8万5,000ドル(約1,190万円)の購入補助 ※HVIP:トラック・バスの補助金制度 ★台湾のバッテリー企業プロロジアム、全固体電池の工場をフランスに建設……EVへの採用を見据え、52億ユーロ(約7,800億円)を投資 ★テスラ、「東名厚木スーパーチャージャー」<神奈川県厚木市>にて特別試乗会を開催……6月10日(土)、「モデルY」「モデル3」を用意 ★パナソニックエナジー、車載バッテリーのグローバル生産能力を増強……2030年度に200GWhへ ★警察庁、電動キックボードの安全を啓発……7月1日より新制度、公式WEBにてルールを紹介 ★フォーミュラE第10・11戦ジャカルタ、第10戦はパスカル・ウェーレイン(タグホイヤー・ポルシェ)、第11戦はマキシミリアン・ギュンター(マセラティMSG)が優勝……2連戦後のポイント・リーダーはパスカル・ウェーレイン デイリーEVヘッドライン[2023.06.05]

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
リマック、2000ps級EVスーパー・スポーツ「ネヴェーラ」を英国で初納入[2023.06.01]

4モーターを搭載で最高出力1,427kW(1,941ps) エンジン車にはできないEVスーパーカーの新世界 【THE 視点】リマックは5月31日、EVスーパーカー「ネヴェーラ」を英国で納車したと発表した。「ネヴェーラ」は2021年に発表された世界150台限定の超高性能EV。世界各地で納車が始まっており、今回は英国での初納車となった。 リマックは、2009年クロアチアに設立されたEVメーカー。2011年には「ネヴェーラ」の前身となるEV「コンセプトワン」を発表し、2018年春に「ジュネーブ・モーターショー」にてコンセプトカー「C_Two」が発表。「ネヴェーラ」はその市販モデルだ。ちなみに2018年にはポルシェが資本参加し、開発が加速した。 「ネヴェーラ」は、カーボンファイバー製のモノコックシャシーに4つのモーターを搭載して4輪を独立して駆動する。システム総合の最高出力は1,427kW(1,941ps)で、総合の最大トルクは240.7kgmとなる。バッテリーの最大容量は120kWhだ。 これらの数値からも読み取れるように、2022年には、公道を走るEVとして最高速度となる412km/hを記録。2023年には、1日で23件の加速性能および制動能力記録を達成した。 「ネヴェーラ」は早い話、2,000psのモンスターEVである。エンジン車でこれほどの性能を出そうと思うと、エンジン自体の大型化もそうだが、何より排ガス対策や熱対策などで、ボディが余計に大型になりがちだ。当然空力性能も悪化する。もちろんコストだって相当にかかってしまう。 2,000psを達成できたのは、EVだからと言って良いだろう。「ネヴェーラ」のボディは全体的に低いデザインとなっているが、2,000ps級のマシンでこのスタイルを実現するのは困難だと思われる。また筆者の想像だが、2,000psのエンジン車をつくるよりも開発コストは低いのではないだろうか。 EVは、スーパーカーにエンジン車にはない価値を生み出せる。リマックが「ネヴェーラ」をもってそれを証明した。いつか日本でお目にかかれる日を楽しみにしている。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、米国にバッテリー工場を建設……事業に21億ドル(約2,900億円)の追加投資も[詳細はこちら<click>] ★★メルセデス・ベンツ、中型ミニバンタイプのEV「EQT」及び商用タイプ「eシタン」を本国で発売開始……「EQT」が4万9,444.50ユーロ(約740万円)、「eシタン」が37,740ユーロ(約560万円)から[詳細はこちら<click>] ★★フィアット、小型EV「トポリーノ」を発表……2人乗りの都市型電動モビリティ[詳細はこちら<click>] ★東京都、「令和5年度集合住宅等への充電設備普及促進事業」を開始……EV充電器の購入・設置費用を助成、6月30日(金)〜令和6年3月29日(金)まで受付[詳細はこちら<click>] ★神奈川県、法人向けに「令和5年度神奈川県事業用EV導入費補助金」の受付を開始……4月27日(木)〜12月28日(木)まで受付、EVのバス・トラック・軽トラック・タクシーが対象[詳細はこちら<click>] ★オムロンとユビ電、新たなEV充電器をオムロン岡山事業所にて実証実験……EV充電用コンセントに後付け可能な充電機器、個別測定で充電サービス「ウィーチャージ」より課金 ★テラモーターズ、富山県舟橋村にEV充電器「テラ・チャージ」を導入……舟橋村役場など計2ヵ所の公共施設に ★大阪メトロ、「大阪・関西万博」の会場整備従事者向けの通勤バスにEVバスを導入……65台を順次導入、6月1日より「舞洲〜夢洲(万博会場)間 」「咲州〜夢洲(万博会場)間」にて運行 ★国際航業、「V2H」の効果測定サービス「エネがえるEV・V2H」を開始……有償版として正式にスタート、太陽光発電なども総合的に測定 ★小型EV輸入販売のベクトリクス・ジャパン、「自治体・公共week・スマートシティ推進EXPO」<東京ビッグサイト(東京都江東区)/6月28日(水)〜30日(金)>に出展……小型三輪EV「I-カーゴ」の2023年仕様を展示 ★フォーミュラE第10戦ジャカルタ、今週末に開催……現在のランキングトップはニック・キャシディ選手(エンビジョン・レーシング) デイリーEVヘッドライン[2023.06.02]

TAG: #THE視点 #スーパースポーツ #ネヴェーラ
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
コスモ石油、EVの新サービスを開始……軽商用EV「ASF2.0」をリース

サービスステーションや加盟店にて定額で充電とメンテナンス ASF社のブランド価値を高めるためにしっかりとサポートを 【THE 視点】コスモ石油マーケティング(コスモ)は5月31日、ASF(資本業務提携契約を締結したEVの企画および開発を行うスタートアップ企業)が製造する軽商用EV「ASF2.0」の取り扱いを開始すると発表した。同社が展開する「コスモMyカーリース」において展開する。 コスモエネルギーグループは、カーボンニュートラル実現に貢献すべく、「グリーン電力サプライチェーン強化(発電~需給調整~売電サプライチェーンによる高付加価値化)」の経営計画「ヴィジョン2030」を掲げている。 これまでコスモは、カーリースやカーシェア事業でのEVの活用を、法人や自治体に提案してきた。今後もカーボンニュートラル事業の需要が拡大することを想定し、国産EV向けのサービス「コスモmyカーリース」に、ASFの軽商用EV「ASF2.0」の導入を決めたという。 ASFは、日本国内でのEV普及促進を図るために設立されたファブレスメーカー(工場を持たない製造業)で、国内EVベンチャーのFOMMより、技術協力を得て事業を進めている。佐川急便と7,200台の「ASF2.0」の供給契約も締結している期待のベンチャー企業である。 「ASF2.0」は、最大容量30kWhのリン酸鉄リチウムイオン・バッテリーを搭載し、航続距離は209km。最大積載量は350kgで、ラストワンマイルの配送に適した性能を持つ。駆動系統はニデック(旧日本電産)製を採用しているため、十分な信頼性があると言える。 「コスモMyカーリース」にラインナップするにあたり、「EV向けメンテナンスパック」の提供も開始した。ASFの充電やメンテナンスを定額で、コスモのSSほか加盟店で受けられることになる。 そのような拠点が多ければ、車両を酷使する配送業に安心して車両を導入できる。法人や小規模な事業を営むところなどへの拡販が、大きく期待できることになる。 ただ、ASF自体は国内では無名と言えるメーカーだ。設計上のクオリティは高いとはいえ、現場での信頼性を得るには、根気強くサービスを提供してゆく必要があるだろう。ともあれ、軽商用EV市場の熱気が高まることは歓迎したい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、「水素ファクトリー」を新設……7月1日付けの組織改正にて、燃料電池の開発を加速[詳細はこちら<click>] ★★「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」の累計生産台数が5万台を達成……生産開始から約1年で達成 ★ボルボ、コンパクトSUVの新型EV「EX30」の内装を一部情報公開……リサイクル素材と再生可能素材を活用[詳細はこちら<click>] ★エネチェンジ、JR沼津駅前の商業施設「Plaza Fontana-Numazu Station-」にEV用充電器を設置……施設内有料駐車場に最高出力6kWタイプを2基 ★テラモーターズ、埼玉県三芳町にEV用充電器「テラチャージ」を導入……三好町役場など5ヵ所の公共施設に ★LG、バッテリーの材料「カーボンナノチューブ」の生産を加速……4ヵ所目の専用工場を建設、三菱自動車にも供給予定 ★ステランティス、オー・ド・フランス地域にて大規模バッテリー工場を開設……トタル・エナジーズとの合弁会社が運営、2023年末までに生産ラインを稼働 ★EVバイクシェアのハロー・モビリティ、「BIGFUN平和島」<東京都大田区>にてEVスクーターのシェアサービスを開始……交換式バッテリーを採用、区内のバッテリーステーションの利用も可能 ★テスラ、「広島T-SITE」<広島市西区>にて展示・試乗会を開催……6月1日(木)〜25日までの長期 ★ボッシュ、EV船事業を推進……EVで培った品質・技術を活用、小型ボート用に電動システムを開発 ★太田房江経済産業副大臣とデイビッド・イービー・カナダ・ブリティッシュコロンビア州首相が会談……水素燃料電池の研究開発について企業連携の後押しなどを確認 デイリーEVヘッドライン[2023.06.01]

TAG: #THE視点 #商用EV #国内ビジネス
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
商用EVにも地殻変動か、三菱ふそうと日野が経営統合

それぞれの親会社のトヨタ自動車とダイムラー・トラックが合弁会社を設立 三菱ふそう車にトヨタのFCが載る可能性も 【THE 視点】日野自動車と三菱ふそうトラック・バス(三菱ふそう)は30日、経営統合することで基本合意したと発表した。三菱ふそうの親会社であるダイムラー・トラックと、日野の親会社であるトヨタ自動車の4社で基本合意書を同日付で締結した。 トヨタとダイムラー・トラックが合弁会社を設立し、日野と三菱ふそうの両ブランドを残しながら、商用車の開発・調達・生産分野で協業し、水素をはじめとする「CASE(※1)」技術開発を加速させる。 これで、トヨタの燃料電池(FC)を活用した日野のバス「ソラ」や、大型FCEVトラックの技術をダイムラー側が、一方で三菱ふそうの小型EVトラック「eキャンター」の技術や、ダイムラー傘下のメルセデス・ベンツ等がもつ大型バッテリー式EVトラック・バスの技術をトヨタ側が手に入れることになる。 今や単独で「CASE」技術を開発するには限界が見えたのだとみられる。双方が持つ技術を、双方が使えるようになれば、新たなシナジーも生まれよう。 筆者が予想するには、大型トラックの電動化はFCEV、中・小型トラックはバッテリー式EVという方向に明確に進むと思われる。大型車はやはり、充電時間と走行距離を考えると、バッテリー式は難しいところがある。 日本では、刺身にする鮮魚のような鮮度最優先の生鮮食品の輸送もある。充電に時間がかかるバッテリー式の大型EVトラックの場合、大きなタイムロスが発生してしまう。 なお同日行われた会見では、トヨタを中心とする「CJPT(※2)」への、三菱ふそう側の参加については発表やコメントがなかった。 日野は、バスに関してはいすゞと製造部門を統合した「ジェイ・バス」も抱えている。どのような影響が出るのかも気になるところだ。たとえばダイムラー・トラックは、傘下のメルセデス・ベンツ名義で大型EVバスをドイツで製造・販売して公共交通機関に納入するなどの実績を持つ。あわよくば、そのEVバスの導入もあり得る。 ともあれ、三菱ふそうとの事業統合は、国内の商用車業界に大きく影響しそうである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ※1:CASE……「コネクテッド」「自動化」「シェアリング」「電動化」の英語の頭文字をとった造語 ※2:CJPT……「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ」の略語、トヨタが中心となりいすゞも参画する次世代商用車の開発団体 ★★メルセデス・ベンツ、新型EV「EQS SUV」を日本で発売……7人乗りに対応、メーカー初のEV専用プラットフォームを採用[詳細はこちら<click>] ★関東鉄道、茨城県初の路線型の大型EVバスを導入……「BYD K8」(定員81人)を採用、6月1日より守谷営業所管内で運行開始 ★東京都、お台場や有明地区などの臨海部でEVバイクシェアリングを5月29日より開始……ドコモ・バイクシェアと共同事業、前二輪のトライクタイプの小型EVを導入 ★メルセデス・ベンツ、EVのトラクター・ヘッド「eアクトロス」シリーズの長距離テストを実施……ドイツのヴェルト工場からトルコのアクサライまで3,000km、秋に量産開始 ★東北大学、「カルシウム蓄電池」の500回以上の充放電に成功……レアメタル不使用の次世代型バッテリー、トヨタ北米先端研究所も研究に協力 デイリーEVヘッドライン[2023.05.31]

TAG: #THE視点 #商用EV #国内ビジネス
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
BMW、「7シリーズ」のEVモデルの頂点「i7 M70 xDrive」を日本で発売

世界最高級かつ最高性能クラスのEVが上陸 日本のメーカーの目は覚めるか 【THE 視点】ビー・エム・ダブリュー(BMW)は5月29日、高級セダン「7シリーズ」のEVモデル「i7」に、新規に2機種を追加・発売した。 追加したのは「i7 eDrive50」と「i7 M70 xDrive」。既存の「i7 xDrive60」と合わせて3機種の展開となる。なお、納車は2023年第4四半期以降の予定だ。 「7シリーズ」は、2022年に現行型の第7世代に進化した。最高峰の品質と技術を取り入れたのは言うまでもないが、「7シリーズ」としては初のEVモデルが追加されたのが最大のトピックと言えよう。 今回追加されたうちの1台、「i7 eDrive50」は、最高出力335kW(455ps)を発揮する電気モーターが後輪を駆動するBMW伝統のFRレイアウトに則ったモデル。最大トルクは650Nm(66.3kgm)で、0-100km/hの加速はわずか5.5秒だ。床下に収納されているバッテリーの容量は105.7kWhで、航続距離は最大611kmである。価格は1,598万円となる。 そしてもう1台は「i7 M70 xDrive」。BMWのハイパフォーマンス車に与えられる「M」が冠されたシリーズの頂点だ。 最高出力190kW(258ps)のモーターを前輪に、そして360kW(489ps)のモーターを後輪に配置したAWDで、合算の出力は485kW(659ps)となる。最大トルクは1,015Nm(103.5kgm)で、0-100km/hは3.7秒だ。バッテリーの容量は105.7kWhで、航続距離は最大で560kmとなる。価格は2,198万円。 今回発表された「M」を冠した「i7」は、全開加速をしたらむち打ちしそうなトルクで、もはやスーパーカークラスの性能である。BMWなだけに走りを楽しむドライバーズカーであるのは間違いないだろう。 しかし、「7シリーズ」はVIPを乗せるショーファー・ドリブン・カーという側面もあり、いくらハイパフォーマンスEVといえども、そのあたりの仕様は抜かりがない。たとえば後席には超大型の31インチ「シアタースクリーン」が装備されている。EVの静粛性などと相まって、快適性はガソリン車の「7シリーズ」以上と思われる。 日本のEVは、いまだに実用車クラスしかない。海外のEVは、この「i7」に見られるように、富裕層やVIPに向けたモデルが続々と登場している。「上海モーターショー 2023」にて、メルセデス・マイバッハのEVがデビューしたのも記憶に新しい。一方の日本勢は、ほとんどがコンセプトカーの発表にとどまっていた。 日本勢も悠長に構えているわけにはいかないのは明白だ。今年は「東京モーターショー」改め「ジャパン・モビリティ・ショー」が控えている。そこで従来のようにコンセプトカーの展示だらけでは、「日本メーカーは高級EVも作れないのか」と、世界の笑い者になる。「i7」をはじめ、海外の高級EVの登場を無視してはいけない。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★アウディ、EVシリーズ「e-tron」が150kWの急速充電に対応……既存ユーザーも無料アップグレードが可能[詳細はこちら<click>] ★★ヒョンデ、米国でFCEVトラック「エクシエント・フューエル・セル」を初公開……車両重量15トン(クラス8)の大型トラクター・ヘッド ★トヨタ、EV用のバッテリーや技術を活用した定置用蓄電池システムを開発……東京電力などと共同開発、本年秋より風力発電所「ユーラス田代平ウインドファーム」<秋田県鹿角市>にて実証実験[詳細はこちら<click>] ★半導体のオンセミ、パワー半導体用素材「SiC(炭化ケイ素)」の収益を2027年に倍増目標……ケンパワーのEV用充電器や吉利などへ供給を強化 ★ボルボ、新型EV「EX30」が6月7日の13時30分(現地時間)にいよいよワールドプレミア デイリーEVヘッドライン[2023.05.30]

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
パワーエックス、電気運搬船の初号機「X(エックス)」の設計仕様を公開

EV2,410台分のコンテナ型蓄電池を搭載 船の活用について九州電力・横浜市港湾局とも連携 【THE 視点】パワーエックスは5月25日、電気運搬船の初号機「X(エックス)」の設計を公開した。この船は電動船であると同時に、外部給電用のコンテナ型の大型バッテリーを搭載して運ぶ世界初の「電気運搬船」である。現在、「X」は開発中であるが、初号船の詳細設計を愛媛県今治市で開催中の国際海事展「バリシップ」にて発表した。2025年の完成を目指しており、2026年より国内外で実証実験を予定しているという。 また、電気運搬船を活用した海上送電事業を推進するための新会社「海上パワーグリッド」を、2023年の第3四半期中に設立するとも発表。この会社は、電気運搬船の所有と、国内外への電気運搬船の販売および海上送電のオペレーションを担当し、国内外の事業パートナーを募集する。 今回発表された電気運搬船は、「パワー・アーク100」という型で、その初号機の船名が「 X」となる。船長140mのEV船で、合計96個のコンテナ型の大型バッテリーを搭載。合計の電池容量は、241MWhにおよぶ。 船に搭載するバッテリーは、パワーエックス独自設計のモジュールで、安全性に優れたリン酸鉄リチウムイオン (LFP) 製セルを使用し、6,000サイクル以上の長寿命を実現するという。バッテリーシステムはスケーラブルな設計となっており、ミッションに応じて搭載する電池を増やすことにより、「パワー・アーク1000」や、それ以上に大きなサイズの電気運搬船をつくることも可能という。 さらにパワーエックスは、九州電力と覚書を締結。海上送電という新しいコンセプトの実現に向けて、再生可能エネルギーを電気運搬船で送電するという新たな事業の検討を共同で進めることも発表した。 具体的には、電気運搬船を用いたオフサイトコーポレートPPA(パワー・パーチェス・アグリーメント)事業、自己託送事業、九州と本州間での電力系統補完などが含まれる。 横浜市とも、電気運搬船および蓄電池の利活用を通じた連携協定も締結した。同市が進めるカーボンニュートラルポートの形成を目標とする。同時に電気運搬船を利活用した、次世代のエネルギーインフラの検討にも取り組むという。 先日もレポートしたが[詳細はこちら]、ここのところパワーエックスの動きがとても活発だ。自社製の大型バッテリーを武器に、電動運搬船やEV用充電インフラまで広い範囲に事業が及ぶ。 「X」の搭載バッテリーの総容量(241MWh)は、最大容量100kWhのEVに換算して2,410台分に相当する。来年の完成予定が楽しみである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★フォード、テスラのEV充電インフラ「スーパーチャージャー」の利用が可能に……「マスタング・マッハE」などが対応、アメリカとカナダで1万2,000ヵ所以上[詳細はこちら<click>] ★★ヒョンデ、米ジョージア州にEV用バッテリーセル工場を建設へ……韓国のバッテリー企業SKオンと合弁会社を設立、2025年後半から生産開始 ★テラモーターズ、埼玉県羽生市にEV用充電器を大規模導入……市内公共施設に100基の「テラチャージ」を設置 ★BMW、新型「i5」にゲームプラットフォーム「エアコンソール」を搭載、インフォテインメントシステム上でレースゲームなどがプレイ可能、充電待ち時間の活用を提案 ★リマック、アラブ首長国連邦の自動車販売店大手「Al Habtoor Motors」と代理店契約……EVハイパーカー「ネヴェーラ」を販売、2024年第1四半期にショールームをオープン  ★セントラル硝子、リチウムイオン・バッテリー用電解液を自社製造……中国の電解液大手「天賜グループ」と合弁会社を設立、「LiPF6(六フッ化リン酸リチウム)」の製造へ ★DOWAホールディングス、リチウムイオン・バッテリーなどのリサイクル事業を推進……2030年度売り上げを現状の1.6倍となる5,760億円以上に デイリーEVヘッドライン[2023.05.29]

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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