EV2,410台分のコンテナ型蓄電池を搭載
船の活用について九州電力・横浜市港湾局とも連携
【THE 視点】パワーエックスは5月25日、電気運搬船の初号機「X(エックス)」の設計を公開した。この船は電動船であると同時に、外部給電用のコンテナ型の大型バッテリーを搭載して運ぶ世界初の「電気運搬船」である。現在、「X」は開発中であるが、初号船の詳細設計を愛媛県今治市で開催中の国際海事展「バリシップ」にて発表した。2025年の完成を目指しており、2026年より国内外で実証実験を予定しているという。
また、電気運搬船を活用した海上送電事業を推進するための新会社「海上パワーグリッド」を、2023年の第3四半期中に設立するとも発表。この会社は、電気運搬船の所有と、国内外への電気運搬船の販売および海上送電のオペレーションを担当し、国内外の事業パートナーを募集する。
今回発表された電気運搬船は、「パワー・アーク100」という型で、その初号機の船名が「 X」となる。船長140mのEV船で、合計96個のコンテナ型の大型バッテリーを搭載。合計の電池容量は、241MWhにおよぶ。
船に搭載するバッテリーは、パワーエックス独自設計のモジュールで、安全性に優れたリン酸鉄リチウムイオン (LFP) 製セルを使用し、6,000サイクル以上の長寿命を実現するという。バッテリーシステムはスケーラブルな設計となっており、ミッションに応じて搭載する電池を増やすことにより、「パワー・アーク1000」や、それ以上に大きなサイズの電気運搬船をつくることも可能という。
さらにパワーエックスは、九州電力と覚書を締結。海上送電という新しいコンセプトの実現に向けて、再生可能エネルギーを電気運搬船で送電するという新たな事業の検討を共同で進めることも発表した。
具体的には、電気運搬船を用いたオフサイトコーポレートPPA(パワー・パーチェス・アグリーメント)事業、自己託送事業、九州と本州間での電力系統補完などが含まれる。
横浜市とも、電気運搬船および蓄電池の利活用を通じた連携協定も締結した。同市が進めるカーボンニュートラルポートの形成を目標とする。同時に電気運搬船を利活用した、次世代のエネルギーインフラの検討にも取り組むという。
先日もレポートしたが[詳細はこちら]、ここのところパワーエックスの動きがとても活発だ。自社製の大型バッテリーを武器に、電動運搬船やEV用充電インフラまで広い範囲に事業が及ぶ。
「X」の搭載バッテリーの総容量(241MWh)は、最大容量100kWhのEVに換算して2,410台分に相当する。来年の完成予定が楽しみである。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.05.29]