ホンダのEVスクーターのバリエーションが増加
駆動ユニット上に積載する「ジャイロ・アップ」が事実上の復活
【THE 視点】本田技研工業(ホンダ)およびホンダモーターサイクルジャパンは6月1日、ビジネス向けEVスクーターの一般販売を同日から開始したと発表した。
これまで法人向けの販売となっていた「ベンリィ e:」「ベンリィ e: プロ」「ジャイロ e:」「ジャイロ・キャノピー e:」が一般でも購入可能になる。全国のHonda二輪EV取扱店にての取り扱いとなる。
ホンダは先日、着脱交換式バッテリー「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」(MPP)を採用したEVスクーター「EM1 e:」を8月に発売すると発表した。今回の発表も合わせて、ホンダの市販EVバイクのラインナップが一気に増えることとなる。
「ベンリィ e:」および「ベンリィ e: プロ」は、積載性を最上級に高めた配達業務向けスクーターだ。特に「プロ」は、スタンダードよりも大きな荷台と前カゴ、そしてナックルガードを装備し、新聞配達向けの最適化モデルと言えるものだ。価格は64万9,000円(税込・バッテリー込み/以下同)からの設定で、ガソリン車の50ccにあたる原付一種扱いの「Ⅰ」と、125ccの原付二種の「Ⅱ」を用意している。
「ジャイロ e:」(83万9,000円)および「ジャイロ・キャノピー e:」(100万1,000円)は、後輪がふたつ並んだ三輪のスクーターである。ちなみに両車とも原付一種扱い。
「ジャイロ e:」は、駆動ユニットの上部がそのまま荷台になっているのが特徴。対して「ジャイロ・キャノピー e:」は、大型のルーフを備えているのが特徴となる。
「ジャイロ e:」は、駆動ユニットの天板にそのまま荷物を乗せられるので、積載性と安定性が高い。対して「ジャイロ・キャノピー e:」は、荷台は運転席側のユニットに備え付けのため左右にスイングするが、雨などからライダーを守ってくれる快適仕様車だ。
ちなみに現行型のエンジン式の「ジャイロX」は、天板積載仕様ではなく、運転席型と一緒に左右にスイングする仕様となっている。しかしかつては、エンジンの駆動ユニットの天板をそのまま荷台にした「ジャイロ・アップ」というモデルがあった。「ジャイロ e:」の仕様がまさにそれで、「ジャイロ・アップ」の復刻と言えよう。
「EM1 e:」と、今回のビジネスモデルの大きな差は、「MPP」の搭載数の違いと言える。「EM1 e:」が「MPP」1個の搭載に対して、ビジネスモデルは、2個を搭載(直列接続)。強力な電圧(96V)に対応したEVシステムを採用したプロ仕様である。
「EM1 e:」の価格は29万9,000円とリーズナブル。ビジネスモデルの価格は、その倍以上となるが、信頼性の高さや長い航続距離(EM1 e:が53kmに対して、ベンリィ e:Ⅰが87km)が魅力的。バリエーションも豊富で選ぶ楽しみもある。軽トラックのように、経済的かつ便利な日常のアシとなってくれるのは間違いないし、何よりガソリン代とメインテナンス・コストが浮くのは大変にありがたい。
個人でもこれらのビジネスモデルを購入できるようになったのは、朗報だと感じた。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.06.05]