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TEXT:福田 雅敏
[THE視点]現役エンジニアが見抜いた「日産サクラ」JNCAPファイブスター獲得の要因

「衝突安全性能評価」「予防安全性能評価」の最高評価に加えて、「事故自動緊急通報装置」を備える必要がある「ファイブスター賞」 日産自動車株式会社は1月24日、自動車アセスメント(JNCAP)で、「衝突安全性能」と「予防安全性能」等を統合して評価する総合評価「自動車安全性能2022」において、「サクラ」が最高評価「ファイブスター賞」を獲得したと発表した。兄弟車の「三菱eKクロスEV」も同様に獲得した。 「サクラ」の「ファイブスター賞」獲得は、「デイズ」(2020年度)、「ルークス」(2021年度)に続き軽自動車として3車種目で、軽自動車EVとしては初の受賞である。ガソリン車も含めて日産の軽自動車の安全性の高さを改めて示したことになる。 JNCAPは、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)により自動車の安全性能を評価・公表するもの。最高評価となる「ファイブスター賞」は、「衝突安全性能評価」と「予防安全性能評価」の両評価で最高ランクを獲得し、かつ「事故自動緊急通報装置」を備えた車両のみに与えられ、審査は大変厳しいものとなっている。 「サクラ」は、「高強度安全ボディ(ゾーンボディ)+歩行者傷害軽減ボディ」と「7つのエアバッグ」による普通乗用車にも匹敵する衝突安全性能に加え、検知対象を人が乗車している自転車にも拡大した「インテリジェント・エマージェンシーブレーキ」などの先進安全装備で構成される「360°セーフティアシスト(全方位運転支援システム)」を採用している。 さらに「リーフ」の開発で培った技術を投入することで「衝突後の感電保護性能評価」もクリアし、軽EVの安全性の高さを実証した。 バッテリーパックの衝突安全基準が「サクラ」を頑丈なボディにしたか 日本の軽自動車は、車体の外寸が限られるなかで室内寸法を最大限に広げるという設計のものが多く、衝撃吸収部分がどうしても少なくなりがち。その中での評価獲得には、重くなりがちなEVでも高い安全性を確保するという日産の軽自動車に対する安全性の取り組み、そして開発陣の高い志があったのだろうと評価できる。

TAG: #eKクロスEV #JNCAP #THE視点 #サクラ #三菱 #日産 #福田雅敏
TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第4回:MINI Eのヤンチャぶりに惹かれた!

わが家にMINI Eがやってきた 前回は、主にスマートed のあれこれを書いたが、今回は「MINI E」について書く。 MINI Eとは、「EVの可能性や問題点を世界規模で掬い上げること」を目標に作られた実証実験車。アメリカ市場の450台を筆頭に、世界の市場に送られた。 日本での実証実験は、2011年の早い時期から始まったと記憶している。 ちょっと乗るだけの安易な試乗ではなく、一定期間続けて乗ってもらい、日常的な使用条件下での評価やデータを引き出す…といった、大規模で真剣な取り組みだった。 日本に何台来たのかは忘れたが、わが家には、たしか2週間ほど滞在したかと思う。 艶やかなチタングレーにライトイエローのアクセントが素敵 それより半年ほど前、MINI E は日本でお披露目された。東京ビッグサイトで開催された「BMW Group Mobility of the Future -Innovation Days in Japan 2010」がその舞台。 外見的にはMINIそのもの。だが、艶やかで深みのあるチタングレーのボディ、ライトイエローのルーフとドアミラーという装いは、とてもスタイリッシュ、かつ未来的に見えた。 ボディサイドの……これもライトイエローで描かれた「MINI+ 電気プラグを表すEmoji」もカッコよかった。 会場の照明は落とされ、舞台だけが、それもMINI E だけが、非日常的なインパクトで浮かび上がっていた。この演出とライティングは巧みだった。僕は完全に惹き込まれた。 もし、MINI Eが市販され、このデザインがカタログにあったら、僕は一も二もなく、これを選ぶだろうと思った。 印象的なライトイエローはインテリアにも使われていた。ダッシュボードとドアトリムに組み込まれたライトイエローのアクセントにも、僕はコロリとイカれてしまった。 基本的には市販モデルと同じインテリアなのに……僕には強烈なインパクトだった。まだ乗ってもいないのに、「僕の次のクルマはこれだ!」と心に決めた。 僕のクルマ選びに当たって、いちばん大事なのはデザイン、次に大事なのはブランドだが、どちらも文句なし。加えて、新たな時代を駆け巡ることになるだろうEVなのだから、これは買うしかない。そう思ったのだ。 2シーター、50:50、低重心、鋭い加速と強力な効きの回生ブレーキ……。楽しくて仕方がない 35kWhのリチウムイオン電池は後席部に搭載する。だから、MINI E は二人乗りだ。この潔さも僕は気に入った。「さすが、MINIのやることはカッコいい!」とさえ思った。 電池重量は260kgとされたが、現在の電池よりはるかに重い。ちなみに、僕のプジョー e-208GTは50kWhで235kg。これからも電池はどんどん進化してゆくだろう。 後席を潰して2座席化したが、重量配分はほぼ50:50にされ、当然重心も低い。 ルックスは一目惚れだったが、ステアリングを握って、その気持ちはさらに加速。それも猛烈に加速した。 発進する時、下手にアクセルを踏み込むと前輪は激しく空転。強いトルクステアもでた。でも、そんなヤンチャぶりにも惹かれた。 EVの楽しさは、アクセルを踏んだ時の鋭角なトルクの立ち上がり、加速のレスポンスにあるが、MINI Eはその見本のようだった。 もうひとつ、惹きつけられたのは「回生ブレーキ」。「こんなのあり!?」と思ってしまったほど強力な効きに、初めは戸惑った。でも、慣れるにつれて「楽しくて仕方がない」状態に引き込まれていった。 文字通り「アクセルペダルのコントロールだけ」で自在に走らせられた。縦横無尽に加減速をコントロールできた。僕は完全に依存症状態になってしまった。 一般論で言えば、明らかに過剰な設定だったとは思う。……が、僕は「このまま」市販してほしいと心から思った。 MINI Eの開発者たちは「EVの楽しさ」をフルに詰め込んだ。市販モデルには無理だとしても、実験車に触れる人たちには「EVって、こんなにドキドキ、ワクワクするんだよ!」と伝えたかったのだろう。 もし、MINI Eが、ほぼあのままで市販されていたら、僕の「EV第1号」になっていたのは間違いない。そして毎日、「走りたくてしょうがない症候群!?」にかかっていたのも間違いないだろう。 第5回はこちら

TAG: #EVは楽しい! #岡﨑 宏司
TEXT:生方 聡
[ID.4をチャージせよ!:その5]90kW急速充電はこんなに速い!

「ID.4をチャージせよ!」は連載5回目にしてようやく“チャージ”、すなわち、実際に充電する話題に漕ぎ着けました。まずは「プレミアムチャージングアライアンス」の90kW急速充電をチェックします。 最高75kWをマーク! ID.4オーナーは、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェの各ディーラーにある90kW超の急速充電器が相互に使用できる「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」が利用できます。[ID.4をチャージせよ!:その3]で触れたとおり、すでにPCAの加入手続きを済ませているので、いつでも利用することが可能な状態です。 使い方は簡単で、クルマに充電プラグを挿し、PCA専用アプリで充電器のQRコードを読み取り、あとはアプリの指示にしたがって進めていけば、自動的に充電が始まります。果たして、どれくらいの電力で充電できるでしょうか? ID.4ではセンターディスプレイで充電中の電力をリアルタイムに確認することができます。ずっと監視している必要はないのですが、面白いので眺めていたら最高で75kWをマーク! 90kW急速充電器といっても実際には90kWで充電が行われるわけではなく、その数字より低めというのが現実です。フォルクスワーゲン・ジャパンの担当者によれば、90kW急速充電器で75kWというのはほぼ最速とのこと。それでも、40〜50kW急速充電器に比べて2倍近いパフォーマンスです。ちなみに、150kW急速充電器では94kWが上限。本来125kWの急速充電に対応するID.4ですが、日本の環境ではその実力が発揮しきれないのが残念なところです。

TAG: #ID.4 #ID.4をチャージせよ #VW
TEXT:福田 雅敏
[THE視点]ファミマのEV充電事業に参加した現役エンジニアから見た「コンビニ×EV充電器」の利点

ファミリーマート店舗の急速充電器を50〜100kW級の高出力型に置き換え、2台同時充電も 株式会社ファミリーマートは、株式会社e-Mobility Power(e-モビリティ・パワー)と共同で、ファミリーマート店舗に現在設置されているEV用急速充電器を、50〜100kW級の高出力型に入れ替えると発表した。 ファミリーマートは2010年より店舗への急速充電器の設置を進めてきた。流通・小売業界最大規模となる全国約700店舗に充電器が設置されているという。現在の急速充電器は20kW級が中心だが、今回の取り組みにより、50〜100kW級へと高出力化される。充電ニーズの高い店舗には充電口の数を従来の1口から2口に増やした機種を設置し、2台同時充電を可能とする。 2023年1月24日「ファミリーマート千葉大宮インター店(千葉県千葉市)」での稼働開始を皮切りに、2023年度は約220店舗に新型急速充電器の設置を予定しており、2025年度を目途に入れ替え完了を予定という。 今回採用された急速充電器は「CHAdeMO」規格の台湾デルタ電子株式会社製の急速充電器で、2台同時充電可能な最高出力100kW(1口あたりの最高出力90kW)の充電性能をもつ高性能・高機能なもの。24時間営業のファミリーマートに設置されたことも利用者にはメリットが大きい。 およそ1年で220店舗に展開とは相当スピーディーな施策。2010年から急速充電器の設置を進めてきたファミリーマートでは、古い機種は恐らく老朽化も進んでいるのだろう。それもあり、今回思いきって高性能・高機能なものを導入すると考えられる。 ちなみに料金(ファミリーマート千葉大宮店の場合)だが、e-モビリティ・パワー発行の充電カード保有者会員の場合は16.5円/分。充電カードを非保有のビジターの場合は、利用時間5分までが275円で、以降1分ごとに55円。50kW以上の急速充電利用時間は最大15分となる。 「マツダ・デミオ」市販車ベースのEVを開発、ファミマEV事業黎明期に3台を納入 2010年に筆者も、つくば市(茨城県)・伊藤忠商事・ファミリーマートの3社共同で再生エネルギーからEVを走らせる「クリーンエネルギーを活用した低炭素交通社会システムの共同実証プロジェクト」の実証試験に参画した。 このプロジェクトが立ち上がった時は、「日産リーフ」など市販EVはまだ発売されていなかった。そのため、実証試験で使われたEVは、「マツダ・デミオ」のガソリン車をEVに改造し3台が実証試験に供された。1台はファミリーマートが使用し、1台はカーシェアリングの車両として、そしてもう1台はつくば市が使用した。 このプロジェクトの拠点であるファミリーマートのつくば研究学園店には、店舗の屋根に太陽光パネルを設置。そこからいったん定置型バッテリーに充電され(デミオEVと同じものを使用)、その電力から急速充電器を行うという当時としては画期的なシステムだった。それが今ではファミリーマート700店舗に急速充電器が設置されているというのには驚いた。 充電待ちの30分はあっという間、買い物やトイレなどに有効活用 現在国内の急速充電器数は8,000基あまりといわれている。その1割弱がファミリーマートに設置されたということは、実証試験終了後も積極的に急速充電器を設置していったということ。 コンビニに充電器があると非常に便利だとこの実証試験から感じていた。休憩ついでに買い物やトイレを借りられたりと充電中に用事も済ませられる。30分という充電時間はまったく気にならない。プロジェクトの充電器は一般にも開放していたので、実証試験以外の車両にも使われた。実際に利用者からの評判も良かった。 大容量の仕様や一基あたり2台同時充電ができる機器が設置されるのは、これまでの運用ノウハウが生かされたものだと感じ大歓迎である。

TAG: #THE視点 #ファミリーマート #マツダ #充電 #福田雅敏
TEXT:田中 誠司
アウディと組んだ「パワーエックス」の野望

1月20日に実施されたアウディジャパンの2023年年頭記者会見において、同ブランドの高速充電設備に関する株式会社パワーエックスとの事業提携が発表された。両企業はアウディ・ディーラーにおける蓄電池搭載型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー」の導入と、いわば現在のガソリンスタンドに代わって充電の拠点となる「チャージングハブ」の共同運営について協業の検討を開始する。 株式会社パワーエックスとはどんな会社なのだろう。多くの人にとって聞き慣れない名前なのは当然で、2021年3月に設立されたばかりの若い会社だ。しかしすでに資金調達総額は99億円におよぶという。 出資元のリストには三菱UFJ銀行などのメガバンク、三井物産や伊藤忠商事などの総合商社、森トラストなどの不動産会社、今治造船や日本郵船といった船舶関連会社、四国電力、関西電力グループ、J-POWERなどの電力会社を含む錚々たる大企業が並ぶ。 EV急速充電は再生エネルギー活用のひとつの手段に過ぎない 今回発表されたのは電気自動車の高速充電に関する事業だが、パワーエックスの事業の核となるのは大容量の蓄電池を利用した、再生可能エネルギーの有効活用だ。 2021年の時点において日本における発電量に占める再生可能エネルギーの割合は19%と、いわゆる先進国の中で高いレベルではない。しかしそこからおよそ10年を経た2030年には、その割合はほぼ倍の37%まで増加すると見込まれている。火力発電と比較した場合の発電コストも技術の進歩に伴い低下すると目されている。 再生可能エネルギーは太陽光、風力、地熱など地球が生み出すエネルギーを利用するのでほとんどCO2を排出せず、カーボンニュートラルに大きく貢献する。しかし問題は、それらを生み出す場所が電力の大量消費地である都市部から離れた地域にあるケースが多く送電にコストや損失を伴うこと、そして日本において今後さらに成長が見込まれる太陽光発電は昼間にしか発電できないため、そのままでは夜間の電力需要に対応できないことだ。 パワーエックスはEV用高速充電設備「パワーエックス・ハイパーチャージャー」では300kWh、定置用蓄電池「パワーエックス・メガパワー」(下写真)では3000kWhにおよぶ、大容量のリン酸鉄バッテリーを用いて再生可能エネルギーの課題を解決しようと取り組んでいる。 一般的なEV用高速充電設備においては、高圧線から6,600Vで送電を受ける契約を電力会社と結び、「キュービクル」という変電設備によって200〜400Vに落としたうえで直接、自動車に充電する。パワーエックス・ハイパーチャージャーの場合は50kW以下の商用低圧契約でバッテリーを充電しておき、そこから最大240kWの超急速充電を行なうことができる。 低圧電力で常に電力を貯めておき、必要なときに一気に出力することで再生可能エネルギーを有効活用する。大容量のバッテリーを要するので通常の急速充電器より若干、初期投資は嵩むが、ランニングコストが低いため長期的に回収が可能だという。

TAG: #アウディ #パワーエックス
TEXT:御堀 直嗣
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀直嗣 第3回:バッテリーを活かす制御

バッテリー使用の適正温度とは 寒い冬を迎えると、バッテリーの容量が足りないと実感することがあるかもしれない。電気自動車(EV)で駆動用に車載されるリチウムイオン・バッテリーも同様だ。 バッテリーの出力や充電の性能は、電流と内部抵抗の掛け算によって算出される。内部抵抗とはいわば損失で、温度が下がると電解液の性状やリチウムイオンの移動が低下する特性がある。このため、寒い時期には充電しにくくなったり、あるいは温かな季節にはもっと走行距離を延ばせていた充電残量でも、どんどん電力が減って早めに充電しなければならなくなったりする。 エンジン車でも、たとえば軽油を使うディーゼル車は、寒冷地仕様の燃料でないと冬場に始動できなくなる場合があり、特性を知ったうえで利用することが望まれる。 リチウムイオン・バッテリーに話を戻せば、逆に高温になり過ぎても、熱暴走などといわれる異常な発熱や発火の恐れがある。そこで車載バッテリーを冷却したり、出力を抑えることで温度上昇を防いだりする必要がある。高速道路を走ったあと、急速充電をしようとしてもなかなか充電できないといった事例があるが、これは熱暴走を起こさせないための制御が働くためだ。 一般的に、バッテリーは人が快適に暮らせる温度が適しているともいわれ、昨今のEVは冷却や暖房機能を備えることで、適正温度の範囲で使えるような対策が施されている。ことに液体冷却を採用すると、温度を管理しやすくなる。 三元系リチウムイオン・バッテリーの特徴 初代の日産リーフは空冷によって冷やしながら、正極にマンガン酸リチウムを採用することで熱暴走を防ぐ対策が行われていた。空冷であることによって、廃車後のリチウムイオン・バッテリー再利用のための分解作業がしやすい利点もあった。液体冷却のような強制冷却でなくても、車載バッテリー容量が多くなかったので、走行風を利用することで適性に冷却できた。そのうえ、正極のマンガン酸リチウムはスピネル構造と呼ばれる金属結晶構造を持ち、万一の過充電になっても結晶構造が崩れにくく、短絡(ショート)しにくいので、熱暴走が起きにくかった。リーフが発売されてから、深刻なバッテリー事故が一件も起きていない背景に、こうした慎重なバッテリー採用が機能していた。 一方、スピネル構造は結晶が崩れにくい反面、リチウムイオンを蓄える容量が少なくなる。このため、現在のリーフを含め多くのEVが三元系と呼ばれ、マンガンのほかにコバルトとニッケルという3つの元素をあわせた正極とすることで、容量を増やし、より長い走行距離を実現できるようになった。 層状構造と呼ばれ、リチウムイオンを含む量の多いコバルトは、万一リチウムイオンが抜けきってしまうと結晶構造が崩れてしまいかねない。そこで、リチウムイオンが正極から抜けきってしまうことを防ぐため、充放電の制御をクルマが行うことも重要だ。 EVは充放電の状況を常に監視し、これを製造した自動車メーカーが通信を利用して一台ずつ把握している。したがってEV販売台数の多い自動車メーカーほど、市場でリチウムイオン・バッテリーがどのように充放電されているかの知見を豊富に持つことができる。その実績を基に、どこまで電力を使ってよいのか? 充電ではどこまで負極にリチウムイオンを移動させてよいかを、危険が生じないぎりぎりまで攻め込んだ制御プログラムをつくることができるようになる。いくら机上で計算しても、消費者が市場でどのように使っているかを知らなければ、最大の性能は引き出せない。

TAG: #EV知識・基礎の基礎 #御堀 直嗣
TEXT:栁 蒼太
[東京オートサロン2023]大学自動車部員が熱視線! トムスのEVレーシングカート

世界最大級のカスタムカー・イベント「東京オートサロン2023」(以下、オートサロン)が1月13日から15日まで幕張メッセで開催された。本稿では、自動車に高い関心のあるインターン生(現役大学生)がEV関連で気になった車をレポートする。   モータースポーツの新境地へ 乗用車のEV化に注目が集まりがちだが、モータースポーツ業界でもEV化が着々と進んでいる。国内屈指のレーシングチームTOM’Sを運営する株式会社トムスは、オートサロンにて自社開発のEVカートを出品していた。 トムスでは、EVカートシリーズとして「大人用のレンタルカート」「子供用のジュニアカート」「2人乗り用タンデムカート」の計3種類を販売、リースしている。カーボンニュートラルを基軸とした自動車業界の大きな変革の中、モータースポーツの新たな時代を開拓し、EVカートは全日本カート選手権 EV部門の公式車両としてモータースポーツの新たな可能性を追求するとしている。 初めまして、モータースポーツ レーシングカートは、モータースポーツの入門として大人だけでなく子供にも親しまれてきた。しかし騒音や排気の問題、莫大な費用がかかるという障壁によって、興味関心があっても実際にハンドルを握るのを諦めた人も多かった。 これらの問題を解決するのが、EVカートであるという。電動のため排気ガスを出さず、静粛性も高いため、都心や屋内でも堪能できるレーシングカーとなっている。また、リースやレンタルにも対応することによって、より多くの人に親しみやすくなっている。 静か、パワフル、ジョイフル。 抜群の疾走感に加えて、静粛性を兼ね備えるEVカート。それは、モータースポーツ業界自体を盛り上げる可能性も秘めている。2022年11月には、お台場にて国内最大級のEVカートイベント「にゃんこ大戦争 Presented シティ・サーキット ODAIBA2022」が行われた。そこでは、選手レベルの一流ドライバーの走行だけではなく、車に触れたことがない子供にも走行の機会が設けられ、数多くの人の運転の楽しさを引き出した。また、静粛性を生かしたナイトレースも行われた。都心近郊にいながら、そのようなイベントを開催できるのもモータースポーツに関心を向ける人の獲得につながるだろう。

TAG: #TOM'S #カート
TEXT:生方 聡
[ID.4をチャージせよ!:その4]気になる「電費」はどのくらい?

いきなり8.6km/kWhをマーク 充電サービスの準備が整ったところで、ずっと気になっていた「電費」をチェックしてみることに。すでにメディア向け試乗会でID.4 プロ・ローンチエディションをドライブする機会はありましたが、短時間・短距離の走行だったため、参考にできるような電費が計測できなかったのです。 まずは、走り慣れた有料道路を乗り継ぎ、のんびりとドライブ。途中で停まることはなく、また、高速道路に比べると遅い流れにあわせて走ったところ、なんと8.6km/kWhをマーク! ちなみに、エアコンはオンの状態です。 「8km/kWh超えはすごい!」といわれてもピンとこないでしょうが、このクラスのEVとしてはかなり立派です。 カタログによると、ID.4 プロ・ローンチエディションの燃費は次のとおりです。 交流電力量消費率 換算値  WLTCモード 153Wh/km 6.5km/kWh  市街地モード(WLTC-L) 135Wh/km 7.4km/kWh  郊外モード(WLTC-M) 143Wh/km 7.0km/kWh  高速モード(WLTC-H) 168Wh/km 6.0km/kWh ちなみに、カタログでは1km走行あたりの消費電力の[Wh/km]で電費が表されていますが、1kWhで走行できる距離の[km/kWh]で表したほうがわかりやすいと思いますし、メーターの表示も初期設定が[km/kWh]となっているので、換算した値を併記しました。数字が大きいほど、電費が良いことになります。今後電費を扱う場合にも、基本的には[km/kWh]で進めることにします。 それはさておき、8.6km/kWhという電費は、WLTCモードや高速モードを大きく上回る数字で、ID.4 プロのオーナーとしてはまずはひと安心というところです。 スピードを上げると目に見えて電費は低下 カタログの電費を見てお気づきのように、EVの場合は速度が高くなるにしたがって、電費は悪くなる傾向にあります。以前所有していたフォルクスワーゲン・ゴルフeTSIスタイルとは真逆です。 ID.4 プロ・ローンチエディション ゴルフeTSIスタイル  WLTCモード 6.5km/kWh 17.3km/L  市街地モード(WLTC-L) 7.4km/kWh 12.8km/L  郊外モード(WLTC-M) 7.0km/kWh 18.0km/L  高速モード(WLTC-H) 6.0km/kWh 19.8km/L とくに高速では空気抵抗の影響が大きく、スピードを上げると目に見えて電費は低下します。 実際にそれを確認するため、80km/h、100km/h、120km/hで高速道路を巡行してみました。リアルな環境でチェックした数字ですのであくまで参考です。走行時はアダプティブ・クルーズコントロール(ACC)を使いました。 設定速度 平均電費 (参考)平均速度 80km/h 7.5km/kWh 75km/h 100km/h 6.4km/kWh 94km/h 120km/h 5.4km/kWh 115km/h […]

TAG: #ID.4 #ID.4をチャージせよ #VW
TEXT:福田 雅敏
実質EV元年と感じた充実のEV展示とそのカスタマイズ……EV開発エンジニアのオートサロン探訪[その4(最終)]

世界最大級のカスタムカーのイベント「東京オートサロン2023」が1月13日から15日まで幕張メッセにて開催された。今回の「オートサロン」には、多数のEVも出展されると聞いた。そこでEV開発エンジニアであり本媒体のエグゼクティブアドバイザーである福田雅敏が現地に赴いた。その現場をレポートしたい。今回は「その4(最終)」をお送りする。 アウトドア志向を押し出した三菱 「ミニキャブ・ミーブ B-レジャースタイルⅡ」は、車載のバッテリーからの給電機能を活用したカスタムカー。アウトドアシーンに溶け込むアイボリーとモスグリーンの2トーンカラーとし、ボディサイドにはEVを象徴する電源プラグをモチーフとしたラッピングがなされている。 室内は荷台スペースをフルフラットとして居住性を高め、リモートワークに必要なデスクや座椅子、車中泊に必要なベッドキットを装備することで、プライベートな空間を演出している。 さらに、駆動用バッテリーから定格1500WのAC100V電源を取り出せる「ミーブ・パワーボックス」を使用し、リアゲートに取り付けたプロジェクターでのeスポーツ体験や、リモートワーク用パソコンの充電などを可能とするなど、ビジネス&レジャースタイルを提案していた。出先で楽しくなり電力を使いすぎて「電欠」にならないよう、電池残量のこまめな確認が必要だと感じた。 そして「eKクロスEV」をベースとした「eKクロスEV Smooth×Tough(スムーズ・バイ・ タフ)」も展示されていた。EVの静かかつ滑らか、そして力強い走りをそのままに、SUVテイストを一層高めたのが特徴。 ボディカラーは、マットグレーメタリックとブラックマイカの2トーンカラーとし、フロントグリルガードやオールテレーンタイヤを装着。さらに、リフトアップしたことで、オフローダースタイルとしている。 ただ残念なのは、ここまでSUVテイストを強めているのに、4WD仕様がないこと。雪の多い地域のSUVファンのためにも早期に4WD仕様を出してほしいものである。 「オートサロン」ならではのアフターメーカーによるEVカスタムカー見聞 「テスラアライアンス」のブースには4台のドレスアップされた「モデル3」とテスラ用のドレスアップキットなどが所狭しと展示されていた。 テスラ好きが集まったカスタムメーカー集団「テスラアライアンス」の関連企業は20社あまり。その中には普通充電器付貸ガレージなども紹介されていて「EVと住宅」というライフスタイルをどう快適かつ楽しく過ごすかを訴求していた。このブースの中に、KGモーターズの超小型EV「ミニマム・モビリティ・コンセプト」も展示されていた。 「ブリッツ」のブースでは、日産「アリア」をドレスアップした「ブリッツ・アリア」を展示。エアロパーツとホイールでドレスアップされていた。「ブリッツ・アリア」は、来場者の投票により決定する「東京国際カスタムカーコンテスト」SUV部門において優秀賞を受賞した。 先の「カー・オブ・ザ・イヤー」でもそうだが、このような賞典をEVが受賞するようになり、時代の移り変わりを実感した。 「トーヨータイヤ」のブースではアウディ「e-トロン・クワトロ・フーニトロン」を展示。1980年代の伝説ともいえる「スポーツ・クワトロS1」をオマージュした電動4輪駆動のレーシングEV。2モーターによる合計最大トルクは6000Nm(611.83kgm)を誇る。 本来であれば、世界的ラリードライバーであり、「ジムカーナ」シリーズの神業ドライブでもおなじみのケン・ブロック氏が来場するはずだった。が、1月2日午後、ユタ州においてスノーモビルの事故で亡くなり、それがかなわなくなった。享年55。非常に残念なことである。ご冥福をお祈りする。 「ボンドグループ&レザーコーポレーション」のブースには、「テックアート・タイカン4S」が展示されていた。エアロパーツをまとい車高が落とされた車体、大径ホイールでドレスアップされたもの。標準のホイールでは大きく感じたフロントブレーキキャリパーは、大径ホイールの影響で逆に小さく感じた。 総括:「オートサロン」は実質モーターショー、来年は走行性能にも手を加えた「チューニングEV」登場の予感 筆者にとって、コロナ禍では初のオートサロン見学。プレスデーに見学したが、当日は4万4000人の来場者があり、十分混んでいた。3日間の合計来場者は18万人あまり。出展社数341社、出展台数789台、ブース総数3904小間。特に出展車数は昨年より1割(77台)増しとなった。 今回は、主催者による「オートサロンテック2023」などEVを中心とした次世代自動車のテーマ館もあり、カスタムカーの祭典「オートサロン」でも新時代への流れを感じた。 自動車メーカーの多くがEVを展示していたこと、海外EVメーカーの出展や新型車の発表など、これまで「東京モーターショー」の場で行われてきたことが、「オートサロン」で行われるようになった。先日アメリカで「CES」が開催されたが、実質北米のモーターショーに変わったと言われている。「オートサロン」もそんな「CES」の流れと被るように思う。 2022年がEV元年と一部では言われているが、今回の「オートサロン」のEVの出展を見るに、実質は2023年がEV元年のように思えた。 ただ一部聞いたところによると、半導体不足などの納車の影響で、ベース車の入手ができない業者もあったようだ。展示台数がもっと多いであろうと思った日産「アリア」や「サクラ」、三菱「ekクロスEV」などがほとんど見かけなかったのは、その影響もあるのではないだろうか。 恐らく来年は、カスタムEVがさらに増えるだろう。今後はアフターメーカーも、EVの純正ECUの制御を解析しパワーアップした「チューニングEV」が出てくる予感がする。 <了>

TAG: #eKクロスEV #アウディ #アリア #タイカン #テスラ #ブリッツ #ポルシェ #ミニキャブ・ミーブ #モデル3 #三菱 #日産 #東京オートサロン2023 #福田雅敏
TEXT:福田 雅敏
[THE視点]現役エンジニアがチェックするソニー・ホンダモビリティ「アフィーラ」の途中経過

ソニー・ホンダモビリティ(以下、SHM)は「CES 2023」でEVブランド「アフィーラ」を発表し、そのプロトタイプを公開した。 「アフィーラ(AFEELA)」の名前の由来は、モビリティ体験の中心に在る“FEEL”を表したものだという。プロトタイプのコンセプトは、3A(Autonomy, Augmentation, Affinity)の具現化だ。 加減速やハンドリングなどの物理的性能に加え、「モビリティの価値がソフトウェア、ネットワーク、インターフェイスに代わっていく」と定義し、アフィーラの外観的な特徴として「メディアバー」を紹介。知性を持ったモビリティが光で語りかけるイメージで、フロントグリルに位置し「クルマの外側とコミュニケーションできる」ものだという。 スタイリングは、先に発表済みのVISION-Sより大人しく感じられた。これは多数搭載されたセンサー類が無駄なく機能を発揮するように、死角をなくすためではと推測する。

TAG: #アフィーラ #ソニー・ホンダモビリティ #福田雅敏
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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