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前回は電動化という混沌とした時代において、自動車メーカーのクルマ作りが、プラットフォームを電気自動車(BEV)とガソリン車(ICE)で共有するべきか、それぞれに専用のものを用いるべきかという話をした。今回は西川 淳氏に「プラットフォーム共有派」のBMWに乗って感じたことを語ってもらった。
もはやBEV寄りの設計がメインか
前置きが長くなってしまった。今回はBEVとICEでプラットフォームを共有するパターンの雄、BMWの最新モデルである「X1」シリーズ(iX1を含む)を試乗して、いよいよBEVがICEの魅力を、「エンジンのBMW」車でさえ、上回ってきたのではないか、と思った話をしてみたい。
初期の共有モデル、「4シリーズ」や「X3」では実際にBEVとICEを乗り比べてみたところ、個人的に商品としての魅力ではICEグレードの方がまだ優っていると感じた。「7シリーズ」では「i7」の仕上がりに衝撃を受けたものの、それでも悩んだすえに選ぶならICEグレードだと結論づけた。BMWってやっぱりエンジンあってナンボのもんやね、そう思った反面、BEVの仕上がりが劇的に良くなりつつあることもまた感じていた。
そして新型X1だ。このモデル、BMWにとっては不慣れなFFをベースに改良を重ねて今日に至ったわけだが、新型のICEグレードはブランドのエントリーモデルとして十二分に通用する乗り味にまで仕上げてきた。
その上でBEVグレードに乗れば、これがもう完全にICEを上回るクルマになっている。共有設計に臨む姿勢がまるでBEVよりになったかのようだ。最近のICEは効率化重視でBMWといえども容易には官能性を表現できない。燃費のために走るようなエンジンであればいっそ電気モーターでも、と思うのがクルマ運転好きの思考というものだろう。
出だしのしなやかな動き、街中でのアクセルペダルの扱いやすさ、応答に優れたハンドリングの確かさ、高速走行時の安定感、そして全体を通じての爽快感など、どれをとってもBEVグレードはICEグレードを超えている。
繰り返しになるけれど、BMWグループは電動化に最も熱心なブランドだ。意外にも聞こえるが、エンジンに熱心である以上に他の動力源にも熱心だ。例えばFCEVへの取り組みでいうと、日本のトヨタと並ぶ本気度を見せている。“駆け抜ける歓び”は彼らのクルマ造りの信条で、その実現と発展に寄与するのであればICEに拘らない。シルキー6によって歓びが生まれたのではない。歓びのクルマにシルキー6が積まれていただけなのだ。