トヨタは11月13日から「クラウンセダン」を発売すると発表した。パワートレインは、燃料電池車(FCEV)とハイブリッド(HEV)が用意される。さっそく詳細をみていこう。
新生「クラウン」の3タイプ目の登場
今回発表されたクラウンセダンは「クロスオーバー」「スポーツ」に次ぐ3タイプ目だ。最後に4タイプ目の「エステート」を残すのみになった。
セダンのFCEVとHEVは、ともにZのみのモノグレードで、税込価格はFCEVが830万円、HEVが730万円と発表された。
全長5,030mmの大柄ボディにもかかわらず、車重はFCEVが2,000kgにとどまっている。HEVは2,020kgでその差はわずか20kgだ。
室内空間(室内長1,970mm、幅1,595mm、高1,135mm)は、FCEVとHEVで変わりはない。トランク容量は、FCEVが400L、HEVが450Lと50Lの差が出た。両車のシステムを写真で見比べると、FCEVは3本目の水素タンクがリヤアクスルより後にあるので、この差ではないかと思われる。
FCEVの2トンを軽いと感じるのは、最近のBEV(バッテリー電気自動車)の重さに慣れていたことが原因だろう。全長が4,970mmとほぼ同じメルセデス・ベンツEQE 350+(セダン)は、2,390kgと、その差は390kgにも及ぶ。
クラウンセダンの室内をBEVと比較した場合に、明確に不利な点は、後席のセンタートンネルの出っ張りだ。“伝統的な”この出っ張りのせいで後席間の移動はしにくく、真ん中の乗員は足の置き場に困る。しかしほとんどの場合、乗員は4人までだろうから問題になる場面は少ないだろう。
クラウンは、先代の15代目から6ライトウインドーを採用し、ルーフラインのなだらかさが際立っていたが、この16代目のセダンはさらにルーフが伸ばされた。
先代はかろうじてルーフがトランク手前に着地し、そこからトランク上面は若干後端に向けて上方にはねあげられている形状だった。新型では完全にトランク後端にルーフが交わる。空気抵抗の低減に効きそうな形状だ(Cd値は不明)。
その影響か、トランクの開口部上端がリヤガラスに食い込んでいることに、このデザインを成立させるための工夫が見える。
FCEVの一充填走行距離は820km(参考値)と発表された。充填にかかる時間は3分だ。HEVは、燃費(18.0km/L、WLTCモード)とタンク容量(82L、レギュラー)をかけると、推定航続可能距離は1,476kmになるので、ハイブリッドの凄さを改めて感じる。
FCEVのモーター出力は134kW(182ps)、トルクは300Nm(30.6kgm)だ。HEVはシステム出力は180kW(245ps)。システムトルクは不明だが、エンジンは225Nm(22.9kgm)、モーターは300Nm(30.6kgm)と発表されている。
両車でどれほどドライブフィールが違うのか気になるところだ。
MIRAIはこのままフェードアウトか?
これまで2世代にわたりトヨタのFCEVとして存在していたMIRAIはこの先どうなるのだろうか?
クラウンセダンとは、ボディ形状も乗車定員も一緒。クラウンの方がよりフォーマルな雰囲気もあるので、もしかするとMIRAIはこのままフェードアウトとなるのかもしれない。
ただ、燃料電池技術は、バス、トラック、建機、船舶へと、クルマ以外にも大きく広がったように、十分に水素が実現できる「未来」を見せてくれたように思う。
今回のクラウンセダンに続くFCEVモデルのデビューに期待したい。
クラウンセダン FCEV