田中 誠司 記事一覧

TEXT:田中 誠司
マンションの自分の駐車枠でも設置費用および月額費用ゼロ……エネチェンジが「マンション専用車室ゼロプラン」の提供を開始

ENECHANGE(エネチェンジ)株式会社は3月9日、国の補助金を活用した「マンション専用車室ゼロプラン」の提供を開始すると発表した。 居住者専用の駐車枠でも“ゼロプラン”活用可能に “専用車室”とは、マンションの住民等が専有する駐車場枠のこと。従来は来客用等マンションの共用部にあるスペース、つまり不特定多数が利用する可能性がある場所への設置のみ「ゼロプラン」の設定があったが、特定の契約者の駐車枠でも利用が可能になる。2022年11月に発表した、壁に直付けする方式でも設置可能なマンション向け6kW充電器「チャージ3」を利用する。 マンションへの充電器設置には、一般的なケースの場合、管理組合、管理会社、賃貸オーナーが機器費用、設置費用といった初期投資に加えて電気料金を負担しなければならない。「マンション専用車室ゼロプラン」の場合、利用者が1kWhあたり約36円(東京都の場合)の充電費用を支払い、その中から電気代が物件の所有者に還元される。 東京都内で都の助成金の要件を満たしたマンションにおいて本プログラムを利用した場合は、電気料金の基本料金も無料となる。つまりマンション管理サイドでは一切出費なく充電器を設置できることになる。

TAG: #エネチェンジ #充電 #補助金
TEXT:TET編集部
賃貸住宅大手「大東建託」が電気自動車充電設備の充実に乗り出す 独自に充電設備導入基準を策定

大東建託株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:小林克満)は、同社が提供する賃貸住宅への電気自動車(EV)充電設備導入基準を策定した。1月より全国でEV充電設備を備えた賃貸事業の提案を開始している。賃貸住宅に入居する人々に対するEV充電インフラが整うことで、車の購入時に選択肢が増え、EVの普及促進に貢献する。 賃貸住宅の入居者がEV所有を自由に選択できる住環境を目指し、EV充電インフラを整備 日本では都市部・郊外部に賃貸住宅が多く、その設備の改修が難しいことから、EV普及につながるインフラ整備の課題とされていた。 近年高まりつつある賃貸住宅オーナーからのEV充電設備導入要望に対し、大東建託ではこれまで充電設備の設置に明確な基準は持たず、個別対応をしていた。今回新たに、各住戸に連動した住戸毎のEV充電設備の導入基準を策定することで、よりスムーズにEV充電インフラが整備できるようになるという。同社では入居者のEV所有率向上に貢献することで、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速させていくとしている。 株式会社市場経済研究所「2022年版全国住宅・マンション供給調査企業別ランキング」(2021年7月発行)によれば、大東建託の賃貸住宅供給力は「住宅供給実績12回連続1位」と影響度が高く、EV充電環境の整備に取り組むことで、賃貸住宅入居者層のEV普及促進に貢献することが期待できる。 東京都では2025年4月よりEV充電設備等の設置義務化が開始 なお2030年までに乗用車の新車販売台数に占めるZEV割合を50%にする目標を掲げた東京都では、2025年4月より、大手の住宅メーカーである特定供給事業者に対し、都の基準に適合したEV充電設備・断熱・省エネ性能、再エネ設備(太陽光パネル)の設置を義務づける。 同時に2000m2未満の中小規模建物においては、充電設備の整備基準(義務)が設けられる予定。駐車場付き戸建住宅1棟ごとに充電設備用配管等を整備すること、10台以上の駐車区画を有する集合住宅やビルの場合、実装基準は1台分以上、配管等整備(先行配管)は駐車区画の20%以上となる。

TAG: #充電 #大東建託 #東京都 #集合住宅
TEXT:田中 誠司
BMWがスモール・コンパクトSAV「iX1」を日本に導入

BMWジャパンは2月17日、同社のスモール・コンパクト・セグメント初の電気自動車(EV)として「iX1」(668万円)を販売開始した。納車は2月下旬を予定。 「iX1」は「X1」プラス112万円で提供 「iX1」は同時に発売されたガソリンエンジンモデルの「X1」と基本構造を共用する。BMWジャパンのBMWブランド・マネジメント本部長を務める遠藤克之輔氏は、「Xモデルは現在8つのラインナップを持ち、BMWジャパンの年間販売3万台のうちの3分の1を占める」と期待を込める。 ガソリンエンジンモデル「X1 xDrive20i」(150kW/300Nm)との価格差は112万円。前後アクスルそれぞれにモーターを備える「iX1 xDrive30」はシステム総合出力200kW/494Nmのパフォーマンスを誇り、よりパワフルな上位モデルと位置づけられる。 66.5kWhのリチウムイオン・バッテリーを搭載し、航続距離は465km(WLTCモード)。車重はX1より390kg重い2,030kgに達するが、停止から100km/hまで5.6秒で加速できる。 8kWのBMWウォールボックスを使った普通充電の場合、残量10%から80%まで6時間半で到達する。90kWの高速充電では同じく10%から80%まで47分、10%から55%までは30分で蓄電できる。 iX1の発売に合わせて、BMWは公共充電施設やディーラーでの充電費用、メインテナンス、車検サポートなどを含む包括的リースプランである「iライフ・パッケージ」の展開を開始する。“充電無制限”が含まれるリース・パッケージは日本市場において業界初の試みであるという。4年契約/年間規定距離6,000kmのプランで月額57,700円とされる。

TAG: #BMW
TEXT:田中 誠司
「大阪オートメッセ2023」に見るEV最新事情

20万人以上の来場者を集める盛況のうちに幕を閉じた「大阪オートメッセ2023」(インテックス大阪)。2月10日(金)〜2月12日(月)の週末、EV(電気自動車)関連の盛り上がりはどうだったのだろうか。会場を隅々まで観察してみた。 EVゾーンは「多士済々」 コロナ禍で縮小を強いられた前回オートメッセから大幅に規模を拡大した今回、目玉のひとつが「EVゾーン」の設置だったことはイベント開催に先立つ記事でも記したとおり。日系メーカー、海外メーカー、チューニングパーツメーカー、超小型EVメーカーと、バラエティに富んだ出品となった。 市販モデルでは日本メーカーから三菱「ekクロス EV」、マツダ「MX-30 EV」、日産「サクラ」「アリア」、海外メーカーからはフォルクスワーゲン「ID.4」、BMW「i7」「i4」、BYD「アット3」、ヒョンデ「アイオニック5」の実車が集い、それぞれのサイズ感やデザイン、クオリティの違いを間近で比較することができた。 チューニングパーツメーカーからは「ブリッツ アリア」、クスコ「テスラ モデル3」、「A PIT東雲オリジナルテスラモデル3」が出品され、それぞれエアロパーツやホイール、サスペンションシステムなどドレスアップの可能性を示した。EVは加速性能などのチューニングを行なうことは難しくないが、バッテリーの耐久性などに影響があるかどうかの検証が難しいためそう簡単にはパワーユニットに手を出せないのが目下の課題であるという。 超小型EVも、むしろそのコンパクトさから会場で存在感を示していた。KGモータース「ミニマムモビリティコンセプト」は税込み100万円を切る価格を目標とし、EVランドの3輪EV「ジンマ」「ジンマプロ」は77万円スタートでハイエンドモデルでも104万5000円、昔のジープのような姿が懐かしいブレイズ「ネクストクルーザーEV」は64万6800円と、全般に安価であることがコスト感覚の鋭い関西人の注目を集めていたようだ。

TAG: #BYD #KGモータース #テスラ #ブリッツ #大阪オートメッセ2023 #超小型EV
TEXT:田中 誠司
BBSが電気自動車をターゲットとした鍛造ホイール専用・新素材合金「フォルテガ」を発表

BBSジャパンは「東京オートサロン2023」で、EVへの装着を前提としたアルミニウム合金系の新素材「フォルテガ」(FORTEGA)を使用する鍛造ホイールのコンセプトモデルを発表した。ポルシェ・タイカンに装着されて登場した新素材の特徴は、高性能EVの要求水準をクリアしつつ軽量化が可能な「強靭さ」だ。 ホイールの軽量化で電力消費大幅低減! BBSといえば、高圧でプレスを施して強い金属組織を作り出す鍛造ホイールが世界的に著名であり、2022年からはF1世界選手権において同社製のマグネシウム合金鍛造ホイールが全チームに独占供給されていることでも知られる。 大容量のバッテリーを搭載したEVは、同じ外寸のガソリン車に比べて20〜30%車体が重くなるケースが珍しくない。さらにEVの中でも高性能なモデルでは、モーターの最大トルクが内燃機関車では到達できないほど高いケースもある。当然、ホイールにかかる荷重も大きくなる。 さらにBBSジャパンの調査では、ホイールの軽量化によって車両の燃費や電力消費を抑えることも可能だという。同社があるBEVで実験したところ、1本当たり16kgの純正ホイールを装着した場合に比べ、1本あたり9kgのBBSホイールを履かせた場合のほうが航続距離が8%も伸びるという結果を得たという。タイヤ+ホイールの慣性重量が減ることで、走行抵抗が低減して加速に伴うエネルギー消費が少なく済み、回生ブレーキの効率も高まるのが原因だろう。 これらの背景から、BBSジャパンでは従来のアルミニウム合金や超超ジュラルミン(アルミニウムを主に亜鉛、マグネシウム、銅を配合)よりさらに強度の高いアルミニウム系合金素材を新開発。「強い合金」という意味合いから「フォルテガ」と名付けた。 フォルテガは特に強度を高めた配合の合金で、詳細までは明らかにされなかったが添加物としてケイ素を多く含むのが特徴だ。主成分であるアルミニウムの間に添加物をうまく散在させることで強度を高めており、従来のアルミ鍛造ホイールと同じ剛性を保ったままで10%の軽量化を図ることが可能になる。開発には約10年をかけたそうで、既存のたとえば航空向け高性能素材を転用するのではなく、BBSジャパンが自動車用ホイールのために独自の配合を編み出した。

TAG: #BBS #ホイール #東京オートサロン2023
TEXT:田中 誠司
[アウディQ4 e-tron試乗記]アウディの売れ筋BEVがついにローンチ その3 走りと今後の展開

アウディに対する期待をすべて満たすハードウェア 市街地を走り出して、最初に感じるのは静粛性の高さだ。パワートレインはむろんエンジン付きのクルマに比べて格段にスムーズで静か。路面状況の変化に伴うロードノイズの変動が少ないのは、最近設計されたブリヂストン・トゥランザENLIGHTENの特性と、入念な遮音対策の成果だろう。 最高出力は150kW/204ps。これに対して車重は2,100kgなので、加速力は必要にして充分というレベルに過ぎない。パワーウェイト・レシオでいえばひと昔前のトヨタ・カローラ程度だが、そう聞いて想像するよりも低速からのピックアップは鋭く充実していて、実用車に期待する水準としては十分以上なのではないか。 20インチ・タイヤの逞しい外観から想像する通り引き締まった乗り心地で、車高の高いSUVではありがちな、大きな入力に対して煽られて、車体の向きと操舵の方向が一致しないようなアンバランスさは見られない。 そうした市街地でのマナーを経験し、安心しながら高速道路へ進入するランプへと向かう。緩いカーブで速度を加減しつつ操舵のフィーリングを確かめてみると、後輪駆動プラットフォームならではのひらひらと思い通りに旋回するレスポンスを味わうことができた。前後重量配分は車検証上で48:52と後ろ寄りで、スポーツカー並みとまで表現するには至らないが、クルマ好きの心をつかむ自然な操縦性だ。 元来、アウディは前輪駆動もしくはそれをベースとする四輪駆動が主体で、路面の状況を繊細に伝えつつも高速道路ではどっしりとした直進性を示すモデルが多かった。Q4 e-tronはそうしたアウディの基準からするとビシッと腰の据わった感触が薄いとはいえ、精密に作られたステアリング機構と巧妙なアライメント設定の組み合わせで、高速クルージングを安心してこなすことが可能だ。 ステアリング機構といえば、大柄な車体サイズのわりに非常に小回りが利くことには驚かされた。フロントにエンジンなどが備わらないことを活かしてタイヤの最大切れ角はかなり大きく採られており、最小回転半径を5.4mと小さく設定できているのだ。「こんなところでUターンできるの?」と思うような狭い道でも一発で方向転換できる。ロック・トゥ・ロックは3回転に近く、ハンドルが半回転余計に回る感覚である。 全体として、Q4 e-tronのハードウェアや内外装の品質は、これまでの経験から600〜700万円クラスのアウディに期待する水準をすべて満たしている。既存のアウディ・ユーザーで、航続距離や充電などの心配がクリアできる人にとっては、価格も含め何の迷いもなくBEVに転向できると言っていいだろう。 クワトロを待つかどうかが課題 前述のとおり1年を超えるという納車までの待ち時間は、Q4 e-tronの購入を検討している人にとって悩ましい要素だ。またアウディジャパンからは何の発表もないが、すでに本国ではよりハイパワーで、フロントにモーターを加えた4WDシステムを備える「Q4 e-tron 45クワトロ」 (最高出力195kW)および「Q4 e-tron 50クワトロ」(同220kW)が発売されていることも念頭に置いておくべきかもしれない。 日本市場は当初後輪駆動の「40」のみのラインナップで始まったが、すでにQ4 e-tronが多数を受注していることを考えれば、そのグレード構成が将来的に拡充されるであろうことは間違いない。 アウディといえばクワトロ4WDの多用途性を楽しみたい、それに2トンを超える車体をスポーティに走らせるならもっとパワーがほしい、という意見も理解できる。本社のカタログデータを見比べたところ、「50クワトロ」の車重は「40」に対して85kg増えるものの、航続距離はわずか3%少ないだけだ。 スペック上で唯一、目立ったクワトロの弱点は、小回り性能が後輪駆動モデルに比べ劣ることだ。Q4 e-tron 40の最小回転直径は本国のデータで10.2mだが、フロントにモーターとその関連コンポーネンツが収まるQ4 e-tron 45/50クワトロでは11.5mに伸びてしまう。それにツインモーターとなれば、価格も「e-tronクワトロ(1070万円〜)」に近づくはず。敢えてクワトロの登場を待たず、リーズナブルな価格の後輪駆動モデルで発売したアウディ ジャパンの戦略は日本市場にはフィットしているのだろう。 Audi Q4 Sportback 40 e-tron S-line 全長:4,590mm 全幅:1,865mm 全高:1,630mm ホイールベース:2,765mm 車両重量:2,100kg 前後重量配分:前1,010kg、後1,090kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:145Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:594km(WLTCモード) 最高出力:150kW(204ps)/–rpm 最大トルク:310Nm(31.6kgm)/–rpm バッテリー総電力量:82kWh トランスミッション:1速固定式 フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式 リアサスペンション:マルチリンク式 フロントブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク リアブレーキ:ドラム タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20 最小回転半径:5.4m 荷室容量:520L 車体本体価格:7,160,000円

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TEXT:田中 誠司
[アウディQ4 e-tron試乗記]アウディの売れ筋BEVがついにローンチ その2 内外装

スポーツカー好きにもアピールするスタイリング 東京都の郊外、八王子駅にほど近い、真新しい公共施設でアウディQ4 e-tronの試乗イベントは行われた。プレゼンテーションを実施する広大なホールの中に十数台の試乗車が収められており、そこから搬送用の廊下を経てジャーナリストたちが公道での直接テストドライブに赴く。排ガスを出す内燃機関車の時代には考えられなかったシーンだ。我々に預けられた試乗車は「Q4 スポーツバックe-tron 40 Sライン」(716万円〜)。20インチ・タイヤを履く、最もスポーティなモデルである。 薄暗いホールの中で見るクールなカラーのQ4 スポーツバックは、全長4,590mmという数字から想像するよりも大きく感じられた。大きなタイヤを四隅に配し、ベルトライン(サイドウィンドウとドアの境目)も高い位置にあるから、かなり嵩高くマッシブで、第三者的な視点では近寄りがたい印象すら受ける。 そうしたボリューム感に加えて、フロントとリアのフェンダーにはそれぞれ深いキャラクターラインが彫り込むように加えられている。ファストバック風に弧を描くルーフから下りてきたリアエンドには、ダックテール風に跳ね上がったスポイラーも備わる。スタイリッシュさを重視してスポーツカーを乗り継いできたようなクルマ好きをもエキサイトさせるような外観だ。 インテリアもまたスポーティだ。小径のステアリングホイールは上下をストレートにカットされており、グリップの部分にはパンチング・レザーが巻かれる。エアコンのアウトレットはシャープな造形とされ、中央のメイン・モニターは若干ドライバーの方へ傾けて設置されている。 座ってみると広い後席 ルーフライン後方を絞り込んだQ4 スポーツバックe-tronは、室内も黒一色だったため広々とした印象とまでは言えないものの、前席頭上はアーチ状のルーフラインのため十分余裕があり、かつ後席に座ってみると前席までの距離はかなり広く取られていて、身長171cmの筆者が適切な運転姿勢で前席のポジションを決めて後席に移った場合、ひざ前には拳2個半ほどの空間が残される。さらに、動力を伝えるシャフトが室内には通っていないため、後席に3人乗っても中央の人が窮屈な思いをしなくて済むのがいい。 ラゲッジスペースは5人乗車でトノーカバーを被せた状態において520Lの容量を持つ。バックレストを倒せば1,490Lまで拡大可能だ。床面の長さは実測で88cm、幅は最も狭いところで98cm、広いところで130cmであった。 アウディの通例どおりパッケージングへの配慮も入念なQ4 e-tronだが、フロントのボンネットの下にはパワーステアリング等の補機類しか収まらないにもかかわらず、荷物を載せられるスペースになっていないのは意外だった。兄貴分のアウディe-tronやe-tron GTでは小さいながらもラゲッジスペースが設けられているので、Q4にも拡大してもらえればユーザーは喜ぶだろう。 ピアノブラックのパネルに置かれたスライド式スイッチからDレンジを選び、アウディQ4を発進させる。周囲の歩行者に危険を知らせる低い唸りが発進加速時には発せられる。がっちり作られたドイツ車らしさを想起させるサウンドだ。 Audi Q4 Sportsback 40 e-tron S-line 全長:4,590mm 全幅:1,865mm 全高:1,630mm ホイールベース:2,765mm 車両重量:2,100kg 前後重量配分:前1,010kg、後1,090kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:145Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:594km(WLTCモード) 最高出力:150kW(204ps)/–rpm 最大トルク:310Nm(31.6kgm)/–rpm バッテリー総電力量:82kWh トランスミッション:1速固定式 フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式 リアサスペンション:マルチリンク式 フロントブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク リアブレーキ:ドラム タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20 最小回転半径:5.4m 荷室容量:520L 車体本体価格:7,160,000円

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TEXT:田中 誠司
[アウディQ4 e-tron試乗記]アウディの売れ筋BEVがついにローンチ その1 車両概要

発売を待たずにヒット決定 620万円〜という、高級実用車としてある程度現実的な価格、扱いやすそうなサイズ、人気のボディタイプであるSUVという要素の組み合わせで、昨年1月の日本導入発表以来市場の注目を集めたアウディの新型EV「Q4 e-tron」。EV需要の急速な高まりという波にも乗って、発売された昨年11月の段階で受注数が日本市場に対する年間割当台数である2000台を超えたという。インターネット上のユーザーの声を拾うと、運良くキャンセル待ちに当たらない限り、2023年初めに注文しても納車は2024年になってしまうらしい。 2021年の日本におけるBEV(内燃機関を持たない純粋な電気自動車)の販売台数は約2万1000台で、アウディ車全体の日本販売台数が約2万5000台。テスラが2021年までに日本で販売した「モデルS」の総数が2000台未満だという。つまりこの2000台は、市場におけるインパクトがかなり強い数字と表現してよいだろう。 アウディジャパンは、2026年以降は内燃機関を備えた新型車を発表せず、2033年以降は内燃エンジンの生産を段階的に廃止する、というアウディ ドイツ本社の方針を背景に、電気自動車へのシフトを明確に打ち出してきた。発売の10ヵ月も前から全国でQ4のプレローンチ・イベントを実施し、ディーラー来店者が実車に触れられる数多くの機会を設けたほか、インポーターとして再生可能エネルギーの活用をサポートするなど、サステイナビリティ最優先の方針を消費者に訴えてきた。 ユーザーにとってメリットが大きいのは、同じくVWグループに属するフォルクスワーゲンおよびポルシェと協力して、90kWレベル以上の急速充電器を利用できる機会をできるだけ多く提供する枠組み「プレミアム・チャージング・アライアンス(PCA)」を利用できることだ。3つのブランドが各ディーラーの充電設備を共有する取り組みで、全国合計約210のディーラーにおいて急速充電器の相互利用が可能になった。 これらアウディジャパンの施策が奏功し、すでにして非常に手に入れにくくなってしまった「Q4 e-tron」だが、アウディは2024年までに15ものBEVモデルを発表するとしているから、買いそびれてしまったな、と残念に思っている人も他の新着モデルを天秤にかけながら悩む楽しみを味わってみてはどうだろうか。 後輪駆動プラットフォームを採用 続いてQ4 e-tronのハードウェアの構成について紹介していこう。Q4 e-tronはアウディとして初めてVWグループの電動車専用プラットフォーム「MEB」(Modularer E-Antriebs-Baukasten)を採用。最高出力150kW(204ps)、最大トルク310Nmの「EBJ」型モーターはラゲッジスペースの下に置かれて後輪を駆動する。変速機は1段固定レシオ。2,765mmと長く採ったホイールベースの間の床面に288セル、82kWhのリチウムイオン・バッテリーが敷き詰められたレイアウトだ。 ボディサイズはベースモデルである「Q4 40 e-tron」が全長4,590×全幅1,865×全高1,630mm。クーペ・ライクな丸みを帯びたルーフラインを持つ「Q4 スポーツバック 40 e-tron」は全高が15mm低く、スポーツサスペンションを備える「Sライン」はそれぞれさらに15mm低く構える。 サスペンションはフロントがマクファーソン・ストラット式、リアがマルチリンク式。ということはポルシェ911と同じなのか? と思って調べてみると、911のリアサスペンションがトレーリングリンクを持つ5リンク式なのに対し、アウディQ4はダブルウィッシュボーンに近い4リンク式だった。ブレーキはフロントがベンチレーテッド・ディスクで、リアはドラム式とされる。コストダウンなのかとおもいきや、ドラムブレーキはディスク式と違って引きずり抵抗が少なく、加速にも燃費にも有利なのだという。タイヤはフロントが235、リヤが255と、前後で異なるサイズが選択されている。 Audi Q4 Sportback 40 e-tron S-line 全長:4,590mm 全幅:1,865mm 全高:1,630mm ホイールベース:2,765mm 車両重量:2,100kg 前後重量配分:前1,010kg、後1,090kg 乗車定員:5名 交流電力量消費率:145Wh/km(WLTCモード) 一充電走行距離:594km(WLTCモード) 最高出力:150kW(204ps)/–rpm 最大トルク:310Nm(31.6kgm)/–rpm バッテリー総電力量:82kWh トランスミッション:1速固定式 フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式 リアサスペンション:マルチリンク式 フロントブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク リアブレーキ:ドラム タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20 最小回転半径:5.4m 荷室容量:520L 車体本体価格:7,160,000円

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TEXT:田中 誠司
アウディと組んだ「パワーエックス」の野望

1月20日に実施されたアウディジャパンの2023年年頭記者会見において、同ブランドの高速充電設備に関する株式会社パワーエックスとの事業提携が発表された。両企業はアウディ・ディーラーにおける蓄電池搭載型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー」の導入と、いわば現在のガソリンスタンドに代わって充電の拠点となる「チャージングハブ」の共同運営について協業の検討を開始する。 株式会社パワーエックスとはどんな会社なのだろう。多くの人にとって聞き慣れない名前なのは当然で、2021年3月に設立されたばかりの若い会社だ。しかしすでに資金調達総額は99億円におよぶという。 出資元のリストには三菱UFJ銀行などのメガバンク、三井物産や伊藤忠商事などの総合商社、森トラストなどの不動産会社、今治造船や日本郵船といった船舶関連会社、四国電力、関西電力グループ、J-POWERなどの電力会社を含む錚々たる大企業が並ぶ。 EV急速充電は再生エネルギー活用のひとつの手段に過ぎない 今回発表されたのは電気自動車の高速充電に関する事業だが、パワーエックスの事業の核となるのは大容量の蓄電池を利用した、再生可能エネルギーの有効活用だ。 2021年の時点において日本における発電量に占める再生可能エネルギーの割合は19%と、いわゆる先進国の中で高いレベルではない。しかしそこからおよそ10年を経た2030年には、その割合はほぼ倍の37%まで増加すると見込まれている。火力発電と比較した場合の発電コストも技術の進歩に伴い低下すると目されている。 再生可能エネルギーは太陽光、風力、地熱など地球が生み出すエネルギーを利用するのでほとんどCO2を排出せず、カーボンニュートラルに大きく貢献する。しかし問題は、それらを生み出す場所が電力の大量消費地である都市部から離れた地域にあるケースが多く送電にコストや損失を伴うこと、そして日本において今後さらに成長が見込まれる太陽光発電は昼間にしか発電できないため、そのままでは夜間の電力需要に対応できないことだ。 パワーエックスはEV用高速充電設備「パワーエックス・ハイパーチャージャー」では300kWh、定置用蓄電池「パワーエックス・メガパワー」(下写真)では3000kWhにおよぶ、大容量のリン酸鉄バッテリーを用いて再生可能エネルギーの課題を解決しようと取り組んでいる。 一般的なEV用高速充電設備においては、高圧線から6,600Vで送電を受ける契約を電力会社と結び、「キュービクル」という変電設備によって200〜400Vに落としたうえで直接、自動車に充電する。パワーエックス・ハイパーチャージャーの場合は50kW以下の商用低圧契約でバッテリーを充電しておき、そこから最大240kWの超急速充電を行なうことができる。 低圧電力で常に電力を貯めておき、必要なときに一気に出力することで再生可能エネルギーを有効活用する。大容量のバッテリーを要するので通常の急速充電器より若干、初期投資は嵩むが、ランニングコストが低いため長期的に回収が可能だという。

TAG: #アウディ #パワーエックス
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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