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[アウディQ4 e-tron試乗記]アウディの売れ筋BEVがついにローンチ その3 走りと今後の展開


TEXT:田中 誠司 PHOTO:交通タイムス社
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アウディに対する期待をすべて満たすハードウェア

市街地を走り出して、最初に感じるのは静粛性の高さだ。パワートレインはむろんエンジン付きのクルマに比べて格段にスムーズで静か。路面状況の変化に伴うロードノイズの変動が少ないのは、最近設計されたブリヂストン・トゥランザENLIGHTENの特性と、入念な遮音対策の成果だろう。

最高出力は150kW/204ps。これに対して車重は2,100kgなので、加速力は必要にして充分というレベルに過ぎない。パワーウェイト・レシオでいえばひと昔前のトヨタ・カローラ程度だが、そう聞いて想像するよりも低速からのピックアップは鋭く充実していて、実用車に期待する水準としては十分以上なのではないか。

20インチ・タイヤの逞しい外観から想像する通り引き締まった乗り心地で、車高の高いSUVではありがちな、大きな入力に対して煽られて、車体の向きと操舵の方向が一致しないようなアンバランスさは見られない。

そうした市街地でのマナーを経験し、安心しながら高速道路へ進入するランプへと向かう。緩いカーブで速度を加減しつつ操舵のフィーリングを確かめてみると、後輪駆動プラットフォームならではのひらひらと思い通りに旋回するレスポンスを味わうことができた。前後重量配分は車検証上で48:52と後ろ寄りで、スポーツカー並みとまで表現するには至らないが、クルマ好きの心をつかむ自然な操縦性だ。

元来、アウディは前輪駆動もしくはそれをベースとする四輪駆動が主体で、路面の状況を繊細に伝えつつも高速道路ではどっしりとした直進性を示すモデルが多かった。Q4 e-tronはそうしたアウディの基準からするとビシッと腰の据わった感触が薄いとはいえ、精密に作られたステアリング機構と巧妙なアライメント設定の組み合わせで、高速クルージングを安心してこなすことが可能だ。

ステアリング機構といえば、大柄な車体サイズのわりに非常に小回りが利くことには驚かされた。フロントにエンジンなどが備わらないことを活かしてタイヤの最大切れ角はかなり大きく採られており、最小回転半径を5.4mと小さく設定できているのだ。「こんなところでUターンできるの?」と思うような狭い道でも一発で方向転換できる。ロック・トゥ・ロックは3回転に近く、ハンドルが半回転余計に回る感覚である。

全体として、Q4 e-tronのハードウェアや内外装の品質は、これまでの経験から600〜700万円クラスのアウディに期待する水準をすべて満たしている。既存のアウディ・ユーザーで、航続距離や充電などの心配がクリアできる人にとっては、価格も含め何の迷いもなくBEVに転向できると言っていいだろう。

クワトロを待つかどうかが課題

前述のとおり1年を超えるという納車までの待ち時間は、Q4 e-tronの購入を検討している人にとって悩ましい要素だ。またアウディジャパンからは何の発表もないが、すでに本国ではよりハイパワーで、フロントにモーターを加えた4WDシステムを備える「Q4 e-tron 45クワトロ」 (最高出力195kW)および「Q4 e-tron 50クワトロ」(同220kW)が発売されていることも念頭に置いておくべきかもしれない。

日本市場は当初後輪駆動の「40」のみのラインナップで始まったが、すでにQ4 e-tronが多数を受注していることを考えれば、そのグレード構成が将来的に拡充されるであろうことは間違いない。

アウディといえばクワトロ4WDの多用途性を楽しみたい、それに2トンを超える車体をスポーティに走らせるならもっとパワーがほしい、という意見も理解できる。本社のカタログデータを見比べたところ、「50クワトロ」の車重は「40」に対して85kg増えるものの、航続距離はわずか3%少ないだけだ。

スペック上で唯一、目立ったクワトロの弱点は、小回り性能が後輪駆動モデルに比べ劣ることだ。Q4 e-tron 40の最小回転直径は本国のデータで10.2mだが、フロントにモーターとその関連コンポーネンツが収まるQ4 e-tron 45/50クワトロでは11.5mに伸びてしまう。それにツインモーターとなれば、価格も「e-tronクワトロ(1070万円〜)」に近づくはず。敢えてクワトロの登場を待たず、リーズナブルな価格の後輪駆動モデルで発売したアウディ ジャパンの戦略は日本市場にはフィットしているのだろう。

Audi Q4 Sportback 40 e-tron S-line

全長:4,590mm
全幅:1,865mm

全高:1,630mm
ホイールベース:2,765mm
車両重量:2,100kg
前後重量配分:前1,010kg、後1,090kg
乗車定員:5名
交流電力量消費率:145Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:594km(WLTCモード)
最高出力:150kW(204ps)/–rpm
最大トルク:310Nm(31.6kgm)/–rpm
バッテリー総電力量:82kWh
トランスミッション:1速固定式
フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式
リアサスペンション:マルチリンク式
フロントブレーキ:ベンチレーテッド・ディスク
リアブレーキ:ドラム
タイヤサイズ:前235/50R20、後255/45R20
最小回転半径:5.4m
荷室容量:520L
車体本体価格:7,160,000円
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