コラム
share:

日本のEV普及も「トランプ次第」か? 世界的に「政治利用」されるEVの未来


TEXT:桃田健史 PHOTO:TET 編集部/写真AC
TAG:

イーロン・マスクが政府効率化省のトップに

多くの日本人にとっては想像できなかった「まさか!」のトランプ第二次政権が2025年、ついに動き出す。

そうなると、「EVはどうなるの?」と思う人がいるかもしれない。なにせ、バイデン政権下で全米各地で政治活動を続けてきたトランプ氏は、EV普及に対して否定的な発言が目立ったからだ。

一方で、大統領選挙期間中にテスラのイーロン・マスク氏と急接近。マスク氏はトランプ氏の選挙活動資金として巨額の寄付をしたとされている。そのため、トランプ氏のEVに対する考え方は変化するのではないか、と思った人も少なくないだろう。

イーロン・マスク氏

それどころか、驚くことに2者の関係は、マスク氏の政権入りにまで及んだ。役職は、デパートメント・オブ・ガバメント・エフィシェンシー(政府効率化省)のトップである。

マスク氏(長官)の立場から見れば、連邦政府関連の機関で、自身のビジネスとは、DOT(デパートメント・オブ・トランスポーテーション:運輸省)、EPA(エンバイロメンタル・プロテクション・エージェンシー:環境保護局)、NHTSA(ナショナル・ハイウェイ・トラフィック・セイフティ・アドミニストレーション:運輸省道路交通安全局)、DOE(デパートメント・オブ・エネルギー:エネルギー省)、そしてスペースXとの関係があるFAA(フェデラル・エヴィエーション・アドミニストレーション:連邦航空局)などとの関係がある。

こうした各方面に対して、トランプ大統領の意向として、マスク氏が政策や規制に大ナタを振ることも十分考えられる。ただし、あまりにも露骨な方法を取ると、まさに公私混同であり、テスラやスペースXへの利益誘導と世間からいわれかねない。

スペースX

それでも、マスク氏が政権入りすること自体が、日本人の想像を超えるものであり、これがアメリカの現状だといわざるを得ない。つまり、トランプ第二次政権において、EVの行方を予想することは極めて難しい。

たとえば、燃費規制についてだ。トランプ第一次政権では、EPAが全米50州を燃費規制を統一し、EV普及の主導的立場を取ってきたカリフォルニア州を牽制したが、第二次政権で同じ策を講じるのか? CAFE(企業別平均燃費)をどう扱うのか? また、EVなど電動車普及率について、バイデン政権が掲げた数値をどう変えるのか? そして、電動車のアメリカ国内生産を基本とし、関連部品の輸入についてはアメリカとの同盟関係国との関係を考慮するという、IRA(インフレ抑制法)をどうするのか? IRAは実質的な対中政策であるため、中国に対して強固な姿勢を示すトランプ第二次政権にとっては維持するべきか、一部改良するのか、それとも新法に切り替えるのか?

アメリカのイメージ

EVの普及のカギといえば、一般的には、生産コスト、航続距離、そして充電インフラが3本柱といわれる。

だが、現実は違う。2020年代の世界の動きを見れば、アメリカと中国の政治的な動きに、欧州が挟まれるような格好のなかで、EVは次世代の経済政策としての「ひとつのコマに過ぎない」という印象があるからだ。

はたして、トランプ第二次政権は外交の場で、EVをどう使うのか? それにより、アメリカ、欧州、中国、そして日本でのEV普及に影響が及ぶことになりそうだ。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
ブレーキダストを封じ込めて環境対策! メルセデス・ベンツが開発したEVならではの技術「インドライブ・ブレーキ」ってどんなもの?
ヒョンデの魅力を日本に伝える新たな拠点! 「ヒョンデ みなとみらい 本社ショールーム」がグランドオープン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
more
ニュース
スバル・ソルテラに兄貴分が現れた! 新型スバル「トレイルシーカー」と改良版「ソルテラ」を世界初公開
世界中のジャーナリストを惹きつけた! ボルボのフラッグシップe-SUV「EX90」が2025ワールド・ラグジュアリー・カー賞を受賞
ブランド史上もっともパワフルな659馬力で「ラグジュアリーEV」最強宣言! ロールス・ロイスが「ブラックバッジスペクター」の日本導入を発表
more
コラム
寒い冬が苦手といわれる電気自動車! 逆に暑い夏はどうなる?
EVはリセールが厳しいの「噂」は本当か? 残価設定率から探ってみた
日本にいると「結局EVは浸透しなかった」と思われがちだがそれは特殊な市場! 海外では徐々にユーザーが増えている!!
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
more
イベント
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
売り物ではなく概念を展示するモデリスタ! 正体不明なトヨタbZ4Xはブランドの「新化」という概念を示すスタディモデルだった【大阪オートメッセ2025】
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択