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発電方法によってEVのエコ度合いが決まる
<国別で見るEVの実質的CO2排出量>
EVは、走行中にCO2を排出しないという点で環境に優しいとされる。しかし、EVの「真のエコ度」は、その電力がどのように生み出されているかに大きく左右される。たとえば、電力の多くが石炭や天然ガスで発電されている国では、EVが利用する電力には間接的に多くのCO2が排出されている。一方、水力や太陽光、風力などの再生可能エネルギーの比率が高い国では、EVのライフサイクル全体でのCO2排出量は非常に少なくなる。
具体的な数字で見てみよう。ガソリン車やディーゼル車などの内燃機関車(ICE車)の走行時CO2排出量は1kmあたり約147~176gとされる。一方、EVの場合は使用する電力の発電時のCO2排出量によって変わる。ノルウェーでは再生可能エネルギー比率が90%以上であり、EVの実質的CO2排出量は1kmあたり約10g未満と推計される。そのほか、ドイツではEVの実質的CO2排出量は1kmあたり約43g、フランスでは約7gと推計される。
対照的に、石炭火力発電の比率が高い中国では、EVの実質的CO2排出量は1kmあたり約70〜90g、インドでは約80〜100gと推計される。これはICE車よりは少ないものの、その差は欧州諸国ほど大きくない。さらにポーランドのように石炭依存度が約60%に達する国では、EVの環境優位性はさらに小さくなる。
日本の場合、現在のエネルギーミックスではEVの実質的CO2排出量は1kmあたり約55~59g程度と推計される。ICE車の3分の1程度であり、環境面でのメリットは確実にあるが、再生可能エネルギー比率を高めることでさらなる改善の余地がある。
<変化するエネルギーミックスとEVの将来>
重要なのは、エネルギーミックスは固定されたものではなく、各国の政策によって変化していくという点である。日本政府は2030年までに再生可能エネルギー比率を36〜38%に引き上げる目標を掲げており、実現すればEVの環境性能はさらに向上する。欧州各国も2035年までにICE車の新車販売を取りやめる決定をしており、同時に再生可能エネルギーの拡大を進めている。
つまり、EVは「いますぐにエコ」というだけでなく、「これからもっとエコになる」という特性がある。EVが本当にエコかどうかは、国ごとのエネルギーミックスにかかっているのである。ICE車の環境性能は車両の改良でしか向上しないが、EVは電力網の脱炭素化によっておのずと環境性能が向上していく。この点こそが、EVが長期的な環境対策として有効とされる理由である。

























































