多くのEVはワンペダルドライブが可能
電気自動車(EV)で、エンジン車とまったく異なる最大の機能は、減速時の回生だろう。回生とは、モーターと発電機が同じ機構であることから成り立つ機能だ。
モーターに電気を供給すると、駆動力を生み出す。そしてクルマが走る。鉄道では、これを力行と呼んでいる。
一方、走っているEVのモーターへ、電気の供給を止めると、速度という運動エネルギーがモーターに与えられることになり、モーターは発電機に切り替わり、回生をはじめる。
回生とは、生き返るという意味で、英語ではregeneration(リジェネレイション)といい、EVでは発電の意味になる。EVを走らせるため、モーターとして電気を消費したけれど、減速するときは回生によって電気が生み出されるので、生き返る……ということになる。
ただし、使った電気のすべてが生き返る=発電できる(戻せる)わけではない。
回生が働くとき、減速させる抵抗が生じる。それは、モーターを構成する回転子(ローター)と固定子(ステーター)が、それぞれ磁石として磁力をもち、互いに影響しあって回転を止めようと働くからだ。この抵抗による減速を、速度を下げるために使うのが、回生ブレーキと呼ばれる効果だ。そこから、アクセルだけのワンペダルによる運転操作が可能になる。
運転者が、停止線までの目測をあやまらず、適切にアクセルペダルを戻していけば、ブレーキペダルを踏むことなく停止できる。ただし、国産EVでは、停止できないよう行政指導が行われている様子で、回生の機能を活かしきれていない。
では、機能としてブレーキペダルを使わずに停止まで減速していけるなら、ブレーキは不要になるのか。
じつは、上手な回生の利用により、ペダル踏み替えを90%近く減らせるといわれる。EVではないが、EV技術を基にした日産のハイブリッドシステムであるe-POWERは、モーター駆動であるため、ワンペダル的な操作を可能にするe-POWERドライブを設けている。これを利用すると、ペダル踏み替えを70%減らすことができ、操作に熟練すれば90%近くに減らすことも可能だと日産は説明する。
そのうえで、回生+ブレーキホールドにより、停止まで可能な制御にすれば、運転中にブレーキペダルを踏んで減速や停止する場面は、限りなく減らすことができるだろう。
しかし、それは通常の運転をしている場合の話で、さらに、ワンペダル操作を身に着けた運転者の場合であって、ワンペダル操作に不慣れであったり、緊急の危険回避が必要であったりする際は、やはりブレーキの存在が不可欠だ。
電車が普及した鉄道でさえ、回生だけで運行されているわけではなく、車両には必ずブレーキ装置が備わる。