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EV時代はブレーキも多様化! 回生に加えて電動キャリパーやMR流体など新技術が続々検討されていた


TEXT:大内明彦 PHOTO:Continental/曙ブレーキ/TET編集部
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電気の力でブレーキシステムそのものが進化

さて、EV、HEV、PHEVのブレーキシステムだが、動力が電気ならブレーキも電気で、という発想が当然生まれてくる。というより、かつては唯一無二と考えられていた油圧によるブレーキシステムが、電気デバイスの進化によって電化が可能になった、と考えるべきだろう。電気ブレーキの利点は、油圧ブレーキと異なり配管系(油圧回路)、倍力装置などが不用で、システムを簡潔に構成できる利点がある。

もちろん、この電気ブレーキシステムは現在の内燃機関車にも応用可能だが、車両全体の構成を考えると、EVへの採用がより向いているといえるだろう。現状ではいつかの専業メーカーが独自の開発を進めている段階だ。

ブレーキバイワイヤのイメージ

まず、キャリパー内のピストンを押し出す(ブレーキパッドをディスクローターに押しつける)システムを油圧で動かすのはなく、電動モーターとボールネジを組み合わせて動かす「電動サービスブレーキキャリパー」が考えられている。油圧ブレーキで必要としたオイルラインや倍力装置が不用で、システムをシンプルに構成できるため、メンテナンスの簡易化や車両設計の自由度を引き上げられるという大きな利点をもっている。

曙ブレーキが開発を進める「MR流体ブレーキ」というまったくの新方式も存在する。MR流体とは「Magneto Rheological Fluid」のことで、ブレーキ内部に固定円盤とハブベアリングに同期して回転する円盤が交互に配置され、これら円盤の間にMR流体が充填されるブレーキだ。

このMR流体は、磁場が作用すると磁性体粒子のクラスターを形成し、回転円盤によって発生したせん断応力で制動力を生み出すシステムだ。このMR流体ブレーキは、機械式ブレーキの短所だったブレーキダストの発生、制動音、振動が発生しないため、EVのブレーキシステムとして有力視される新たな方式である。

MR流体ブレーキを搭載した試作車

EVやPHEVにとって、回生ブレーキによる発電(バッテリーへの充電)作用は最重要項目だが、ドライバーの意図どおりに車両を減速、停止させるためには従来型ブレーキとの併用も必要不可欠で、こうした状況下で電気モーターを使う電気ブレーキは、回生ブレーキと併せての電子制御が可能であり、制動効果を得ながら十分な充電量を確保できる方式として、今後も採用が増えていくことが確実視される新ブレーキシステムといえるだろう。

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