伝統を守りながらも革新性を備え未来を示唆する
このコンセプトカーにおいては、電動車両に求められる空力処理が入念になされている。フロントホイールアーチ直後にはふたつの大型エアアウトレットが設けられ、整流効果に加え車体のボリューム感を視覚的に分割。空力性能だけでなく、グラフィカルなアクセントとしての効果も与えている。
テールライトは細く引き締められ、テールボディを縁取るように配置される。これも空力的な要求にこたえるとともに、綿密な立体表現により奥行き感が演出されるなど、ラグジュアリーデザインとテクノロジーを高度に融合した結果として採用されたデザインなのだという。
むろんルーフ後端から展開するふたつのアクティブスポイラーや、車体下面のアクティブエアロディフューザーなど、空力性能と走行性能の両面に作用する機能パーツも搭載している。
EXP15には、レーダー機器に影響を与えない特性をもつ超極薄のアルミニウム顔料が、フロント部に初採用されている。これにより伝統的な造形を守りベントレーらしさを表現しながらも、自動運転技術に不可欠なLiDARなどのインストールに成功している。
このような工夫は外装だけに留まらず、内装にも言える。ある部分では1900年代前半に創業した老舗メーカーの格調高い素材を用いながらも、革新的な新素材や光の表現により、伝統と未来を高次元に融合し表現しているのだ。
EXP15はあくまでもデザインコンセプトであり、細かな技術仕様やプラットフォームは伏せられているが、2026年に登場予定のベントレー初の小型100%電動量産モデルを示唆する要素がエクステリアに取り入れられ、インテリアにおいても将来の量産モデルに活かせるような先進的なデジタル技術やユーザー体験のアイディアを提示している。
伝統を重んじながらも革新性を備えるのは並大抵のことではない。旧来のファンからの抵抗も想像に難くない。それでも大きく様変わりする現代の自動車社会で変革は必要だ。その意味でベントレーが今後どのような道を進むのかを指し示す、このEXP15の存在意義は大きいのではないだろうか。