#デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
「セダンであり、5ドアクーペであり、SUV的でもある」という謎の表現! でも確かにカッコイイ「ボルボES90」をデザインのプロはどう見る?

3つの顔をもつユニークなスタイル 2025年3月5日、ボルボカーズは新型ES90を欧州で発表しました。同ブランドで6台目となるBEVとして、800Vテクノロジーなど最新のテクノロジーだけでなく、スタイリングにも新しい提案があるようです。今回は、公開された写真からエクステリアデザインの魅力に迫ってみたいと思います。 まずボディ全体を見渡すと、全長はS90より30mm長い5mとされますが、ホイールベースはなんと70mmも拡大されて3.1mに達しており、ここはじつにEVらしいディメンション。 前後を走る、長く明快なショルダーラインにキャビンが載るイメージはそのS90と共通ですが、同ブランドが「セダンであり、5ドアクーペであり、SUV的でもある」と謳うとおり、リヤまで延ばしたルーフとテールゲートの存在が新型独自の特徴です。 最初に写真を見たときは「なぜ5ドア?」と思いましたが、荷室部分を広げることで高い居住性を示し、結果、市場の大きいSUV的なシルエットも獲得する狙いが感じられます。 で、あらためて前からチェックすると、外形までトールハンマー形状としたヘッドライトやパネルで覆ったグリルなどはEX30と同じ表現。もうひとつ、縦型のフォグランプからヘッドライトを経由しショルダーにつながる大きなラインの流れが新しい提案で、これはボディラインを整理する手段でもあるようです。

TAG: #ES90 #デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
「ジャガー終わった」「こんなのジャガーじゃない」 異様なBEVコンセプトカー「TYPE 00」にデザインのプロが判定を下した

派手なスタイリングに隠されたエッセンス 昨年12月、マイアミ・アートウィーク2024で発表されたジャガーのコンセプトカー「TYPE 00」が話題沸騰です。「こんなのジャガーじゃない」「ジャガー終わった」など否定的な意見が圧倒的ですが、果たして本当にそうなのでしょうか? 今回はあらためてこのデザインを検証してみたいと思います。 「Exuberant Modernism」、活気あふれるモダニズムをコンセプトとしたTYPE 00は、今後ジャガーがBEV専業メーカーへ移行するに当たっての「革新」を強力にアピールするための象徴といえます。したがって、当然それ相応のインパクトは必須なワケです。 1960年代の「E-TYPE」をオマージュした「ロンドンブルー」はともかく、マイアミの街を象徴した「マイアミピンク」のボディカラーはたしかに衝撃的ですが、それはジャガーも折り込み済みということでしょう。 じゃあスタイリング自体はどうなんだ? といえば、これは次世代モデルの「プロポーション」「サーフェス」「ディテール」を大胆に誇張して予告したと見るべきだと思えます。 まずプロポーション。TYPE 00は一見ぶっ飛んだスタイルに見えますが、ショートオーバーハングのロングノーズスタイル、豊かなリヤフェンダーなどは、現行の「F-TYPE」と基本的には同じクーペらしいスタンスですし、分厚いボディとスリムなキャビンの組み合わせも「XJ」や「XF」(生産終了)などに見られる近年のジャガーの特徴です。

TAG: #TYPE 00 #コンセプトカー #デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
四つ輪のないアウディが爆誕! 中国の「AUDI」のデザインをプロが斬る!!

アウディブランドとは異なる佇まい 2024年11月7日、アウディは広州モーターショーにて新ブランドである「AUDI」およびコンセプトカーの「AUDI E」を発表しました。中国市場向けとして上海汽車集団との合弁により開発された同車は、たしかにアウディブランドとは異なる佇まいを見せます。では、そのデザインの特徴はどこにあるのか? さっそく公開された写真からチェックしてみたいと思います。 ドイツ本国とは異なるデザインアプローチ なにしろ市場を限定した新規ブランドですから、当然のことドイツ本国とは異なるスタイルを目指すワケですが、しかし少なくとも今回のコンセプトカーの基本はアウディお得意のスポーツバック風に見えます。ここは難しい理由ではなく、SUV的な要素をもつこのスタイルがいまの「売れ線」であり、中国の若い富裕層向けとしても最適ということでしょう。 その上でどのような個性を与えるかですが、アウディブランドのエッジの効いたシャープな造形に対し、全身を曲面基調の柔らかな面で構成する手法を選んだようです。 各部を見てみると、まずフロントでは前面を覆う巨大なパネルが大きな特徴。グリル部にこうした広いパネルを置くのは近年のEVでよく見られる手法ですが、パネル面積をより大きくして「押し出し」感を上げている点は、市場の特性を反映させた点だと思えます。 また、単にグリル面を覆うだけでなく、このパネルがボディのコア部として外に露出したようにも見えます。さらに、このコアを後方へ抜いてみせたのはトヨタのクラウン クロスオーバーに似た表現ですが、EVとしての先進感だけでなく、高出力による力強さも狙いということでしょう。 側面を見ると、A7スポーツバックより100mm短い全長に対し、25mm長いホイールベースとショートノーズがEVらしいプロポーション。この伸びやかさを強調するのが長くフラットなルーフラインで、フローティングデザインも新ブランドを特徴付けています。 さらに、ショルダーラインとホイールアーチの大きな張り出しも特徴で、とりわけリヤフェンダーの豊かさと、絞られたキャビンとの対比は迫力を感じさせるほどです。 新ブランドとしての独自性を育てる 一方、リヤビューでは短いながらもフラットなリヤデッキとエクストラウインドウ? が注目点です。特段バッテリーの排熱口などは見えないので、たとえばシトロエンC6のように、ある種新ブランドのアクセントポイントなのかもしれません。 もうひとつ、雪の結晶のように輝くアルミホイールも見所のようです。こうしたデザイン自体は最近の流行ですが、写真を見る限り、映り込みの美しい磨き込みに新しさがあるようです。 さて、こうしてAUDI Eのスタイリングをチェックすると、たしかにドイツ本国とは明らかに異なる方向性が感じられます。しかも曲面で構成されたボディは非常にシンプルであり、中国向けといってもゴテゴテと盛るようなカタチではありません。 その点で非常に好感の持てるスタイリングですが、ではこれが「AUDI」ブランドならではの独自性といえるのかは未だ不明です。同ブランドは2025年にBおよびCセグメントで3モデルを発表する予定ですが、たとえばよりコンパクトなBセグにこのデザインがどのように織り込まれるのか。それを見ればデザインの狙いがよりハッキリするかもしれませんね。

TAG: #AUDI #AUDI E #デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
同じ中身とは思えない見た目! 日産サクラと三菱eKクロスEVをデザインのプロが比較分析した

両社の「らしさ」を組み合わせたeKクロスEV ガソリン仕様の軽自動車ではボディを共有する日産と三菱ですが、好評の軽EVではサクラに対してeKクロスEVと独自の展開を図っています。その走りの違いも気になりますが、デザインの違いも興味のあるところ。そこで、今回はグループ内2台の軽EVのエクステリアの違いに迫ってみたいと思います。 まずはeKクロスから。eKワゴンをSUVテイストのクロスオーバーモデルに仕立てた同車ですが、ご存じのとおり、そのeKワゴンは先代の3代目から日産との合弁会社であるNMKVで企画・開発、日産では初代デイズとしてラインアップされています。 それまでバッジエンジニアリングに徹していた日産ですが、いよいよ本格的に軽の開発を行うに当たって提示したのは「普通車」のようなエクステリアデザイン。とりわけ、ボディサイドのキャラクターラインは従来の軽では見られなかった「深さ」をもち、強い躍動感を表現しました。 2019年に発売された現行型は、プラットフォームやエンジン、CVTなど主要コンポーネントを刷新した意欲作ですが、デイズ(2代目)、eKワゴン(4代目)とも基本的なスタイリングは先代を引き継いでいます。 たとえば、eKワゴンのデザインコンセプトは「THE CUTE CHIC(キュート・シック)」で、大らかで張りのある曲面に活き活きとした躍動感を与えたもの。新型でも流れるようなキャラクターラインが大きな役割を果たしています。 そして、SUVテイストであるeKクロスのデザインコンセプトは「THE CUTE BEAST(キュート・ビースト)」。可愛らしさと野生という相反した要素を両立させるのが、三菱自慢のデザインフィロソフィ「ダイナミックシールド」です。垂直のメッキバーや上下2段構造のランプなどの迫力ある造形は「クロス」独自の顔を作り出しました。 つまり、EVを含めたeKクロスは、日産らしい普通車感と三菱らしい力強さが融合したエクステリアといえるのです。

TAG: #デザイン #新車 #軽EV
TEXT:琴條孝詩
じつは凄い「のっぺり顔」! EVの「グリルレス」「フラットボトム」が生む多大なるメリットとは

EVには従来型のグリルが不要 <エンジン冷却不要で実現するクリーンなフロントフェイス> 電気自動車(EV)の普及が進むなか、その特徴的なデザインに気付いた読者も多いだろう。とくにフロントマスクに注目すると、従来のガソリン車などの内燃機関車(ICE)で当たり前だった大きなラジエーターグリルが存在しないケースが多い。これは単なるデザイン上の選択ではなく、EVの構造特性がもたらす空力性能の向上だ。 ICE車では、エンジンを冷却するためのラジエター、冷却風を導くためのインテーク、そしてそれを排出するためのアウトレットが必要不可欠である。そのため、フロントグリルは車両にとって必須のものだった。一方、EVは電動モーターと電池システムの冷却方法が根本的に異なるため、従来型のグリルが不要となる。この変化は単なる外観の問題ではなく、空気抵抗を劇的に低減する重要なイノベーションだ。 代表的な例として、テスラ・モデルYやフォルクスワーゲンID.4などの最新EVモデルでは、従来の大型グリルを完全に排除、または大幅に縮小している。これにより、空気の流れを妨げる障害物が減少し、車両前面の空力特性が大きく改善される。 <フラットアンダーボディがもたらす空力革命> EVのもうひとつの特徴は、車体下面の構造にある。ICE車では、エンジン、トランスミッション、排気系統など、多くの部品が車体下部に配置されている。これらは不規則な形状となり、空気の流れを乱す要因となっていた。 対してEVでは、バッテリーパックを床下に平面的に配置できる。この特性を活かし、多くのEVは車体下面を可能な限りフラット化されている。下面を流れる空気の乱れを抑制し、揚力の低減と空気抵抗の軽減を実現し、はるかに空力学的に洗練されたボディデザインを可能にした。 とくに高速走行時には、このフラットアンダーボディの効果が顕著に表れ、航続距離の向上にも貢献。また、車体底面を流れる空気の速度が増すことで、ダウンフォースと呼ばれる“車体を地面に押し付ける力”が働き、走行安定性も向上する。

TAG: #デザイン #空気抵抗
TEXT:すぎもと たかよし
「A390_β」はアルピーヌファン納得の4枚ドアのA110! 見事すぎる外観デザインをプロが解説

アルピーヌがパリで「A390_β」を公開! フランスのアルピーヌは、パリモーターショー2024にて新型のEVコンセプトである「A390_β」を初公開しました。「A290」に続く本格的な電動車であることが大きな話題ですが、その斬新なスタイリングも魅力的です。そこで、今回は公開された写真からエクステリアデザインの特徴をチェックしたいと思います。 流行のファストバックSUVとスポーティの融合 まずは、何といってもファストバックの5ドアというパッケージに注目です。ルノーグループのEV専用プラットフォームであるAmpRミディアムを採用したボディの諸元は不明ですが、「5人乗りの大型A110」と称されるように、4枚のドアによる居住性の高さとスポーティな凝縮感のバランスが絶妙です。 さらに、フロント22インチ、リヤで23インチという大径タイヤの存在感により、たとえばプジョー408やシトロエンC4のように流行のSUV風味もしっかり表現しています。もちろん、ホイールアーチやサイドシルに施される素材色のプロテクターは「お約束」。 ボンネットフードを含めたフロントセクションは、2022年に発表されたコンセプトカー「アルペングロー」のエッセンスを強く感じさせるところ。とくに左右をつないだヘッドライト部の表情はそのままで、強い先進感を表現しています。 また、「コズミックダスト」と呼ばれる三角形のイルミネーションに呼応するようなロアバンパーの網目状グラデーションは、たとえば最近のフィアットやレクサスにも見られる手法。いずれも、開口部をもたないEV的なフロントパネルでこそ効果のある表現です。 ブラックのルーフは高性能の証? サイド面に目を移すと、ドア面の大きな凹面はA110と共通のイメージですが、そこに引かれるキャラクターラインはずいぶんとシャープに。この鋭いラインは、突き出した形状のボディ前後につながるよう引かれており、高い疾走感を生んでいます。 一方、曲線基調の柔らかいルーフラインはまさにA110的で、とりわけリヤガラス周辺は高い近似性を感じるところ。また、ブラックのルーフはあたかもA110Rのようなレーシングイメージです。 ボディカラーはBlue Specular(ブルー・スペキュラー)と呼ばれる鮮やかな青。これは最近流行りのソリッドカラーというより、透明感を伴ったメタリック系ですが、写真でみる限り陰影を美しく打ち出す塗装のようです。もちろん、雪の結晶をイメージしたホイールとの相性は抜群。 さて、開発途中を示すβの名前が示すとおり、A390のスタイリングはまだ調整中の部分があるのかもしれません。ただ、観音開きのドアや超未来的なインテリアを除けば、それほど大きな変更は要らない完成度に達していると思えます。

TAG: #A390_β #コンセプトモデル #デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
ヤリスクロスより小さいのに「堂々たる」ジープを表現! 注目のEV「アベンジャー」のデザインの秘密

コンパクトながら安定感のある佇まい 2024年9月26日、ジープ・ブランドでは約2年ぶりとなる新型モデル、アベンジャーが発売になりました。同ブランド初となるEVとして早くも各方面で話題になっていますが、新鮮なスタイリングにも注目が! そこで、今回はあらためてエクステリアデザインの見所をチェックしてみたいと思います。 まず、何より意外なのはそのコンパクトさでしょう。パッと見は豊かなボリューム感もあって「それなり」の大きさを感じるのですが、全長4100mmは。先行したレネゲードより150mmも短く、国産コンパクトSUVのヤリスクロスと比べても80mmも短いのです。 それにしても堂々と見えるなあ……、と思わせるのはスタンスのよさゆえで、じつはホイールベースを見るとヤリスクロスと同じ2560mm。となれば、前後のオーバーハングは自ずと短くなり、小さくてもしっかりした佇まいになるワケです。 基本的なスタイリングは、ザックリいうと同ブランドのなかでもグランドチェロキーやコマンダーの流れにあるようですが、その端正さにジープの起源であるウィリスのワイルドさを加えたのが特徴のようです。 たとえばワイド感を強調したフロントはグランドチェロキー的ですが、抑揚あるボディに合わせ、より立体感を持たせた点が独特。自慢の7スロットグリルとヘッドライトとの「段差」も大きいし、グリル自体にも「折り」が加えられて奥行きがあるのです。 で、同車は最近のEV車の流行である「ノッペリ顔」でない点も見所。もちろん海外市場では内燃機関版が用意されていることもありますが、グリルはブランドを示す重要な要素ですから、EVだからといって安易に「フタをする」選択をしなかったのは正解だと思えます。

TAG: #JEEP #アベンジャー #デザイン
TEXT:TET 編集部
レクサスが世界最大のデザインイベント「ミラノデザインウィーク2024」に出展! EVコンセプトカー「LF-ZC」にインスパイアされた2作品を展示

「Time」をテーマにふたつの作品が表現していることとは? レクサスはイタリア・ミラノで開催されている世界最大のデザインイベント、「ミラノデザインウィーク2024」に出展。世界中のクリエーションが集結するトルトーナ地区の中心である、スーパースタジオ・ピュー内のアートポイントとアートガーデンにおいて、インスタレーション「Time」を公開した。 インスタレーション「Time」では、ソフトウェアが未来を予見しながら、クルマを通じたひとりひとりの体験価値の可能性を新たに広げ、絶え間なく進化し続けていくという、テクノロジーによる未来の無限の可能性に対するブランドの想いを表している。また、カーボンニュートラルとラグジュアリーが両立する世界を目指し、エネルギーとソフトウェアに向き合いモビリティの革新を進めていくというレクサスの意志も表現されている。 今回は、会場内にレクサスの次世代バッテリーEVコンセプト「LF-ZC」(Lexus Future Zero-emission Catalyst)に着想を得た2組のデザイナーによる作品が展示されている。各作品の詳細は以下の通りだ。 インスタレーション「Beyond the Horizon」 ソフトウェアによって常にアップデートされ、従来の乗り物としての役割以上にユーザーとの会話を通じひとりひとりに寄り添いながらパーソナルな体験価値をもたらすという、モビリティの未来に対するレクサスの考えを体現した作品。一列に並んだ約2mのインタラクティブ・スカルプチャーは、まったく同じ外装でありながら、それぞれに個性の異なる光の表情を持つ。その中央には、未来に向けた探求と革新の象徴として、レクサスの次世代バッテリーEVコンセプト「LF-ZC」が佇む。 伝統的な職人技術と最先端のテクノロジーの融合は、この作品のもうひとつの主題だ。1500年以上続く越前和紙によって、高さ4m、幅30mもの巨大なスクリーンを構成し、刻々と移ろい変わる水平線の情景をそこに映し出す。この和紙には「LF-ZC」にも採用された竹が、環境への配慮とラグジュアリーなデザインを両立する素材として漉き込まれ、未来に向かいながらも日本の伝統素材や匠の技を尊重するレクサスの姿勢が表現されている。 作品を手掛けたのはロンドンのデザインスタジオ「Tangent」の創業者にして、東京大学先端科学技術研究センター特任准教授を務める、デザイナー、クリエイティブディレクターの吉本英樹氏。 音楽は、先鋭的な電子音楽作品からピアノソロ、オペラ、映画音楽、サウンド・インスタレーションまで多岐に渡り、東京・パリを拠点に活動を行うATAKの渋谷慶一郎氏だ。 渋谷氏は、自身のサウンド・インスタレーション作品「Abstract Music」を本展示コンセプトに合わせて新たに制作した。会場に張り巡らされた31台のスピーカーの間では、膨大なサウンドデータからリアルタイムに生成された音像がプログラミングによって動きまわる。そのため無限に音は変化を繰り返し、二度と同じ瞬間は訪れないという。 夜明けから日没へと変化する水平線の移ろい、その彼方への案内人としての「LF-ZC」と10体のスカルプチャー、そして「Abstract Music」が三位一体となり、唯一無二のパーソナルな時間と没入体験が創出される。また、時間によって変化するレクサス専用の5つの香りが、時のうつろいや変化のなかに美しさを見出す、日本ならではの五感を通したおもてなしとして来場者を出迎える。 インスタレーション「8分20秒」 作品は、持続可能な未来のために太陽光とテクノロジーを融合させたイノベーションを探求する、オランダ出身のソーラーデザイナー、マーヤン・ファン・オーベル氏によるもの。 カーボンニュートラルとラグジュアリーの両立を目指し、エネルギーとソフトウェアに向き合いモビリティの革新を進めていくというレクサスの意志を表現。「LF-ZC」を原寸大で表現したインスタレーションは太陽光発電を利用しており、有機薄膜太陽電池(OPV)シートからエネルギーを取り入れ、内蔵されたバッテリーに蓄積する。来場者の動きに反応する人感センサーを搭載し、自然環境の相乗効果を表現している。 太陽から光が地球に到達するまでの時間にちなんで名づけられた「8分20秒」は、LF-ZCにインスピレーションを得ており、まわりには太陽を想起させる展示物、ホログラフィでできた木々、そしてベンチが配置されている。自身のソーラーランプ作品「Sunne」を16個、円形に配置したこの太陽は、レクサスが開発した新しい竹繊維でできたセンサーに来場者が触れることで色が変わり、来場者ひとりひとりの朝日を演出している。 また、「LF-ZC」の内装に採用された竹素材に由来し、インスタレーションからは竹の揺らめきなどの自然音が発せられ、聴覚的な表現も施されている。 レクサスのChief Branding Officerであるサイモン・ハンフリーズは今回の展示について、次のように述べている。 「レクサスは、創業以来、ラグジュアリーカーの常識を打破する挑戦をし続け、商品とサービスの両面で限界を押し広げることで、お客様ひとりひとりにユニークで期待を超える新しい体験を創造してきました。今回、私たちがお届けするインスタレーションのテーマは“Time”です。私たちは、体験と時間は一組の概念だと考えています。時間がないと、体験は出来ない。私たち人間にとって時間は、ただ過ぎ去るものではなく、特別な体験を与えてくれるものです。人間中心の思想を大切にするレクサスにとって、新たな体験提供は、人と時間の関係を探求することから始まると信じています」

TAG: #インスタレーション #コンセプトカー #デザイン #レクサス
TEXT:小川 フミオ
ボルボ「EX30」は「脱炭素」をキーワードにインテリアの“プレミアム”を再定義する

前回に引き続き、小川フミオ氏が「EX30」の室内のこだわりや新たな手法を、ボルボのインテリアデザインの責任者に訊いていく。 新しい方法で作り込まれたインテリア −−「EX30」のインテリアは、じつにシンプルです。機能がコンパクトにまとめられているし、スイッチ類が中央のセンターコンソールにしか設けられていないなど、ある意味、とても割り切りのよいデザインです。いっぽうで、このデザインはシンプルすぎるという批評もありそうです。  「私たちが手がけるBEV(バッテリー電気自動車)であるEX30では、インテリアにおけるプレミアムさを再定義しようと試みました。作りこみを新しい方法でやろうと試みたんです。結果、いわゆるデコレーションだと思われる部分は排除しています。クロームの加飾も美しいけれど、それじたいが無駄。機能はないし、目的もないので、排除しようと決めました」   −−たいへん明快なコンセプトだと思います。 「私たちはBEVを脱炭素とを結びつけて開発しているので、エネルギーをたくさん使って作る素材を排除しました。いっぽうで、エネルギー消費が少なく製造できる素材を見つけて、それを使いながら、かつ、デコレーションを排除して、素材じたいでをあたらしいフ ォルムを作るように使っていくことにしました。 たとえばピクセルシートです。表皮は、あたらしいパターンを開発して使っています。デザイン的にもサステナブルなフォルムが実現できたと自負しています」 −−あたらしい素材がいろいろ使われているようで、そこは、デザイナーとして誇りたい部分ではないでしょうか。 「もっともむずかしかったのは、この新素材の開発です。非常に複雑で時間のかかるプロセスですし、いろいろな試験が必要だからです。気候、耐久性、キズやスクラッチに対する耐久性もテストしなくてはなりません。さまざまな時間のかかるテストをしました。ただし、それによって新素材を使うからこそ出来るあらたなデザインなどですとかが期待できたので、わくわくするプロセスでもありました」     4種類のインテリアパッケージ EX30のインテリアは、レザーフリーだけでなく、リサイクル素材を多く使っていることで話題を呼んでいる。日本には「ブリーズ」と「ミスト」と名づけられたパッケージが導入される。 ブリーズにおけるシート表皮は、リサイクル素材を使ったピクセルニットに、ボルボ車ですでにおなじみのやわらかな手触りの合成皮革ノルディコを組み合わせたもの。 ダッシュボードのパーティクルパネルは、廃棄されたPVC製の窓枠からリサイクルしたもの。フロアマットは廃棄された魚網からのリサイクル素材で作られている。 ミストのシートは、テイラードウールブレンドなる、ちょっと衣服のような手ざわりで覆われている。ダッシュボードには再生可能な亜麻の繊維で織られたリネンを使い、フロアマットはブリーズ同様にリサイクルされた漁網で作られている。 −−EX30のインテリアは、リサイクル素材と再生可能素材を使って実現したものですね。そこもBEVでもって新しい世界へと入っていこうという強い意思を感じさせます。 「2040年までにサーキュラーエコノミー(廃棄物をなくし資源を循環させる経済システム)を実現するという目標のために新素材はなくてはならないものです。本国には4つの内装があります。カラーマテリアルチームとこの仕事で決めていきました。いろいろな素材、コンポーネンツを集め、こういう色調を実現したいんだというようなものを拡げて、観ていきました。インテリアに使う色は、つねに自然からインスピレーションを得たものです。それがテーマにありました。たとえばパイングリーンとかクラウドブルーとかモスイエローとか。自然からインスピレーションを受けた色です」 ボルボはあらたな(BEV)時代を迎えても、従来からの自分たちの価値をしっかり見据えて、それを失わないようにと考えているのだ。ブランドバリューが確立しているメーカーは強い。そう感じさせてくれるインタビューだった。

TAG: #EX30 #デザイン #ボルボ
TEXT:小川 フミオ
日本でついに発売「ボルボEX30」のインテリアはピュアな北欧デザインそのもの

いよいよ日本でも発売になったボルボ「EX30」。8月に実施された日本での発表会にはインテリアデザインの責任者も来日していた。ジャーナリストの小川フミオ氏が室内空間の詳細に迫る。 いくつもの仕掛けで室内を自分好みに ボルボが手がけるコンパクトサイズのBEV(バッテリー電気自動車)「EX30」が2023年8月24日に日本発売。 「ボルボ史上最も小さな電気自動車」とか「日本の交通事情にマッチ(したディメンション)」とかを日本法人のボルボ・カー・ジャパンは謳う。 もちろん、それだけで商品力がつくわけではない。EX30の特徴として「サステナビリティ、最先端のテクノロジー、こだわりのスカンジナビアンデザイン、新しいユーザーエクスペリエンス」があげられている。 どんなコンセプトで、内外がデザインされたのか。その興味を満たしてくれる人物が、ボルボ・カーズ(本社)から、東京での発表会のタイミングで来日したのでインタビューした。 英国人リサ・リーブス氏は、2014年からボルボ・カーズでインテリアデザインのマネージャーを務め、現在はインテリアデザインの責任者の要職にある。 ーー日本の道路事情にもよく合うサイズとは、23年6月にミラノで行われたワールドプレミアのときから言われていました。リーブスさんがじっさいに東京の路上でチェックして、どんな印象でしたか。 「私は日本が初めてなんですが、そのあたりを見学したところ、日本市場にベストフィットだとわかりました。ディメンションも素材もデザインもぴったりだと信じています 」 ーーもうすこし詳しく教えていただけますか。 「このクルマが、フレキシブルで、個人に特化したパーソナライゼーションに対応しているからです。室内の装備のなかには個人の好みで設定できる仕掛けがいくつもあります。なので、自分が選んだ使いかたができるはずです。コネクティビティも高いですしね」 ーーEX30のコネクティビティとデジタライゼーションについて、どういう内容になっていますか。 「グーグルにサインインすれば、シームレスにデジタルエクスペリエンスが展開できるようになっています。 5Gの規格も使えるので、プロセッサーのスピードも確保できるでしょう。OTA(オーバージエア)によるアップデートも可能です。購入後も、デジタルで拡張性を持たせていこうと考えています」   シンプルでナチュラルなインテリア ーーインテリアデザインに話題を移します。ボルボはニューモデルを解説するにあたって、つねにスカンジナビアン(北欧)デザインといいます。それの意味するところを説明していただけますか。 「スカンジナビアンのデザインの価値とは、ピュアさと、空間の整理のしかたにあると思います。ボルボ車の価値はまさにそこ。複雑になりがちな要素をできるだけシンプルにまとめています。余分なものはないようにしています。そこも人間中心に考えています。充分なものだけがあるのです」 −−以前、他のメディアのインタビューでリーブスさんは、デジタライゼーションはボルボのインテリアデザインにとって、ある種の福音であると答えていらっしゃいました。 「デジタルエクスペリエンスの分野では、いろいろな技術が搭載されていますが、そこも人間中心に考えています。あまり機械にまかせにしすぎないように気をつけています。デジタルエクスペリエンスといっても、あくまでもナチュラルな感覚に寄り沿うことをめざしています。そこが私たちのブランドのバリューです」 次回へ続く リサ・リーブス Lisa Reeves ボルボ・カーズ インテリアデザイン部門 責任者 2014年にボルボ・カーズに入社し、インテリアデザイン・マネージャーを務める。数多くのプレミアム自動車メーカーでの経験をもち、プレミアム・デザインを通じてボルボ・カーズ・ブランドを再定義するという企業のビジョンに貢献している。 現在は、インテリアデザインの責任者として、次世代電気自動車の開発に取り組んでおり、また、ボルボ・カーズのビジネスにおける高い循環性の実現に向けて、スカンジナビアン・プレミアム・インテリアデザインを変革するという戦略的ビジョンにも取り組んでいる。

TAG: #EX30 #デザイン #ボルボ

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