#デザイン
TEXT:TET 編集部
2026年に登場を予定しているベントレーのEVを予感させるデザインスタディ! 伝統と電動化の未来をつなぐコンセプトカー「EXP15」を発表

独創的な3シート・3ドアパッケージ 世界を代表するラグジュアリーブランドが、来る2026年公開予定の100%電動モデルの登場を前に、その一部エッセンスを取り入れたコンセプトモデルを登場させた。EXP15と呼ばれるコンセプトモデルを発表したのは、イギリスの伝統的なラグジュアリーブランド「ベントレー」だ。 1930年製の3シータークーペ「ベントレー・スピードシックス」を創造的な祖としたコンセプトモデルとなるEXP15は、全長5mのおおらかなボディに直立した象徴的なグリル、ロングノーズのボンネット、後方に配置されたキャビンというクラシックなプロポーションを用いて、近未来のベントレー像を表現している。 EXP15にとって最大の特徴は、3シート・3ドアというユニークなパッケージングを採用していることだ。ベントレー曰く、この独創的なパッケージングは、「選ばれたユーザーに特別なドライビング体験を提供するだけでなく、荷物やペットのために設計」したものなのだという。 ドアは運転席側が1枚のロングドア、助手席側は観音開き式の2枚のコーチドアで構成されている。一方で、シートは運転席側がタンデムに2席、助手席側は1席のみとなる。 つまり、繭玉のように包み込むリヤシートは、助手席側が広大な前後スペースを備えた客人または婦人をもてなすための特等席となる。レイアウトも自在で、運転席と助手席が並列に配された「コ・パイロットモード」から、後部座席に相当する位置までスライドさせ、足元空間を大きく広げた「リラックスモード」まで、なんとも贅沢なスペースの使い方を可能にしている。 さらに、観音開き式のドアを採用したことで、助手席側のシートをドアに向けて45度回転させ、身をよじることなくスムーズに乗り降りすることができる機能を有している。英国紳士は婦人を伴って晩餐会に乗りつけたものの、ご婦人が潜り込んだ姿勢から苦労して降り立つ無様な真似だけはさせたくないのだろう。 リヤハッチを開けると、トランク内にふたつのコンパクトなシートが現れる。周囲を照らす雰囲気のあるランプや、冷たい飲み物を収納できる冷蔵庫が備わり、壮大な景色や星空を眺めながらグラスを傾けてほしいという粋な演出だ。 インテリアは「ウィングジェスチャー」と呼ばれる、羽を広げたベントレーのエンブレムをモチーフにした伝統的で優雅な空間が継承されながら、「ボールド・グラヴィタス」「コクーニング・ヘイブン」「アイコニック・ディテール」とベントレーが呼ぶ要素が取り入れられ、伝統と重厚さ、それにプライバシーを保ちながら上質な安心感を備える設計がなされている。 一方のエクステリアは冒頭でも申し上げた通り、見まごうことなきベントレーのそれで、一枚岩から削り出されたかのような圧倒的な存在感を放つ「モノリシック・プレゼンス」という考え方をベースに、彫刻的表現ともいえる表面処理により、ベントレーの現代的な造形美の進化を示している。

TAG: #コンセプトカー #デザイン #ベントレー
TEXT:すぎもと たかよし
全然違うようでちゃんと「Type 2」感はある! ID.Buzzのデザインの妙をプロが分析

オマージュしつつも基本は最新ミニバンスタイルへ 2017年にコンセプトカーが公開されて以降、発売に向けて大きな期待が寄せられていたID.Buzzが、ついに日本市場で発表されました。とにかくアイコニックなデザインへの注目度が高い同車ですが、そのスタイリングの見所はどこにあるのか? さっそくチェックしてみたいと思います。 伝説のType 2のDNAを受け継ぐアイコニックなデザインとされるID.Buzzですが、もちろんその造形を直接比べてみてもあまり意味はありません。新型はあくまで現代のフル電動ミニバンであり、これが「新しいトヨタのエスティマです」と言っても大きな違和感がないほどです。 となると、比べるのはあくまでもアイコニックとされる象徴的な要素ということになります。 まず誰もが注目するのは、ツートンカラーの色分けとなるV字のラインでしょう。オリジナルはバンパーに向けて完全なV字を描いていますが、新型ではバンパー上部で大きなU字を描き、ボディのワイド感を意識しているように見えます。 また、Type 2の色わけラインには太い金属のモールが施されていましたが、新型にモール類は見当たりません。ただ、フロントの色分け部は深い溝を設け、ボディサイド部では数センチの幅を持たせたラインとし、さらにスライドドアのレールと合わせることで、モールを使わずとも「区切り」が明快になっています。 広くブラックアウトさせたサイドウインドウに設けられたスライディング・ウィンドウは「シャレの範疇?」でしょうが、Type 2のリヤにあったエアダクトをモチーフとしたリヤピラーの3本のラインは非常にいいアクセントになっています。まあ、実際に空力に効果があるのかはいまのところ不明ですが……。

TAG: #ID.Buzz #デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
EVシフト全開のアウディ! Q6 e-tronの新たなデザイン表現をプロが斬る!!

伸びやかで柔らかなスタイリングへの移行期? e-tronシリーズとしてBEVラインアップを着実に進めるアウディが送り出した新型Q6 e-tron。新型プラットフォームによる優れた総合性能と高い効率はもちろん、新しいデザイン哲学もまた注目ポイントとされています。そこで、今回はあらためてそのエクステリアデザインの特徴をチェックしてみましょう。 まず、全体を見渡すとポルシェと共同開発したBEVプラットフォームにより、非常に長いホイールベースと短いオーバーハングの伸びやかなボディに気付きます。また、キャビンフォワード気味に寝かされたAピラーによるキャビンは比較的スリムですが、緩やかに下るルーフラインに沿いつつ、リヤタイヤへ大きな荷重がかかって見えるのもポイント。 近年のアウディデザインは、2014年からデザインを統括してきたマーク・リヒテ氏による筋肉質でエッジの効いたスタイリングが特徴でした。ただ、昨年その後任に就いたマッシモ・フラセッラ氏の影響もあるのか、このQ6では意外にも全体の印象がソフトに変化していることに気付きます。 で、フロントの見所といえば、Q4 e-tronでも見られた開口のないシングルフレームですが、ブラックもしくはボディ色にすることでQ4ほど「浮いた」感じにはなっていません。もうひとつ、フロントではこれまた開口のないサイドエアインテーク部の広大さに目が止まります。 この部分、Q4では金属パーツを使った「ガソリン車風」でしたが、Q6では広く平面的な樹脂製のブラックパーツで覆われ、いかにもBEVであることを提示しているよう。ここは新型のA6 e-tronも同様の表現になっているので、BEVとしての新しい見せ方なのかもしれません。

TAG: #Q6 e-tron #デザイン
TEXT:琴條孝詩
エンジン車と同じでもコト足りるのになぜ? EVのインテリアデザインを先進的にする理由

EVは外観だけでなく内装も先進的 電気自動車(EV)の普及が進むなか、EVではフロントグリルがないなどエクステリアのデザインが大きく変化している。しかし、外観のみならずインテリアデザインも従来のエンジン車などの内燃機関(ICE)車と大きく異なることに気がついた方も多いだろう。 多くのEVではミニマルなデザイン、大型ディスプレイの採用、物理ボタンの削減などが特徴となっている。これがときに「冷たい」「未来的すぎる」といった印象を与えることがある。一方、従来のエンジン車は比較的親しみやすいインテリアデザインを継続している。この違いはどこから生まれているのだろうか。EVのインテリアデザインに込められた意図と戦略について探っていく。 <EVメーカーが目指す「新時代」の視覚化> EVのインテリアデザインが独特である最大の理由は、メーカーが意図的に「先進的な乗りもの」というイメージを視覚化しようとしているからだ。ICE車では、排気量の増大や、気筒数の増加、ターボチャージャーの追加などで他社のクルマと差別化ができた。しかしEVでは、モーターやバッテリーの仕様に違いがあっても、感覚的に差別化しにくい。 したがって、他社との差別化をひと目で認識してもらうためには、自ずとコクピット、つまり車内で実現するしかない。そこでモビリティの概念を根本から変える可能性を秘めているEVという特性をインテリアで「見える化」しているわけだ。そのため、デザイナーたちは従来の自動車デザイン言語から意図的に脱却し、新しいアイデンティティを確立しようとしている。 そこには最新の技術も関係している。「プリンテッド・フレキシブル・エレクトロニクス(印刷型柔軟電子技術)」といわれるものもそれに寄与している。これは物理的なボタンを配置するのではなく、基板を印刷して、ハンドル、シート、アームレストやセンターコンソールなどに貼り付けるように内蔵するものだ。熱源としてヒーターも組み込むことができるので、ハンドルやシートなどに組み込んでエアコンを使用することなくドライバーが暖かい状態を維持できる。これは電気消費量に敏感なEVにとって実利的だ。また、これらによってスマートなインテリアにすることもできる。 たとえば、三菱のeKクロスEVのインテリアは、基本的にICE車のeKクロスと共通のデザインを採用している。しかし、EV版は軽自動車であるにもかかわらず「軽自動車を超えた質感」を追求し、7インチサイズの液晶メーターと9インチナビという専用装備を標準採用。ベースモデルのeKワゴンよりも上質なインテリアとなっており、「電気自動車ならではの先進性」を表現している。 また、多くのEVのインテリアでは直線的なラインや幾何学的なパターンが採用され、未来志向のイメージを強調している。これは消費者に「環境に優しい次世代技術」という価値観を視覚的に伝える効果的な方法でもある。インテリアデザインは単なる美的要素ではなく、EVというカテゴリー自体のブランディングに直結しているのだ。

TAG: #インテリア #デザイン #内装
TEXT:すぎもと たかよし
「セダンであり、5ドアクーペであり、SUV的でもある」という謎の表現! でも確かにカッコイイ「ボルボES90」をデザインのプロはどう見る?

3つの顔をもつユニークなスタイル 2025年3月5日、ボルボカーズは新型ES90を欧州で発表しました。同ブランドで6台目となるBEVとして、800Vテクノロジーなど最新のテクノロジーだけでなく、スタイリングにも新しい提案があるようです。今回は、公開された写真からエクステリアデザインの魅力に迫ってみたいと思います。 まずボディ全体を見渡すと、全長はS90より30mm長い5mとされますが、ホイールベースはなんと70mmも拡大されて3.1mに達しており、ここはじつにEVらしいディメンション。 前後を走る、長く明快なショルダーラインにキャビンが載るイメージはそのS90と共通ですが、同ブランドが「セダンであり、5ドアクーペであり、SUV的でもある」と謳うとおり、リヤまで延ばしたルーフとテールゲートの存在が新型独自の特徴です。 最初に写真を見たときは「なぜ5ドア?」と思いましたが、荷室部分を広げることで高い居住性を示し、結果、市場の大きいSUV的なシルエットも獲得する狙いが感じられます。 で、あらためて前からチェックすると、外形までトールハンマー形状としたヘッドライトやパネルで覆ったグリルなどはEX30と同じ表現。もうひとつ、縦型のフォグランプからヘッドライトを経由しショルダーにつながる大きなラインの流れが新しい提案で、これはボディラインを整理する手段でもあるようです。

TAG: #ES90 #デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
「ジャガー終わった」「こんなのジャガーじゃない」 異様なBEVコンセプトカー「TYPE 00」にデザインのプロが判定を下した

派手なスタイリングに隠されたエッセンス 昨年12月、マイアミ・アートウィーク2024で発表されたジャガーのコンセプトカー「TYPE 00」が話題沸騰です。「こんなのジャガーじゃない」「ジャガー終わった」など否定的な意見が圧倒的ですが、果たして本当にそうなのでしょうか? 今回はあらためてこのデザインを検証してみたいと思います。 「Exuberant Modernism」、活気あふれるモダニズムをコンセプトとしたTYPE 00は、今後ジャガーがBEV専業メーカーへ移行するに当たっての「革新」を強力にアピールするための象徴といえます。したがって、当然それ相応のインパクトは必須なワケです。 1960年代の「E-TYPE」をオマージュした「ロンドンブルー」はともかく、マイアミの街を象徴した「マイアミピンク」のボディカラーはたしかに衝撃的ですが、それはジャガーも折り込み済みということでしょう。 じゃあスタイリング自体はどうなんだ? といえば、これは次世代モデルの「プロポーション」「サーフェス」「ディテール」を大胆に誇張して予告したと見るべきだと思えます。 まずプロポーション。TYPE 00は一見ぶっ飛んだスタイルに見えますが、ショートオーバーハングのロングノーズスタイル、豊かなリヤフェンダーなどは、現行の「F-TYPE」と基本的には同じクーペらしいスタンスですし、分厚いボディとスリムなキャビンの組み合わせも「XJ」や「XF」(生産終了)などに見られる近年のジャガーの特徴です。

TAG: #TYPE 00 #コンセプトカー #デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
四つ輪のないアウディが爆誕! 中国の「AUDI」のデザインをプロが斬る!!

アウディブランドとは異なる佇まい 2024年11月7日、アウディは広州モーターショーにて新ブランドである「AUDI」およびコンセプトカーの「AUDI E」を発表しました。中国市場向けとして上海汽車集団との合弁により開発された同車は、たしかにアウディブランドとは異なる佇まいを見せます。では、そのデザインの特徴はどこにあるのか? さっそく公開された写真からチェックしてみたいと思います。 ドイツ本国とは異なるデザインアプローチ なにしろ市場を限定した新規ブランドですから、当然のことドイツ本国とは異なるスタイルを目指すワケですが、しかし少なくとも今回のコンセプトカーの基本はアウディお得意のスポーツバック風に見えます。ここは難しい理由ではなく、SUV的な要素をもつこのスタイルがいまの「売れ線」であり、中国の若い富裕層向けとしても最適ということでしょう。 その上でどのような個性を与えるかですが、アウディブランドのエッジの効いたシャープな造形に対し、全身を曲面基調の柔らかな面で構成する手法を選んだようです。 各部を見てみると、まずフロントでは前面を覆う巨大なパネルが大きな特徴。グリル部にこうした広いパネルを置くのは近年のEVでよく見られる手法ですが、パネル面積をより大きくして「押し出し」感を上げている点は、市場の特性を反映させた点だと思えます。 また、単にグリル面を覆うだけでなく、このパネルがボディのコア部として外に露出したようにも見えます。さらに、このコアを後方へ抜いてみせたのはトヨタのクラウン クロスオーバーに似た表現ですが、EVとしての先進感だけでなく、高出力による力強さも狙いということでしょう。 側面を見ると、A7スポーツバックより100mm短い全長に対し、25mm長いホイールベースとショートノーズがEVらしいプロポーション。この伸びやかさを強調するのが長くフラットなルーフラインで、フローティングデザインも新ブランドを特徴付けています。 さらに、ショルダーラインとホイールアーチの大きな張り出しも特徴で、とりわけリヤフェンダーの豊かさと、絞られたキャビンとの対比は迫力を感じさせるほどです。 新ブランドとしての独自性を育てる 一方、リヤビューでは短いながらもフラットなリヤデッキとエクストラウインドウ? が注目点です。特段バッテリーの排熱口などは見えないので、たとえばシトロエンC6のように、ある種新ブランドのアクセントポイントなのかもしれません。 もうひとつ、雪の結晶のように輝くアルミホイールも見所のようです。こうしたデザイン自体は最近の流行ですが、写真を見る限り、映り込みの美しい磨き込みに新しさがあるようです。 さて、こうしてAUDI Eのスタイリングをチェックすると、たしかにドイツ本国とは明らかに異なる方向性が感じられます。しかも曲面で構成されたボディは非常にシンプルであり、中国向けといってもゴテゴテと盛るようなカタチではありません。 その点で非常に好感の持てるスタイリングですが、ではこれが「AUDI」ブランドならではの独自性といえるのかは未だ不明です。同ブランドは2025年にBおよびCセグメントで3モデルを発表する予定ですが、たとえばよりコンパクトなBセグにこのデザインがどのように織り込まれるのか。それを見ればデザインの狙いがよりハッキリするかもしれませんね。

TAG: #AUDI #AUDI E #デザイン
TEXT:すぎもと たかよし
同じ中身とは思えない見た目! 日産サクラと三菱eKクロスEVをデザインのプロが比較分析した

両社の「らしさ」を組み合わせたeKクロスEV ガソリン仕様の軽自動車ではボディを共有する日産と三菱ですが、好評の軽EVではサクラに対してeKクロスEVと独自の展開を図っています。その走りの違いも気になりますが、デザインの違いも興味のあるところ。そこで、今回はグループ内2台の軽EVのエクステリアの違いに迫ってみたいと思います。 まずはeKクロスから。eKワゴンをSUVテイストのクロスオーバーモデルに仕立てた同車ですが、ご存じのとおり、そのeKワゴンは先代の3代目から日産との合弁会社であるNMKVで企画・開発、日産では初代デイズとしてラインアップされています。 それまでバッジエンジニアリングに徹していた日産ですが、いよいよ本格的に軽の開発を行うに当たって提示したのは「普通車」のようなエクステリアデザイン。とりわけ、ボディサイドのキャラクターラインは従来の軽では見られなかった「深さ」をもち、強い躍動感を表現しました。 2019年に発売された現行型は、プラットフォームやエンジン、CVTなど主要コンポーネントを刷新した意欲作ですが、デイズ(2代目)、eKワゴン(4代目)とも基本的なスタイリングは先代を引き継いでいます。 たとえば、eKワゴンのデザインコンセプトは「THE CUTE CHIC(キュート・シック)」で、大らかで張りのある曲面に活き活きとした躍動感を与えたもの。新型でも流れるようなキャラクターラインが大きな役割を果たしています。 そして、SUVテイストであるeKクロスのデザインコンセプトは「THE CUTE BEAST(キュート・ビースト)」。可愛らしさと野生という相反した要素を両立させるのが、三菱自慢のデザインフィロソフィ「ダイナミックシールド」です。垂直のメッキバーや上下2段構造のランプなどの迫力ある造形は「クロス」独自の顔を作り出しました。 つまり、EVを含めたeKクロスは、日産らしい普通車感と三菱らしい力強さが融合したエクステリアといえるのです。

TAG: #デザイン #新車 #軽EV
TEXT:琴條孝詩
じつは凄い「のっぺり顔」! EVの「グリルレス」「フラットボトム」が生む多大なるメリットとは

EVには従来型のグリルが不要 <エンジン冷却不要で実現するクリーンなフロントフェイス> 電気自動車(EV)の普及が進むなか、その特徴的なデザインに気付いた読者も多いだろう。とくにフロントマスクに注目すると、従来のガソリン車などの内燃機関車(ICE)で当たり前だった大きなラジエーターグリルが存在しないケースが多い。これは単なるデザイン上の選択ではなく、EVの構造特性がもたらす空力性能の向上だ。 ICE車では、エンジンを冷却するためのラジエター、冷却風を導くためのインテーク、そしてそれを排出するためのアウトレットが必要不可欠である。そのため、フロントグリルは車両にとって必須のものだった。一方、EVは電動モーターと電池システムの冷却方法が根本的に異なるため、従来型のグリルが不要となる。この変化は単なる外観の問題ではなく、空気抵抗を劇的に低減する重要なイノベーションだ。 代表的な例として、テスラ・モデルYやフォルクスワーゲンID.4などの最新EVモデルでは、従来の大型グリルを完全に排除、または大幅に縮小している。これにより、空気の流れを妨げる障害物が減少し、車両前面の空力特性が大きく改善される。 <フラットアンダーボディがもたらす空力革命> EVのもうひとつの特徴は、車体下面の構造にある。ICE車では、エンジン、トランスミッション、排気系統など、多くの部品が車体下部に配置されている。これらは不規則な形状となり、空気の流れを乱す要因となっていた。 対してEVでは、バッテリーパックを床下に平面的に配置できる。この特性を活かし、多くのEVは車体下面を可能な限りフラット化されている。下面を流れる空気の乱れを抑制し、揚力の低減と空気抵抗の軽減を実現し、はるかに空力学的に洗練されたボディデザインを可能にした。 とくに高速走行時には、このフラットアンダーボディの効果が顕著に表れ、航続距離の向上にも貢献。また、車体底面を流れる空気の速度が増すことで、ダウンフォースと呼ばれる“車体を地面に押し付ける力”が働き、走行安定性も向上する。

TAG: #デザイン #空気抵抗
TEXT:すぎもと たかよし
「A390_β」はアルピーヌファン納得の4枚ドアのA110! 見事すぎる外観デザインをプロが解説

アルピーヌがパリで「A390_β」を公開! フランスのアルピーヌは、パリモーターショー2024にて新型のEVコンセプトである「A390_β」を初公開しました。「A290」に続く本格的な電動車であることが大きな話題ですが、その斬新なスタイリングも魅力的です。そこで、今回は公開された写真からエクステリアデザインの特徴をチェックしたいと思います。 流行のファストバックSUVとスポーティの融合 まずは、何といってもファストバックの5ドアというパッケージに注目です。ルノーグループのEV専用プラットフォームであるAmpRミディアムを採用したボディの諸元は不明ですが、「5人乗りの大型A110」と称されるように、4枚のドアによる居住性の高さとスポーティな凝縮感のバランスが絶妙です。 さらに、フロント22インチ、リヤで23インチという大径タイヤの存在感により、たとえばプジョー408やシトロエンC4のように流行のSUV風味もしっかり表現しています。もちろん、ホイールアーチやサイドシルに施される素材色のプロテクターは「お約束」。 ボンネットフードを含めたフロントセクションは、2022年に発表されたコンセプトカー「アルペングロー」のエッセンスを強く感じさせるところ。とくに左右をつないだヘッドライト部の表情はそのままで、強い先進感を表現しています。 また、「コズミックダスト」と呼ばれる三角形のイルミネーションに呼応するようなロアバンパーの網目状グラデーションは、たとえば最近のフィアットやレクサスにも見られる手法。いずれも、開口部をもたないEV的なフロントパネルでこそ効果のある表現です。 ブラックのルーフは高性能の証? サイド面に目を移すと、ドア面の大きな凹面はA110と共通のイメージですが、そこに引かれるキャラクターラインはずいぶんとシャープに。この鋭いラインは、突き出した形状のボディ前後につながるよう引かれており、高い疾走感を生んでいます。 一方、曲線基調の柔らかいルーフラインはまさにA110的で、とりわけリヤガラス周辺は高い近似性を感じるところ。また、ブラックのルーフはあたかもA110Rのようなレーシングイメージです。 ボディカラーはBlue Specular(ブルー・スペキュラー)と呼ばれる鮮やかな青。これは最近流行りのソリッドカラーというより、透明感を伴ったメタリック系ですが、写真でみる限り陰影を美しく打ち出す塗装のようです。もちろん、雪の結晶をイメージしたホイールとの相性は抜群。 さて、開発途中を示すβの名前が示すとおり、A390のスタイリングはまだ調整中の部分があるのかもしれません。ただ、観音開きのドアや超未来的なインテリアを除けば、それほど大きな変更は要らない完成度に達していると思えます。

TAG: #A390_β #コンセプトモデル #デザイン

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