2台同時に使用すると1台あたりの出力が90kW程度にダウン! 電気自動車(EV)の普及に伴い、街なかで目にする機会が増えた急速充電器。とくに、150kW級の大容量の充電器も珍しくなくなった。しかし、2台の車両を同時充電できるタイプが多く、実際に使用してみると、「あれ、充電速度が遅いぞ……」と感じるケースがある。 そう、実際には150kWの出力を誇る急速充電器であっても、2台の車両に同時に電力を供給しようとすると、1台あたりの出力が90kW程度まで減少してしまうのである。せっかく大出力の充電器を設置しているにもかかわらず、期待にそぐわず充電時間が長くなってしまうのはじつに残念。では、なぜこのような仕様になっているのだろうか。 <電力供給の仕組みと設備容量の制約> 日本では、CHAdeMO規格の150kW急速充電器の場合、出力電圧が最大450V電源となっているのが一般的だ。この場合、総出力は150kWとなるが、充電器自体の設計やハードウェア的な制約により、両方のポートを同時に使用すると、電力供給能力が分散され、個々のポートへの出力は90kW程度まで減少してしまう。 これらの急速充電設備の規模は、充電器本体での電力損失や空調などの付帯設備も考慮して決定される。そのため、充電器自体の最大出力である150kWを2台分の車両に供給、つまり合計300kWを確保しようとすると、それに対応するケーブルなども必要となり、設備投資の観点から現実的ではない。結果として、同時に充電を行う際は、出力を制限する仕様となっているのである。 また、高出力の充電器においては、熱管理が非常に重要である。高電流を流すと内部部品が過熱し、寿命が短縮されるリスクが高まる。したがって、充電器内部には強力な冷却システムが搭載されている。しかし、両方のポートを同時に使用すると、冷却システムの負荷増大に伴い、過熱を防ぐため出力が制限されることがある。故に、高出力の急速充電においては温度管理が非常に重要なのである。 とくに150kW級の充電器では、たとえ1台で充電しようとしてもケーブルが過剰に発熱するため、150kWを30分流し続けることに対応できておらず、最大でも最初の15分間程度で、残りの時間は出力を制限する「パワーブースト」機能が採用されている。ちなみにテスラのスーパーチャージャー(SC)はケーブルが水冷式のため、効率良く冷却できていることもあり、最大250kWの充電が可能で、まだ日本では提供されていないものの、最新モデルのV4では、技術的には最大500kWに対応している。
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