2025年5月
TEXT:TET 編集部
「bZ4Xツーリング」の車名で日本でも2026年春に発売予定の新SUV! トヨタ bZ4Xのワゴン版となる「bZ Woodland」を北米で発表

BEV需要が堅調な北米に新たなトヨタのBEV選択肢 トヨタのバッテリーEVシリーズである「bZ」は「Beyond Zero」の頭文字から命名されている。そこには、トヨタが作るEVはCO2排出量ゼロという、EVならではの価値に加え、それを超えた価値を届けたいという想いが込められているのだという。 ここ日本ではSUVタイプのbZ4Xが存在し、EVの需要が高い中国においてはbZ3シリーズとしてクーペスタイルのbZ3CとSUVタイプのbZ3Xなどがラインアップされ、今後は大型セダンのbZ7の発売も控えている。欧米でもbZ4XをはじめとしたトヨタのBEVは販売されており、先ごろ進化した改良版bZ4Xが欧州で発表されたばかりだ。 その改良版bZ4Xは、今年後半にも国内で販売が開始されることが予告されているが、今回それとは別に北米向けのbZ4に新たなボディタイプが追加されることが、トヨタの北米事業体「TMNA」の新型車発表イベントで明らかにされた。また、この新たなbZ4は、2026年春ごろから日本での発売を予定しているというから、俄然注目すべき存在なのだ。

TAG: #bZ4X #トヨタ #新型車情報
TEXT:桃田健史
ただEVを作ってお終いじゃない! ソフトもインフラにも本気で取り組むホンダのEV事業が熱い!!

ホンダのEV事業に注目! EVシフトが踊り場。ここ1〜2年で、そういわれることが増えてきている。だが、自動車メーカー各社としては、中長期的にはEVシフトが確実に起こることを前提として、事業戦略を練っている。 なかでもホンダは、2040年にグローバル販売でのEV・FCEV(燃料電池車)100%を目指す。日系メーカーで、年次を決めて100%EVシフトを宣言しているのはホンダのみだ。 足もとで動いているホンダEV戦略は大きくふたつある。ひとつは、日米を中心とした「0シリーズ」。もうひとつは、中国に特化した「イエシリーズ」だ。 4月末に開幕した中国上海モーターショー(上海国際自動車工業展覧会)では、「広汽ホンダGT」「東風ホンダGT」を世界初公開した。ホンダは中国で、広州汽車と東風汽車のそれぞれと合弁事業を進めており、「GT」はレーシングマシンを連想させるトップモデルだ。 また、中国市場向けEVの駆動用バッテリーでは、CATLとのリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを共同開発し、イエシリーズの第三弾に投入することも明らかにした。 0シリーズについては、米CES2025(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)で、「サルーン」と「SUV」を世界初公開した。 注目されるのは、ホンダ独自の車載OS(オペレーティングシステム)として「アシモOS」を採用したこと。自動車産業界では近年、ソフトウェアに重きを置いた自動車の設計思想SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)が競争領域として注目されているところだ。 ホンダとしては、次世代EV導入のタイミングで、クルマづくりを抜本的に変革する姿勢を社内外に向けて発信したといえるだろう。 また、EV普及のために重要な充電インフラについても、国や地域の社会状況に応じた対策を打つ。 たとえばアメリカでは、メルセデス・ベンツ、BMW、GM、ステランティス、ヒョンデ、キアと連携するEV高出力充電用を構築するための合弁事業「アイオナ」を設立した。 アイオナの充電施設では、CCS(コンボコネクター方式)やNACS(ノース・アメリカン・チャージング・スタンダード)など、多様な急速充電をユーザーに提供する。2030年にはカナダを含めて3万基の設置を目指す。 日本でも、軽EVのさらなる普及や0シリーズの導入、そして充電インフラとの連携に加えて使用済み電池のリユース・リサイクルなど、バリューチェーンにおける新しい仕組みづくりを進めているところだ。 これからも、グローバルにおけるホンダEV事業の動きに注目していきたい。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:TET 編集部
元ガソリンスタンド跡地がゼロエミッションビークルの最新拠点に転生! 国内2カ所目となるサービス拠点「Hyundai Customer Experience Center 大阪」がオープン

横浜に続き全国2拠点目が大阪に誕生 ヒョンデは5月14日に関西圏におけるブランド体験と顧客接点の拡大を目指し、大阪の心斎橋に「Hyundai Customer Experience Center 大阪(通称:CXC大阪)」をオープンした。 ヒョンデはZEVに絞った商品展開に加え、それらをオンラインで販売するのが特徴。さらに、ショールームの展開も一般的な自動車ディーラーとは異なり、地域に根差してライフスタイルを提供する企業とのコラボレーションで展開する「Hyundai Mobility Lounge」、オンライン購入を検討している客に対してのサポートを目的とした「Hyundai Citystore」、カー用品店のオートバックス内に設けられた「Hyundai Corner」など、バリエーションが豊かだ。 それらショールームのなかでも、Hyundaiブランドのイメージリーダーであり、ブランドが目指すクリーンモビリティやサステナブルな取り組みを紹介し、体験できる空間として設立されたのが「Hyundai Customer Experience Center(CXC)」だ。 元ガソリンスタンドに拠点を構える意義 2022年7月に神奈川県横浜市で初めてオープンしたのに続き、今回の大阪・心斎橋で2拠点目。これにより東西の人口集積地にヒョンデのイメージを牽引する拠点が整備された格好となる。また、オンライン販売を軸とするヒョンデながら、購入相談から納車、アフターサービスまでワンストップで提供できるのがCXCの強みだ。それが大阪の中心部にできた意義は大きい。 なにしろCXC大阪が拠点を構える場所は、長年地域に親しまれてきた出光長堀ビルのガソリンスタンド跡地なのだ。化石燃料の供給拠点であった同地が、今後は電気自動車をはじめとするZEVの魅力を発信し、ヒョンデが掲げる持続可能なモビリティ社会の実現に向けた意志を体現する場所となるのだから、そのメッセージ性は非常に強い。 ヒョンデは「大阪は多様な文化を受け入れ、人とのつながりを重んじる都市であり、EVという新たなモビリティ文化を発信するうえで意義深い地域と捉えています」とコメント。関西はもとより、西日本におけるヒョンデブランドの認知拡大と、多くの顧客層への新たな接点創出につながることが期待されている。 国内初のオフィシャルグッズ実店舗販売も実施 店内はゆったりとしたラウンジスペースや、クルマを運転する愉しさを体験できるNドライビングシミュレーターなどが設置されるほか、ヒョンデオフィシャルグッズ「Hyundai Collection」の実店舗販売が国内で初めて行なわれる。また、歴史のある建築のなかに新しい構造体を取り込み、視覚的にも印象的な構成を生み出すことが意識されている。 ヒョンデの日本法人Hyundai Mobility Japanの代表取締役社長である七五三木氏は、14日のCXC大阪オープニングセレモニーにおいて、「かつてのガソリンスタンドがEVショールームとして生まれ変わったこの場所から、ヒョンデのEV体験を五感で楽しんでいただきたい」とコメントするとともに、「地域との連携を深めながら、CXC大阪を通じて関西圏での顧客接点をさらに広げていく」と関西圏での堅実なブランドの浸透を目指していく構えを示した。 CXC大阪は大阪メトロ御堂筋線・心斎橋駅2番改札を出て、北7番出口より徒歩すぐという場所に位置するが、来客用の駐車場は持たないため、クルマで行く際は事前にCXC大阪へ問い合わせてほしいとのことだ。 2022年にヒョンデが日本へ再参入して以来、関西地域への直営拠点オープンに対する要望や期待の声は多数ヒョンデに寄せられていたという。5カ所の協力整備場に加え、2024年には「CXC大阪 開業準備室」を設置。大阪府内では数回の大規模な試乗会や、西日本のクルマ好きが集結する大阪オートメッセへの出展など、着々と地盤を整えてきた。そして満を持してのCXC大阪オープンである。ここからがいよいよ本番といえそうだ。

TAG: #ディーラー #ヒョンデ #新店舗
TEXT:琴條孝詩
いくら急速充電器が増えても「加速」とか「ゼロエミッション」とかに興味がない人はいる! EVはそれでいいんじゃないか?

充電インフラの現実とBEV普及の壁 日本政府は2035年までに新車販売のすべてを電動車(BEV、PHEV、FCVを含む)にするという目標を掲げている。これは、カーボンニュートラルの実現に向けた国家的な方針で、乗用車に関しては「新車販売で電動車100%」を目指すと明言されている。しかし、現実的には、「本当にBEV(バッテリーのみの電気自動車)を無理に普及させる必要があるのか?」という疑問が浮かぶ。 CO2削減という観点から見れば、BEVの製造過程でもCO2は排出される。そのため、燃費性能に優れたHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)の普及だけでも十分な効果が期待できるのではないだろうか。むしろ、充電インフラの現状を考えると、BEVはその走りや静粛性、加速感といった特性を本当に愛する人だけが乗ればよいという考え方の人がいてもおかしくはない。 国内のBEV充電インフラは、近年急速に整備が進んでいるものの、依然として課題が多い。経済産業省の調査では、2024年3月時点で、国内のEV急速充電の設置数1万128基、普通充電(200V)3万195基という状況である。EV充電スタンドは上記の数にテスラ専用のスーパーチャージャー(SC)のステーション数128の急速充電器数が加わるが、いずれにしても普及率や設置数の面で、利用者の利便性を十分に支える水準には達していない。 また、都市部では急速充電器の設置スペースの確保が難しく、駐車料金が別途かかるケースも多い。地方では自宅充電がしやすい一方、公共充電スポットの利用頻度は限定的となる。さらに、長距離移動時の経路充電、とくに高速道路のサービスエリアでは混雑や台数不足が問題となっており、繁忙期には「充電渋滞」が発生することもある。 設置から8~10年が経過して老朽化する充電器も増えており、更新や維持のためのコスト負担が事業者の重荷となっている。一部の古いCHAdeMO充電器は故障や老朽化が進み、設置場所に行ってみると利用困難なケースがあったり、採算が合わず撤去されたりしているケースも少なくない。 以上のことを考えると、家庭用充電設備の設置ができない集合住宅住まいのユーザーや長距離移動が多いユーザーにとって、BEVの選択は依然としてハードルが高い。 一方、ガソリンスタンドの数は2023年度末で2万7414カ所。政府は、2030年までに「公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置する」との目標を掲げているが、給油時間と充電時間の違いもあり、利便性としてBEVの充電環境は厳しいといわざるをえない。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:御堀直嗣
「VtoH」は知ってるけど「VtoG」に「VtoL」に……「VもPもIもN」もある!? いま知っておくべきEVまわりの「Vto○」

「VtoG」はスマートグリッドのひとつ 電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)は、駐車しているときも役立つクルマだ。その代表が「VtoH」だろう。VtoHとは、「ヴィークル・トゥ・ホーム」のことである。EVやPHEVの車載バッテリーから、自宅に電気を供給する。 PHEVでも、20kWhほどの駆動用バッテリーを車載するようになり、満充電からであれば、1~2日ほど電力の供給ができる。40~100kWhを積むEVであれば、その何倍もの電力を自宅に供給できることになる。 VtoHのほかに耳にするのが「VtoL」だ。Lは、「Load(ロード)」のことで、電気製品をいう。つまり、車載バッテリーから電気を取り出し、家電製品などを使えるようにする。たとえば、クルマのダッシュボードなどでスマートフォンを自動充電するといったこともそのひとつといえるし、車内でパーソナルコンピュータ(PC)を使い、外部の人と交信したりPCで仕事をしたりすること、ほかにも野外で食事を料理したり、催し物の音響や照明に電気を使えるようにすることなども含まれる。 ことに野外活動では、これまでエンジンで動かしていた発電機に替えてEVやPHEVを電源として使うことにより、騒音や排出ガスの懸念をせず、電気の利用が叶う。 ただし、すべてのEVやPHEVがVtoLの機能を備えているわけではない。 次に、「VtoG」というのは、(電力会社から送電される)系統電力とEVの連携だ。「G」とは、「Grid」のことで、電力会社から送電される系統電力をいう。VtoGは、スマートグリッド(電力の知能化)のひとつといえ、EVを電力網のひとつに加えることにより、発電の平準化や効率化に役立て、発電機の負荷を減らしたり、場合によっては発電所の数を減らしたりするなど、社会基盤の整理に役立つと期待されるEVの利用法だ。 ことにEVは、車載バッテリー容量が多いので、駐車中のEVの電力を、たとえば電力需要の最大時にEVから補うことで、系統電力の負担を減らし、かつ余裕ある電力を社会へ提供する。真夏や真冬の突然の停電や節電を回避できる。そのうえで、電力需要が下がったところで、使った電力をEVへ戻す。こうして、EVの移動という基本性能を損なうことなく、安定した電力基盤を構築する。 これには、一台ごとのEVの利用状況や車載バッテリーの充電量、あるいはすぐに移動するかしないかなど使用実態を把握し、それらを総合的に管理して、統制する機能が必要だ。そこに、AI(人工知能)の活用が求められる。

TAG: #VtoG #VtoH #VtoL #VtoX
TEXT:小林敦志
BYDが小型EV「シーガル」を日本に導入するんじゃ……の噂はウソ! 日本のEV市場の「現在」を考えれば3ナンバーサイズは難しい

シーガルが日本に導入される予定はない 中国BYDオート(比亜迪汽車)の日本法人である、BYD Auto Japanは2025年4月24日(木)に、「2026年後半に日本専用設計の乗用軽BEV(バッテリー電気自動車)の日本国内導入決定」というプレスリリースを発信した。 現状、日本国内でラインアップされているBYD乗用車はいずれもBEVとなり、シーライオン7、シール、ATTO 3、ドルフィンの4車となっている。今回の軽規格乗用BEVの国内導入決定のリリース発信までは、シーガルというコンパクトハッチバックスタイルのBEVが日本に導入されるのではないかと盛り上がることもあったが、この件をビーワイディージャパン広報に確認すると、「シーガルの日本市場導入予定はない」とのことであった。 確認してみると、シーガルはフィリピンやラオス、カンボジア、ミャンマーなど東南アジアのなかで左ハンドル車市場の国々で販売されているとのこと。また、調べてみると、ラテンアメリカ諸国でもドルフィンミニとしてすでにラインアップされ、欧州でもドルフィンサーフの車名でラインアップ予定となっていた。なお「シーガルは中国国内専売車」といった都市伝説のような噂が流れていることについても明確な否定コメントを得ることができた。 中国のBYDホームページに掲載されているシーガル(漢字車名は海鴎)の諸元表をみると、全長3780×全幅1715×全高1540mmとなっており、同じ中国のホームページに掲載されているドルフィン(漢字車名は海豚)のボディサイズと比べると、全長でマイナス500mm、全幅でマイナス55mm、全高でマイナス30mmとなっている。中国仕様のドルフィンが航続距離410、420、520km(CLTC)仕様を用意しているのに対し、中国仕様のシーガルでは305kmと405kmが用意されている。 車格としては前述した日本導入予定の軽規格BEVとドルフィンの中間に位置するモデルと表現することができる。しかし、そのような車格となると、日本国内で重要視されるのはボディサイズが3ナンバーサイズなのか5ナンバーサイズなのか、つまりワイドボディか否かといったことになる。 韓国ヒョンデ自動車は、2025年4月に日本での5ナンバーサイズに収まるBEVとなるインスターを発売した。韓国版軽自動車規格となる“軽車(キョンチャ)”でICE(内燃機関)車となるキャスパーの派生モデルとなり、キャスパーよりボディサイズが拡大されている。韓国版軽自動車サイズ車ベースとなるので、日本でもスンナリと5ナンバー規格に収まることとなった。 日本国内におけるヒョンデの乗用BEVは、インスター以外ではアイオニック5とコナの2車がラインアップされている。インスターはそもそもグローバル戦略モデルなのだが、日本市場に絞れば、ヒョンデとしては軽自動車規格BEVにも興味があったと聞いているが、あえて5ナンバーサイズ登録車規格のBEVで日本市場に勝負をかけたと見ている。 日本国内ではすでに日産と三菱が軽自動車規格のBEVをラインアップしている。とくに日産サクラは発売以来快進撃を続けていたが、2024年秋ごろから急速に販売の落ち込み傾向が目立っていた。サクラはいまでこそ都市部でもよく見かけるようになったが、発売当初は地方部でとくに人気を得た。バスなどの公共交通機関での移動が困難で、高齢となっても日常生活の移動手段として自家用車に頼らなくてはならない地域である。そのような地域に住む高齢のみなさんは、あくまで一般論でいえばクルマで遠出するというシチュエーションは少ない。 通院や買い物など生活圏内の移動が主となる。そのなか、ICE車だとガソリンスタンドの廃業が進み、給油のための移動や時間的負担が大きくなる、給油困難者も地方部で目立ってきた。また、地方部では集合住宅より車庫付き一軒家に住んでいることが多いので、充電施設の設置も容易とのことで、高齢世帯を中心に注目されたのである。 都市部では企業の社用車的ニーズも多いのではないかと筆者は見ている。そのようなニーズにフォーカスしたかは定かではないが、航続距離もカタログ上で180kmとされており、販売現場で説明を聞くと、「遠出を想定したクルマではない」といった話をセールスマンから必ずといっていいほど聞いた。 ただ、軽自動車とはいえBEVなのでICEの軽自動車よりは価格が高いこともあり、日産の登録乗用車に乗っていたユーザーからのダウンサイズも目立っていた。そのなか、高齢となっても所得に余裕があり、しかも心身ともに健康となれば新車を買ったのだからちょっとした遠出もしたくなるだろうが、サクラではなかなかそれを楽しむことはできない。

TAG: #シーガル #日本導入
TEXT:桃田健史
超高出力の急速充電器による短時間チャージも見どころ! フォーミュラEは量産車への技術転用に直結するいまどき珍しいレースカテゴリだった

34秒のピットストップで超高速充電! フォーミュラE シーズン11(2024/2025)第6戦・第7戦を取材するため、モナコを訪れた。この2週間後には、昨年以来の2回目開催となる東京E-PRIXが控えているタイミングだ。 日本のユーザーにとっては、フォーミュラカーといえば、レッドブル角田裕毅選手の人気に湧くF1、そして若手による接近戦が見ものになっている国内スーパーフォーミュラをイメージするだろう。 一方で、フォーミュラEに対する認識はあまり高くないが、昨年の東京E-PRIXによってフォーミュラEに対する理解が日本でも徐々に高まっていると感じる。 そんなフォーミュラEの特徴は、やはりEVであることだ。日本でもEVに関するレースが存在するし、また海外でも各種EVレースがあるが、興行として成立しているケースは極めて少ない。 一方でフォーミュラEは、レースマシンとしてのEVとしてだけではなく、徐々に市場が拡大することが期待される量産型EVに対するユーザーの意識変革を狙っているところが大きな特徴だ。 たとえば、決勝レース中の急速充電「ピットブースト」がある。参戦するすべてのマシンに対して、ピットエリアでの最大出力600kWで急速充電を義務付けるものだ。シーズン10(2024/2025)までは「アタックチャージ」と呼ばれていた。電気容量では3.85kWhで、34秒で充電を完了させる。 充電システムを供給するのは、英国Fortescue社。以前は、ウイリアムズ・アドバンスド・テクノロジーと呼ばれていた企業である。 充電口はマシン後部にあり、充電器はピットボックスの脇に置かれている。ピットブースト作業にあたるのはピットクルーのうちの2名。ひとりが充電ケーブルさばきをし、もうひとりが充電コネクターを両手でもちながら、ピットインしてきたマシンの後方にすばやくまわりこむ。 今回のモナコE-PRIXは土曜、日曜日のそれぞれで予選と決勝を行ったが、ピットブーストは土曜日決勝のみで採用された。 これは、フォーミュラEが、最新EV技術の進化とエキサイティングなレース形式とのバランスを考慮しているからだ。 モータースポーツの存在意義のひとつに、量産車への技術フィードバックがある。フォーミュラEのピットブーストは、急速充電の将来を占う上でとても興味深いレースレギュレーションだと感じる。 なお、フォーミュラEのマシンは、シーズン13(2026/2027)から最大出力が現在の2倍に相当する600kWのフルタイム4WDに進化する。充電機能についても新技術を採用する可能性が高い。

TAG: #フォーミュラE #モータースポーツ
TEXT:渡辺陽一郎
やっぱりEVの値落ちは激しい! エンジン車と残価率を比べるとEVを買いづらい理由が見えてくる

理由はリチウムイオン電池の性能低下にある 「電気自動車はリセールバリュー(数年後に売却するときの価値)が低い」といわれる。リセールバリューの判断は難しいが、残価設定ローンの残価(残存価値)が目安になる。 たとえば電気自動車の日産リーフX(新車価格は408万1000円)では、残価設定ローンの4年後の残価は約110万円だ。残価率(新車価格に占める残価の割合)に置き換えると27%になる。 一方、ミニバンの日産セレナe-POWERハイウェイスターV(新車価格は373万5600円)は、4年後の残価が約180万円だ。新車価格はリーフXがセレナe-POWERハイウェイスターVよりも約35万円高いのに、4年後の残価は、逆に70万円も安くなってしまう。セレナe-POWERハイウェイスターVの4年後の残価率(新車価格に占める残価の割合)は48%だから、リーフXの27%を大幅に上まわる。 それなら電気自動車のリーフに交付される補助金まで含めて計算したらどうなるか。2025年度にリーフXを購入した場合、国から交付される補助金額は89万円だ。新車価格の408万1000円から、この補助金額を差し引くと、実質価格は319万1000円になる。4年後の残価が約110万円であれば、実質価格から割り出した残価率は34%だ。やはり、補助金を引いた実質価格をベースにしても、セレナe-POWERハイウェイスターVの48%よりも低くなってしまう。 リーフに限らず、電気自動車の残価率は全般的に低い。その理由は、駆動用リチウムイオン電池の性能低下にある。充放電を繰り返しながら走行距離が伸びるに連れて、1回の充電で走れる距離が短くなるわけだ。 とくに2010年に発売された初代(先代)リーフは、リチウムイオン電池の総電力量が24kWhと小さかった。性能劣化の対策も行き届いていなかったので、「中古のリーフを買ったら、1回の充電で100kmも走れなかった」という話が聞かれた。 このような事情から「電気自動車の中古車は、走行できる距離が短くて使えない」という話が広がり、中古車価格も下がった。売却額や残価設定ローンの残価も低く、売りにくいクルマとされてしまった。 しかし直近では、電気自動車の開発者は「以前に比べてリチウムイオン電池が劣化しにくく、急速充電器の連続使用にも耐えられるようになった」という。今後は電気自動車のリセールバリューも、少しずつ高まるだろう。

TAG: #リセールバリュー #残価
TEXT:琴條孝詩
バッテリー容量が変わらないのに航続距離が伸びる謎! エンジン車とは違うEVならではの「持続進化」とは

EVならではの特性により性能を向上 近年、電気自動車(EV)において、バッテリー容量が増えていないにもかかわらず、航続距離や充電性能が向上する事例が増えている。こうした現象は、従来の内燃機関(ICE)車の常識とは異なるEVならではの特性に起因している。EVは、ハードウェアを変更せずとも、ソフトウェアの改良や制御技術の進化によって、性能を大幅に向上させることが可能なのである。ここでは、バッテリー容量が同じであるにもかかわらず性能が進化するメカニズムについて、具体例を交えて解説しよう。 <航続距離を伸ばすBMSの進化> EVの航続距離は、単にバッテリー容量の大小に左右されるわけではない。重要な役割を担うのがBMS(Battery Management System:バッテリーマネジメントシステム)だ。BMSは、バッテリーセルごとの電圧や温度、SoC(State Of Charge:充電状態)を監視し、安全かつ効率的にエネルギーを活用できるよう制御を行っている。 近年、BMSのアルゴリズムが高度化し、より緻密な制御が可能となっている。その結果、同じ容量のバッテリーからより多くのエネルギーを安全に引き出すことができ、航続可能距離の延伸につながっている。 たとえば、初期のBMSではバッテリーの劣化や過放電を防ぐため、使用可能な電圧範囲を狭い領域に制限していたが、走行データの蓄積によって安全性が実証された場合、使用可能なバッテリー容量を拡大することが可能となる。これにより、ソフトウェアのアップデートのみで実質的な性能向上が実現されるケースも少なくない。 <空力性能と走行効率の改善による進化> EVの効率は車体設計によっても左右される。なかでも空気抵抗(Cd値)の低減は、航続可能距離向上に極めて有効である。フロントフェイスの形状見直し、アンダーボディの平滑化、ホイールデザインの最適化など、外観上は小さな変更でも、高速走行時の空力性能に大きな影響を与える。 たとえば、テスラModel Sのドアハンドルはドア面とフラットになるフラッシュタイプが採用されている。また、ボディサイドのキャラクターラインを見直すだけで空力係数(Cd値)が改善することもある。これらの変更は、デザイン面での微調整のように見えるが、空気抵抗を数%削減することで、とくに高速道路走行での航続距離に直接反映される。標準で装着されるタイヤサイズも小さいほど航続距離が延びるので、外観を損なわない程度の小さなタイヤサイズを装着している。 加えて、モーターやインバーターといったパワートレインの効率化も見逃せない。たとえば、インバーターに従来のシリコン(Si)ではなく、シリコンカーバイド(SiC)半導体を採用することで、電力変換効率が向上し、発熱が抑えられる。この結果、冷却に要するエネルギーを削減でき、走行効率が向上するのである。

TAG: #充電性能 #航続距離
TEXT:御堀直嗣
水素燃料電池車は大型トラックでこそ活きる? FCVトラックのいまの立ち位置と立ちはだかる課題

FCVの大型トラックの開発が進んでいる 燃料電池車(FCV)といえば、トヨタMIRAIを思い浮かべる読者も多いだろう。 ほかに、乗用車での技術を応用し、大型トラックに燃料電池(FC)を活用しようという動きがある。トヨタ・グループの日野自動車の例があり、ほかにホンダ(本田技研工業)も燃料電池開発は続けていて、いすゞとともに実用化へ向けた開発が行われている。海外では、ドイツのダイムラートラックと、スウェーデンのボルボが取り組んでいる。 国内では、アサヒグループジャパン株式会社(以下、アサヒグループ)、西濃運輸株式会社(以下、西濃運輸)、NEXT Logistics Japan株式会社(以下、NLJ)、ヤマト運輸株式会社(以下、ヤマト運輸)が、2023年5月から、燃料電池トラックの実証走行を開始した。 日野プロフィアという既存の大型トラックを基に、固体高分子形の燃料電池と、70MPa(メガパスカル=約700気圧)の水素タンクを車載する。1回の水素充填で走行できる距離は、約600km(都市間と市街地の混合モードでのトヨタと日野の計測による)であるという。 トラック輸送には、総重量の制約があり、車両重量と積み荷を合わせた重さの上限がある。したがって、電気自動車(EV)では駆動用バッテリーを車載しなければならず、積み荷の重量に限界があると考えられており、FCへの期待が高まった。 一方で、満載の状態で走る大型トラックは、つねに出力が最高の状況で運転されることになり、生産財としての耐久性をFCで得られるかというのが、ディーゼルエンジンとの置き換えにおいてひとつの注目点になる。乗用車は、一度走り出してしまえば全力加速はほぼ必要なく、いわば巡航状態となって出力を下げても速度を維持できる。しかし、トラックではそうはいかないため、耐久性がより重視されるのだ。 次に、水素充填について。 これは乗用車でも短時間に満充填できるところが、ガソリンなどの液体燃料と同様に扱えるとされ、FCトラックでも期待されるところだ。水素ステーションは設置に数億円かかるとされるが、トラック・ターミナルなど必ず立ち寄る場所に設ければ、国内あらゆるところに設置が望まれる乗用車の場合と異なる。 一方で、水素ステーションは10年を超えて代替え時期を迎えるといわれ、10年ごとの数億円規模の設備投資がどこまで輸送費に影響を及ぼすかも、これから検証されることになるだろう。

TAG: #FCV #大型トラック #燃料電池車

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