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たしかに電気自動車は重い! だがその「重さ」が有利に働く点もけっこうある


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:THE EV TIMES
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重心が低くなることで走行安定性が高まる

電気自動車(EV)は、駆動用のバッテリーを車載するため、車両重量がエンジン車に比べ重くなる。軽自動車の日産サクラや三菱eKクロスEVでも、1トン以上となる1070~1080kgだ。対するエンジン車は、たとえば日産デイズのターボ車でも最大で940kgである。重量の差は、燃費性能に大きく影響し、デイズで最軽量の840kgの車種はWLTCで23.2km/Lであるのに対し、ターボ車は19.4 km/Lまで落ちる。ただしそれは、重量差だけでなく、過給による出力の高さもかかわっているかもしれない。

とはいえ、これまでの常識からすると、車両重量が重いほどエネルギー効率は落ちることになる。

しかしEVは、駆動用バッテリーがなければ走れない。

数百キログラムはするバッテリーを車載しながら軽量化を試みた例として、BMW i3がある。車体を炭素繊維で構成することにより、軽量化を目指した。しかし、一般的な乗用EVでそこまで手を加えるのは、原価の点で難しい。要は車両価格が上がってしまう。そのため、必要以上のバッテリー容量をもたないことが、最大の軽量化策だろう。

BMW i3

一方、駆動用バッテリーが重いことによる利点もある。

ひとつは、床下にバッテリーを車載するのが一般的なので、それによって重心位置が低くなり、走行安定性が高まる。

また、エンジンや燃料タンクといった個別の部品の配置を工夫しなくても、バッテリーケースが車体の前後方向へ長く車載されることから、前後重量配分が改善される。極端にいえば、ドイツのBMWなどがこだわり続けてきた50:50の前後重量配分に近い基本性能を、EVならほぼすべての車種で手に入れることができるのである。

BMWのイメージ

EVの走行安定性の高さと操縦性(ハンドリング)のよさが評価される背景にあるのは、車体床下に敷き詰められた重い駆動用バッテリーのおかげだ。

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