急速充電器の性能は向上している
一般的にEV(電気自動車)を所有するには、自宅に充電設備を設置することが不可欠と考えられているが、日産の都市部の販売店では「最近は自宅に充電設備をもたないお客さまも増えた」という。日本では総世帯数の約40%がマンションなどの集合住宅に住み、都市部ではその比率が70%以上に達する。
そして、充電設備を備えたマンションは一部の新築物件に限られ、仮に充電スペースがあっても1台分だけで、来客用の駐車スペースと兼用している場合も多い。充電設備を備えていないマンションにあとから設置するのは、スペースの確保も困難で、管理組合や自治会の許可を得る必要も生じる。これは相当に難しい。
そうなると、集合住宅に住むなど自宅に充電設備をもたないユーザーは、急速充電器を使って充電することになる。
ちなみに以前の電気自動車では、急速充電を繰り返すと駆動用リチウムイオン電池の劣化が激しく、1回の充電で走行可能な距離が大幅に短くなると指摘された。
それがいまは、開発者によると「温度管理が綿密に行われるから、以前のようなバッテリーの劣化は生じにくい。普通充電との併用が好ましいが、急速充電に頼っても問題はない」とのことだ。EVの技術進歩により、以前に比べると、急速充電器を利用しやすくなった。
その代わり、集合住宅に住むユーザーが急速充電器を積極的に使うと「充電渋滞」が生じる可能性も高まる。2024年3月末の時点で、急速充電器の口数は1万少々とされるが、この内の30〜40%はEVやPHEV(プラグインハイブリッド)を扱う販売店に設置されている。
クルマの販売店に次いで急速充電器を多く設置するのは、郊外の大型商業施設やコンビニエンスストアだ。高速道路や自動車専用道路のパーキングエリア、サービスエリアに設置される急速充電器は意外に少ない。急速充電器全体の10%以下に留まる。
そのために休日になると、充電渋滞が発生しやすい。ユーザーとしては、パーキングエリアやサービスエリアの急速充電器を増やしてほしいが、利用者が少ないために採算が取れない充電設備もある。あるいは「周辺地域の電力インフラとのバランスが重要になり、すべてのパーキングエリアに急速充電器を設置できるわけではない」という指摘も聞かれる。
以上を踏まえると、現在のEVの利用方法としてはセカンドカーが好ましい。長距離を移動するときには、エンジンを搭載するハイブリッドなどのファーストカーを使い、使い勝手の優れた給油によって走る。EVは自宅で充電して、買い物などの短距離移動に使う方法だ。EVの開発者にも「EVの充電は自宅が基本で、急速充電は、電欠しそうになったときの緊急手段」とコメントする人が少なくない。