CHAdeMOは当分の間150kWまで
普通充電と急速充電。こうした表現が最近、日本でもかなり浸透し、その違いについての理解も広まってきている印象がある。
最近では、経済産業省によるEV普及施策の一環として、ベンチャー企業などを巻き込んで全国各地でEV用充電インフラ整備が進んでいることも影響しているのだろう。また、消防法などによる高出力型充電器の設置に関わる規制も段階的に緩和されている状況だ。
そうしたなか、急速充電については、高速道路のSAやPAで最新設備の導入を急いでいるところだ。EV所有者に限らず、そうした機器をSAやPAで見かけることもあるだろう。
具体的には、1基を単独使用した場合の最大出力が90kWで同時に複数のEVに対応できるタイプや最大出力150kWの仕様だ。輸入車ブランドでは、アウディとポルシェが連携し、全国の新車販売店で出力150kWの充電器を設置する事業戦略を進めているところだ。
こうした急速充電の高出力化の傾向は、いつまで続き、またこの先はどこまで出力が上がっていくのだろうか。
IT、電子・電気に関する各種カンファレンスや商業見本市、また自動車メーカーの報道陣向け試乗会など、さまざまな機会に急速充電に関わる人たちと急速充電の今後について話を聞いているが、「CHAdeMOは当分の間、150kWまで」という声が主流だ。
高出力化の最大の課題は、充電器単体のコストではなく電気代だという。イニシャルコスト(初期投資)としては、急速充電器が数百万円かかり、さらに設置工事にも数百万円が必要であり、トータルで1000万円を超えてしまうことも珍しくない。さらに、ランニングコストとしての電気代がかさむ。
そのため、急速充電器をさらに高出力化するのであれば、新しいサービス事業の開拓が必然であろう。
たとえば、家庭や企業における普通充電やV2H(ヴィークル・トゥ・ホーム)、また電池のリサイクル・リユース、さらにスマホなど通信機器の購入・データ通信・通話代を含めるといった、エネルギーマネージメント事業の構築が考えられるだろう。
一方で、グローバルに目を向けると、急速充電方式については、CHAdeMO、アメリカでのCCS1、欧州でのCCS2、中国でのGB/T、そしてテスラ方式であるNACSが並行して存在する状態が続いている。EVシフトがいま、「踊り場」といわれるなか、急速充電の規格について実質的な標準化や統一に関する議論が自動車産業界で盛り上がっているとはいえない状況だ。
それでも、自動車産業界では「2030年代にはEV本格普及の目処が見えてくる」との見解が一般的だ。そのため、急速充電の規格、またエネルギーマネージメント事業を勘案した適正な高出力についても2020年代後半までには、自動車産業界で何らかの動きが起こるのではないだろうか。