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欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回


TEXT:御堀 直嗣
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課題が積み重なったEV開発

一方、欧州でのEV化に偏りがあるのも事実だ。

急速なEVへの移行を強行したため、まだバッテリー原価が下がりきらない段階での車種構成は、高級車や高性能車が主体となる傾向にある。C02排出量規制が2021年にはじまっているため、もともと燃費の悪かった上級車種のEV化が優先されたこともあるだろう。

それによって、大量のバッテリーを車載しなければ航続距離が見込めず、その対処として、超急速充電器の設置が急がれている。ところが、高電圧かつ大電流を駆動用バッテリーが受け入れるため、あらかじめバッテリー温度を上げておく必要が出て、これがバッテリー劣化を早める原因になると懸念されている。

また、EV後の駆動用バッテリーの二次利用についても、開発が進んでいない。したがって、ある時点で急に廃棄バッテリーが増え、資源の無駄遣いや環境負荷を逆に高めてしまうことも想定される。

欧州市場での消費者目線では、価格の高い車種ばかりのEV化が目立ち、一般消費者の買えるEVの選択肢が限られるといった状況もある。日本の「日産サクラ」や「三菱eKクロスEV」に相当する選択肢を設けることができていないのだ。

20世紀にドイツのアウトバーンなどを指標として発展を遂げた高性能化という価値としては、欧州のEVが一気に名乗りを上げたといえそうだ。しかし、そのEV化は、急ぐあまりまだ地に足がついていないというのが実態だろう。EVはエンジン車と違うという原点を見極められなければ、適切なEV社会は訪れないのである。

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