小水力発電所を自前で用意している野沢温泉村とタッグ
大企業にはできない機動性の高い検証・開発に期待
【THE 視点】EVの開発を行うGLMは9月12日、長野県野沢温泉村と共に、カーシェアリング向けの軽自動車規格EV「ミモス」をはじめとした各種超小型電動モビリティを用いた実証実験を同村にて開始した。
サイズや形状の違う3種類の電動モビリティを投入し、坂道や狭路といった道路事情や気候、実際の利用シーンでのそれぞれのモビリティの利点・問題点を持つのかを検証し、本格導入に向けての指標とすることに加えて、次世代車両開発に向けてのデータを収集することが狙いだ。
野沢温泉村は、2022年に村主導で小水力発電所を開設するなど環境対策の模索を独自に行なっている。令和4年策定の「野沢温泉村地球温暖化防止実行計画」を基に、「自然と共に暮らす村」として再生可能エネルギーの活用による様々な取り組みを積極的に進め、村の主要産業である観光との共存を図ると共に、ビジョンに則した実行手段として次世代車両による村内移動手段の構築を急務と捉えている。
今回の実証実験は、環境に配慮した先進的な観光地確立への第一歩となる。
世界的に自動車のEV化が進むが、その一方でエネルギー問題も大きく取り沙汰されるようになっている。エネルギー危機ともなれば、EVもその影響をまともに受けて機能しなくなる。しかし野沢温泉村は小水力発電所を自前で設置しているため、世の中のエネルギー危機の影響を受けづらい特徴がある。このエネルギーを活用してEVを稼働すれば、文字だけではない「ゼロエミッションの村づくり」の達成へと近づく。
また、次世代の移動手段として電動モビリティが全国で導入され始めているが、地域の環境に合わせたモビリティを導入しなければ、その利点を100%活用することは難しい。
野沢温泉村には特に、複雑に入り組んだ狭路や坂道の多さなど特殊な道路環境がある。季節によっても道路条件が大きく違うため、電動モビリティの活用は村独自に検証をしなければならない。
そこで野沢温泉村と野沢温泉観光協会と議論した上で性質の異なる3種類のモビリティ(取扱車両1機種、研究開発用保有車両2機種)をGLMが提供し、村に最も適したモビリティの選択へ向けた課題を洗い出す。
野沢温泉というと筆者にとってはスキーのイメージが強い。とにかく自然豊かな街で、ゼロエミッションを十分に達成できるような自然エネルギーがあふれている。自前で水力発電所を動かすだけでも、ほかの地方自治体よりも一歩先を行っていると思うが、その電力でEVを動かす取り組みとなればかなり先進的な取り組みとなるのではないか。
それも大手メーカーと組むのではなく、小規模なメーカーと組むのが面白い。小さなチームになるとは思うが、逆に機動性に優れているといえ、関係者同士のコミュニケーションと開発速度を高められると思う。
実証実験には特定小型原付のキックボードや「光岡自動車・ライク-T3」なども入るようだ。小さなメーカーだからこそできるスピーディな開発・対応力を存分に発揮してほしい。
この取り組みは、特定の観光地に特化したEV利用の理想形のようなものだと思う。この実証をひとつの好例とし、全国各地でこのような取り組みが広がることを望む。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.09.15]