メルセデスは、電気自動車ブランド「EQ」にワンボウデザインやポップアップ式アウターハンドルなど空力をよくするためのデザインや技術を投入してきた。その意志はこの「EQE SUV」でよりメカニカルな技術にも発展している。その詳細を西川淳氏に解説してもらった。
航続距離を伸ばすための技術の数々
他の上級EQシリーズと同様、日本導入グレードは「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+ SUV」と「メルセデスベンツ EQE350 4MATIC SUV」の2種類とし、まずはローンチエディションから販売されている。今回は試乗が叶った後者(350)を中心にリポートしたい。以下、特に断りのない限り、スペックは350の数値である。
前後アクスルにそれぞれ電動パワートレーン(eATS)を搭載するというシステム構成は既存の上級EQシリーズに準じるもの。前後の駆動力配分はトルクシフト機能によって可変連続的に行われる、というのもご承知の通り。
電動パワートレーンの最高出力は215kW、最大トルクは765Nmだ。肝心のリチウムイオンバッテリーのエネルギー容量は89kWhで、本体及び制御ソフトウェアも全て自社による専用開発品である。パドルシフトを使って三段階のエネルギー回生をセットでき、もちろん回生には最適制御のオートモードも備わる。バッテリーやモーターの排熱を有効活用するヒートポンプ(航続距離を最大10%伸長)も標準で装備。日本仕様専用の機能としては双方向の充電機能があるのも既存モデルと同じだ。カタログスペックの航続可能距離は528km、というから420kmくらいは走ってくれることだろう。
昨今増えつつある150kWタイプの急速充電器を使えば、10%残量から開始して半時間で+47%まで充電できたとの報告があった。通常、高速道路利用における休憩時間は15分程度だろうから、その間だけでも100km走行分に相当する充電が可能ということになる。元々大容量のバッテリーを積んでいるから、ディストネーションチャージさえ確保できるのであれば長距離ドライブでも苦労はない。事実、筆者は東京〜京都間をさまざまなモデルで往復するが、150kW器を静岡あたりで利用できるようなってから、大容量バッテリーEVと内燃機関モデルの所要時間に差が全くなくなった。ちょっとした時間でも繋いでおけば十分足しになるからだ。
EQE SUVには従来のEQシリーズにはない新しいシステムも備わる。ディスコネクトユニット(DCU)だ。これはフロントのeATSにアクチュエーター・クラッチを設け、走行状況に応じフロントモーターを前輪からフリーにしモーターの抵抗を軽減するというもの。クルージング時などにおいて自動的に発動する。ドライバーの意志で切り替えはできない。