前回に続き、加藤博人氏による「トヨタbZ3」のレポートをお届けする。今回はbZ3のデザインを観察していく。これまでのトヨタの車と異なる個性はあるのだろうか。
見れば見るほど不思議なデザイン
トヨタ bZ3のボディサイズは、全長4,725 mm x 全幅1,835 mm x 全高1,480 mmと、全体的なサイズ感は「プリウス」と「カムリ」の間と言えるだろう。ホイールベースはカムリが2,825 mmなのに対し、bZ3は2,880 mmを確保している。
「クラウン」や「ランドクルーザー」よりも30 mm長いホイールベースのおかげで室内空間は素晴らしく広いが、それと同時にエクステリアは言わば「ショートノーズ・ショートデッキ」のような不思議なプロポーションを持つ。4ドアセダンにも関わらず、その見た目は伝統的なセダン形状でもなければ、流行りのクーペ風セダンとも少し違うシルエットであり、そこがbZ3の存在感を唯一無二なものにしている要素のひとつかもしれない。
フロントマスクは「bZ4X」でもすっかりお馴染みの「ハンマーヘッド」形状だ。高さ5分の4ぐらいの位置に前端を設定し、そこから上は鋭く、下はなだらかに続くラインを特徴とする。優れた空力性能はハンマーヘッドだけでなく、フロントフェンダー前端やボンネット両端に位置する空気の通り道も大きく貢献している。そのおかげもあってか、一目見ただけでは理解しにくい、複雑なプレスラインで構成されるフロント周りとなっているのだ。昨今の新興ブランドはどこもシンプルな造形を目指しては似たり寄ったりなデザインだが、それとは一線を画す見た目が街中でbZ3という存在を際立たせているのだと感じた。
サイドはフロントほど複雑ではないものの、有機的なプレスラインからは造形美を感じ取ることができる。Cd値0.218を実現させた要素のひとつであるドアハンドルは、内蔵式のように見えるが、実は表面がフタとなっており、そこに手を差し込んで手前に引くことでドアを開けるスタイルとなる。初見ではどこかに挟まれないかと不安になる「真実の口」のようだったが、慣れてしまえばどうってことはない。
先ほど「ショートデッキ」と形容したように、最後端の膨らみは最小限に抑えられている。それでもトランク容量は439 Lが確保されており、このサイズにしては比較的多めではないだろうか。流行りの一文字テールは両端が三角形の寄木細工のようになっており、近未来的、機械的なルックスに少しばかりの暖かさをもたらしている。