ライバルのBEV専用車と比較すると見えてくる唯一の弱点
UXはそもそも、「都会派コンパクトクロスオーバー」(レクサス)なる触れ込みで市場投入されたSUV。
じっさい、レクサスSUVのなかでは(2023年5月時点では)もっともコンパクトなボディサイズが、ユーザーから評価されているそうだ。
全長4,495mm、全幅1,840mm、全高1,540mmの車体が、2,640mmのホイールベースを持つシャシーに載っている。
ただしパッケージングの面では、やや疑問なしともしない。そもそもピュアEVとして開発されたわけではないので、パワートレインやバッテリーの搭載位置を決めるのにも苦労があったろう。
後席は身長175cmのおとなが乗るにはぎりぎりのサイズ。空間的な余裕はほとんどない。シートをもう少し小型化するとか、やりようはあったろうが、室内のラグジュリー感を優先したかんじだ。
エンジン車とほぼ同じ寸法の室内空間に、大ぶりのシートが並べられている。ドアとシートのすきまには手も入らないぐらい、ぎりぎりまで空間を使っているのだ。
いま欧州では、フォルクスワーゲンが全長4,050mm(ホイールベースは2,600mm!)のID.2を、ボルボがEX30をと、小型サイズのBEVを用意するメーカーが増えてきている。
BEVはバッテリーが大きいので、ボディタイプといえばSUVと相性がいいのだけれど、その先では、価格を含めたダウンサイジング化が進んでいるのだ。
劇的にパッケージングの効率を上げるためには、ゼロからBEVとして設計するか、ソリッドステートタイプ(全固体電池)など、バッテリーに“革命”が起きないとむずかしいだろう。
UX300eは、BEVをすでに経験ずみのひとにとっては、スペース効率に一考の余地ありと感じられるかもしれない。
でも、操縦の楽しさまで考慮に入れると、それでも、なんとかいい線で踏みとどまっていると思うのだ。エンジン車に乗っている運転好きがすんなり乗り換えられる数すくない1台である。