2023年3月
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
HWエレクトロ、中型EVバン「エレモ-K」の先行予約を開始……デイリーEVヘッドライン[2023.03.22]

販売価格450万円(税別) 中型商用EVの選択肢広がる 【THE 視点】HWエレクトロは3月20日、2023年3月21日より、中型EVバン「エレモ-L」の先行予約を開始すると発表した。このモデルは、「東京オートサロン2023」で発表されたモデルで、発売は6月を予定している。目標販売台数は年間500台。 大きさは、全長5,450×全幅1,850×全高2,050mmで最大積載量1,250kg、約7㎥の荷室容積を持つ。徹底した軽量化を図るべく、アルミボディによる基本骨格を持ち、樹脂パネルを多用しているのも特徴だ。バッテリー容量は43.5kWhで航続距離は210km(WLTCモード予測値)。価格は450万円(税抜)となっている。ただし、最初に販売されるモデルは左ハンドルとなる。 筆者もオートサロン2023で実車を見たが、大きさはトヨタ・ハイエースの「スーパーロング・ワイドボディ・ハイルーフ」と同程度にみえた。また、アルミと樹脂を多用した構造が特徴的だったが、積載量がEVとしては1,250kgと多く、その効果が表れているものと推測。これなら荷物配送用車としてはもちろん、救急車等の公共サービス車両のほか、趣味用にキャンピングカーとしても使えそうだ。 これまで同社の「エレモ」や「日産e-NV200」など小型が多かった商用EVだが、つい先日に「いすゞ・エルフ EV」「三菱eキャンター」などが発売され、中型以降のサイズも目立ってきた。このセグメントは配送事業用など多くの需要が見込まれると予想される。商用EVにもようやく選択肢が出てきた感じである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★横浜ゴム、EVにも最適化したハイ・ロード・キャパシティ(HLC)タイヤの生産・販売を開始……大容量バッテリーを備えた重量級EVに対応[詳細はこちら<click>] ★★ランチア、新型車を4月15日に発表と予告……コンセプトモデル「Pu+Ra」に関係するEVか[詳細はこちら<click>] ★日本精工、モーター一体型駆動装置(イー・アクスル)向けベアリングを拡充……低コストで電食対策に成功 ★オペル、EVバンの「Vivaro-e」およびFCEV「Vivaro-e HYDROGEN」で医薬品を輸送……ドイツ・リュッセルスハイムにて実施、積載スペースの温度を一定に保てる特装仕様 ★北海道釧路市、EVを公用車に導入……「日産リーフ」を1台 ★トヨタ、小型EV「C+pod」を改良……ブレーキ・フィールの見直しなど ★トヨタ、小型パーソナルモビリティ「C+walk」シリーズを発表……高齢者支援の「S」を発売、立ち乗りで歩道(公道)走行可能な「T」は5月に発売 ★チューリング、国産LLM(大規模言語モデル)の開発に着手……複雑な言語関係を理解できる自動運転システムの実現を目指す ★日産、山口県柳井市と「ブルー・スイッチ」施策で連携……災害時にEVを電源車として活用するなどの協定

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TEXT:TET編集部
横浜ゴムがEVなど高重量車両に対応するHLC(ハイ・ロード・キャパシティ)タイヤの生産・販売を開始

横浜ゴム株式会社は、大容量バッテリーを搭載するEV(電気自動車)、ハイブリッド車、大型SUVなど車体が重い車両を支えられる、高い負荷能力を備えるHLC(ハイ・ロード・キャパシティ)タイヤの生産および販売を開始したと発表した。 当初は新車装着用の導入を先行して進め、将来的にはアフターマーケットで販売される製品にも拡大する。 HLCタイヤは、従来のXL(エクストラ・ロード)規格タイヤを上回る負荷能力と諸性能を備える新たなタイヤサイズとして、ETRTO(European Tyre and Rim Technical Organization:欧州タイヤおよびリム技術機構)規格に定められた。タイヤサイズ表示の先頭に「HL」と表示される。 275/35R23サイズにおける負荷能力を比較した場合、XLタイヤが900kg(ロードインデックス104)であるのに対し、HLCタイヤでは1,000kg(ロードインデックス108)に拡大する。 HLCタイヤの設計には、荷重耐久性を高めながら静粛性や操縦安定性を確保する、高度な技術が求められる。横浜ゴムは高荷重に対応するシミュレーションを繰り返し、従来のタイヤに比べて高荷重時の発熱量とひずみが少ないHLCタイヤ専用のプロファイルを開発した。 写真は大きな荷重がかかった時の発熱量とひずみの比較シミュレーション・イメージ。左が通常タイヤ、右がHLCタイヤ。HLCタイヤの方が発熱量とひずみが小さく、荷重耐久性が高い。 HL規格のタイヤはピレリ、ミシュラン、コンチネンタルなどのメーカーも開発を表明している。将来的にEVが主体の時代になってもさらなる高性能化や重量増が見込まれることを見据えたかたちだが、車両メーカー側にも車重の増加を抑えながらドライビング・プレジャーを高める努力が望まれる。

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TEXT:陶木 友治
「こうなる! 2023年の自動車業界!」伝説の自動車アナリスト、中西孝樹教授に訊く:第8回

EVの登場と普及は、国内外の政治・経済にどのような影響をもたらすのでしょうか。伝説の自動車アナリストとして知られる中西孝樹さんに、様々な疑問をぶつけます。短期連載の最終回は2023年の展望について語ります。 Q.これまでの議論を踏まえて、2023年の自動車業界の展望をお願いします。 注目すべきポイントは3つあります。一つずつ説明していきましょう。 2023年は、先進国を中心に世界的な景気後退に突入することが予想されます。不況時、新車の売れ行きは鈍ることが普通ですが、逆転現象が起こって新車販売台数は伸張するでしょう。理由は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う2021年以降の減産です。 減産によって供給力が落ちたため、自動車の価格はむしろ上がり、減産すればするほど利益が上昇するという不思議な現象が発生しました。2023年はコロナ禍の影響の揺り戻しにより、新車需要が低下する以上のスピードで供給回復が見込まれるため、不況下でも新車販売が伸びることが予想されます。自動車業界には「数量回復」という追い風が吹くはずです。 販売台数が伸びるからといって、楽観は禁物です。二つめの注目ポイントについて、「人件費」の高騰を挙げたいと思います。 現在、世界を凄まじいインフレが襲っていますよね。自動車メーカーも「コストインフレ」の圧力を受けています。コストインフレとは、原材料や資源価格の上昇による資源インフレ、エネルギーインフレ、賃金の高騰による賃金インフレなどが代表的です。クルマの場合、原材料の高騰等により1台あたり実質20万円近くもコストアップしています。欧米ではこの影響の大部分を新車価格の引上げへ転嫁できていますが、日本では車両の販売価格そのものは上がっていません。20万円のコストアップ分の大部分を、メーカーが一旦受け留める形で影響を吸収しています。円安が進展したことで、円安メリットでその負担を吸収できる余力があったことも事実です。 このコストインフレが緩和されるのか、それともさらに強まるのか注視していく必要がありますが、私はコストインフレがさらに進むと思っています。理由は原材料等の高騰ではなく、日米市場ともに賃金のさらなる高騰が起きると予想されるからです。 アメリカは賃金上昇ペースが速く、自動車メーカーの工場で働くよりもマクドナルドで働いたほうが賃金が高いという、一昔前なら考えられない状況が出現しています。マクドナルドのようなサービス業に人材の流出に歯止めが掛からない状況です。 工場に人材を呼び戻すためには、賃金を上げざるを得ませんが、賃金を上げてまで新しく人を雇ったとしても、その人材が熟練するまでには一定の期間が必要ですから、当然、高い生産性は見込めません。つまり生産性の低い人材を高い賃金で雇わなければならないという状況が予想され、これは業績悪化の要因となります。販売数量が伸びたメーカーは利益増によりコストインフレを吸収できますが、それができなかったメーカーは業績悪化を免れないと思います。 Q.話をEVに限れば、2023年はどのようなことが予想されるでしょうか。 それが3つ目の注目ポイントです。アメリカやヨーロッパを中心にEVの新型車がたくさん発売されますから、世界的な景気後退の中でも、EV自体は快調に販売を伸ばしていくと思います。 EVは世界的な関心を集めているワードで、毎日のようにEVの動向がメディアで報道されているため、すさまじい勢いでEVシフトが進んでいるかのような錯覚に陥りそうになります。 しかし現状では、EVが一般ユーザーにまで浸透しているとはとても言えない状況です。アメリカでも日本でも、EVを購入しているのはごく一部の富裕層や高所得者に限られるため、本格的なEVシフトはまだ到来していません。富裕層や高所得者の所有車の一部がEVにシフトしているに過ぎなかったのです。 ところが、昨年9月を転換点として、テスラはEVの価格引下げに戦略を転換し、2023年1月には米国で9%~20%も小売り価格を引き下げる安売り攻勢に転じています。2023年はEVの低価格化の始まりとなるでしょう。一部の富裕層でない消費者がこの価格変動にどの様に反応するか、非常に強く注目しています。 伝統的な自動車メーカーはEV商品投入を積極化させていくのですが、低価格シフトがその出鼻をくじく格好となっており、EV収益性は際どく悪化し事業性そのものが崩壊するかもしれません。 日本メーカーはある意味この戦いの構図にはまだ参戦している状態ではありません。出遅れている日本メーカーが安全なところに立っていると考えるべきか、それとも戦う前から敗北していると考えるべきか、大きな論点となっていくでしょう。 (インタビュー:TET編集長 田中 誠司)

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TEXT:烏山 大輔
アウディ、2025年までに10車種のEVを発売、Q6 e-tronは今年後半に発表予定

アウディは2025年までに20車種以上のニューモデルを販売する予定で、そのうち10車種以上はEVである。2023年後半に発表される予定のQ6 e-tronモデルシリーズは、ドイツのインゴルシュタット本社工場で生産される初めてのEVである。本社工場敷地内に専用のバッテリー組み立て工場を建設。この工場で重要なノウハウを蓄積し、将来に向けた従業員のトレーニングを実施することができる。独自のバッテリー組み立て施設は、eモビリティへの移行を推進する、アウディの取り組みにおける重要な拠点となる。 デジタル化と電動化の大きな飛躍 アウディはQ6 e-tronプロトタイプを、ヨーロッパの北極圏でテストしている。Q6 e-tronシリーズは、ポルシェと共同開発したプレミアムプラットフォームエレクトリック(PPE)を採用する初のEVである。800Vの主電源システム、パワフルで効率的な電気モーター、革新的なバッテリーと充電管理システム、新開発の電子アーキテクチャーを備えたQ6 e-tronプロトタイプは、アウディの電動化とデジタル化における次の大きなステップを体現するモデルである。 Q6 e-tronのラインナップはSUVとSportbackである。インゴルシュタット工場でスキルアップされた従業員により持続可能な方法で生産され、アウディの電動化の未来を表現している。アウディは、完全なコネクテッド機能を備えたプレミアムなeモビリティのリーディングプロバイダーへと急速に変革を進めている。 過去最高水準の業績 3月16日に発表された2022年度の会計では、売上高は16.4%増加し618億ユーロ(約8兆7,400億円)に達し、営業利益は約40%上昇して史上最高の76億ユーロ(約1兆700億円)を計上した。営業利益率は昨年の10.4%から12.2%に上昇し、ネットキャッシュフローは48億ユーロに(約6,800億円)達し、アウディ史上2番目に高い数値となった。 2022年度の好調な業績の主な要因には、世界的に困難な経済状況の中での一貫した危機管理、良好な価格ポジション、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティ ブランドの好調な業績が含まれる。2022年には、EVの販売台数も急増(44%増の11万8,196台)した。 2023年、アウディは今後発表されるQ6 e-tronシリーズを皮切りに、アウディ史上最大のニューモデル攻勢を展開する。

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
テスラ、次世代パワートレインの開発を発表……デイリーEVヘッドライン[2023.03.20]

1,000ドル以下のパワートレイン 登場予定の「モデル2」から採用か 【THE 視点】テスラは3月1日に開催した投資家向けの説明会「2023 Investor Day」で、次世代のモーター一体型駆動装置(イー・アクスル)」のコストが1,000ドル以下になると発表した。 「イー・アクスル」は、モーター/インバーター/減速機が一体となった駆動装置だが、次世代型のコストが1,000ドル(約13万円)とは驚きだ。ちなみに今のモデルでは、モーターとインバーターだけで15万円程と予想している。それに減速機を入れて約13万円とは大幅なコストダウンだ。 確かにテスラは、生産台数も多く量産効果も出ていると思うが、その秘密は次の通り。「モーターに使われる磁石にレアアース(希土類)を全く使わない」という。レアアースを使わない永久磁石式モーターとしたことでコストも低減するが、中国依存が高いレアアースを避けることで脱中国化も考えてのことではないだろうか。 また、ようやくインバーターに使われるようになった半導体のっひとつであるSIC(炭化ケイ素)は、従来のシステムから75%も減らすとのこと。SICは半導体の中でもかなり高価だ。 テスラは、車体部品も大型のキャスティング(鋳物)をフレームに使うなどして、部品点数を減らしコストダウンを図ってきた。さらにパワートレインのコストも削減できれば、テスラはさらに安くなる。これは、登場が待たれるエントリーモデル「モデル2」から採用されるのではないだろうか。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★アウディ、「Q6 e-tron」のプロトタイプを極寒地でテスト……2023年後半に発売予定[詳細はこちら<click>] ★★アウディ、2022年のEV販売台数が44%増加の11万8,978台……2025年までにEV10モデル以上を投入 ★ZF、電動ドライブの受注額が300億ユーロ(約4兆2,500億円)超え……乗用車と商用車を合わせて ★アルファバスジャパン、自社EVバス製品の「六価クロム」使用状況を調査……ボルト・ナット系の2種類部品が該当、部品交換を完了し問題なし ★「第21回学生フォーミュラ日本大会2023」開催決定……EVクラスには国内20チーム・海外10チームが参加、8月28日(月)~9月2日(土)にエコパ(静岡県袋井市・掛川市)にて ★Luup、電動キックボード事故の調査研究を開始……交通事故総合分析センター(ITARDA)・東京海上ホールディングスと共同で ★ボルボ、韓国でEVトラックを販売開始……3モデルを用意 ★ボルボ、南アフリカにEVトラックを初納入……ゴミ収集仕様車として ★日産、プレステージ・インターナショナル(PI)と「ブルー・スイッチ」施策で提携……EVを活用した災害対策など、PIも社有車を順次EVに置き換え

TAG: #THE視点 #イー・アクスル
TEXT:烏山 大輔
国内初商用EVメーカーHWエレクトロとアネスト岩田が資本業務提携を締結

HW ELECTRO(HWエレクトロ)株式会社は、アネスト岩田株式会社と、2023年3月に「Made in Japan=最高クオリティーの実現を目指す」をテーマに、自動車納車前整備(PDI)の業務提携ならびに資本提携を締結した。 アネスト岩田は今年創業97年の空気圧縮機や真空機器、塗装・塗布機器の製造販売を行う会社である。 HWエレクトロは、次世代の多用途EV商用車「ELEMO(エレモ)シリーズ」の車輌の開発・製造と販売を行うファブレスメーカーである。「環境問題」と「社会貢献」の視点から「The Essential Piece of Mobility(人に、社会に、不可欠なピースであるために)」をコンセプトにしている。2021年4月に輸入小型のEV商用車として国内で初めてナンバーを取得し、2021年7月24日より「エレモ」、11月20日より「エレモ-K」の販売を開始した。そして2023年6月には、中型バン「エレモ-L」が販売開始予定である。 流通・サービスの拡大に向けて HWエレクトロはものづくりにおいて、技術に加えものづくりに対する姿勢が品質の良さに繋がるとともに、信頼性としても評価されるとし、これを「Made in Japan」であると定義づけしている。この「Made in Japan」を実現するために、アネスト岩田の歴史と実績における製造技術が必要不可欠であると考えた。 またアネスト岩田は2026年に創業100周年を迎えるにあたり、新規事業開拓の必要性を強く感じていた。そこで、HWエレクトロの環境に配慮したラストワンマイル配送市場へのモビリティ事業や、商用EVが災害時におけるエネルギー源となり得る点に将来性を感じ、今回の資本業務提携が締結された。 この資本業務提携により、日本国内でのエレモの納車キャパシティーの拡大および全国レベルでのサービス体制の構築を実現することで、より多くのユーザーにエレモシリーズの車両を届けることができる。そして結果的に環境に優しく暮らしやすい社会の構築に貢献したいとしている。

TAG: #エレモ #商用EV
TEXT:岩尾 信哉
BMWグループ 年次総会を開催 新型5シリーズに電気自動車仕様「i5」を導入

BMWグループは3月15日(現地時間)、独ミュンヘンにおいて「BMWグループ・アニュアルカンファレンス2023」を開催、財政状況の報告とともに、今後のモデル展開などについて明らかにした。ここでは電気自動車についての話題を中心にまとめてみる。 電気自動車の納車台数は増加 2022年のBMWグループ全体での総納車台数は、前年を4.8%下回る239万9,632台だった(前年同期:2,521,514台)。半導体部品の供給難、サプライチェーンの混乱、新型コロナによる中国のロックダウンなどの影響を受けたとされ、このうち電気自動車(バッテリーEVとプラグインハイブリッド:PHEV)は、合計で納車台数の18.1%(433,792台/前年比32.1%増)を占めた。BMW AG取締役会会長であるオリバー・ツィプセは「2023年は電気自動車(BEV)のさらなる成長を目指しており、総販売台数の15%を占めると見込んでいます」と述べた。 BMW「i5」など、各ブランドのBEV導入予定 注目の新型車導入スケジュールについて、BMWグループは2023年10月に新型5シリーズ・セダンを発表することを明らかにした。さらにPHEV、48V仕様エンジンの各モデルを設定するとともに、BEVとして「i5」を新たに導入する。i5はパフォーマンスモデルを担当するBMW M社が開発を手がける。なお、新型5シリーズにはステーションワゴンである「ツーリング」が2024年春に発表予定とされ、i5にも設定されることになる。i5はiXと合わせて、ドイツ・ディンゴルフィング工場で生産される。加えて、近い時期に発表予定のBEVの新型車としては、2023年末にコンパクトSUVの「iX2」が市場に投入される。 10年以内に電気自動車のみのブランドとなることが明らかにされているMINI とロールス・ロイスについても触れておこう。2030年代初頭にはオールEVブランドになるとされるMINIでは、ミニ・カントリーマン(日本市場名:クロスオーバー)が、ICEモデルとともにBEVを導入予定だ。さらに昨年発表された「エースマン・コンセプト」の量産型が新たなシリーズモデルとして今年加わる。ロールス・ロイスでは、2022年に発表された同ブランド初のBEVである新型車「スペクター」が今年マーケットに提供される。 BEVラインナップのさらなる増強 BEVの販売強化は欧州の自動車メーカーとして必須の課題だ。BMWグループはすでに12種類のBEVをラインナップしているが、今後数年間はBEVが急成長を遂げると予測。2024年にグループ内において新たに5車種のBEVを発表するとしている。 BMWグループとしてのBEVの総納車台数は、昨2021年から倍以上となる21万5,000台を達成。2023年には総納車台数の15%がBEVで占められ、2024年には少なくともグループでの新車の5台に1台がBEVとなり、2025年には同じく4台に1台、2026年には3台に1台程度がBEVになると見込んでいる。2030年に向けて、同年までに通算1,000万台のBEVを顧客に納入することを目指す。

TAG: #BMW #i5 #iX2 #iX5
TEXT:御堀 直嗣
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第6回:充電あっての電気自動車

普通充電と急速充電の違い 電気自動車(EV)について最大の懸念が、充電だろう。そこから一充電走行距離が多い少ないといった議論が盛んになる。 しかし、充電の本質を理解すれば、たいした懸念材料ではない。そもそも、充電に対する理解不足が世界的な混乱をもたらしている。 EVの充電には、普通充電と急速充電がある。 普通充電とは、100ボルトまたは200ボルト(V)の電圧で、時間をかけて駆動用バッテリー(現状ではリチウムイオン・バッテリーが主流)に充電する方法だ。コンセントなどから交流の電気を流し、車載の充電器で直流に変換してリチウムイオン・バッテリー(以下、LIB)に充電する。普通充電ではバッテリーの劣化も抑えられる。 急速充電は500~800Vの高電圧で一気に電気を流し、短時間にLIBに充電する方法である。急速充電器で交流から直流へあらかじめ変換しておき、EVのLIBへ直流電気で充電する。リチウムイオンに限らずバッテリーの電気は直流なので、一気に充電することができる。ただし、大電流を流すために安全の上で満充電にはしにくく、またLIBを劣化させやすくもある。 基礎充電あっての電気自動車 充電方式に普通充電と急速充電の2通りがある以外に、充電という行為そのものにも種類がある。ひとつが基礎充電だ。ほかには目的地充電と経路充電がある。 基礎充電では、自宅や事務所などで寝ていたり仕事をしていたりする間に、普通充電で時間をかけてじっくり充電して、満充電にする。これこそがEVの充電の基本だ。これなくして、EVを使いこなすことはできない。 また、基礎充電を行うことで、EVへの充電によって電力が逼迫するという問題を起こさずに済む。自宅で夜間に基礎充電すれば、そもそも電力使用量が減る時間帯なので、系統電力の逼迫など起こるはずもない。電力使用量が増える日中に急速充電で間に合わせようとするから電力逼迫が懸念され、世の中すべてがEVになったら原子力発電所を10基増設しなければならないといった勘違いが生じる。夜間に基礎充電すれば、電力会社に喜ばれこそすれ、困らせることはない。 ところが、国内ではマンションなど集合住宅の駐車場に、基礎充電用の200Vコンセントを設置できない状況が、初代リーフの発売により量産EVが実現してから13年も解決されずにきた。人々のEVへの理解不足によるかもしれないが、そのために、やむを得ず急速充電を増やさなければならない事態に陥ったのである。 自宅での基礎充電と外出先での目的地充電 基礎充電の次に普及しなければならないのが、普通充電による目的地充電だ。 目的地充電とは、宿泊施設や仕事場、食事処、買い物をする店など、出掛けた先の駐車場で充電することをいう。宿泊施設であれば、家と同じように寝ている間に普通充電で満充電にできる。仕事先であれば、仕事をしている間に満充電にできる。ただしこの場合は日中になってしまうが、日中の電力消費が最大になる時間帯を避けて充電管理することも不可能ではない。 食事処や買い物の店などでは、急速充電が適切ではないかと思うかもしれない。しかし、食事や買い物などでの滞在時間は1~2時間はあり、急速充電は30分で一度仕切り直しになるので、後続のEVがいれば待たせることになる。そこで食事や買い物を中断して充電の様子を確認しなければならない。スマートフォンで情報を得ることはできるが、それでも食事や会話に夢中になったり、買い物選びに集中したりしにくくなる。 目的地充電の普通充電では、もちろん満充電に足りないだろう。だが、そこから次の目的地まで移動する電力が確保できればよいのであって、次の訪問地でも目的地充電できれば、少しずつの充電を繰り返しながら帰宅できる。 基礎充電と目的地充電こそが、EVを最大に有効活用する充電方法だ。

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
フォルクスワーゲン、新型コンパクトEV「ID.2all」を本国で発表……デイリーEVヘッドライン[2023.03.17]

「ポロ」クラスのコンパクトEV 価格は 2万5,000ユーロ未満 【THE 視点】VW(フォルクスワーゲン)は3月15日、小型EV 「ID.2all」を発表した。2025年市販予定のコンセプトモデルで、新開発のプラットフォーム「MEB Entry」が採用されるという。 最高出力166kW(226ps)のモーターで前輪を駆動し、最大で450km(WLTP)の航続が可能と発表されている(電池容量未発表)。ボディサイズはエンジン車の「ポロ」に近く、長さ4,050mm×幅1,812mm。しかし室内は「ゴルフ」並みの空間を確保しているという。 最大の特徴は価格で、2万5,000ユーロ(約360万円)未満と発表されている。この価格で450kmの航続距離を確保とは驚きだ。価格も航続距離もガソリン車に近く、充電を気にしたり冷暖房を抑えたりなどの我慢をしないで乗れるEVだ。日本でも早期に発売されることを願うばかりである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★フォルクスワーゲン、2026年までにEVモデル10車種を発売予定……価格2万5,000ユーロ(現在約360万円)以下を目指す ★★HWエレクトロ、塗装機器のアネスト岩田と業務提携……自動車納車前整備(PDI)について業務提携並びに資本提携[詳細はこちら<click>] ★ノルウェーのヘキサゴン・プルス、日野と提携し米国でEVトラックを販売……日野のシャシーをベースにEV化 ★テスラ、オートパイロットの体験会を実施……3月15日(水)〜4月28日(金)、「テスラセンター稲毛」「テスラサービスセンター東名川崎」「テスラ心斎橋」にて ★BYD、沖縄にショールームを開設……「BYD AUTO 沖縄」が国際通り入口にて3月16日(木)よりオープン ★音楽事業のヤマハ、多言語対応EVレンタルバイクサービスを開始……「代官山蔦屋書店」などにて3月16日(木)より ★ユアスタンド、マンション契約駐車区画へのEV充電器導入をサポート……導入費用・ランニングコストを全額支援、6月30日(金)受付分まで ★スズキ、公道用電動自動配送ロボット事業へ進出……自動配送ロボット開発のロンビーと共同開発、3月13日(月)〜23日(木)まで広島工業大学のキャンパスおよび周辺の公道(広島市佐伯区)にて配送実験を実施 ★日産、三重県木曽岬町と連携……「ブルー・スイッチ」施策213件目、災害時などにEVを電源車として活用 ★帝人、移動可能な小型燃料電池/圧力容器ユニットを開発……東急建設の渋谷駅周辺開発工事の現場で実証実験、2026年6月より

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TEXT:福田 雅敏
EVバスの現在地、現役EV開発エンジニアが参加した勉強会で浮き彫りになったEVバス普及への課題[THE視点]

2023年3月14日、東京都内で業界関係者・識者向けの勉強会「交通ビジネス塾 第135回『社会と事業者に恵みをもたらすEVバスの普及に向けて』」が開催された。 この催しは2015年に筆者も講演をしたことがあるが、今回は受講側として参加した。EVバスの普及についてがテーマだが、EVバスを導入する利点と難点を、実際に導入した企業から話を聞くこともできた。ぜひ世の中に知らせたい内容なのでレポートをしたい。 商用・公共交通用EV普及に向けて補助金を用意する政府だが導入は進まず 最初の講演は「EVバスの普及に向けた国交省の取組み」だ。国土交通省・自動車局・技術環境政策課・環境基準室長・小岩慎之氏が登壇した。 電動車の構造から始まり、電動車が必要な理由、CO2の削減について説明があり、2050年カーボンニュートラルに向けたロードマップが示された。商用車(バスを含む)の小型GVW(車両総重量)8トンクラスでは、2030年に新車の電動化率を20~30%に増やし、2040年には100%を目標としているという。 今後10年を見据えたロードマップでは、官民合わせ10年間で150兆円の投資となるとのこと。この金額は車両開発費のみならず、インフラまで含んだ数字となっている。 輸送事業者におけるEV等の導入目標については、2030年度の保有台数に占める割合として、トラックの8トン以下で5%。8トン超については示されなかったが、バスは全体(小型から大型まで)5%とし、タクシーについては8%と示された。 海外では、ノルウェーが乗用車で2025年までにHEV/ガソリン/ディーゼル車の販売を禁止。商用車では、都市内バス/小型トラックもEV・FCEVの販売比率を100%と他に先行している。これに米国が続く。 日本でのEVバスの導入状況であるが、24万台程度のバス保有台数のうちEVバスはわずか150台程度に留まる。僅か0.1%の割合だ。このうちほとんどが中国製というのが現状である。 今後の日本における次世代商用車(EV・FCEV)の普及・導入に向けた取組として、「産学官連携による高効率次世代大型車両開発促進事業」「グリーンイノベーション基金事業・スマートモビリティ社会の構築」「次世代商用車導入支援」などが示された。 このうち、「グリーンイノベーション基金事業・スマートモビリティ社会の構築」には、2050年カーボンニュートラル実現に向け国庫負担額として1,130億円を計上しているという。「次世代商用車導入支援」では、令和4年度二次補正と令和5年度当初予算合わせ約250億円が計上されている。 このほか、一般乗合旅客自動車運送事業者に係る特例措置の創設により、EVバス等に係わるものの固定資産税・都市計画税の軽減、水素活用による運輸部門等の脱炭素化支援事業(環境省)、商用車の電動化促進事業(経済産業省・国土交通省連携事業)など、2050年カーボンニュートラルの達成を目指しているという。 ※資料出典:国土交通省 EVバス導入事業者が悩む車両トラブル対応 2番目の講演は「EVバスの導入経験と国への政策への希望」だ。登壇者はイーグルバス株式会社・代表取締役社長の谷島 賢氏(下記写真の右が谷島 賢氏、左は小岩慎之氏)。同社は埼玉県川越市を拠点に貸切・路線バスを運営する。 イーグルバス社がEVバスを導入した理由として、社内事情と対外的事情があったという。その事情とは、小江戸川越巡回バスの老朽化によるものだ。 これまでマイクロバスをわざわざボンネット付きのバスに改造して走らせて来たというが、乗車定員が少ないこと、そのため採算が合わないこと、そして導入後20年を超えメインテナンス・部品調達の問題が露出。これに対外的事情としてSDGsの世界的な広まりもあってEVバスの導入に踏み切ったという。 イーグルバスが保有するEVバスは合計2車種7台で、ボンネット付き中型2台に路線型小型(全長7m)バス5台である。 導入した中国製EVバスについて赤裸々な意見が伺えた。中国製バスは、工場では日本向けのステッカーが貼られ特別扱いされているというが、それでも部品の品質がチープで壊れやすいという。「逆に日本人は過剰品質を求め過ぎるのか?」とも話されていた。 それでも購入する理由は、国の補助金を入れると小型バスが1,300万円程度で購入できるからだ。同じサイズの国産ディーゼルバス(日野・ポンチョ)よりも安く、さらに環境性能・騒音・走行性能が優れているのがEVバスのメリットとのこと。 実際にハンドルを握るドライバーからは、良い点として「力があり運転が楽」「エアコンが効く」「始業点検が楽で運転している優越感もある」との声が上がっているという。逆に悪い点として「ブレーキ(回生)に慣れるまで時間がかかる」「ウィンカーとワイパーのレバーが逆」「スイッチ等中国語なので分からない」とのことだが、肯定的な意見が多いようだ。 メカニックからは、「分からないことだらけで細かなトラブルも多く自ら直すことが出来ない」「トラブルの多くが原因不明のためその究明が大変」だという声が上がった。さらに日本製の料金箱や、行先表示板などを取り付けたら、電力が足りなくなり止まることもあったという。 また、充電方式も日本の急速充電規格の「CHAdeMO(チャデモ)」の充電器は高いとのことで、中国規格の「GB/T」のまま充電器も持ち込んで運行しているという。 その充電も、50kWを超える急速充電をすると充電量による電気代は少し安くなるが、基本料金が高くなるのが問題と話していた。これに電力使用時のピークが上がると、向こう1年間の基本料金が高くなるのも問題とのこと。 そのため、充電時にはピークを越えない気遣いも必要で、経済性(ランニングコスト)は、2年程度では判断できないとのことだった。冬場の暖房や真夏日のエアコンフル稼働により電費は悪化するとのこと。数年後にバッテリーが劣化した場合の交換費用も掛かるので、導入2年程度で経済性はわからないというのは理解できる。 最後に国への要望として「補助金の申請をいつでも出来るようにして欲しい」「補助金はしっかり予算化して減額はしないで欲しい」「EVバスへの電気料金体系を何とかして欲しい」など話していた。 中国製は壊れやすくメインテナンスも大変と言われていたが、EVバスを2台から7台へと増車している前向きな姿勢には、採算だけでなく、SDGsにも真剣に取り組んでいる証と感じた。 この2件の講演を聴いて抱いた感想は、国としても大掛かりかつかなり野心的な目標を掲げているということだ。24万台あるとされるバス。その5%が2030年にEVバスとなると、今後7年で1万2,000台となる。これから普及が加速はされると思うが、かなり補助金とラインナップが増えないと達成は難しいだろう。 資料出典:イーグルバス株式会社

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