#EV
TEXT:御堀 直嗣
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

TAG: #EV #EV知識・基礎の基礎 #御堀 直嗣 #電気自動車
TEXT:小川フミオ
VWはBEVとICEを両立? 中長期的なラインナップを製品開発責任者が語る

BEV(バッテリー電気自動車)化が進むなかで、VWは、IAAでは新型「パサート」でICE(内燃機関)用プラットフォームも発表した。インタビューのなかでは「MEBプラス」というBEVプラットフォームの計画もあるいう。ライナップとパワートレインのプランニングは、どうなっていくのか。 ICE用プラットフォームは、8〜10年は改良をかさねる ーーモデル計画についてうかがいます。この先ラインナップの数は増えますか? あるいは、減っていきますか? 「いま現在、私たちは、ICEとBEVと、パワートレインをみても、非常に多くのラインナップを持っております。ID.シリーズと名付けたBEVのモデル数は、ご存知のとおり、まだ限られていますけれど。ICEの生産をすぐ止めるかというと、ごくさいきん、MQBエボというICE用のプラットフォームを発表したばかりです」 ーーMQBエボは、23年のIAAモビリティで発表された新型パサートにも使われるプラットフォームですね。 「MQBエボは、このさき、最低でも8年から10年ぐらいは使用していく予定です。ただし、今回開発して、これで完成、あとは何もしないというわけではないです。約2年ごとに、新しい技術や新しい機能を投入していくつもりです」 ーーでは、ICEモデルの数は維持していくのですか。 「欧州においてはICEモデルを減らしていくのは間違いないです。他の市場に関しては事情は違う場合がありますが、欧州では、26年ぐらいからBEVを増やしていきます」 ーーいまのID.シリーズも、やはり改良を重ねていきますか。 「はい、明確なプランをもっています、MEBプラスというプラットフォームです。MQBエボと同じように、つねに最適化をしていくというアイディアをベースに開発するものです。いまのMEBの進化形ですね」 ーーID.2 allや、ID.GTIコンセプトは、いまのID.シリーズと違い、モーターをフロントに持ってきて、前輪を駆動するといいますね。なぜ、わざわざ180度、変えるんでしょうか。 「端的に理由を言うと、コストです。ドライブトレインをフロントに集めたほうが、コスト節約になるのです。(たとえばBEVでは電気配線に使うハーネスのコストが高く、ID.2allなどではそれを短くすることでコストダウンが図れる、とインタビューに同席していたVWの広報担当者が説明してくれた)。あともうひとつ、ターゲット顧客が前輪駆動車の運転に慣れていることも考慮しています」 sameではないけど、similarになる ーードライブフィールはどうでしょう。ICEのゴルフGTIとID.GTIコンセプトと比べた場合、ドライブフィールも同じようにしようと考えていますか。 「ゴルフGTIの本質は、俊敏であり、正確な操作性が魅力になっています。ステアリングやダンパーも、非常にきびきびとした走りを目的とした設定です。同時に、スムーズであり、乗っていて快適でなくてはなりません。街乗りや遠出を含めて、すべての点でICEのゴルフGTIは、完璧な回答だと思っています」 ーーそれがめざすところですか。 「電動化にあたっても、このように幅広い使い方に対応しなくてはならないと認識しています。ゴルフGTIのDNAをいかにBEVで実現していくか。ただし、ICEとBEVとでは、完全におなじクルマにはならないです。パワートレインの特性が、ICEとBEVとではちがってきます。それでも、いわゆるsameではないけど、similarになるのではないでしょうか」 有言不実行よりは不言実行 ーーID.GTIコンセプトの資料を読むと、ゴルフGTIクラブスポーツのようなフロントディファンレシャルロックも採用されるとありますね。 「導入を決めています、えっと、これをなんて呼ぶか。じつは1時間前に、フロントアクスル・ロックにしようと決まったんです。なかなかすんなりとおぼえられないんですが(笑)。ドライビングエクスペリエンスマネージャーを搭載し、ダンパーの設定など、非常に俊敏で、正確なドライビングフィールをめざします」 ーーパワーは。ID.2allと、ID.GTIコンセプトで、どれぐらい違いますか。 「ドライブフィールとパワーにおいて、2車の差別化を図っていきます。ID.GTIコンセプトは、(全輪駆動の)ゴルフRの未来形ではないことも、ここで申し上げておきます。数字に関しては、1年後には言えるかもしれませんけど、今日は言えないです。有言不実行よりは不言実行の方がいいと思っています(笑)。いま高い数値を出して、あとで、実現できませんでしたというよりは、ちゃんとしたことを申し上げたほうがいいですよね」 <Vol.3へ続く>

TAG: #EV #VW #戦略
TEXT:小川フミオ
どうなる?IDシリーズのミライ。VW製品開発責任者に、その展望を訊く

IAAモビリティでのVWの存在感は大きく、発表した「ID.GTIコンセプト」は注目を集めていた。ID.4と異なるドライブトレインを持つこのモデルをみて、これからのラインナップへ期待を高めて小川フミオが製品開発責任者にインタビューをした。 180度かわったドライブトレイン 2023年、ミュンヘンで開催された自動車ショー「IAAモビリティ」の目玉ともいえるのが、フォルクスワーゲン(VW)が発表した「ID.GTIコンセプト」。 興味ぶかかったのは、このモデルと、このモデルのベースになる「ID.2 all」(2025年末発表予定)のドライブトレインだ。 日本には「ID.4」が導入されているVWのBEV「ID.」シリーズ。ドライブトレインの基本レイアウトは、リアモーターの後輪駆動。 それに対して、上記「ID.2 all」と「ID.GTIコンセプト」は、車名のとおりいまはコンセプトモデルとはいえ、フロントモーターと前輪駆動方式と、いわば180度ちがっている。 なぜわざわざ変えるのだろう? そんな疑問を含めて、フォルクスワーゲンのボードメンバーで、製品開発を統括するカイ・グリューニッツ氏にインタビューを行った。 ーーID.GTIコンセプトを作るのは、既存のGTIオーナーを安心させて、将来的にICEのGTIからの乗り換えをうながすのが目的ですか。 「そうですね。すでにクルマを所有しているひとが、次にBEVを選んでくれるよう説得しなければなりません。不安材料を取り除くとともに、積極的な購買動機を持っていただきたいのです」 ーーそのときに”武器”になるのが、GTIのヘリティッジだったのですね。 「まず、市場で評価されるVWらしさとは何であるかということを、私たちは考えました。そして、過去のレガシー、ヒストリー、ブランドといった点から、VWをVWたらしめているものは何であるかということを、突き詰めたのです」 ーー結果たどりついたのが、ID.GTIコンセプトですか。 「(乗り換えへの)説得力を持たせるためのデザイン。そのためには、内燃機関と似たようなデザインがまず大事だよねと。BEVにスイッチしても安全であるというメッセージを、デザインに込めるべきだと考えました。同時に、新しいデザインは、アグレッシブなものでなく、むしろ古典的な要素をしっかり盛り込もうと。そう意思決定しました」 2万ユーロ以下のモデルや大きなサイズのSUVを計画中! ーーでは、ID.2allとID.GTIコンセプトは、いくつもある選択肢のひとつ、というより、VWのラインナップにおいて、大きな柱になりうるものだということでしょうか。 「フォルクスワーゲンをフォルクスワーゲンたらしめているものは何かと考え、(ヘッド・オブ・デザインの)アンドレアス・ミント氏が発表したとおり、デザインの3原則をうち立てました。Stable(安定性)、Likeable(好感度)、Exciting(刺激)です。それをID.2 allでかたちにしました。2025年にID.2allを発表し、そのあと、同様のコンセプトをすべての車両に展開する予定でいます」 ーーそのときに新しいBEVのシリーズは「ID.」の名前を継続して使いますか。現在のラインナップを参考にすると、ID.2allより小さな数字はID.1しかない。いっぽう、ID.7はすでに全長が5m近いサイズですね。ID.8があるとしたら、そうとう大きなクルマになるしかないですよね。 「ID.2allよりも価格の低い、2万ユーロ以下のモデルはいますでに検討はしています。ID.2allよりも大きいけれど、ID.3やID.4との間に入るモデルも計画にあります。それ以外にも、SUV、より大きなサイズのSUVもモデル計画の中に入っています。期待してお待ちください」 カイ・グリューニッツ(Kai Grünitz)氏プロフィール フォルクスワーゲン・ブランド・ボードメンバー/ブランド技術開発取締役 開発および管理部門でさまざまな職務を歴任。2002〜12年に2012〜14年VWブランド車両開発担当、2012〜14年にVW商用車部門事務総長、またシュコダ開発部門エグゼクティブアシスタントを兼任する。2014〜16年VW商用車部門メカトロニクス・シャシー・システム責任者、2017〜2020年VW商用車部門電気電子開発およびシャシーシステム開発責任者、2020〜22年VW商用車部門技術開発責任者を歴任。2022年10月からVWブランド技術開発取締役に就任。機械工学と工業工学の学位を持つ。 <Vol.2へ続く>

TAG: #EV #VW #戦略
TEXT:小川フミオ
「ID.GTIコンセプトは、その完璧な例」とVWアンドレアス・ミント氏が語るEVデザイン

EV化によってデザインは、どのように変化していくのだろうか。「ID.GTIコンセプト」は、ミライを見据え、現在にデザインをしたとミント氏はいう。 自動運転がレベルアップにともなってデザインも変わる ーーこれからのBEVのデザインについてうかがいます。レベル3以降の自動運転など、あたらしい技術が実現すると、クルマの形状も、本質的に変わっていくのでしょうか。 「たしかに、自動運転が、レベル3やレベル4以上になった場合には、車内におけるエンターテイメントですとかインフォテイメントの価値がどんどん上がってくるでしょう。デザインも変わってくると思います」 ーーフォルクスワーゲン(VW)らしさは、どうやって打ち出していきますか。 「私たちは、Stable(安定性)、Likeable(好感度)、Exciting(刺激)という3つのピラー(柱)を、これからのデザインの理念としています。3つめの”刺激”については、秘密のレシピであって、言葉にしにくいのですが、これらが変わらないかぎり、デザインランゲージを維持しながら、あたらしいプロダクト作っていけます」 ーーそこまで、すでに手を打っているということですか。 「いま現在の話として、あまり先までの心配をすることは、おそらく必要ないんじゃないかと思います。なぜならば、レベル4はまだ来ていないですし。いま私たち意識しなくてはならないのは、自分たちが寄って立つべき価値を見失わないようにすることです。そうであれば、VWらしさを失わない。そういうふうに思っています」 車内のエンターテイメント、そしてファン・トゥ・ドライブ ーー若い世代については、顧客としてどのようにとらえていますか。 「若い世代は、車内のエンターテイメントにより注目する傾向にあると思います。いままでのように、コーナリング性能だとか加速性能だとかでなく、どれぐらいエンターテイメントを車内で提供できるか。そこが若い世代から求められていると思っています」 ーー若い世代が、従来のような、クルマ本来のドライブの楽しさを語らないのは、自動車メーカーの責任でしょうか。それとも、これは不可避的に起きたことなんでしょうか。 「若い世代にたいして、私たちがやるべきことがあります。真の意味でのドライビングの楽しさを教えることです。ID.GTI(コンセプト)はBEVの時代に、従来と同様のファン・トゥ・ドライブを教えることができるのではないかと思っています」 ーーBEV独自のファン・トゥ・ドライブもありますね。 「重量物であるバッテリーを床に敷き詰めることで重心を低くでき、コーナリング性能が上がるとか。回生ブレーキを使うことで、制動性能が上がったりとか。真の意味でのドライビングの楽しさも、ID.GTIで実現できると思います。私じしん、ドライビングが好きですし、若い世代にも、ファン・トゥ・ドライブを訴求していく必要があると思います」 デザイナーからすれば、自由度が高まるBEVはファンタスティック ーークルマがBEV化すると、デザインの面で、今までできなかったこと、やりたくてもやれなかったことが実現できますか? 「ID.GTIコンセプトは、その完璧な例です。ボディとホイールベースとの関係をみると、完璧なプロポーションです。おなじセグメントで、こんなに均整のとれたクルマはないですよ。ホイールベースが260cmに対して、ボディ全長が410cmこのプロポーションは完璧です」 ーークルマのデザインにおいて、もっとも大事なのはプロポーションというのは昔から言われてきたことですね。 「もうひとつ、タイヤの外径が大きくなっています。非常に見た目がいいでしょう。デザイナーからすると自由度が高まるので、BEVはファンタスティックです。強くパワフルでスポーティーな印象を与えるけれど。同時に、かわいらしさも失わないデザイン。これがID.GTIコンセプトなのです」 ーーICEではむずかしったのですね。 「エンジンルームの役割が違いますから。ラジエーターもあるし、エンジンやギアボックスが入っているので、どうしても前車軸より前の、いわゆる、オーバーハングが長くなってしまいます。デザイン的にダメとは言いませんが、BEVのほうががいいと思います」 <了>

TAG: #EV #ID.GTI #VW
TEXT:小川フミオ
「ID.GTIコンセプト」のCピラーに注目。ヘッド・オブ・フォルクスワーゲン・デザインが物語る、これからのVWのデザイン

フォルクスワーゲン(VW)の企業方針「Success By Design」を担うアンドレアス・ミント氏は、人を惹きつけることが必要と語る。その一例が、ID.GTIコンセプトのCピラーにあるという。 「ID.GTIコンセプトで狙ったのは、いいなと直感的に思ってもらえること」 2023年にフォルクスワーゲン(VW)グループは、「IAAモビリティ」を前に、「デザインによる成功 〜Success By Design」という企業方針を打ち出した。 「デザインはブランドの説明のよい手段であり、ひとは自動的にデザインとブランドを結びつけます。そして、新車の購入にあたって、デザインは大きな影響力をもちます」 VWグループのオリバー・ブルーメCEOは、グループの各ブランドにおいて、これからいっそうデザインに力を入れていくとする。 ただし、とんがっていればいい、ってもんではない。デザインが企業のありかたと、うまく結びついている必要がある。VWグループにおいて、デザイン部とCEOはよりダイレクトな関係を構築していくんだそうだ。 EVが本格的に発売されるようになった数年前は、上記のような考えはあまり見られなかった。ICE(エンジン車)との差別化が大事で、違って見えることに、各ブランドは注力した感があった。 いま、時代はあたらしくなった。そう思わせるクルマが、いくつか登場している。VWでいうと、23年3月にハンブルグでコンセプトが発表された全長4メートルのハッチバックEV「ID.2 all」、そしてそれをベースに開発するという「ID.GTIコンセプト」が好例だ。 「ID.GTIコンセプトで狙ったのは、いいなと直感的に思ってもらえることです。あたらしい技術(電気)から距離をとっているひとが、近づいてきてくれるクルマ。いいかんじのデザインだね、と思ってもらえるクルマづくりです」 そう語るのは、VWブランドのヘッド・オブ・デザインを務めるアンドレアス・ミント氏だ。 そういえば、ハンブルグでの発表会のとき、ミント氏は「(23年1月にVWのヘッド・オブ・デザインに)就任してまずやったのが、ID.2 allのデザインでした」と語ってくれたのを思い出した。 ほぼ同時にID.GTIのデザインも手がけている。この作業をミント氏は「クリスマスと誕生日がいっしょに来たみたいな楽しさでした」と語っている。デザイナー冥利につきる仕事、ということかな。

TAG: #EV #ID.GTI #VW
TEXT:小川フミオ
VW愛!デザイン責任者が語る「電気自動車時代に、わたしたちができること」

IAAモビリティ(ドイツ国際モーターショー)で注目を集めた「ID.GTIコンセプト」を手掛けたVWブランドのヘッド・オブ・デザインにインタビュー。 「GTIのファンのために、私たちは何が出来るかーー」 GTIファンだけでなく、フォルクスワーゲン・ファンだけでなく、世界中の自動車ファンが楽しみにしていること。それは、ひょっとしたら、「ID.GTI」の発売では? フォルクスワーゲン(VW)が、「ID.GTIコンセプト」を、2023年9月初旬のミュンヘンでの自動車ショー「IAAモビリティ」で発表したのは、既報のとおり。 「私たちは、まもなく電気自動車の時代に入ります。そのときに、GTIのファンをどうするか。そのひとたちのために、私たちは何が出来るかーー」 そう語るのは、VWブランドのヘッド・オブ・デザイン(デザインのトップ)を務めるアンドレアス・ミント氏だ。 さっとミント氏の経歴をおさらいすると、アウディ時代に数かずの”仕事”をしているのが目につく。「A1」「Q3」「Q8 e-tron」などはミント氏のチームが手がけたとされる。 1969年にドイツで生まれたミント氏は、数おおくのデザイナーを輩出しているプフォルツハイム大学デザインスクールを卒業。1996年にVWに入社したあと、ブランドをいくつも経験している。 ベントレーでは、スポーツカーというよりレースカーのような「ユノディエール Hunaudieres」(1999年)を手がけた業績で知られる。 そのあと、VWでは、精悍な顔つきが好ましかった「ゴルフ7」(2012年)を担当。 2023年1月に、VWにヘッド・オブ・デザインとして戻る前は、ベントレーのデザインディレクターとして、「ベントレー・バトゥア・バイ・マリナー Bentley Batur By Mulliner」を手がけた。 バトゥアは、じっさいはミント氏がVWに移ったあと、23年6月に正式発表されている。過去のヘリティッジにこだわりすぎた感のあったベントレー車のデザインにあたらしい風をどっと吹き込むような魅力的なスタイルのクーペだ。

TAG: #EV #ID.GTI #VW
TEXT:加藤 ヒロト
みんなに勧められる車だが、多くの人が欲する車ではないかも[トヨタ・bZ3試乗記]

前回はデザインについて語ってもらったが、今回はいよいよbZ3の走りについて、加藤博人氏にインプレッションを報告してもらう。一体どんな走りのBEVに仕上がっているのだろうか。 トヨタ車らしい優しいドライビングフィール bZ3は大きく分けて二つのモデルが存在しており、それぞれ異なるバッテリーを搭載する。ひとつが容量49.92 kWh、そしてもう一方が容量65.28 kWhとなる。どちらもBYDグループの子会社である「弗迪」が製造するリン酸鉄リチウムイオン電池で、CLTC方式での航続距離はそれぞれ517 kmと616 kmを誇る。保証は10年/20万 kmまで続く万全のサポート体制だ。 モーターの出力は前者が181 hp、後者が241 hpと異なるが、どちらもシングルモーターの前輪駆動で、ツインモーターの四輪駆動モデルは設定されていない。人によっては、この点に関して少し物足りなさを感じるかもしれない。  グレード体系は航続距離517 kmのモデルがひとつ、そして616 kmのモデルが二つ用意される3グレード構成となる。最上級グレードは下のグレードでオプション装備となる後方追突予告警報(RCW)、リヤクロストラフィックアラート(RCTA)、ブラインドスポットモニター(BSM)、パノラミックビューモニターシステム、ドライバー疲労披露検知機能、ドア開閉時警告機能、ステアリングハンドルヒーター、シートヒーター、アンビエントライトなどの装備が標準装備となる。また、車外へ電源を供給するV2H/V2Lへはオプションとして対応する。 運転するために座り込むと、前回の記事で紹介したように内装は驚きの連続だ。だが、アクセルを踏んで得られる加速感はとても優しく、上手に制御されていると感じた。BEVと言えばなんでもかんでも「力強い加速」をアピールしがちだし、中には出だしの制御がイマイチな車種も多い。その中でbZ3の加速フィーリングは自然で疲れないし、これならガソリン車からの転換も不自由なくおこなえると感じた。   この「運転のしやすさ」に、トヨタらしい設計思想の本質が現れていると思うのだ。流行に敏感な一部の消費者たちはこの加速感を「鈍い」と切り捨てるとも聞いたが、普及価格帯のBEVにおいて大切なのは「0-100 km/h加速」の速さではなく、従来の自動車と変わらないフィーリングなのだ。物事の本質を見極められる消費者でなければ、bZ3の良さには一生気がつかないままかもしれない。 スポーツセダンではないため、コーナリングは良い意味で普通だ。段差や路面の凹凸も程よく吸収してくれるので、純粋に居心地の良い車である印象を覚えた。ドライブモードは「ノーマル」「エコ」「スノー」「スポーツ」の4種類で、スポーツモードでは多少加速感が鋭くなるが、劇的な変化とまでは行かない。室内空間は前席と後席ともに高く広く作られており、あらゆる点において「ちょうど良い塩梅」を目指したBEVなのだと感じた。

TAG: #bZ3 #EV #トヨタ
TEXT:加藤 ヒロト
外装の不思議なデザインと使いやすいインテリア[トヨタ・bZ3試乗記]

前回に続き、加藤博人氏による「トヨタbZ3」のレポートをお届けする。今回はbZ3のデザインを観察していく。これまでのトヨタの車と異なる個性はあるのだろうか。 見れば見るほど不思議なデザイン トヨタ bZ3のボディサイズは、全長4,725 mm x 全幅1,835 mm x 全高1,480 mmと、全体的なサイズ感は「プリウス」と「カムリ」の間と言えるだろう。ホイールベースはカムリが2,825 mmなのに対し、bZ3は2,880 mmを確保している。 「クラウン」や「ランドクルーザー」よりも30 mm長いホイールベースのおかげで室内空間は素晴らしく広いが、それと同時にエクステリアは言わば「ショートノーズ・ショートデッキ」のような不思議なプロポーションを持つ。4ドアセダンにも関わらず、その見た目は伝統的なセダン形状でもなければ、流行りのクーペ風セダンとも少し違うシルエットであり、そこがbZ3の存在感を唯一無二なものにしている要素のひとつかもしれない。 フロントマスクは「bZ4X」でもすっかりお馴染みの「ハンマーヘッド」形状だ。高さ5分の4ぐらいの位置に前端を設定し、そこから上は鋭く、下はなだらかに続くラインを特徴とする。優れた空力性能はハンマーヘッドだけでなく、フロントフェンダー前端やボンネット両端に位置する空気の通り道も大きく貢献している。そのおかげもあってか、一目見ただけでは理解しにくい、複雑なプレスラインで構成されるフロント周りとなっているのだ。昨今の新興ブランドはどこもシンプルな造形を目指しては似たり寄ったりなデザインだが、それとは一線を画す見た目が街中でbZ3という存在を際立たせているのだと感じた。 サイドはフロントほど複雑ではないものの、有機的なプレスラインからは造形美を感じ取ることができる。Cd値0.218を実現させた要素のひとつであるドアハンドルは、内蔵式のように見えるが、実は表面がフタとなっており、そこに手を差し込んで手前に引くことでドアを開けるスタイルとなる。初見ではどこかに挟まれないかと不安になる「真実の口」のようだったが、慣れてしまえばどうってことはない。 先ほど「ショートデッキ」と形容したように、最後端の膨らみは最小限に抑えられている。それでもトランク容量は439 Lが確保されており、このサイズにしては比較的多めではないだろうか。流行りの一文字テールは両端が三角形の寄木細工のようになっており、近未来的、機械的なルックスに少しばかりの暖かさをもたらしている。

TAG: #bZ3 #EV #トヨタ
TEXT:加藤 ヒロト
中国でしか販売していないトヨタ車「bZ3」誕生の背景とは[トヨタ・bZ3試乗記]

「2022年に、中国新車販売に占めるBEV(バッテリー電気自動車)のシェアは20%に達し、その販売台数は500万台を超え、世界最大のBEV市場になった」中国でのBEV関連のニュースを見るたびにその普及の勢いに圧倒される。そんな中国で販売されているBEVはどんなクルマに仕上がっているのだろうか。今回は昨年発売された「トヨタbZ3」について、中国自動車業界に精通する加藤博人氏よりレポートを寄せてもらった。 拡大するトヨタのBEV政策 トヨタは2021年4月、上海モーターショー2021にてBEVサブブランド「bZ」と、初のモデルである「bZ4X」を発表した。よく勘違いされるが、これはトヨタにとって初めての電気自動車(BEV)ではない。 1990年代には少量ながらも「タウンエース バン EV」や「クラウンマジェスタ EV」、そして「RAV4 EV」などを世に送り出してきた。世界に「ハイブリッド」というものを知らしめた初代プリウスが1997年に登場してからしばらくはハイブリッド車(HEV)の普及に向けて尽力するかたわら、燃料電池車(FCEV)の研究開発にも勤しむようになる。 2019年には久々のBEVである「C-HR EV」「イゾア EV」を発表、中国現地で製造・販売をおこなっている。乗用車以外にも、歩行領域や超小型モビリティにおけるトヨタの取り組みは目立っており、ひとつの選択肢に拘らない、幅広いゾーンをカバーすることに注力している。 ここ数年は中国市場を特に見据えたBEV展開に積極的だ。2022年にはbZシリーズ第二弾の「bZ3」を発売した。ついこの間開催された上海モーターショー2023ではbZシリーズから2台のコンセプトカー「bZ Sport Crossover Concept」「bZ FlexSpace Concept」を発表、中国市場において2024年中の販売開始を目標にしている。 これ以外にも多くのBEVを中国に導入するとしており、多くの新ブランド・新車種が日々誕生する中国市場でトヨタがいかにプレゼンスを発揮し続けるかが焦点だ。

TAG: #bZ3 #EV #トヨタ
TEXT:小川フミオ
「EタイプのインパクトをEVで再現したい」ジャガー・マネージング・ディレクターが語る電動化への姿勢

フォーミュラEから次世代ジャガーBEVを語ってきたグローバー氏は、ジャガーEタイプの存在を話しはじめる。それは、既存にとらわれない新しい価値観の創造だった、と。 Eタイプが示してくれたこと −−フォーミュラEの話から、2025年という新世代のジャガーBEVにまで話題が飛びました。つまり、ジャガーにとっての電動化をいうときに、活動はみな有機的につながっているのですね。あたらしいBEVの話をもうすこし聞かせてください。 「私たちは、他のコピーをしない、他とちがっていることを敢えて厭わない、という創業者のスピリットを大事にしながら、次世代車の開発に取り組んでいます。過去の例でいうと、やはり、1961年のジャガーEタイプです」 −−ジャガーの名声を不動のものにしたスポーツGTですね。 「このクルマが発表された時点で、世界中のひとは、それまで同じようなクルマを観たことがなかったはずです。あのカタチもコンセプトも、世のなかにそれまで存在していませんでした。それと同じようなインパクトを、新世代BEVで提供したいと私たちは意気込んでいます。過去をこのように振り返りながら、いままで存在しなかったクルマを未来に出す。これが私たちの考えなのです」 ジャガーを顧客とともに全く新しいものへ −−新世代のBEVはかなり上のマーケットを狙うものになると聞いていますが、どうなのでしょうか。 「なぜ、私たちがさらに上級マーケットへ移行しようとしているのか、ということですね。これまでセールスが好調だったジャガーの製品を振り返ってみると、そこに答えがあるのです。私たちがもっとも成功を収めた製品と同じようなところを狙うべきだというのが、私たちの結論なのです。これから、市場動向がどう変わっていくか、みていくと、生産台数をしぼって、高価格政策を採っていくのが、もっともジャガーというブランドにふさわしいと結論づけています」 −−高価格政策なのですね。 「おおざっぱですが、いまの2倍以上の価格です。高価格は、ジャガーというブランドにそぐわないものではありません。大事なことは、高価格の正当化です。そのために、いまのジャガーのプロダクトとはまったくちがったものを作らなくてはなりません。ほんとうにちがったプロダクトになるので、ユーザーエクスペリエンスとか、マーケティング戦略も、とうぜん、従来と同じというわけにはいきません」 −−具体的に教えてもらえるものがありますか。 「かんたんにいうと、顧客とダイレクトにつながりたいと考えています。オンライン販売の可能性もそのうちのひとつだし、逆にオンラインからオフラインへと、顧客が簡単に移れるようにするのも重要だと考えています。ブランドブティックを開くこともあるでしょうし、ポップアップにも取り組んでいきたいです。まだ計画段階ですが、かりにいうなら、ロンドンやパリや東京といった都市にブランドストアを直営で開き、顧客とのつながりをこれまで以上にしっかり持っていきたいと思っています。つまり、BEVを機会に、プロダクトを新開発するだけでなく、ジャガーをまったく新しいものにしたいのです。私たちは、既存の価値観にとらわれず、大胆で、恐れず新しいことを実行するブランドなのです。それをわかってくれるひとと価値観を共有したい思いです」 <了>

TAG: #EV #ジャガー #戦略

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