インタビュー
share:

どうなる?IDシリーズのミライ。VW製品開発責任者に、その展望を訊く


TEXT:小川フミオ PHOTO:生方 聡、Volkswagen
TAG:

IAAモビリティでのVWの存在感は大きく、発表した「ID.GTIコンセプト」は注目を集めていた。ID.4と異なるドライブトレインを持つこのモデルをみて、これからのラインナップへ期待を高めて小川フミオが製品開発責任者にインタビューをした。

180度かわったドライブトレイン

2023年、ミュンヘンで開催された自動車ショー「IAAモビリティ」の目玉ともいえるのが、フォルクスワーゲン(VW)が発表した「ID.GTIコンセプト」。

興味ぶかかったのは、このモデルと、このモデルのベースになる「ID.2 all」(2025年末発表予定)のドライブトレインだ。

日本には「ID.4」が導入されているVWのBEV「ID.」シリーズ。ドライブトレインの基本レイアウトは、リアモーターの後輪駆動。

それに対して、上記「ID.2 all」と「ID.GTIコンセプト」は、車名のとおりいまはコンセプトモデルとはいえ、フロントモーターと前輪駆動方式と、いわば180度ちがっている。

なぜわざわざ変えるのだろう? そんな疑問を含めて、フォルクスワーゲンのボードメンバーで、製品開発を統括するカイ・グリューニッツ氏にインタビューを行った。

ーーID.GTIコンセプトを作るのは、既存のGTIオーナーを安心させて、将来的にICEのGTIからの乗り換えをうながすのが目的ですか。

「そうですね。すでにクルマを所有しているひとが、次にBEVを選んでくれるよう説得しなければなりません。不安材料を取り除くとともに、積極的な購買動機を持っていただきたいのです」

ーーそのときに”武器”になるのが、GTIのヘリティッジだったのですね。

「まず、市場で評価されるVWらしさとは何であるかということを、私たちは考えました。そして、過去のレガシー、ヒストリー、ブランドといった点から、VWをVWたらしめているものは何であるかということを、突き詰めたのです」

ーー結果たどりついたのが、ID.GTIコンセプトですか。

「(乗り換えへの)説得力を持たせるためのデザイン。そのためには、内燃機関と似たようなデザインがまず大事だよねと。BEVにスイッチしても安全であるというメッセージを、デザインに込めるべきだと考えました。同時に、新しいデザインは、アグレッシブなものでなく、むしろ古典的な要素をしっかり盛り込もうと。そう意思決定しました」

2万ユーロ以下のモデルや大きなサイズのSUVを計画中!

ーーでは、ID.2allとID.GTIコンセプトは、いくつもある選択肢のひとつ、というより、VWのラインナップにおいて、大きな柱になりうるものだということでしょうか。

「フォルクスワーゲンをフォルクスワーゲンたらしめているものは何かと考え、(ヘッド・オブ・デザインの)アンドレアス・ミント氏が発表したとおり、デザインの3原則をうち立てました。Stable(安定性)、Likeable(好感度)、Exciting(刺激)です。それをID.2 allでかたちにしました。2025年にID.2allを発表し、そのあと、同様のコンセプトをすべての車両に展開する予定でいます」

ーーそのときに新しいBEVのシリーズは「ID.」の名前を継続して使いますか。現在のラインナップを参考にすると、ID.2allより小さな数字はID.1しかない。いっぽう、ID.7はすでに全長が5m近いサイズですね。ID.8があるとしたら、そうとう大きなクルマになるしかないですよね。

「ID.2allよりも価格の低い、2万ユーロ以下のモデルはいますでに検討はしています。ID.2allよりも大きいけれど、ID.3やID.4との間に入るモデルも計画にあります。それ以外にも、SUV、より大きなサイズのSUVもモデル計画の中に入っています。期待してお待ちください」

カイ・グリューニッツ(Kai Grünitz)氏プロフィール
フォルクスワーゲン・ブランド・ボードメンバー/ブランド技術開発取締役
開発および管理部門でさまざまな職務を歴任。2002〜12年に2012〜14年VWブランド車両開発担当、2012〜14年にVW商用車部門事務総長、またシュコダ開発部門エグゼクティブアシスタントを兼任する。2014〜16年VW商用車部門メカトロニクス・シャシー・システム責任者、2017〜2020年VW商用車部門電気電子開発およびシャシーシステム開発責任者、2020〜22年VW商用車部門技術開発責任者を歴任。2022年10月からVWブランド技術開発取締役に就任。機械工学と工業工学の学位を持つ。

<Vol.2へ続く>

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
ブレーキダストを封じ込めて環境対策! メルセデス・ベンツが開発したEVならではの技術「インドライブ・ブレーキ」ってどんなもの?
ヒョンデの魅力を日本に伝える新たな拠点! 「ヒョンデ みなとみらい 本社ショールーム」がグランドオープン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
more
ニュース
ロングホイールベース化で後席が7シリーズ並! BMW 5シリーズ 「i5 eDrive35L」と「525Li」に「Exclusive M Sport」を追加
中国専売EV第2弾はクロスオーバーSUV! スポーティなクーペ風スタイリングがマツダらしい「EZ-60」を上海モータショーで発表
上海モーターショーで見えたトヨタのマルチパスウェイ! フラッグシップEV「bZ7」とレクサス新型「ES」を同時発表
more
コラム
バッテリー容量が変わらないのに航続距離が伸びる謎! エンジン車とは違うEVならではの「持続進化」とは
水素燃料電池車は大型トラックでこそ活きる? FCVトラックのいまの立ち位置と立ちはだかる課題
「濡れた手でコンセントを触るな」なんて言われてきたけど……雨の日に屋外の充電器でEVの充電をするのは危険?
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
more
イベント
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択