ボルボ 記事一覧

TEXT:田中 誠司
「サステナビリティ」に取り組むボルボの特徴。部門責任者インタビュー

ボルボ・カーのサステナビリティ責任者のステュアート・テンプラー(Stuart Templer)氏インタビューの続編。ボルボのクルマ作り、そしてアフターセールスの考え方を尋ねる。 全部門にサステナビリティ担当者を配置 THE EV TIMES(TET):自動車業界の内外で参考にされている企業や団体があれば教えてください スチュアート・テンプラー(ST):たとえばスウェーデンのブランドであるイケアは、企業のサステナビリティにおける世界的リーダーとして知られています。サステナビリティが企業の血流として文化として根付いているからです。私のようにサステナビリティにかかわる肩書きを持つ人たちだけでなく、全社員がそれを貫いているのです。 サステナビリティの中心的なチームには15人ほどの社員がいます。しかし私たちはサステナビリティ戦略をまとめているだけで、事実上、会社のすべての担当者が参加しているといえます。私たちのサステナビリティの目標を実現するためには、社内のさまざまな分野に焦点を当てた人材が必要です。例えば、研究開発部門にはサステナビリティ・センターと呼ばれるものがあります。これは、世界的に有名なセーフティ・センターと同じ位置づけです。また、調達、設計、人事、財務の各部門にサステナビリティ担当者を配置しています。小売店ネットワークにおける排出量を削減するチームを社内のすべての部署に置いています。 私たちの使命は、全従業員が気候変動対策、循環型経済、倫理的で責任あるビジネスのそれぞれに関する非常に高い目標について、どのようにすれば達成できるかを考えるようにすることだと思います。 最もよく知られているのは、2030年までに完全な電気自動車メーカーになるというものです。気候の面では、先ほど申し上げた40%削減という目標がありますが、これは企業のトップレベルの目標である循環型経済が必要です。例えば、私たちのクルマにはリサイクル素材を使用するという目標があります。例えば、2025年までに再生プラスチックを25%、再生鉄を25%、再生アルミニウムを40%使用するというものです。これらは業界においてトップレベルの目標です。そして新しいEX 90は、プラスチックの15%を再生プラスチックまたはバイオベース材料とし、スチールの15%をリサイクル、アルミニウムの25%をリサイクルするという循環経済目標に向けて順調に前進しています。EX 90は、私たちのサステナビリティへの意欲を反映したものですが、私たちの旅の終わりではなく次のステップなのです。

TAG: #SDGs
TEXT:田中 誠司
ボルボの部門責任者が語る「サステナビリティ」のあり方とは

ボルボは2023年第4四半期に、7人乗りの大型電動SUV「EX90」を生産開始すると発表した。システム最高出力380kW(517ps)、最大トルク910Nmという圧倒的な出力に、111kWhの大容量バッテリーが電力を供給し、航続距離は最長600km。LiDAR(ライダー)、レーダーセンサー、カメラ、超音波センサー等を多数配置し安全性や自動運転支援機能でも世界のトップを目指す。この新型電動SUVの生産計画が明らかになったのを機会に、サステナビリティ責任者のステュアート・テンプラー(Stuart Templer)氏に話を聞くことができた。 ボルボの目標設定の方法とは? THE EV TIMES(TET):ボルボは自動車産業全体のサステナビリティをリードしていると思いますが、どのように目標を定義しているのでしょうか。 スチュアート・テンプラー(ST):ボルボはサステナビリティが安全性と同じくらい重要だと考えています。道路輸送は世界の温室効果ガス排出量の約10%を占めており、私たちはその解決策の一翼を担う必要があります。私たちの目標はパーソナルで持続可能かつ安全な方法で移動する「自由」です。企業戦略全体の中で重要かつ、将来の成功に不可欠なものです。 消費者はあらゆる面で持続可能な製品を求めるようになっています。自動車でいえば、排出ガスゼロだけでなく、その製造方法や、持続可能で責任を持って調達された素材が含まれているかどうかも含まれます。 特に、カーボンフットプリントの削減という点でより持続可能であろうとする企業に、投資家はますます注目するようになっています。そして若い人たちは、人と地球の両方にポジティブな影響を与えるという価値観を持つ企業で働きたいと考えています。 各国政府は排ガスに関する規制を強化しつつあります。例えば、EUでは2035年までに従来の化石燃料車の販売を制限することを決定しています。リサイクルについても、例えば、工場が責任を持って鉱物を調達していることを確認する必要があります。私たちや他の企業が世界の多くの国で事業を展開しようとするならば、サステナビリティ・パフォーマンスを向上させなければならないでしょう。

TAG: #SDGs
TEXT:烏山 大輔
ボルボ・カー・ジャパン、東京・青山に試乗も可能なブランド発信拠点「Volvo Studio Tokyo」を4月8日にオープン

「Volvo Studio Tokyo」は、2017年開設の「Volvo Studio Aoyama」を引き継ぎ、規模、内容をスケールアップして、新たにEVに特化したブランドスペースとしてオープンする。「Volvo Studio」は、ストックホルム、ニューヨーク、ミラノ、ワルシャワ、上海にも展開しているが、EVに特化したのは「Volvo Studio Tokyo」が世界初となる。また、日本でEVに特化したショールームとしても国内最大級の広さを誇る。 拠点全体でスウェーデンを表現 「Volvo Studio Tokyo」はサステナビリティとプレミアムな体験を実現する場所として、随所にボルボの価値観を反映させている。その価値観とは、スカンジナビアンデザインの本質である「シンプル」「ウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)」に基づいており、人々と地球環境、そして未来を見据えた真のプレミアムを追求している。 スタジオの電力は100%クライメートニュートラル(温室効果ガス実質ゼロ)電力で賄われ、新たに内装を設置するにあたり「Volvo Studio Aoyama」の内装素材を最大限再利用している。サステナビリティを実現しながらも、ラグジュアリーな空気を纏うスタジオの内装は、ボルボ・カーズ創業の地であるスウェーデンの空・大地・森を表現しており、スカンジナビアンデザインのインテリアを設えたモダンな空間に、最新デジタルテクノロジーを融合させ、五感でボルボの世界を体験できる。天井に広がる大型照明は、時間によって色合いが変わり、夜間にはオーロラが広がり幻想的な光に包まれる。 車の販売はせず、入りやすさを重視 車のショールーム特有の“敷居の高さ”を払しょくした同スタジオでは車の販売は行わない。近年、車の検討はオンラインで完結するお客様も多く、リアル店舗は購入前に実車を見たり、色を確認したり、試乗をするための場としてニーズが変化しつつある。 そのため同スタジオはより多くのお客様が気軽に入れる場所として工夫されている。地下鉄銀座線の外苑前駅から近い青山通りに面したアクセスの良い立地に加え、同スタジオに常駐するのは販売員ではなく、“ブランド・アンバサダー”と呼ばれ、ボルボブランドとEV 、スウェーデンカルチャーに精通したスタッフだ。 来場者は気になるEVを見て触れて、ボルボや知りたい情報を手に入れることができる。またネットで事前予約することで、90分の試乗が出来るだけでなく、試乗枠が空いていれば、その場で短時間の試乗をすることも可能。運転に自信がない方は、専門のドライバーによる助手席試乗も用意されている。 さらに、スマートフォンに専用アプリをダウンロードすると、ボルボの世界をさらに深く探求することができる。ボルボの歴史やブランドストーリーを紐解くデジタルコンテンツ、ARで出現するサステナビリティを学ぶためのトリビアクイズなどが楽しめる。 また、Googleアシスタント機能や、展示車に乗り込み、目の前の大スクリーンに広がるストックホルムの街を駆け抜けるEV走行のバーチャルドライブ(映像は「Volvo Studio Tokyo」のためだけに撮影された)、そして“Fika(フィーカ)”というスウェーデンの習慣であるコーヒーブレイクも体験可能だ。 デジタルネイティブ世代と言われる若年層の方にとっても垣根を低くし、本スタジオでのデジタル体験を通じて、ボルボが培ってきた「セーフティ」と「サステナビリティ」に対するイノベーティブな価値と発想を知ってもらい、ブランドとの新たな接点の場になることを目指している。 2040 年までにクライメートニュートラルな企業になることを目指すボルボ・カーズは、2025 年にグローバルでEV販売の割合を50%まで伸ばし(日本国内におけるEV販売の割合は45%)、2030年までにグローバルで販売するすべての新車をEVにするという目標を掲げている。   Volvo Studio Tokyo 概要 住所:東京都港区南青山3丁目1-34「3rd MINAMI AOYAMA」1F(青山通り沿いに位置) 営業時間:月曜~金曜 12:00-19:00、土曜・日曜・祝日 10:00-19:00 定休日:毎週水曜日、第1・第3火曜日 電話番号:03-6773-1353 施設URL:https://www.volvocars.com/jp/studios/tokyo/ 敷地面積:491.45m2

TAG: #ディーラー
TEXT:福田雅敏
電気自動車(EV)は「ドリ車」になるか、現役EVエンジニアが考察[THE視点]

エコが売りの電気自動車でも、タイヤを鳴らして限界まで攻めて走ってみたい、というのはクルマ好きの隠すことのできない願望だろう。しかし果たしてそれは現実的なのか、エンジニアによる考察をお届けする。 電気自動車(EV)の後輪駆動化が世界でトレンド 昨今、電気自動車(EV)は後輪駆動(RWD)が増えている。新型車はもちろんだが改良型においてもだ。例えば新型車では「フォルクスワーゲン ID.4」がそうだし、「ボルボ XC40リチャージ」は欧州で従来の前輪駆動(FWD)からRWDに変更された。何より「東京オートサロン2023」では「トヨタ AE86型カローラ・レビン」のEVが展示された。 RWDは車好きにとってはひとつのステータスだろう。さらに言えば「EVでドリフトは可能なのか」と考えるマニアもいるのではないだろうか。そこで今回は「EVのドリフト」について現役EVエンジニアの視点から考えてみた。 駆動装置(イー・アクスル)などの小型化が後輪駆動化に寄与 これまで販売されてきたEVは、FWDもしくは四輪駆動(AWD)が多かった。理由のひとつは従来のエンジン車のプラットフォームを使用していたこと。多くのエンジン車はFFが主流なので、EVもそのままFWDとなったと考えられる。 もうひとつの理由は制御系統。従来のインバーターや駆動用モーターはサイズが大きかった。それらをボンネットの下にまとめた方が効率的なのだ。そしてFWDの方が回生ブレーキの効率が高いことも理由にあると思う。 しかし技術はあっという間に進歩し、今後の主流となるであろう機電一体の駆動装置「e-AXLE(イー・アクスル)」に小型高出力のものが出てきた。そのおかげでユニットを前輪・後輪のどちらにも載せやすくなり、RWD化が進むようになった。RWDのメリットは後輪のトラクションの良さだ。ちなみに筆者も長くBMW(エンジン車)に乗っており、RWDはお気に入りである。 またRWD化では意外なメリットがある。それが積載性。小型の「e-AXLE」を使えばボンネットの下にスペースができることから、テスラのようにフロントにトランク(通称フランク)を持たせるEVが増えてきている。なんと先日発表されたEVピックアップトラック「ラム1500REV」にもフランクが備えられた。フランクは荷物を載せるのに大変便利である。この利便性の向上も少なからず影響しているのではないだろうか。 ともあれ、クルマ好きにとってRWDとくれば「ドリフト走行」を考える人は多いのではないだろうか。「東京オートサロン2023」で公開された「AE86」は、筆者にEVのドリフトマシンの登場を想像させてくれた。この「AE86」は、エンジンをモーターに変えただけの仕様。つまりFRレイアウトのEVであり、そのままドリフト走行が可能だ。

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TEXT:生方 聡
[ボルボC40/XC40 Recharge試乗記]EVブランドへと向かうボルボの先鋒 その4 1モーターか2モーターか

気軽に乗れる1モーター スポーツカー顔負けのパフォーマンスを示すC40リチャージ・ツインモーターに対して、XC40リチャージ・シングルモーターは動きが軽い印象。モーターの最大トルクはツインモーターの半分だが、モーター1基ぶんとバッテリー容量を減らしたおかげで車両重量は150kg軽く、発進から余裕ある加速を見せてくれる。ツインモーターの痛快さはないが、どんな場面でもその速さに不満を覚えることはなかった。 加速だけでなく減速の印象もツインモーターとは異なる。ツインモーターの場合、One Pedal Driveがオンの状態でアクセルペダルから足を離すと強めに回生ブレーキが効くが、シングルモーターでは効きが穏やかになり、多くの人が、こちらのほうが扱いやすいと感じるだろう。ツインモーターと比べると、シングルモーターの乗り心地はマイルドで、快適性ではシングルモーターに軍配が上がりそうだ。 ただ、シングルモーターは前輪駆動ということもあり、フル加速時にステアリングが乱されることがあった。その点、ツインモーターは、4WDならではの高い接地感が確保され、さらに加減速時の安定感、フル加速時の高いトラクション性能など、ダイナミックな性能の高さは実に魅力的。私が選ぶなら、C40リチャージ、XC40リチャージともに、100万円高いツインモーターかなと思うし、その中身を考えればC40リチャージ・ツインモーターの759万円、XC40リチャージ・ツインモーターの739万円は十分に納得がいく価格といえる。

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TEXT:生方 聡
[ボルボC40/XC40 Recharge試乗記]EVブランドへと向かうボルボの先鋒 その3 EVらしさを前面に

300kWの鋭い加速 まずはパワフルな走りが自慢のC40リチャージ・ツインモーターを試す。運転席に収まり、システムの始動ボタンを探すがどこにも見当たらない。それもそのはずで、いまどきのEVらしく、システム始動の儀式は不要で、リモコンキーが車内にあれば、あとはシートに座り、ブレーキを踏みながらシフトレバーを操作すれば、発進の準備は完了するのだ。ちなみに、フォルクスワーゲンID.4でも同様に準備は整うが、始動ボタンは見えにくい場所に備わっている。 さっそくDレンジを選んで走り出したいところだが、その前にひとつ確認しておきたいことあがる。C40/XC40リチャージでは、走行中にアクセルペダルを離したときの動きを、ドライビング設定で選ぶことができるのだ。「One Pedal Drive」の項目をオンにすれば、アクセルペダルを離したときに強めの回生ブレーキが効き、最終的にはクルマが完全停止する、いわゆる“ワンペダルドライブ”が利用可能になる。一方、One Pedal Driveをオフにすれば、アクセルペダルを離したときに回生ブレーキが効かない惰力走行になる。ワンペダルドライブが無効のときには、ブレーキペダルから足を離したときにゆっくりと動くクリープがあるので、車庫入れなどではこのモードが使いやすい。 とりあえずOne Pedal Driveをオンにして走り出すことにする。アクセルペダルを軽く踏むだけで、C40リチャージ・ツインモーターは力強く発進。カタログを見ると、前後モーターともに最大トルクの330Nmを0〜4,350rpmで発揮するとあり、動き出しの力強さはまさにEVの醍醐味といえるものだ。クルマが動き出したあとも、アクセルを軽く操作するだけで意のままに速度を上げてくれるだけに、ストレス知らずのドライブが楽しめる。

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TEXT:生方 聡
[ボルボC40/XC40 Recharge試乗記]EVブランドへと向かうボルボの先鋒 その2 Googleを味方につけて

クールなフロントマスクがEVの証 C40リチャージとXC40リチャージは、4,440mmの全長、1,875mmの全幅、2,700mmのホイールベースがすべて共通。一方、全高はXC40リチャージが1,650mmであるのに対して、低くルーフラインが特徴のC40リチャージは55mm低い1,595mmとなる。リアのデザインも大きく異なり、スポーツモデルをイメージさせるC40リチャージのリアエンドを見ると心が躍る。 これに対して、フロントエンドのデザインは、C40リチャージとXC40リチャージで共通のイメージだ。フロントグリルにボディ同色のカバーが施されたことで、他のボルボとは異なるクールな印象を強めている。 レザーフリーを実現したインテリア C40/XC40リチャージのインテリアは、基本的にはガソリンモデルのXC40を受け継いでいて、プレミアムコンパクトSUVと呼ぶにふさわしい心地よい仕上がり。一方、ガソリンモデルと異なるのがダッシュボードとフロントドアの装飾パネル。等高線をイメージした模様の黒いパネルは、照明が灯るとバックライトで絵柄が浮き上がってくる凝ったデザインなのだ。 驚いたのはC40/XC40リチャージのインテリアには環境対策に配慮した結果、一切レザーが使われていないこと。ステアリングホイールの手触りはレザーそのものに思えるのだが、実際には人工皮革が使われているという。もちろんシートにもレザーは使われていない。ボルボが“レザーフリー”を採り入れるのはこのC40/XC40リチャージが初めてだが、その試みは成功といえる。

TEXT:生方 聡
[ボルボC40/XC40リチャージ試乗記]EVブランドへと向かうボルボの先鋒 その1 選べる4タイプ

人気のプレミアムコンパクトSUVがEVに 「安全なクルマ」といえば、真っ先に思い浮かぶのがスウェーデンの自動車ブランドであるボルボ。自動車安全のリーダーである彼らが、安全とともにいま取り組んでいるのがEVブランドへの転身である。すなわち、2025年までに販売台数の半数(日本は45%)をEVとし、2030年にはEV専業メーカーになることを目指している。 その実現に向けた第一歩として市場に投入されたのが、コンパクトSUVのXC40をEVに仕立てた「C40リチャージ」と「XC40リチャージ」である。XC40は2018年に国内で発売されるや、「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、販売面でも40シリーズは常に輸入車トップ10に入るほどの人気を続けている。 当初、ガソリンエンジン車だけだったXC40は、2020年8月にプラグインハイブリッド・モデルを設定。そして、2021年11月、満を持してEVモデルのC40リチャージが登場した。XC40のクーペ版といえるC40リチャージだが、XC40と異なるのはEV専用のモデルであること。実はヨーロッパではC40に先行してXC40のEVモデルが導入されていたが、日本市場にはより性格が際だつC40を先に導入したという経緯がある。 その後、2022年5月にはBEV仕様のXC40が追加され、2023年2月の時点では2モーターのC40リチャージ・ツインモーターとXC40リチャージ・ツインモーター、1モーターのC40リチャージ・シングルモーターとXC40リチャージ・シングルモーターの4モデルが設定されており、選択肢が多いのがうれしいところだ。

TEXT:TET編集部
ボルボ、「C40」と「XC40」シングルモーター仕様を後輪駆動に刷新……デイリーEVヘッドライン[2023.01.17]

ボルボ、EVの「C40」と「XC40」のシングルモーター仕様を後輪駆動に刷新……冷却システムの向上で最大航続距離507kmに 【THE 視点】ボルボはEVの「XC40リチャージ」と「C40リチャージ」に、欧州で「シングルモーターRWD」のグレードを設定すると発表した。ボルボとしては、25年ぶりの後輪駆動(RWD)モデルとなる。  これにより、ボルボ「XC40リチャージ」と「C40リチャージ」には現行の前輪駆動がなくなるが、今後は四輪駆動と後輪駆動で3種類の仕様を選択できることになる。  まず標準仕様のシングルモーターRWDは、最高出力175kW(238ps)となり、従来の170kW(231ps)のシングルモーター前輪駆動より出力がアップしている。  「XC40リチャージ」の場合、バッテリーの蓄電容量は69kWhと従来通り。しかし、バッテリーパックの冷却効率の向上により、航続距離は従来の425kmから最大で460km(いずれもWLTPサイクル)に伸びている。  「C40リチャージ」では、バッテリー容量は「XC40リチャージ」と同じだが、438kmから最大476kmに延びる。この差はボディ形状の違いによる空気抵抗の差で生じていると推測できる。  充電性能は、いずれも最高出力130kWの急速充電の利用で、約34分でバッテリー容量の80%までを充電できる。  さらにより強力な最高出力185kW(252ps)のモーターを搭載したグレードが用意され、バッテリーは82kWhと大容量になる。航続距離は「XC40リチャージ」で最大515km、「C40リチャージ」で最大533km(いずれもWLTPサイクル)。急速充電性能は最高出力が150kWから200kWに引き上げられ、約28分で80%までを充電可能。標準仕様よりも充電時間が短縮されている。パワーと航続距離を求めるユーザーにはもってこいのグレードだ。  四輪駆動もアップデートされ、従来は前後とも出力150kW(204ps)のモーターだったが、新型では前輪117kW(159ps)、後輪183kW(249ps)の仕様に置き換えられた。  バッテリー容量は82kWhで、航続距離は「XC40リチャージ」が最大500kmとなり、従来モデルより62km伸びた。「C40リチャージ」も451kmから507km(WLTPサイクル)に向上した。  ちなみにいずれのモデルもホイールの形状を見直し、空気抵抗を減らしているという。  昨日の「THE視点」で触れた「DS3 E-テンス」もそうだが、バッテリーパックの熱管理制御の向上で航続距離や急速充電能力が共に向上している。  ボルボと言えば後輪駆動のイメージがあった昔、筆者にとって懐かしさを感じた。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★ジャガー、「I-ペイス」を改良……最大航続距離470km、294kW(400ps)、600Nm(61.2kgm)の性能向上 ★新出光、法人・自治体向けのEVカーシェアサービスを開始……REXEVと提携しカーシェアサービス「idEV(イデブイ)」を提供 ★VW、2022年のEV世界販売台数は57万2,100台……前年比26%増、「ID.4」「ID.5」合計で19万3,200台 ・丸紅、ASEANでEV事業を開発……現地法人「SMRTロードホールディングス」と提携、商用EVフリートマネジメント事業、eマーズなどを開発 ・ブレイズ、電動モビリティ専門店「ネクストベース」を松本市にオープン……小型モビリティ「ネクストクルーザーEV」など販売 ・GM、米RIMと仮想発電所パートナーシップ(VP3)を設立……グーグル・ネストの支援を受ける ・矢野経済研究所、商用EVの成長を予測……2035年に商用車の世界販売台数は3,053万台、EV比率は最大50%まで成長

TAG: #C40 #THE視点 #XC40 #デイリーEVヘッドライン #ボルボ #福田雅敏
TEXT:曽宮 岳大
ボルボ、米CESで7人乗りの新型電動SUV「EX90」を北米プレミア 2023年後半に生産開始

最高出力500ps超で、航続距離は600km ボルボカーズは現地時間1月3日、北米最大の家電見本市、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)において、7人乗りの新型電動SUV「EX90」を北米向けに初公開した。2023年後半より生産が開始され日本導入も見込まれるEX90について、その特徴を見ていこう。 まずはEX90の位置付けについて。同モデルは、既存のラインアップにあてはめると、「XC90」のEV版にあたるモデルだ。2ボックスの大柄なSUVボディに3列シートを搭載し、フラッグシップにふさわしい最先端の装備を搭載する。 欧州プレミアムSUVのライバルを見渡すと、ミドルクラス以上のセグメントではメルセデスのEQE SUVとEQS SUV(いずれも日本導入予定)や、BMWのiXなどが発表済みだが、EX90は3列シートSUVという点がファミリー層を中心に大きな訴求ポイントとなりそうだ。 ボルボは2030年までにラインアップのすべてをEVにすると公言し、現在のところコンパクトSUVの「XC40 Recharge」と、SUVクーペの「C40 Recharge」をラインアップ済み。その他のモデルについてもプラグインハイブリッド化、またはマイルドハイブリッド化が完了しており、今後はそれらが順次ピュアEVへと置き換わっていく予定だ。 EX90のパワーユニットについては、最初にツインモーターを搭載した全輪駆動モデルが登場し、こちらはシステム全体で最高出力380kW(517ps)、最大トルク910Nmを発生する。バッテリーは111kWhと大容量で、航続距離は最長600kmに達するとのことだ。 国内価格は1200万円程度か これらのスペックを先のライバルと比べてみよう。メルセデスEQE SUV(価格未定)は、「EQE 350」が最高出力215kW(292ps)で航続距離は最長590km、高性能版の「EQE500」は300kW(408ps)/最長547kmだ。BMW iXには240kW(326ps)/450kmの「iX xDrive40」(1075万円)と、385kW(523ps)/650kmの「iX xDrive50」(1285万円)の2タイプがラインアップされる。これらのSUVに対してEX90は、性能面で遜色がないどころか、むしろ高性能な部類に入る。あと気になるのは、日本国内において車両価格がどの程度に設定されるかだろう。 この点について有力な情報として、ボルボはEX90の北米価格を8万ドル(日本円にして1076万円)以下に設定する見通しであることを今回のCESで示した。そこで日本と米国の価格差を既存モデルで比較すると、XC40 Rechargeの場合、米国でのスタート価格は5万3550ドル(同約720万円)で、日本国内での価格は639万円となっている。仕様が同一ではないとはいえ、ボルボの国内販売価格は米国に比べて12%ほど安く設定されているのである。この価格差を参考に算出してみると、EX90の国内価格は単純計算で1200万円程度になると期待できる。 走る高性能コンピューター さて、次にEX90の技術的なハイライトをチェックしてみよう。注目したいのは、安全性を高めるセンシング技術が進化しているところ。EX90は、レーザーを使って対象物との距離を測定するLiDAR(ライダー)や、5つのレーザー、8つのカメラ、16台の超音波センサーを搭載する。これによりサッカー場(全長105m)ふたつ分に相当する遠方の小さな物体さえも検知可能という。しかも昼夜を問わず、高速道路上でもその検知できる能力を発揮するという。 また、室内においてもステアリングホイールからの情報や2台のカメラによる視線検知により、ドライバーの疲労や眠気、注意散漫な挙動を検知することができるという。LiDARによる走行状況分析と併せ、予防安全技術の飛躍的な向上が期待できそうだ。 さらにEX90では車両購入後も無線によるファームウェアアップデートが可能とのこと。テスラが先鞭をつけた技術だが、車両購入後も最新の安全機能を入手できるというのは大きなメリットとなるに違いない。 ボルボによればEX90は単なる新型車ではなく、“走る高性能コンピューター”であるとのこと。最新の機能・装備を積極的に取り入れ、安全性を高めようとする同社の企業姿勢は、電動化によりさらに弾みがつきそうだ。 なおEX90は北米市場では、2023年に予約受注が開始され、2024年初頭より順次デリバリーが開始予定とのこと。日本導入が待ち遠しい1台だ。

連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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