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EVの修理は町の修理工場でもできるの? そもそもエンジン車のように機関が不調になることがほぼない、が答えだった


TEXT:御堀直嗣 PHOTO:TESLA/日産自動車/TET編集部
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そもそも修理の機会自体がまれ

電気自動車(EV)の保守管理について、自動車メーカーと通じる販売店の整備工場以外、一般の整備工場でも対応できるのかどうか。ことに、高度な技術が詰め込まれた精密な部品であるバッテリーや、これまでエンジン車では扱う機会の限られたモーターの修理はできるのだろうか。

まず、バッテリーとモーターという、EVの中核を成す部品は、修理の対象になる機会は少ないはずだ。バッテリーについては、EVで使われるリチウムイオンバッテリーは無人化して乾燥した全自動の工場内で生産されるので、それを修理することはほぼ無理だ。自動車メーカー系の販売店でも手に余るだろう。

EVバッテリー生産のようす

なおかつEVのバッテリーは、クルマとして使えなくなった場合でも6~7割以上の容量を残しているので、修理という段階には至らないのではないか。一部のセルが不具合に陥った際は交換するしかない。しかし、そのためにバッテリーケースを分解することは、新しいEVになればなるほど難しくなっている。

理由は、充放電において安定して効率的な電気の出し入れを行うため、温度管理をする機能がバッテリーケースには組み込まれているからだ。液体冷却を採用する例が多く、その配管を外すのは難しいだろう。したがって、リチウムイオンバッテリーの二次利用においても、バッテリーケースごと活用する方向で考える事例が増えている。

温度管理機能のついたバッテリーケース

次にモーターについては、まず10年やそこらで故障することはないのではないか。初代リーフが発売された当時から、車体が廃車になってもモーターは次のクルマで使えるといわれたほどモーターの耐久性は高い。ほかの例でいえば、家庭電化製品の洗濯機や冷蔵庫はかなり長い年月使いつづけることができているのではないか。それほどモーターは耐久性が高い。

また、多くのEVで使われている永久磁石式同期モーターの回転子(ローター)の磁石は、ネオジムという希少金属を混ぜることで、子どもが遊ぶような一般のフェライト磁石に比べ10倍ともいわれる磁力を備えている。したがって、一度くっついてしまうと人の力で離すことはできない。専用の機器を使ってようやくといった強烈な磁力を備えているのだ。

モーター内部のイメージ

モーターの製造現場でも、うかつに磁石同士がくっついてしまうことのないよう慎重な作業が行われるほどだ。そうした超高性能な磁石を用いたモーターは、容易に修理のできる部品とはいえないだろう。

一般の整備工場に対して、EVだから特殊な技術が必要だからというのではなく、そもそもバッテリーもモーターも壊れにくい部品であるうえ耐久性が非常に高いので、メーカー直属の整備工場であろうと一般的な町工場であろうと、修理という対象になりにくい構成部品なのである。

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