日産 記事一覧

EVバッテリー・ステーション千歳 (photo=住友商事)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
用済みだって生きている……住友商事、EVのバッテリーを再活用した大型蓄電設備を稼働[2023.09.27]

バッテリーが本当の寿命を迎えるまでの緩衝材的な役割にも期待 高騰する電気料金の低減・安定につながるか 【THE 視点】住友商事は、北海道千歳市に「EVバッテリー・ステーション千歳」(以下、「本設備」)を完工した。2023年度後半より稼働を開始し、2024年度より需給調整市場および容量市場に参入する。新規民間事業者が広域送電系統(特別高圧帯)へ調整力を提供する国内で初めての系統用蓄電システムになるという。 住友商事は「でんきをためる」という新しいエネルギーインフラの社会実装を目指し、2015年に鹿児島県薩摩川内市甑島(こしきしま)で国内初の系統用蓄電池実証を立ち上げて以降、国内の複数地域で実証を行うとともに、系統用蓄電事業の制度化や安全ルール作りについて、国や関連当局と協議を進めてきた。 本設備は、約2,500世帯が一日に使用する電力に相当する最高出力6MW/最大容量23MWhの系統用蓄電システムとなる。日産自動車との合弁会社であるフォーアールエナジーが提供するEVバッテリーを定置用(電力事業用)として活用しているのが大きな特徴。この制御システム(エネルギーマネジメントシステム)は、福島県浪江町で開発してきたものだ。 設備の主要部分にEVリユースバッテリーを活用することで、リユース品の用途拡大・需要増による再生コスト低減に寄与するだけでなく、蓄電池に含まれる希少金属などの資源を最大限利用し、蓄電池製造時に排出されるCO2も削減できる特徴があるという。 この設備の規模はEV700台分に相当する。日本国内だけではなくアメリカからもリユースバッテリーを集めた大規模な蓄電システムである。住商・日産の合弁のフォーアールエナジーは、「リーフ」などで使い終わったバッテリーを、低置型大型蓄電池はもちろんコンビニの店舗の蓄電池などへの再利用を進めている。 EVの普及が一段落すれば、バッテリーの大量廃棄問題がやってくる。廃棄バッテリーとはいえども、実際は最大容量が低下(性能劣化)したバッテリーなので、まだまだ使用できるのだ。 廃棄バッテリーからレアメタルを取り出すリサイクルシステムの開発も世界的に始まっているが、今回の蓄電システムのような活用が広まれば、バッテリーが本当の寿命を迎えるまでの間の緩衝材的な役割を伴うこととなり、リサイクル処理企業に廃棄バッテリーが積み上がるような事態を抑えることにもなろう。 太陽光による余剰電力が生まれる北海道でのこの取り組みは、電力需給バランスの改善や電力系統の混雑緩和の実現に近づくことが期待される。役割を終えたEVに新たな価値を与えるかもしれない。 電力会社も、電気代の値上げによって利益が出たのであれば、電力安定化システムへの投資を一層行なってほしい。電気代を見直せるような電力システムの構築ができれば、巡り巡ってEVの普及に繋げられるのではないだろうか。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★日産、EVコンセプトカー「コンセプト20-23」を発表 ……イギリス・ロンドンにあるデザインセンター設立20周年を記念したコンセプトカー。ホットハッチのデザインを取り入れたスポーティさが特徴となっている。 ★★日産、ヨーロッパでの販売を100%EVに ……今後2030年までにヨーロッパに投入するモデルを全てEVとする。イギリスに本拠をもつ欧州日産が主導でEVへの転換を推進する。 ★★ホンダ、「ジャパン・モビリティ・ショー」に出展するEVモデルを発表 ……四輪からは「ホンダ・スペシャリティ・スポーツ・コンセプト」、二輪からは「SC e:コンセプト」などを出展する。 ★テラチャージ、コジマに150kWの超急速充電器を設置 ……従量課金に対応した最高出力150kW級の急速充電器の設置を進める。施策の第一弾として、東京都内に1000ヵ所無料で設置する。まずは家電量販店のコジマの店舗への導入が決定した[詳細はこちら<click>]。 ★日立、大容量の「マルチポートEVチャージャー」を発表 ……同時充電台数を増加させることができる充電機器となる。最高出力500kWの範囲内で、「90kW×5口」「25kW×20口」のような出力調整・同時充電を可能とする。 ★アウディ、「Q6 e-tron」がカーボンニュートラル生産に ……ドイツ・インゴルシュタットの工場が2024年元日より再生可能エネルギー100%で稼働される。それに伴い「Q6 e-tron」の生産がカーボンニュートラルになるという。 ★電力小売のMCリテールエナジー、EV・PHEVユーザー向けの電力プランを発表 ……デイタイム時に電力料金を抑える「デイタイムバリュープラン」の提供を9月15日より開始した。東京電力エリアでは、9時〜15時までの料金が26.65円/kWhとなる。また9月26日より、新規加入者を対象に基本料金が2ヶ月無料になるキャンペーンも実施中。 ★ロータス、新型SUV「エレトレ」を「代官山T-SITE」に展示 ……9月30日(土)〜10月1日(日)の期間に「代官山T-SITE メインストリート」<東京都渋谷区>に展示する。 デイリーEVヘッドライン[2023.09.27]

TAG: #EV利活用 #THE視点 #エネルギー
TEXT:TET 編集部
日産がポータブルバッテリーを発売。「リーフ」のユーズドバッテリーをリサイクル活用

日産自動車、JVCケンウッド、フォーアールエナジーの3社は8月31日、共同開発したポータブル電源を、9月1日から全国の日産自動車販売店舗にて発売すると発表した。 -20℃~60℃の環境下で使用可能 今回、発表されたポータブル電源の商品名は「ポータブルバッテリー from LEAF」。その名が示す通り、内部に使用されているリチウムイオン電池は、日産「リーフ」で使用されていたバッテリーのリサイクル品だ。 日産によると、リーフの車載バッテリーは、使用された後でも高い残存性能と安全性を持っており、再利用しても安心して使うことができるという。また、中古バッテリーを再利用することで、製造時のCO2発生を抑え、持続可能な脱炭素社会の実現にも貢献するとのことだ。なお、昨年4月には3社によりポータブル電源の開発方針と試作品の発表が行われていたので、それから1年半弱で量産化にこぎ着けた格好となる。 「ポータブルバッテリー from LEAF」の販売にあたり、日産が協業相手に選んだフォーアールエナジーは、既にリーフの中古バッテリーを活用し定置型蓄電池を使い、店舗などの夜間電力や災害時の非常電源として用いるシステムを開発した実績がある。さらに、JVCケンウッドは家庭用ポータブル電源の分野で製品販売の実績があり、車内やアウトドア等で使いやすい製品のデザインに精通する。 そのため、「ポータブルバッテリー from LEAF」も、初めて販売するポータブル電源とは思えないほど完成度が高く、-20℃~60℃の環境において車内での使用や保管が可能なほか、持ち運びに便利なハンドルをフラットな製品上面に内蔵するなど、ユーティリティにも配慮された筐体となっている。もちろん、車内での使用だけでなく、自己放電が少なく長期保管が可能という特性を活かし、非常時の電源としても活用可能だ。 「ポータブルバッテリー from LEAF」の具体的なスペックは、以下の通りとなる。 充電池容量:633Wh AC出力: 【AC×2】100V AC 50/60Hz 合計600W(瞬間最大1,200W) HIGH-POWER時 合計900W USB出力: 【USB type-C】5V DC 3A 【USB type-C】5V/9V/15V/20V DC 3A(最大60 W) 【USB type-A×2】5V DC 1.5A シガーソケット出力:12V DC 10A 最大120W 充電時間:ACアダプター使用時:約9.5時間 シガーアダプター使用時:約14時間 外形寸法:(W)370㎜×(H)205㎜×(D)282㎜ 重量:14.4kg サイクル寿命:約2,000回 希望小売価格:155,000円(税込み:170,500円) なお日産ディーラーのほか、JVCケンウッドでは、同様の製品を本年中に公式オンラインストア「JVCケンウッドストア」で発売するとのこと。 また、ポータブル電源は様々なメーカーから販売されているが、我々日本人には馴染みの薄い外国企業の製品がほとんどで、アフターケアにも不安があった。そのため、「ポータブルバッテリー from LEAF」の登場は信頼性の高いポータブル電源を探していた人にとっても朗報だろう。 クルマの電動化が進めば、使用済みバッテリーの量も増えていくことが想定される。これからも、その活用方法について様々な企画を期待したいところだ。    

TAG: #ポータブル電源 #日産リーフ #非常用バッテリー
「スカイラインNISMO」発表の様子。日産横浜本社で
TEXT:桃田 健史
BEVチューンは自動車メーカーの真骨頂?日産・NISMO電動化戦略の行方、ハイパフォーマンスICEからどう進化?

電動化の大波が押し寄せている自動車産業界。チューニングカーの分野でも今後、電動チューニングが必要となるが、そうした中で自動車メーカー系の関連企業はどのような手を打って来るのか。「スカイラインNISMO」発表会で日産関係者に聞いた。 スカイラインNISMO登場 日産は2023年8月8日、「スカイラインNISMO」を世界初公開した。 「スカイライン400R」をベースに、搭載エンジン「VR30DDTT」の最高出力を405psから420psに引き上げ、合わせて最大トルクも475N・mから550N・mへと大幅に拡大した。 ドライビングモードについても、STANDARDモードでは日常づかいを加味した味付けとし、またSPORTとSPORT+モードではNISMO専用のAT(オートマチックトランスミッション)変速制御を施した。 タイヤサイズはリアタイヤの幅を20㎜拡大し、アルミホイールはNISMO専用のエンケイ製19インチを採用するなどして、コーナーリング性能をさらに一段、向上させた。 さらにフロントスポイラーを含めた空力パーツへの改良も着手するなどして「史上最上のスカイライン」を具現化させたといえる。 販売台数は限定1000台。価格は788万400円。RECAROシートとカーボン製フィニッシャー装着車が847万円。 そのほか、横浜工場での「匠ライン」で、日産社内での特別な資格を持つ匠がエンジンを丁寧に手組みする「スカイラインNISMO Limited」を限定100台生産する。価格は947万9800円。

TAG: #NISMO #スカイラインNISMO #日産
TEXT:烏山 大輔
蓄電池としてコスパに優れる電気自動車はどれ?一番は国産車ではなく輸入車だった!

BEV(バッテリー電気自動車)が搭載している大容量のバッテリーは、クルマを走らせるだけではなく、V2H(Vehicle to Home)を活用すると、BEVから家に給電もできる。ではBEVを蓄電池として考えるとコスパが良いのはどのモデルになのだろうか。家庭用蓄電池も合わせて考察してみる。 家庭用蓄電池は割高!? 家庭用蓄電池は、ウェブで調べてみるとバッテリー容量が4〜16kWhで100〜250万円ほどが相場のようだ。設置工事費込みの価格のため、蓄電池単体の価格は不明だが、工事費は30〜50万円ほどのようなので、蓄電池は1kWhあたり12.5〜17.5万円と試算できる。 また、アメリカのBEVメーカー「テスラ」もパワーウォールという蓄電池を販売している。バッテリー容量は13.5kWhで価格は110万円※と思われる。1kWhあたり8.15万円だ。パワーウォールは最大10台まで拡張して設置が可能という特徴もある。 ※以前はホームページに価格を掲載していたと記憶しているが、現在はなくなっており、テスラの認定販売施工会社への問い合わせフォームからしか価格を知る術はなさそうだ。 どれくらいの蓄電池容量があれば良いのか 一般的に4人家族が1日で消費する電力は10〜12kWhとされている。実際のご自身の使用量は、夏か冬の冷暖房を使用する時期が一番多いと思われるので、明細書やウェブで確認すると良いだろう。 自宅に蓄電池を設置すると、太陽光発電の電力を溜められることに加えて、災害による停電時に電気を使えることも大きいと思う。 日本での停電で思い出されるのは、2019年9月、千葉県に大きな被害をもたらした台風15号によるものだ。93万戸が停電し、その完全復旧には16日間もかかった。 さすがに16日は長すぎるとしても、例えば5日分の電力50kWhをパワーウォールで賄おうとすると、パワーウォールを4台設置する必要があり、それだけで少なくとも440万円、さらに工事費もかかる。 自宅に設置するだけの蓄電池に数百万円を使うのであれば、「動く蓄電池」であるBEVを買って、普段の生活の足にも使えた方が良いのでは。そうであればコスパとしてどのクルマが一番良いのだろうか。

TAG: #BEV #バッテリー #蓄電池
ルノー、日産、三菱が2023年2月に行った会見の様子。出典:日産
TEXT:桃田 健史
日産×ルノーのBEV開発企業「アンペア」がついに始動へ。欧州のみならず米中等でのBEV戦略の検討も考慮か?

日産がルノーとの出資比率を見直すなど、企業間での新しい契約について締結を完了した。その中には、ルノーが設立したBEV関連企業「アンペア」対する出資も含まれる。 グローバルでBEV市場環境が大きく変化する中、日産は「アンペア」と共にどう動くのか? 5か月越しでやっと締結完了 ルノーグループと日産は2023年7月26日、2023年2月6日に締結・公表された拘束力がある枠組み合意を踏まえた最終契約の締結を完了したと発表した。 その一環で、日産はルノーグループが設立するBEVとソフトウエア開発企業の「アンペア」に対して、日産から取締役を派遣し、最大6億ユーロ(1ユーロ156円換算で936億円)の出資を決めた。 日産の内田誠CEOはニュースリリースで、3社の協業が「次のフェーズに進む」ことを強調。また、「欧州での電動化の取り組みを補完・強化する」とコメントを発表している。 この発表と同じ日、日産は2023年度第1四半期決算を発表。その中で、内田CEOは記者からの質問に答える形で、アンペアへの出資について触れた。 それによると、日産のこれからの事業として、それぞれの市場で違った商品戦略や技術戦略が必要になってくるとの認識を示した。 こうした指摘をする背景には当然、欧州連合による欧州グリーンディール政策がある。 政策パッケージ「Fit for 55」による2035年時点において、欧州域内での乗用車と商用車のZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)へ転換が進む。 「Fit for 55」については当初、ZEVをBEVと燃料電池車のみと規定し、ZEV100%を明記していたが、ドイツからの提案によって再生可能エネルギー由来の合成燃料であるe-Fuelを含めるとの方針転換を行った。 いずれにしても、欧州での電動化へのシフトは今後、加速していくことは確実な情勢であり、ルノーと日産が電動化戦略で新たなステージでのチャレンジを進めていくことは、欧州で継続的に事業を行う自動車メーカーとしては必須条件であると、筆者は見る。

TAG: #アンペア #ルノー #日産
TEXT:TET 編集部
「軽EV」が市民権を獲得か。日産「サクラ」の販売台数が発売1年で5万台を達成。補助金が販売を後押し

軽バッテリー電気自動車(BEV)の「日産サクラ」が売れている。日産自動車の発表によると、昨年6月に発売した「サクラ」の受注累計が5万台を突破したと発表した。年間5万台というのは、軽乗用車全体の中でもかなり優秀な数字。詳しく見ていこう。 普通車に匹敵する充実装備も人気の秘訣か 全長3,395mm×全幅1,475mm×全高1,655mmという人気のトールワゴンスタイルで三菱「ekクロスev」と同時にデビューしたサクラは、BEVにもかかわらず、当初233万3,100円という戦略的な価格設定で大人気を博し、一時は新規受注が停止される騒ぎとなった。 もちろん、BEVハッチバック「リーフ」を世界に先駆けて販売した日産が自信を持って送り出すモデルだけに、走行性能も妥協はなく、最高出力47kW(64ps)/最大トルク195Nmを生み出すモーターや20kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。航続可能距離(WLTCモード)は180kmと軽乗用車として実用に過不足ない水準を確保し、「CHAdeMO(チャデモ)」方式の急速充電にも対応しているため、80%までの充電時間は約40分で済む。 軽自動車の枠を超えた装備の充実も人気の秘訣で、エントリーグレードの「X」(254万8,700円)でもLEDヘッドライトや電動パーキングブレーキなど日常遣いに便利な装備が標準。さらに、上級の「G」(304万400円)なら、アダプティブクルーズコントロールなどからなる運転支援システム「プロパイロット」や9インチワイドディスプレイを備えたインフォテイメントシステムまで付いてくる。 スタート価格については、各種原材料の高騰などから数回の値上げを経て現在254万8,700円となっているが、例えば東京都の場合、国の補助金55万円に加え、都独自の補助金55万円(基本補助額45万円+メーカー別上乗せ補助金10万円)が上乗せされ、計110万円が支給されるから、車両本体の自己負担は150万円以下で済む。 これだけの充実装備を持った軽自動車なら通常の内燃機関車(ICE)でも200万円弱はいくから、BEVのサクラに注文が集まるのも無理はないだろう。さらに、日産のホームページによると、今ならサクラは注文から工場出荷まで1〜2ヶ月程度と納期も短いから、非の打ち所がないという状況だ。 >>>次ページ 軽ベストテンも見えてきた

TAG: #売れ筋モデル #日産 #補助金
ヘッドマッサージのイメージ(photo=ゴールデンフィオールド)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
EVと人を“同時充電”……日産が「悟空のきもち」とコラボ、EVオーナー専用スパを高速SAに開設[2023.07.24]

EVの充電20分間でドライバーも回復させる専用マッサージコースを開発 充電を“待つ”時間から“活用”するサービスの契機となる予感 【THE 視点】頭のもみほぐしサービス「悟空のきもち」を運営するゴールデンフィールドは7月20日、東名高速足柄サービスエリアにおいて、EVオーナー向けのマッサージサロンを期間限定でオープンすると発表した。本取り組みは、日産自動車発のEVオーナー優遇サービス「グリーン・パス」にの一環として実現した。 EVを充電する間、ドライバーも同時に回復させるEVオーナー専用スパ「FULL-CHARGE SALON(フルチャージ・サロン)」を、東名足柄サービスエリア上り<静岡県御殿場市>にて2023年7月21日(金)より、新名神宝塚北SA上下集約<兵庫県宝塚市>にて8月24日(木)より期間限定でオープンする。利用対象者はEV充電の全利用者となる。 サロンの運営は「悟空のきもち」が担当する。日産・新潟大学と共同でEVの運転疲労と回復について試行錯誤・実証実験を経て、運転疲労に特化した「ドライバー専用リラクゼーション」を作り上げた。EVの充電時間を20分と設定し、マッサージもそれに合わせたコースとなるようだ。 ほぼ全ての人を10分で眠らせるという「悟空のきもち」の得意分野を活かし、施術後の眠気を残さない専用技法を開発したという。新潟大学との実証実験では、短い施術時間でも疲労の緩和と減少が見られたとのこと。 ちなみにサロンの施設には、環境に配慮するため廃棄物由来の素材を混合した再生素材「SOLID」を使用しているという。再生素材の活用は、EVにおいても世界的に導入の流れがある。 施設には、同乗者も利用可能な休憩ラウンジも用意。レストランガイドブック「ゴ・エ・ミヨ 2022」でベストパティシエ賞を受賞した加藤 峰子氏監修のもと、廃棄果物やオーガニック素材を有効活用した“身体をチャージする”スペシャルドリンクも提供するという。 EVの急速充電時間は平均的に30分。その間、EVもドライバーも同時に“充電”するという発想は素晴らしい着眼点だ。しかも「悟空のきもち」は国内の5店舗全てが向こう3ヵ月待ちの予約という状況で、キャンセル待ちが71万人もいるという超人気サービスである。今回の施策もかなりの人気が出るのではないだろうか。 人気サービスを利用できるという面白さもあるが、マッサージを受けることにより事故を未然に防ぐことにもつながるだろう。今後徐々に増えてくるだろう大型のEV用充電施設にも設置して良いと思う。 こういったサービスが増えれば、EVの充電時間がただ“待つ”時間から“活用”する時間へと変化する。新たなビジネスが生まれる予感がする。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ステランティス、充電制御機器とインバーターを統合した新型バッテリー「IBIS」のプロトタイプを発表……車体スペースをさらに効率化、10年以内に実用化へ ★★トヨタ、月面探査機「ルナクルーザー」に再生型の燃料電池を採用……2029年の打ち上げに向けて2024年中から開発 ★★自動車用のノイズキャンセリング技術が日本で体感可能に……イスラエルのSilentiumが名古屋オフィス<JPタワー21階/中村区>に体感シートを用意、EV化で目立つようになったロードノイズを除去 ★BMW、中国上海にR&Dセンターを開設……次世代のEV「ノイエ・クラッセ」開発の重要拠点に ★ZMP、自動運転EVバス「RoboCar Mini EV Bus」の最新型の受注を開始……独自の自動運転OS「アイザック」を搭載、OSのOEM供給も開始[詳細はこちら<click>] ★岩谷産業、「大阪・関西万博」にて世界初のFC船を運行へ……中之島ゲートから万博会場の夢洲のルートに就航、カーデザイナーの山本 卓身氏がデザインを担当 ★ニデック(旧日本電産)、2024年4月〜6月期の売上高が601億5,200万円……四半期ベースで過去最高、「イー・アクスル」事業も黒字化 ★東京都、江東区新砂地区の水素ステーションの運営業者を公募……FCEVバス・トラックに対応した大型のステーション、7月20日〜8月18日まで ★三菱重工、「船舶向けゼロエミチャージャー普及推進協議会」を設立……EV船舶用充電インフラの規格化を目指す ★空飛ぶクルマのASKA、米国連邦航空局(FAA)に型式証明申請……陸上走行も可能な「A5」を申請、レンジエクステンダー方式のEV ★テスラ、橋本スーパーチャージャー<神奈川県相模原市>にて特別試乗会を実施……7月29日(土)開催、「モデル 3」「モデル Y」を用意 ★岩谷産業、「液化水素貯槽の大型化に関する研究開発」がNEDOの助成対象に……トーヨーカネツとの共同研究事業、2030年ごろに本格稼働する水素発電事業に液化水素の貯蔵が有用 デイリーEVヘッドライン[2023.07.24]

TAG: #THE視点 #充電インフラ #国内ビジネス
TEXT:桃田 健史
日産創業の地・横浜工場で次世代に向けて進化を準備。エンジン累計4000万基突破取材会で明らかになったこととは?

日産の横浜工場で製造されたエンジン総数が2023年6月に累計4000万基を超えた。それに伴い、「エクストレイル e-POWER」等に搭載するVC-ターボの製造工程を公開。さらに、横浜工場の次世代化について方向性を示した。 1933年創業からDNAを継承 京浜工業地帯の一角にある、日産自動車横浜工場は、1933年に日産(当時:自動車製造株式会社)が創業した地である。1935年には、日本初の自動車一貫製造工場として稼働した。生産したのは、ダットサン14型だった。 その後、1965年に神奈川県内の座間工場完成に伴い、横浜工場はエンジンやサスペンション等のユニット生産工場に特化し、現在に至っている。2010年には、「リーフ」対応の電気モーター、また2019年にはe-POWER用モーターの生産も開始した。 日産横浜工場長の和田民世氏は「ここは、生産技術開発部門と協働し、圧倒的なものづくり力で量産条件をグローバルで展開する、グローバルパイロットプラントだ」と、日産にとっての横浜工場の立ち位置を表現する。 VC-ターボの生産技術詳細を初公開 日産は今回、横浜工場での生産累計4000万基突破に伴い、量産エンジンとして世界初となる圧縮比を可変できるターボチャージャー付エンジン「バリアブル・コンプレッション・レシオ・ターボ(略称VC-ターボ)の生産技術をメディア向けに初公開した。  理論上、ガソリンエンジンにおいて、圧縮比を上げるほど理論熱効率も比例して上がる。だが、あまりに高い圧縮比では、シリンダー内で混合気が自然着火するノッキングなどが発生する。そうしたガソリンエンジンの基本特性を踏まえた上で、エンジンの運転中に圧縮比を可変することがガソリンエンジンの理想の形であると、長年に渡り言われてきた。 実際、「(一時期、日産と技術連携していた)メルセデス・ベンツも、圧縮比が可変するエンジンを試作したが量産が難しく実現していない」(日産エンジニア)という。日産では、こうした技術難関を、高強度部品の製造技術、高精度部品の加工技術、高精度部品のバラツキをコントロールする組立技術、さらに新材料と新工法にチャレンジすることで実現した。 技術的には、ピストンの上下運動を、U(アッパー)リンク、Lリンク(ローワーリンク)、Cリンク(コントロールリンク)の3部品の動きを、VCRアクチュエーターを介して作動させることで、圧縮比の可変を行っている。 そうした設計図の上での理論を、横浜工場における「匠」の技術を自動化した生産技術によって、リアルワールドでのパワートレインとして量産しているのだ。

TAG: #全個体電池 #工場 #日産
TEXT:御堀 直嗣
EVの価格が下がり続ける理由は、バッテリーにあり!:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第12回

電気自動車(EV)の技術について、いまさら聞きにくい基本的なことから詳しく丁寧に説明していく本コラム。今回は高いと言われるEVの新車価格について、その理由を解説する。 半分になった軽自動車EVの新車価格 電気自動車(EV)の新車価格は、エンジン車に比べれば、なお高い傾向にある。それでも、次第に下がりはじめているのも事実だ。 2009年に量産市販EVとして初めて売り出された三菱「i-MiEV」は、消費税5%込みで当時459.9万円だった。昨年発売された三菱「eKクロスEV」は、消費税10%込みで239.8~293.26万円である。消費税額をそれぞれ引いた車両本体価格で比較すると約46%の値下がりで、13年で軽EVの値段が半額近くになったことになる。 2010年に発売された初代日産「リーフ」は、当時376.425~406.035万円だった。現在の2代目リーフは408.1~444.84万円で、ニスモやオーテックの仕様になるとさらに高額になる。初代リーフ時代の消費税は5%で、現在は10%なので、消費税額を引いた車両本体価格で比較すると、廉価車種のX同士で28万円ほど現行リーフが割高な計算になる。 ただし、初代リーフの前期型は、リチウムイオン・バッテリー(以下、LiB)搭載容量が24kWhであるのに対し、現行リーフは40kWhなので1.6倍になり、これによって一充電走行距離が初代リーフ時代のJC08モード比較で2倍に伸びている。車載バッテリー容量の増加だけでなく、LiB自体も、正極(+)材料が、初代はマンガン酸リチウムであったが、現行車は三元系と呼ばれる、コバルト/ニッケル/マンガンの元素を組み合わせた高性能仕様となっている。このことが車載バッテリーの容量増大だけでなく、一充電走行距離を2倍に伸ばした背景になる。 バッテリーの進化については、三菱の「i-MiEV」と「eKクロスEV」の例でも同様で、バッテリーの正極材料がいまは新しくなっている。 リチウムイオン・バッテリーをいかに安く入手するか EVの新車価格は、製造原価の多くを占めるLiBに左右されるといわれている。車両原価の約20%がバッテリー代だとの話もあり、駆動用のバッテリーをいかに安く調達できるかによって、EV価格は左右される傾向が強い。 まず思い浮かぶのは、安い材料を電極に使うバッテリー材料の開拓だ。そのひとつが、三元系と呼ばれるバッテリー素材の燐酸鉄への切り替えや、ほかにナトリウムイオン・バッテリーの模索という将来構想もある。 もうひとつは、eKクロスEVがi-MiEVより大幅に安くなった背景に、三元系のLiBを使いながら、リーフと同じバッテリーを流用しているので、日産「サクラ」を含めた大量生産の効果も効いてくることがある。世界的に“ギガファクトリー”と呼ばれ、LiBを大量生産する工場建設が進んでいるのも、原価が高いとされるLiBをいかに安く手に入れるかという戦略における投資だ。LiB自体の原価も、高価な材料を使いながら量産効果などもあって、2010年からの6年間で一気に1/4に下がったとの報告も出ている。 加えて、生産工場が世界的に広がることにより、製造されたバッテリーの輸送費を抑えられるようになったことも理由のひとつといえるのではないか。 2021年に、米国テスラが「モデル3」の価格を廉価車種で約82万円安くし、500万円を切る429万円になって、日本での販売台数を急速に増やしたことがある。値下げの理由は、中国の上海にギガファクトリーが完成し、そこから日本へ完成車両を輸出したため、米国からの輸出に比べ輸送費が大幅に減ったと説明している。逆に、中国から遠い米国に出荷されたモデル3は、値上がりになったという話だ。

TAG: #EV知識・基礎の基礎 #バッテリー #御堀 直嗣
TEXT:桃田 健史
新型「セレナ」試乗で感じた「e-POWER」の超進化

日産のミニバン新型「セレナ」の販売が好調だ。2022年11月11日にガソリン車2WDの受注を始め、2023年2月4日から受注開始のe-POWER車を含めた累積販売台数は5月22日時点で4万7,200台。日産主催の公道試乗ではでe-POWERの進化を実感した。 第1世代を回顧、BEV技術を使った新しい技術とはいうものの e-POWERといえば、今や「技術の日産」における代名詞になっている。 技術的に見れば、エンジンを発電機として使うシリーズハイブリッド車なのだが、最新e-POWER搭載の新型「セレナ」を高速道路やワインディングで走らせた感想は「まるでBEV」という走り味である。 だが、この走り味に到達するまで、日産として地道な研究開発を積み重ねてきた。時計の針を少し戻してみると、e-POWERが登場したのは、約7年前のことになる。 「ノート」のマイナーチェンジの際に、新しいパワートレインを導入することが発売前から噂されており、自動車業界内では「日産がレンジエクステンダーを導入か?」という予測があった。 レンジエクステンダーとは、BEVの航続距離(レンジ)を延ばす(エクステンド)する意味であり、当時はBEVの「リーフ」で世界最大の出荷台数を誇っていた日産が、リーフの技術から派生したパワートレインを市場導入するのは“当然の流れ”というイメージが自動車業界内にあった。 蓋を開けると、それはレンジエクステンダーではなく、シリーズハイブリッド車だった。 シリーズハイブリッド車は、レンジエクステンダーに比べると搭載するバッテリーの容量や特性が違い、また発電機として使うエンジンの排気量も大きめというのが一般的な解釈である。 その上で、2016年に初試乗した「ノートe-POWER」は走行中にエンジンが始動する頻度がかなり多く、「BEV技術を使ったとはいえ、やはりエンジン主体のハイブリッド車」という印象が強かった。

TAG: #e-POWER #セレナ
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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