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用済みだって生きている……住友商事、EVのバッテリーを再活用した大型蓄電設備を稼働[2023.09.27]


TEXT:福田 雅敏/ABT werke
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EVバッテリー・ステーション千歳 (photo=住友商事)

バッテリーが本当の寿命を迎えるまでの緩衝材的な役割にも期待
高騰する電気料金の低減・安定につながるか

【THE 視点】住友商事は、北海道千歳市に「EVバッテリー・ステーション千歳」(以下、「本設備」)を完工した。2023年度後半より稼働を開始し、2024年度より需給調整市場および容量市場に参入する。新規民間事業者が広域送電系統(特別高圧帯)へ調整力を提供する国内で初めての系統用蓄電システムになるという。

住友商事は「でんきをためる」という新しいエネルギーインフラの社会実装を目指し、2015年に鹿児島県薩摩川内市甑島(こしきしま)で国内初の系統用蓄電池実証を立ち上げて以降、国内の複数地域で実証を行うとともに、系統用蓄電事業の制度化や安全ルール作りについて、国や関連当局と協議を進めてきた。

本設備は、約2,500世帯が一日に使用する電力に相当する最高出力6MW/最大容量23MWhの系統用蓄電システムとなる。日産自動車との合弁会社であるフォーアールエナジーが提供するEVバッテリーを定置用(電力事業用)として活用しているのが大きな特徴。この制御システム(エネルギーマネジメントシステム)は、福島県浪江町で開発してきたものだ。

設備の主要部分にEVリユースバッテリーを活用することで、リユース品の用途拡大・需要増による再生コスト低減に寄与するだけでなく、蓄電池に含まれる希少金属などの資源を最大限利用し、蓄電池製造時に排出されるCO2も削減できる特徴があるという。

この設備の規模はEV700台分に相当する。日本国内だけではなくアメリカからもリユースバッテリーを集めた大規模な蓄電システムである。住商・日産の合弁のフォーアールエナジーは、「リーフ」などで使い終わったバッテリーを、低置型大型蓄電池はもちろんコンビニの店舗の蓄電池などへの再利用を進めている。

EVの普及が一段落すれば、バッテリーの大量廃棄問題がやってくる。廃棄バッテリーとはいえども、実際は最大容量が低下(性能劣化)したバッテリーなので、まだまだ使用できるのだ。

廃棄バッテリーからレアメタルを取り出すリサイクルシステムの開発も世界的に始まっているが、今回の蓄電システムのような活用が広まれば、バッテリーが本当の寿命を迎えるまでの間の緩衝材的な役割を伴うこととなり、リサイクル処理企業に廃棄バッテリーが積み上がるような事態を抑えることにもなろう。

太陽光による余剰電力が生まれる北海道でのこの取り組みは、電力需給バランスの改善や電力系統の混雑緩和の実現に近づくことが期待される。役割を終えたEVに新たな価値を与えるかもしれない。

電力会社も、電気代の値上げによって利益が出たのであれば、電力安定化システムへの投資を一層行なってほしい。電気代を見直せるような電力システムの構築ができれば、巡り巡ってEVの普及に繋げられるのではないだろうか。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)

★★日産、EVコンセプトカー「コンセプト20-23」を発表
……イギリス・ロンドンにあるデザインセンター設立20周年を記念したコンセプトカー。ホットハッチのデザインを取り入れたスポーティさが特徴となっている。

★★日産、ヨーロッパでの販売を100%EVに
……今後2030年までにヨーロッパに投入するモデルを全てEVとする。イギリスに本拠をもつ欧州日産が主導でEVへの転換を推進する。

★★ホンダ、「ジャパン・モビリティ・ショー」に出展するEVモデルを発表
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★テラチャージ、コジマに150kWの超急速充電器を設置
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★ロータス、新型SUV「エレトレ」を「代官山T-SITE」に展示
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デイリーEVヘッドライン[2023.09.27]

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